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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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六十二話 初心者講習

 悪巧みと言うか正当な報復と言うか、そんな事をシルフィと楽しく話あっていると夕食の時間が来た。まだお腹の中にサンドイッチが残っているけど夕食に行くか。お腹いっぱいに食べれるのは良い事だ。ベル達にはお留守番をして貰い食堂に向かう。

「夕食かい?」

 今日はカルク君だけじゃなくて、マーサさんも食堂に居るのか。

「はい。今日のメニューは何ですか?」

「あはは。あんたに教えて貰った料理さ。酒が進むって言ってエールがバカ売れだよ」

 ただ炭火で焼く事を教えただけなんだけどね。マーサさんの笑い声を聞いて、こちらを向いた冒険者達が一斉に静まり返る。そう言えば冒険者の宿屋なんだから冒険者ばっかりだよね。あれ? 気まずい気がする。

「なんだい? 急に静まり返っちまって。おかしな雰囲気だね。いったいどうしちまったんだい?」

「あー、マーサさん。おそらく俺が此処に泊まっているから、驚いたんですね。ちょっと冒険者ギルドのギルマスと揉めてしまいまして、ある事無い事噂が流れているので、皆さん嫌がっているんだと思います。もしご迷惑でしたら宿を出ますので、何時でも言ってくださいね」

「あんた、新人冒険者って言って無かったかい? 新人冒険者がどうやったらギルマスと揉めるのさ」

 物凄く驚いてるな。確かに日本で言うと大会社の新入社員が、入社初日に社長と揉めるって感じだもんな。うん。驚くよ。

「まあ、なんというか、俺が精霊術師なのが気に入らないそうなんですよ」

「あー、なるほどそうなのかい。あたしも精霊術師の評判は聞いた事があるよ。あんた此処に居て大丈夫なのかい? いじめられるよ?」

 心配そうに聞いて来るマーサさん。心配いりません。既にいじめられてます。

「あはは。大丈夫ですよ。俺に関わるなってギルドで周知されていますので、絡んでくる人もいないと思います」

「あんた、揉めたって何やったんだい。ちょっとした揉め事でそんな事にはならないよ?」

 ヤバい。マーサさんの好奇心に火をつけてしまった。物凄くワクワクしてるよ。説明するまで離れないだろうな。

「いや。嫌がらせをされたので嫌みを言ったら、ギルマスが怒って言い合いになっちゃったんです。最終的に精霊術師の力を見せろと言われたので、まあ、人に物を頼む態度がなっていないとちょっとだけ罵詈雑言ばりぞうごんを混ぜて言い返したらそうなりました」

「あんた。そりゃあ、十分の喧嘩売ってるよ。そうかい。そんな事があってこの雰囲気なのかい」

 あきれた表情で首を左右にふるマーサさん。気持ちは分からないでもない。

「はい。まあ、他にも詐欺師だとか空気が読めないとか色々言われているので、その影響もありますね」

「詐欺師ってあんた何したんだい? うちは犯罪者を泊める気は無いよ」

 マーサさんの顔が怖い。このままだと追い出されそうだ。

「別に悪い事はしていませんよ。俺が精霊術師だからって絡んできた冒険者と決闘になって、その決闘で、絡んで来た冒険者を物理で脅して負かしたのと、賭金を総取りしたのが気に入らない冒険者達がつけた悪名ですね」

「それだけじゃ無いだろう。カール達の全財産を搾り取ったし、賭けもあおって自分に賭けさせないようにしたくせに」

 おお、関わるなって言われているはずの冒険者が、関わってきた。酒の力か?

「あんた、そんな事したのかい?」

「そもそも、カール達が無理やり絡んで決闘を申し込んできて、負けた方が冒険者を引退する事になってたんですよ。それなのに負けたら引退したくないとか言い出したから、冒険者の引退か、全財産かを選ばせただけですよ。誓約書まで書かせたくせに負けたら引退を拒むとか酷い話です」

「決闘して誓約書まで書いてたのかい。賭けの話はどうなんだい?」

「賭けは、誰も俺に賭けないので成立しないって愚痴ぐちっていたので、俺が俺に賭けただけですよ。煽ったのは成立しないって愚痴ってたくせに、俺に賭けようとする雰囲気があって、気に食わなかったので俺に賭けないようにしただけです。そうしたらカール達や賭けに負けた奴らが、詐欺師とか言い出して迷惑この上無いですね」

「んー。あんた、軟弱な見た目に関わらず強いんだね。やり過ぎな気もするけど、まあ、良いよ。このまま泊まっときな」

 軟弱って。ストレートに軟弱って言われた。まあ、泊めてくれるんだから感謝しないとな。

「ありがとうございます。でも店に不利益が出たらいつでも言ってください。俺は何とかするすべを持っていますから」

「そうかい? まあ、うちも商売だからね。危なくなったら追い出すさ。それまではのんびりしておいき」

「ありがとうございます」

 うーん。マーサさんみたいなタイプは、損しても俺を追いだしたりはしないだろうな。注意して見とかないと大きな迷惑を掛けてしまいそうだ。あとでシルフィに頼んでおこう。 

「良いって事さ。まずはメシだね。約束通りエールは奢りだよ」

「御馳走になります」

 食堂のテーブルに座ると、こちらを見ていた冒険者達が一斉に目を逸らす。話しかけて来た冒険者もこちらを見ようとしない。冒険者達は俺を完全に無視する事に決めたようで、ガヤガヤとした雰囲気が戻って来た。

「あいよ。おまち。しっかり食って頑張んな」

 マーサさんが食事とエールを持って来てくれた。今日のメニューはオークバラ肉の炭火焼きみたいだな。しかも今回は横にスライスされた生ニンニクがドンっと盛られている。

 この宿屋の料理って三食目だけど、全部ニンニクがガッツリ入っている。ニンニクパワー。異世界でも効能が実感されているらしい。

 一枚目は普通に食べる。相変わらずの脂の旨さと、わずかに残るクセは変わらないが、炭火の影響なのか肉汁が増して、明らかに味が上がっている。炭火凄い。

 次はスライスされた生ニンニクをのせて食べる。カリカリっとニンニクが噛み砕かれるたびに、強烈なニンニクの香りと辛味がオークのバラ肉と混じり合い、乱暴だけど美味い。確かにエールとの相性は抜群だな。冷えてたら完璧だけど、まあしょうがないだろう。

 パンに切れ目を入れて肉とニンニクを詰め込む。これはこれで良いな。肉とエールを交互に繰り返し食事を終え部屋に戻る。明日は初心者講習か、しっかり休んで気合を入れないとな。


 ***


 冒険者ギルドに入ると、相変わらず視線が集まる。無表情なエルティナさんに初心者講習の場所をたずねる。とてもそっけなく場所を教えてくれたので、その場所に向かう。

 教えて貰った部屋に入ると、中に居た初心者冒険者達は一瞬会話を止めたものの、その後は俺を無視して普通の雰囲気に戻った。多分話しかけ近づいたりしたら迷惑がられるんだろうな。ちょっとやってみたい気もするが、無意味な悪戯は止めておこう。

 しばらく手持無沙汰で待っていると、冒険者のおじさんが入って来た。こちらをチラッと見た気がするがその後の反応は無く、みんなの前で挨拶を始めた。


 ***


 何となく想像はしていたけど、予想よりもひどかったな。まあ、基礎知識は増えたし、まったく無意味だとは思わなかったけど、指導役が全無視ってどうなんだろう。ギルマスの指示かな?

 パーティーを組む理由。ソロの危険さの説明から、人間関係の大切さに発展して、目上の者を敬う気持ちの大切さで話は終わった。まったくもって正しい事なので納得していたが。俺を見てニヤニヤ楽しそうに話していたから悪意があったんだろう。

 質問はスルーされるし、実技の講習の時も一人で素振りだった。アドバイスも何にもなくただただ木剣を振る。

 同じ空間に居るはずなのに、俺は木剣の素振り。少し離れた場所では、同じ受講者が楽しそうに、こうですか? 違う、そこはこうやるんだ。っとか充実した授業風景……リア充ってやつだな。うらやましくなんて無いやい。俺にはシルフィ達が居るもんね。

 俺の真似をして木剣を振るような仕草を繰り返しているベルを見て和む。将来は精霊剣士か? ファンが殺到しそうだな。見えないけど。

 トゥルが喜ぶので円月殺法的なモノマネを試してみたり、レインとタマモがじゃれついて来るのをカッコいい剣士ふうにかわしてみたり、なんだか楽しくなってきた。休日のパパさんはこんな気持ちなんだろうか?

 しかし指導役はBランク冒険者のセイルって言ってたな。おそらくギルマスの指示だったんだろうけど、名前は忘れない。いずれ泣かせてやる。

 初心者講習が終わって、俺以外はギルドの酒場で打ち上げ。俺は誘われていないから宿に戻る。ふふ、こうまで露骨にされると、俺の仕返しに対する熱量も大きくなるな。

「ふふ。散々だったわね。これからどうするの?」

(うん。まずは迷宮に入ってみるよ。食料もあるし五十層の突破を狙ってみるつもり。その結果次第で今後の方針を考えるよ)

 本当はのんびりと楽しみながら迷宮を探索したかったんだけど、ある程度冒険者ギルドを悔しがらせる目途が付かないと落ち着かないからな。

「今から行くの?」

(うん。……いや、マーサさんに伝えてからにする。何も言わずに帰らなかったら心配をかけるだろうしね。宿に戻るまで、ギルドの中の話を聞かせてくれる?)

「分かったわ」

 ……ふふ。ろくな内容じゃないと分かっていても流石にイラッとするな。俺が初心者講習を申し込んだ後から、さっそくギルドは動き出していたらしい。

 指導役のセイルに話を通し、同じく受講予定だった初心者達にも話を通し、俺に対する態度を統一。徹底的に無視をするようにしていたらしい。

 ギルマス、忙しそうだったのに、ここまで手を回して来るとは。よっぽど腹に据えかねていたんだな。

 今回の初心者講習の打ち上げも、費用はギルド持ちなんだそうだ。俺を馬鹿にしてとっても楽しくお酒を飲んでいるとシルフィが教えてくれた。

 新人冒険者に対してご苦労な事だ。もうあれだギャフンとか控えめな表現は辞めよう。絶対にあいつら後悔させてやる。嫌がらせされるって分かって初心者講習に突っ込んだけど、だからって嫌がらせされても当然って納得するつもりもない。みなぎって来た。

 本当は夜の風俗とか色々調べたくもあるんだけど、今の状況でそんな場所に行ったら、洒落にならない噂が広がりそうだ。……うん。中途半端な後悔じゃ済ませない。俺の楽しみ延期させた分も加算しないとな。何とかギルマスの毛根が死滅するぐらい追い込みたいものだ。さらにやる気をみなぎらせながら宿に戻る。

「マーサさん。迷宮に入ってみるんで、何日か戻って来ないと思いますが、心配しないでください」

 これで問題無く迷宮に入れるな。

「はぁ。あんたは実力が有るみたいだから、余計なお世話かもしれないけど、無理はすんじゃないよ。駄目だと思ったら直ぐに戻って来な」

「はい。無理はする気が無いのでボチボチと頑張って来ます」

「本当に大丈夫なのかねぇ?」

 ちょっと呆れられた気もするけど、挨拶もしたし問題は無くなった。後はワクワクの迷宮探索だ。何処まで行けるか分からないけど、ベル達だけでAランクの魔物に勝てるんだからシルフィの力を借りればかなりの所まで行けるはずだ……よね?
読んでくださってありがとうございます。
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