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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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五十五話 ネチネチ対決

 俺が詐欺師って悪口が冒険者ギルドに蔓延まんえんしていた。ちょっと切ない。

 エルティナさんが立派なドアをノックして入室許可を貰う。何だこのドア儲かってんな冒険者ギルド。エルティナさんに続いて部屋の中に入る。

「裕太さんをお連れしました」

「ああ。エルティナすまんが飲み物を。裕太と言ったな、お前は少しそこに座って待っていろ」

 偉そうだなギルマス。いやギルマスって偉いんだった。なんか立派な机で書類を読んでいるし、忙しいらしい。

 取り合えず言われた通りにソファーに座る。おふ。このソファーふかふかなんですけど。いいなーこのソファー、ギルマスの部屋にあるから高いんだろうけど、是非とも手に入れたい。

 肉も美味しいし、家具も良い物がある。お金さえ稼げれば結構良い生活が出来るかも。後は娯楽が欲しいな。流石にテレビやゲームは無いだろうし、戦争が多いらしいから小説や漫画も難しそうだよな。

 しかし精霊ってある意味やりたい放題だよな。退屈なのかギルマスの部屋を縦横無尽に飛び回って鬼ごっこをしている。楽しそうだ。ボヘっと鬼ごっこを眺めていると、エルティナさんが戻ってきた。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 俺の前に飲み物を置いて、直ぐに扉の横に下がって待機してしまった。暇だから出来れば話し相手になって欲しかったが、ギルマスの部屋で入会したばかりの新人冒険者の、話し相手なんてしてくれないよね。

 もし俺が超一流の冒険者だったら、ギルマスも待たせたままで仕事なんてしないだろうに、ぺーぺーは辛いっす。

 出された飲み物の匂いを嗅ぐと紅茶の香り。前にシルフィに聞いてたけど、実際に目にすると嬉しいな。これも購入リストに加えておこう。

 一口含むと紅茶の香りが口いっぱいに広がる。美味しい。ギルマスの部屋で出される紅茶なんだから良い茶葉なんだろう。ベルが飛んで来てフンフンと匂いを嗅いでいる。

「いいにおいー。のんでいい?」

 ……紅茶を飲ませるぐらいならバレないよな。口には出さずうまずくとベルがカップに口を付け紅茶をすする。顔をヘニョと歪め「にがいー」っと飛んで行った。気に入らなかったらしい。

 後ろで興味津々だったレイン。トゥル。タマモもスーっと離れて行った。苦いのは要らないらしい。砂糖があれば入手したいな。

「裕太。結構待たされてるわよね。どう言うつもりかしら?」

 シルフィが不思議そうに聞いて来た。だいたい三十分位待っているんだけど、やっぱり待たせすぎかな? 日本だと社長と平ぐらいの格差はあるし、約束の時間も決めて無かった。このぐらいは許容範囲だと思うが、異世界の場合はどうなんだろう?

 エルティナさんも黙って立ったままだし、判断がつかないな。普通、受付嬢なら案内が終わったら元の仕事に戻りそうな物なんだが、予定調和なのか?

 それとも、いやがらせ? でもお茶は出てるし……でも次の書類に移行してるんだよな。ここは怒るべき所なのか? うーん、ただでさえ詐欺師なんて言われているし、ここで怒って帰ったら評判最悪になる予感がする。

 でも向こうから話が聞きたいって言われたから来たんだよな。唯々諾々(いいだくだく)と待っている事も舐められる事に繋がりそうな……分からん。

 分からないのなら聞こう。無難な選択だけど、何でもかんでも噛みつく狂犬みたいに思われるのは勘弁だ。

「ギルマス。まだ時間が掛かるのなら帰っても良いですか? 話は今度タイミングがあった時にでもお願いします」

「まて、もうすぐ終わる」

 こちらの方をチラリとも見ない。忙しい時間に来ちゃったのかもしれないけど、待たせてるんだからもう少しなんかあっても良い気がするのは俺だけなんだろうか?

「分かりました」

 ………………うーん十分ぐらい経った。これはどうなんだ嫌がらせに加えて馬鹿にされてるのか? ギルマスが新人冒険者を四十分待たす。俺の中では普通にありそうなんだが、もう直ぐってどのぐらいなんだ?

 ここだと小声でも話し辛いんだよな。エルティナさんもこちらを見ているし……精霊術師って言ってるんだから話しても平気なんだろうか? 町中で話していたら変だろうけど、ここなら大丈夫な気もする。

 精霊の声が聞こえるだけでも珍しいって言ってたけど、話をするのはどの程度珍しい事なんだろう。考えると面倒になってきた。ここは異世界なんだし、ある程度ワガママでも良いんじゃなかろうか? 

 取り合えず後二十分は待ってみよう。それでも終わらなかったらちょっと文句を言っても良いだろう。

 ………………何事もなくあっさりニ十分が経った。取り敢えず文句を言ってみよう。

「ギルマスのもう直ぐってどのぐらいなんですか? 暇なんですけど」

 おお、顔が上がった。反応があると嬉しいな。

「ここで待つ事が気に入らんのか?」

 待てと言われれば普通に待つ事も可能なんだが、異世界でも社会や世間体に気を使って生きて行くのは違う気もするんだよなー。だいたいもう直ぐって言ってたのにまた別の書類に手を付けたし、嫌がらせの線が濃厚な気がする。

(ねえ、シルフィ。もしここで怒らせて皆に襲われたら逃げられる?)

「楽勝よ。逃げなくても全員叩きのめしてあげるわ」

 おうふ。シルフィさん過激ですな。とっても良い笑顔です。シルフィってすこし気が短い所があるのかな? 風の精霊は好奇心が強いみたいだし、ただ待たされている現状が嫌なのかもしれない。

「何をブツブツ言っている」

 まあ、ベル達も退屈して飛び回ってるし、楽勝らしいから少しワガママでも良いか。

「うーん。物凄く不服って訳でも無いんですよ。でもギルマスが話を聞きたいって言って、わざわざ来たら待たされて、まだですかって聞いたらもう直ぐって言ってたのに、全然終わらない。ギルマスが時間の分からない可哀想な人なのか、馬鹿にされているのか悩んでいる所です」

 あっ。ギルマスのおでこに血管が。エルティナさんも慌ててるし、もしかしなくても言い過ぎたか?

「良い度胸だな。だが、相手を選んで喧嘩を売らんと早死にするぞ」

「もしかして、ギルマスが俺を殺すんですか? 新人冒険者を待たせて偉そうにしてたら、文句を言われて殺すって事ですか? それは地位の有る人間のやる事としてどうなんでしょう?」

 なんか最近性格が悪くなった気がする。自分の身の丈以上の力をもって増長しているのかも。ワガママに生きると言ってもある程度の制限をしないと、終わりが悲しい事になりそうだ。注意しないとな。

 ギルマスがスーハースーハーと深呼吸しています。ガタッと少し乱暴に立ち上がりドスドスと近づいて来ました。ドカッと目の前のソファーに座ると、革袋を放り投げて来た。

「それが、カール達の全財産だ持って行け」

「ありがとうございます」

 革袋を受け取り魔法の鞄に収納する。

「……」

「もう帰って良いんですか?」

 話って言ってたから待ってたんだけど、お金を渡すだけなら直ぐに放り投げてくれれば、待たなくても良かったのにね。

「いや、まだ話がある。貴様は何が目的で精霊術師といつわった」

「偽ってませんよ。精霊術師だから精霊術師と言っただけです」

「あのハンマーはなんだ。あんなものを使う精霊術師がいるか」

 いるんだから仕方がないと思う。

「ここに居ますよ。だいたい精霊術師が嫌われてるのもここで初めて知ったのに、なんでわざわざ偽る必要があるんですか?」

「……ならば精霊術を使ってみろ」

 シルフィ達が使うのは精霊魔法なのに、人間の場合は精霊術って言うのか。ややこしいな。あと、使ってみろとの言い方が嫌だな。しかも顔が心の底からあざけっている顔だ。

「使ったら何か得な事がありますか? どうにもギルマスは精霊術師がお嫌いなようで、こちらとしても不愉快この上ないのですが」

「ふん。生意気な。少しはまともな精霊術が使えたなら、ギルドに在籍する事を許可してやろう」

 だいたい昨日の決闘で、風壁を使ったのに気が付かなかったのか? 実力者だと思うんだけど見下していたからちゃんと見てなかったとか?

「……在籍の許可って、ギルドは犯罪者以外は来る者拒まずですよね。なんの違反も犯していないのに精霊術師だからって在籍拒否出来るんですか? もしそうだとしたら、その事を書類にして署名捺印をお願いします。別のギルドで確認してもらいますから」

「………………」

「エルティナさん、この人がギルマスで大丈夫なんですか? そもそも精霊術師が嫌がられる理由は聞きましたが、ギルドからの排除が必要なんですか?」

 あっ。物凄く困ってる。巻き込んだのは悪かったかな。でもギルマスと話ていても先に進みそうにないんで、申し訳ないが巻き込まれてください。

「ギルドマスターは優秀な方です。昔からギルドには精霊術師の方の誤爆、不発等で酷い目に遭った方達が多いのです。その影響で徐々に精霊術師の排斥が進んでいて、今では殆ど精霊術師と名乗られる方は冒険者ギルドにいらっしゃいません」

 おうふ。予想以上に精霊術師の評判が最悪だった。迷宮都市だけでなく、全体的に嫌われているのか。チロッとシルフィを見ると、無言で目を逸らされた。精霊術師。名前は超カッコいいのに、残念職業なのか?

「でも、凄い精霊術師は、国が頭を下げてスカウトに来るって聞きましたよ?」

「精霊術師は実力が直ぐに分かりますので、まれに冒険者ギルドに来られる方は、そもそもが他で認められなかった方ばかりなのです」

 精霊に頼みが聞いてもらえるかだもんな。確かに使って見せれば直ぐに把握はあくできる。問題は精霊術師場合は実力が低いと周りに迷惑を掛けまくるから、嫌われるのか。

「裕太。これってあんまりよくない状況じゃないかしら? 今まで気にも留めていなかったのだけど、精霊の評価が下落している気がするわ」

(下落したら何か起きるの?)

「何か仰いましたか?」

「いえ、エルティナさんなんでもありません。ただ言葉が漏れただけです」

「うーん。特に何か起きる事も無いんだけど、契約が無いと精霊の成長が遅れるわね。それはまあ別に良いんだけど、精霊の評価が下がるのは気分が悪いわ」

 それはあれっすか、人間に精霊の価値を低く見積もられるのってなんか嫌って事だよね。シルフィ、意外とプライドが高い? その事は後でよく話し合うとして、今はギルマスの方に集中するか。

「精霊術師が嫌われている原因は良く分かりました。でもそれって俺にとっては単なる八つ当たりですよね? 実力を確認して足りないとかなら兎も角、頭から喧嘩腰で追い出しに掛かられても気分が悪いです」

「だから力を見せろと言っているんだ、グダグダ言わずにさっさとやれ」

「お前が姑息な嫌がらせをするから、こっちがイラついてんだよボケが。力を見せろ? 見せてください、お願いしますだろうが」

 いかん。思わず言い返してしまった。この後どうしよう。素直にシルフィの力を見せておけば普通に評判回復出来そうだったのに……。
読んでくださってありがとうございます。
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