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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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五十四話 二つ名?

「うはーーー」目が覚めて体を起こすと、今までとのあまりの違いに驚きの声が出てしまう。

 砂のベッドもなかなか良い出来だと思っていたけど、それはあくまで岩の上に寝るのと比べてって事なんだな。ベッドだと体にかかる負担が全然違う。途中で目が覚める事も無く、さわやかに朝を迎えた。文明ってとっても大事だ。

「おはよう。裕太。機嫌が良いのね」

「おはようシルフィ。寝具が快適で、体が凄い体が楽なんだ。良いよねちゃんとしたベッドって」

「ふふ。そうなの。私には良く分からないけど、体に良いのなら良かったわね」

 ……精霊だもんね。シルフィとか風に溶けるとか言ってたし、分からないよね。

「うん。良かったよ。そう言えばベル達は?」

 いつもなら元気に挨拶してくれるんだけど。

「ああ、あの子達なら外を探検してるわ。裕太が起きるのを待ちきれなかったの。ごめんなさいね」

 シルフィが謝ることじゃないよね。まあ、昨日も楽しそうに街を……お肉を見ていたし興味があるんだろう。

「ん? もしかしてちょっと寝過した?」

「んー、そうかもね。もう直ぐ朝食の時間が終わっちゃうから、起こそうかと思ってたところなの」

 ありゃ。昨日は夕食を取って横になってたら直ぐに眠くなったからな。相当熟睡してたらしい。十時間以上寝てるな。スッキリしたわけだ。

 砂のベッドだと完全に疲れが取れていなかったんだろうな。なんだか体が軽いもん。

「ベル達なら大丈夫だろうから、朝食が終わっても戻って来なかったら召喚しようか」

 シルフィと一緒に食堂に向かう。昨日の寝る前にも口の中に何度か洗浄を掛けたんだが、自分の息にニンニク臭がする気が……自分で感じるとか、相当ヤバいよな。もう一度口の中に洗浄を掛けておく。エチケットは大切だ。

「おはよう。ぐっすり眠れたかい?」

「マーサさんおはようございます。熟睡し過ぎて朝食を取り損ねるところでしたよ」

「あはは。そうかい。熟睡出来たかい。しっかり寝たなら、しっかり食って頑張んな」

 背中をバシバシ叩かれる。結構痛い。食堂に案内されて、料理が出て来るのを待つ。朝食も決まっているらしい。朝は何が出て来るのかな。

「あいよ」

 ドンっと目の前に置かれた朝食は……肉だ。肉がドンっと木のお皿の中央に鎮座ちんざしている。朝からこのボリューム、ちょっと怖い。

「マーサさん。これは……」

「ああ、ラフバードの香草焼きさ」

 ……なんか聞きたい事とちょっと違う。俺が言いたいのは朝からこのボリュームが普通なのか聞きたかったんだが……聞くまでもないか。

「……いただきます」

 聞くのを諦めて朝から肉にかぶりつく。冒険者なら朝からこれ位も当然なんだ、たぶん。

 味は……美味いな。香草ってバジルなのか。それにニンニクもしっかり効いてる。この宿は肉にはニンニクなのかもしれない。豪腕トルク、マジでヤバい。味は良いんだけどね。

「どうだい?」

 マーサさんが興味津々で聞いて来る。食堂には俺しかいないし、暇なのかも。

「美味しいです。名前が違うかもしれませんが、バジルとニンニクの香りがしっかりと付いていて、お肉も食べやすいように切れ目が入れてあって食べやすいです」

「バジル? ニンニク?」

 やっぱり名前が違うのか。

「あー。俺が住んで居た場所ではそう言われていたんです。葉っぱの方がバジルで球根みたいなのをニンニクと呼んでました」

「へー。この大陸ではバプルとガーリクだよ。という事はあんた別の大陸から来たのかい?」

 微妙に似てるな。ガーリクとかガーリックの聞き違えなんじゃ無いのか? あと別大陸じゃなくて別世界から来ました。

「ええ、そんな感じです」

「そりゃいいね。うちの旦那は変わった料理の話には目が無いんだよ。話を聞かせてやってくれないかい?」

 料理好きな人と仲良くなれるのは俺的にも大歓迎だけど、暫くはやらなきゃならない事が結構あるからな。時間が空いたらにして貰うか。

「料理人では無いので、詳しい話は出来ませんがそれでも良いのなら構いませんよ。ただ時間があ……」

「あはは、そうかい。助かるよ。おーい。父ちゃん、ちょっと出て来なよ。他の大陸の話が聞けるよ」

時間がある時にお願いしますって言いたかったんだけどね。マーサさんお願いだから話は最後まで聞いて欲しい。

「なんだ。どうしたマーサ」

 ドスドスと厨房からゴツイおっちゃんが出て来た。なんか顔に切り傷が付いています。

「あんた。こちらのお客さんが別大陸の出身なんだってさ。他の大陸の料理の話が聞けるよ」

「なに! そりゃあ良いな。お客さん、是非とも聞かせてくれ。エールは要るか? おごるぜ」

「あんた。朝から酒を進めるんじゃ無いよ」

「そうか? そうだな。わはははは。よしお客さん今晩エールを付けるぜ。それで、別大陸の料理はどうなんだ?」

 テーブルの向かいにドスンと座るおっちゃん。おそらくこの人が豪腕トルクさん、その人なんだろう。夫婦そろって明るいんだな。しかも両方とも人の話を聞かないタイプに見える。危険だ。

「いきなりそう言われても困るんですが……そうだ! ここに来て残念に思ったのは屋台の串焼きで、お肉を薪で焼いていた事ですね。炭火で焼くだけでも、結構違うので不思議でした」

「炭? 炭で肉を焼くのかい? それだけで美味しくなるのかい?」

 マーサさんが疑問顔だ。炭で焼いた方が美味しくなったよね? 確か遠赤外線がなんちゃらって感じだったはずだ。もしかして薪でも同じような効果があったりしないよね? なんか不安になってきた。

 ……でも大丈夫なはずだ。日本人は炭火に信仰に近い物を持っているからな。それだけ炭火は凄いって事だ。だから大丈夫なはずだ。

「炭か。マーサ。ちょっと鍛冶屋に行ってくるぜ」

 ドスドスとおっちゃんが宿から出て行った。話は? いや別に良いんだけれども、展開に付いて行けない。

「えーっと、マーサさん?」

「お客さん、すまないね。さっそく試してみるつもりみたいだよ。炭はおもに鍛冶屋で使っているからね」

「はあ、そうなんですか」

 まあ、良い事が聞けた。俺も炭は手に入れておこう。しかし炭が通用したのにバジルが通じないのはなんでだ? 野菜の名前が違ったから通じないと思い込んで話したからか?

 炭は当然通じると思って話したよな……通用しないと思って炭の事を聞いてみるか。

「マーサさん、炭って俺でも買えますか?」

「炭? 炭ってなんだい? 故郷の物かい?」

「ああ、いえ、良いんです、勘違いでした」

 おかしな人だねって感じでマーサさんに見られてしまった。でも分かった。言語理解の影響なのか、通用すると思えば通用するようになってるんだ。通用しないと思うとそのままの言葉が相手に届くんだな。結構凄い発見かも。いちいち考えずに全部通じるって思えば問題無いって事だ。

 マーサさんの世間話に付き合いながら、気分良く朝食を済ませて部屋に戻る。でも今度から出来るだけ忙しい時間帯に食事を取ろう。マーサさんの話は機関銃のように矢継ぎ早で口を挟む隙も無い。

「ベル達は戻って来てないね」

「ええ、楽しんでいるみたいね。そろそろ呼び戻す?」

「うん。今から冒険者ギルドに行くから呼び出しておくよ」

 ベル達を召喚すると皆大興奮だ。よっぽど楽しかったらしい。

「ゆーた。あのねたべたいのいっぱい」

「食べてみたい物が沢山あったの?」

「そー。おいしそーなのー」

 ベルの言葉にレインもトゥルもタマモも頷きながらアピールしてくる。食べ物屋を巡っていたのかな? 最近食べる楽しみを覚えたみたいだから、色々興味があるんだろう。

「冒険者ギルドに行った後は、買い物をするつもりだから、その後買いに行ってみようか」

「やたー」「キュー」「うれしい」「クー」

 ベル達がワチャワチャしながら喜びあっている。微笑ましいよね。

「よし。じゃあ出かけるよ」

 マーサさんにカギを預けて冒険者ギルドに向かう。俺の頭にへばり付いたベルが、どんなお店があったのかを楽しそうに報告してくれる。擬音が多過ぎて良く分からないが、楽しかった事は分かる。

 レインとタマモも頑張って教えてくれるんだが、キューとクーでは流石に理解出来ない。トゥルの言葉少なめの話が一番分かりやすいな。


 ***


 冒険者ギルドの中に入ると、ざわめきがピタっと止まり、マジマジとこちらを見て来る。その後、ヒソヒソ話が始まった。非常に居心地が悪い。

「ふふ。裕太。あなたに二つ名がついたみたいよ」

 二つ名? 二つ名ってあれか? 特別な冒険者に付く名前だよな。一日で二つ名ゲットしちゃったか。俺Tueeeeな冒険者生活が始まりそうだ。

(二つ名ってどんなの?)

 ちょっとワクワクしながら声を潜めてシルフィに聞く。昨日の出来事が影響しているだろうから、ハンマーが入っているかもな。

「みんなあなたの事を詐欺師って言ってるわ。精霊術師って偽って、いちゃもんを付けて来た相手から、全財産をむしり取った極悪人扱いね」

(……シルフィ。分かっているとは思うけど、それは二つ名じゃなくて悪口だからね)

「ぷふっ。そうね。悪口かもしれないわね」

 シルフィ。完全に面白がってるな。

「う? ゆーたのわるぐち? べるやつける?」

「キューーー」「トゥルもやつける」「クーーーー」

「ふふ。そうね。あなた達がやつけちゃえば、ウソじゃないって証明できるわね」

 ヤバい。止めないと、とてもヤバい気がする。ふんすやる気になったベル達に慌てて声を掛ける。

(みんな、やつけちゃ駄目だからね。シルフィも煽らないで)

 小声で何とか思い止まらせる。シルフィも笑わないで欲しい。シルフィって結構揉め事好きだよね。戦争の事は相当嫌ってるのにこういうのは良いのか? アワアワと何とかベル達を落ち着かせていると、エルティナさんがこちらに気が付いて寄ってきた。

「裕太さん、どうかなさいましたか?」

「エルティナさん、おはようございます。なんでもありませんよ。ちょっと注目を浴びちゃって居心地が悪いだけです」

「昨日の出来事は派手でしたので、噂は急速に広まっています。暫くは注目されると思いますよ」

 エルティナさんが苦笑いしながら教えてくれた。まあしょうがないよな。悪名のおかげでわずらわしいちょっかいは減るはずだ。俺は間違ってない。

 精霊術師ってカッコいいと思ってたら、ビックリするほど評判が悪かったからな。昨日逃げ出していたら、ここでの冒険者生活は暗礁あんしょうに乗り上げていただろう。だからしょうがないんだ。

「まあ、しょうがないですね。実力を示せば問題無いでしょう。それでギルマスに合うんでしたっけ?」

「そうでしたね。ただいまお伝えしてまいりますので、こちらで少々お待ちください」

 ベンチに案内されてギルマスに報告に行くエルティナさんを見送る。あはは。周りの視線がつき刺さる。好意的な視線は今のところ見つからないな、完全にヒールだ。

 このまま悪役まっしぐらなんだろうか。どちらかと言うとベビーフェイスで、キャーキャー言われるのを希望したいんだが難しいか?

 現実逃避しているとエルティナさんが戻ってきた。このままギルマスとご対面だそうだ。あの人も精霊術師を嫌ってたし、どんな話し合いになるのか全く読めない。とっても不安です。
読んでくださってありがとうございます。
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