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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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五十二話 豪腕のトルクの宿屋

 冒険者ギルドを出て、ようやく一息つく。やり過ぎた気がして先の事がちょっと不安になるが、成り行きに任せるしかないだろう。

「裕太。もう宿屋に向かうの?」

(うん。ちょっと休憩したいし、ベル達も呼び出さないとね)

 周りに人は居ないが声を落としてシルフィと話す。なかなか面倒だが何こいつって目で見られたくは無い。

 地図を頼りに教えて貰った宿屋に向かう。エルティナさんの話では中級の宿屋の中で、少し値が張るが料理に力を入れているそうで美味しいらしい。楽しみだ。

「裕太。冒険者ギルドから、一定の距離を保って付いて来る人が居るけどどうする?」

 ……尾行か? 俺が行く宿屋もギルド内で説明を受けたんだから、分かっているだろうに何が目的なんだ?

(どんな人なの?)

「冒険者スタイルで、ブラブラと店を冷かしているように見えるけど、明らかにこちらを意識してるわね」

 シルフィにかかれば尾行も看破出来るのか。心強い。問題は冒険者ギルドが俺を監視するために寄こした尾行なのか、カールあたりが復讐しようとしているのか、もしくは俺が知らない第三勢力の可能性もあるな。いや、第三勢力は無いな。自分で言っていて意味が分からん。

(シルフィ。その尾行の監視は出来る? 出来れば何の目的かも分かれば助かるんだけど)

「分かったわ。注意しておくから、何処かに報告に行けば確認しておくわ」

(ありがとう。よろしくね)

 精霊って最強の忍者な気がする。対策できるのは精霊との親和性が高い人だけだろうけど、町中にもいたるところに精霊は居るから、対策は難しそうだ。

 精霊と話が出来る人ですらまれって言ってたけど、俺なら世界中の秘密を握る情報機関の設立も夢じゃなさそうだな。……ちょっとカッコいいけど面倒の方が大きそうだな。普通に楽しく生きよう。俺には尾行の気配なんて分からないから、シルフィを信じて待つだけだ。

 豪腕ごうわんトルクの宿……ここだな。豪腕って付いているのがそこはかとなく不安を誘うが、料理が美味しいらしいし、外観も悪くない。扉を開け中に入る。

「いらっしゃい。一人かい?」

 中に入るとポッチャリしたおばちゃんが、元気に声を掛けて来る。

「はい。エルティナさんに紹介してもらったんですが、部屋は空いてますか?」

「おや。エルティナからの紹介って事は、あんた冒険者なのかい?」

「そうです。まあ、今日登録した新米なんですけどね」

「そうなのかい……冒険者は大変な仕事だよ。あんまり鍛えてないみたいだけど大丈夫なのかい?」

 おうふ。グイグイくる。おばちゃん特有の逆らえない何かを感じるな。土木作業とアンデット討伐で、大分引き締まってきたと思ってたんだが、まだまだらしい。

「まあ、何とかやって行こうと思ってますから、大丈夫ですよ」

「そうかい。あんまり無理しないようにね。おっと、泊まりだったね。何泊だい? うちは朝晩食事込みで一万二千エルト。エルティナの紹介って事で一万エルトだね。ああ、あたしの名前はマーサだよ。よろしくね」

 悪い人では無さそうなんだが、会話のテンポに付いて行くのが大変だな。しかしエルティナさんは嫌々紹介していた感じだったけど、値引きしてもらって良いんだろうか? ……まあ、好意に甘えておこう。

「俺は裕太って言います。マーサさんよろしくお願いします。取り敢えず七泊ほど、お願い出来ますか?」

「七泊だね。分かったよ。しかし冒険者にしては礼儀正しいね前は何をしてたんだい? おっといけない、冒険者に過去の詮索はダブーだったね。ごめんよ」

 元気な人だな。勝手に話して勝手に納得している。

 七泊あれば迷宮都市での生活に目途が付くだろう。いろいろ買い込んで死の大地の生活環境を良くできるようにしないとな。

「いえ、大丈夫ですよ。では七万エルトです」

「あいよ。確かに。うちは料理が自慢なんだ。楽しんでおくれ。おーいカルク、お客さんだよ案内しな」

「あっ、はい。楽しみにしてます」

 マーサさんが声をあげてカルクと呼ぶと、少年が走ってきた。

「兄ちゃんこっちだよ」

 どうやら案内してくれるらしい。なんかアットホームと言うか、適当と言うか……まあ、あまり気を使わなくて良さそうな宿屋で良かった。

「ここが兄ちゃんの部屋だよ。これがカギな、無くすなよ」

 言うだけ言って走り去っていった。話を聞かないのはマーサさんの血筋だからか? ドアを開けて部屋の中に入る。

 ……六畳ぐらいの広さか。ベットが一つに小さな机が一つ……物が少ないけど、文明の香りがする。ヤバい。涙が出そうだ。

 何故か緊張しながらベッドを触ってみる。ほぉぉぉう。少し硬いがちゃんとしたベッドの感触だ。ワラのベッドで十分だとか思ってたよ。異世界舐めてた。ごめんなさい。

「シルフィ。このベッドってちゃんとしているけど、この世界の寝具は大体こんな感じなの?」

「えっ? 寝具を利用した事が無いから詳しくは分からないけど、大体ここにあるベッドと変わらないわ。無論高級な物や安い物もあるけどね」 

「高級なベッドか……どんなのなんだろう?」

 思っているより文明のレベルが高いのかもしれない。このベッドの素材が良く分からん。

「興味があるのなら、寝具を売っている店に案内するわよ。でも高いのは高価な素材を使っているから、相当高いわよ」

「うーん。泉の家にもベッドは欲しいし、他にも必要な物があるよね。高級なベッドはお金が稼げたらって事にして、生活に必要な物を買い揃えるようにするよ」

 この宿のベッドでも十分な寝心地だ、他にもソファーにテーブル。食器に調理道具。衣料品に防具や小物。穀物などの食料品。調味料も必要だ。頑張って稼がないとな。そうなると冒険者ギルドでの揉め事もお金になったしある意味幸運だったかも。

「そういえば、尾行して来た人はどうしてる?」

「この宿に入ったのを見届けて、今は冒険者ギルドの方に戻っているわ。何かあったら教えるわね」

 本当にこの宿に泊まるのかを確認したかったのかな? 直ぐに引き上げたみたいだし、あまり気にしなくても良さそうだ。

「ありがとう。お願いね」

 お礼を言ってベッドに寝転ぶ。おふぅぅ。背中が柔らかいって素敵。あと寝返りしても顔に砂が付かないのが嬉しい。このまま眠りたいが、ベル達も待っているだろうからそろそろ召喚しないと。

「よし、ベル達を召喚するよ。みんなで散歩に行こう」

「ふふ。そうね。喜ぶと思うわ」

 まずはベルを召喚するか。頭の中でベルをイメージして召喚する。ポンって感じでベルが目の前に現れた。一瞬だよね。

「ゆーたー。べるきたー」

 飛び付いて来たベルを抱っこして、ほっぺほムニュムニュしてみる。モチモチホッペがナイスな感触だ。

「ベル、ちょっと待ってね。今からレインやトゥル、タマモを呼ぶからね」

「はーい」

 大人しくなったベルを抱えたまま、レインを召喚する。キューキューと頭をこすりつけて来る。頭を撫でながらレインを落ち着かせて、トゥル。タマモも召喚する。

「無事に迷宮都市に着いたよ。みんなは良い子にしてた?」

「いいこだったー」「キューー」「うん」「クーー」 

 元気のいい返事を聞きながらベル達をたっぷりと甘やかす。たった半日ほど離れただけなのに結構寂しかったな。俺、ベル達に依存してる?

「よし。みんな迷宮都市を散歩するよ」

「おさんぽー」「キュー」「さんぽする」「ククー」

「外に出たら返事は出来ないからね。あとあんまり高い者は無理だけど、欲しい物があったら言っておいで」 

 はーいと元気に返事してくれたが、あんまり良く分かっていないようだ。

「シルフィも欲しいものが見つかったら言ってくれ。他にもディーネ達へのお土産になりそうな物があったら教えて欲しい」

「うーん。私達の場合はお酒を与えておけば問題無いわよ。酒屋があったらお酒を買ってくれる?」

 シルフィ、開き直った? 自分でお酒を与えておけって……まあ、簡単だから助かるか。なんか寂しいけど。

「分かった。お酒は滞在中に必ず手に入れるよ」

 俺がそう言うと、クールビューティーな表情がにっこりと崩れる。本当に簡単だな。自分で言うだけある。

「じゃあ出発するか。今日は特に目的地を決めずに、目についたお店に入って気に入った物を買おう」

 マーサさんに聞けば大量の情報が貰えそうだけど、せっかくの迷宮都市。何の予備知識もなく歩くのも楽しそうだ。

 カウンターにいたマーサさんにカギを預け宿の外に出る。あと二時間もすれば夕食が食べられるらしいが、十分に散歩の時間はある。

 防具なんかはお店を紹介してもらって買った方が信頼出来そうだし、今回は食べ物関連を見て回ろう。フラフラとケモミミや尻尾に目を奪われながら迷宮都市を歩く。見ているだけでも結構楽しい。

「裕太。尾行して来た人間は冒険者ギルドのギルマスに報告してたわ。話を聞いた感じでは、一応裕太の所在を確認しておくのが目的だったみたいね」

(了解。ありがとう)

 小声でお礼を言っておく。異世界の都市にすっかり魅了されて尾行された事を忘れてたよ。まあ、問題無さそうだし良いか。

 無目的に歩き回っていると、屋台が並ぶ通りに出た。ウハッ。肉が焼ける匂いがたまらん。押し込めていた肉への欲望が一気に解放される。

「ゆーた。これたべたいー」「キュー」「おにく」「クー」

 既にベル達が欲望全開で串焼きの屋台の前で待機していた。素早い。ベル達にうなずき、屋台のおっちゃんに声を掛ける。

「おっちゃん。これって何の肉? 一本幾ら?」

 聞きながらも目はお肉に釘付けだ。見た感じでは鶏肉っぽいな。肉の脂がしたたり火に落ちて煙を上げている。焼き鳥か……たまらんな。惜しむらくは普通の薪で焼いている所だな。炭火でお願いしたかった。

「いらっしゃい。兄ちゃん迷宮都市は初めてかい? この肉は迷宮の六層で狩れるラフバードって言う鳥の肉だ。安くて美味い、迷宮都市の名物だな。一本百エルトだ」

 やっぱり鶏肉か。迷宮都市到着記念に焼き鳥とプレミアムなビール。いっちゃうか?

「へー。名物なのか。なら食っておくかニ十本焼いてくれ」

 二千エルトを支払い、屋台のおっちゃんと世間話をする。ベル達が焼き台を覗き込んだり、おっちゃんの肩に座ったりと自由奔放で、俺の内心はドキドキがハンパじゃない。

 あれ? ベル。レイン。よだれが垂れてるよ。タマモ、尻尾が燃えそうなんだけど大丈夫なの? トゥルはおとなしく待っているが、目線は肉に集中している。 

 ようやく焼き上がった焼き鳥を受け取り魔法の鞄にしまう。ベル達が直ぐに食べない事にガッカリしていたが、流石に人通りが多い場所で、宙に浮く焼き鳥なんて怪談を作る訳にもいかない。

 屋台通りで、気になった食べ物をちょこちょこと選んで購入。魔法の鞄に収納する。ベル達に引っ張られるように宿に戻る。みんな直ぐに肉が食べたいらしい。まあ俺も同じだから文句はないんだけどね。はやく肉が食いたい。
読んでくださってありがとうございます。
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