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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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四十八話 生きている大地へ

 ノモスのウイスキーの品評を聞き、大精霊はグルメが多い事を確信した。だいたいの人間は美味しいとか、香りが良いとかそんなもんなはずだ。決して俺の感性が鈍い訳ではない。

「裕太さん。このお酒。ウイスキーでしたね。このお酒もとても美味しいです。裕太さんは氷を入れてますがどう変わるんですか? そちらの方が美味しいんですか?」

 ドリーが難しい質問をして来た。なんとかカッコよく答えたい……。なんかカッコいい表現が無かったか?
 あっ、確かビロードのような滑らかさとか……あれってウイスキーの話? ワインだっけ? ……無理はやめておこう。味にこだわりが強い相手ににわか知識は危険だ。

「うーん。どう変わるか……。あくまで俺の意見だけど、冷たい氷でお酒が冷えるだろ。それが口に含んで温まると、香りが凄く広がる気がするんだ。だから氷を入れた方が美味しいのかは、その人の好みしだいだな。ストレートで飲むのが一番と言う人もいれば、水で割るのが一番だと言う人もいるんだ。ドリーも色々と試すと良いよ」

 これが俺の限界です。お酒でウンチクを語れるほどの知識はありません。

「そうなんですか。では私も氷を試してみますね」

 ドリーがシルフィに氷の削り出しを頼みに行った。なんかシルフィに申し訳ないかも。たぶんあと何回か氷を削り出すのを頼まれるんだろうな。

「裕太さん氷を入れるのも良いですね。ですが私の好みとしてはストレートの方ですね。氷が溶けると味が緩みそうな気がします」

 氷をカップに入れたドリーが自分の意見を教えてくれる。水割りが一番美味しい飲み方だって聞いた事もあるんだけど、結局はその人の好みなんだろうな。

「おかしな顔をなさってますが、どうかなさいましたか?」

「いや。ちょっと違和感を覚えただけだ。俺の故郷ではドリーぐらいの外見年齢の子は、お酒を飲んだら駄目だったからな」

「ふふ。私は大精霊ですから、裕太さんよりもちょっとだけ年上です。飲酒は大丈夫なんですよ」

 ちょっとだけなんだ……って突っ込んだら駄目なんだろうな。それ位は理解している。

「あはは、そうらしいね。まあ、飲んで問題無いんだったら大丈夫だよ。この世界に俺の世界のルールは関係ないしね」

 何となくこの手の話題を続けるのは危険な気がするので、話題を変える事にする。

「そう言えばドリー。森の土ってどんなのでも良いの? 俺に土の良し悪しなんか見分けがつかないぞ」

 話題を変える為に振った話だが、冷静に考えると確認しておかないと駄目な話だ。

「そうですね。森にある土ならここの土よりも良い土です。なのであまり気にしなくでも大丈夫ですよ」

 ……まあそうだな。普通に植物が生えている場所の土なんだから、死の大地の土より数倍マシだろう。どんな戦争をしたらここまで自然が壊れるのか疑問だ。

「分かった。なら取れるだけ取って来るよ」

「楽しみにしてます。虫も忘れないでくださいね」

 あー。虫かー。魔法の鞄に入らなそうだし、虫を運ぶ袋かなんかも用意しておかないとな。土を確保するのは、ここに戻って来る時が良さそうだ。

「……ちなみに土と虫はどのぐらい確保してくれば良いんだ?」

「そうですね。裕太さんが掘った地面の一ブロック分あればなんとかなります。でも多い分には全然困りません。沢山あればあるほど開拓は順調に進みます。虫は……土に良いですから、沢山お願いします」

 土の方は大丈夫だけど、虫を沢山ってどの位なんだろうな。……想像したらエグそうだから、足りなかったら再度確保しに行く感じで良いか。深く考えるのは止めておこう。

 お酒の効果かいつもより沢山ドリーと話した気がする。普段はニコニコと見守ってくれてる感じだからな。飲みにケーションって異世界でも大事らしい。

 そこからは意外とお酒に弱かったシルフィとディーネが騒ぎ出し、俺が良く知っている雰囲気の飲み会に変わって行った。飲み会開始時点の、お酒の品評会みたいな雰囲気で終わらなく良かった。



 ***


 ……朝か。用心の為の魔物対策と言えど、窓が無いと不便だよな。シルフィと契約したんだし、何かいい方法が無いか聞いてみよう。

 砂のベッドから身を起こし、浄化を掛けて身だしなみを整える。昨日の飲み会は楽しかったが、日本酒とウイスキーの二本を五人で飲むと少なかったな。

 目覚めは快適だけど、どうせならベロンベロンになるまで飲んで、二日酔いってのも風情があるよね。間違いなく二度とお酒は飲まないって考えるだろうけど。くだらない事を考えながら寝室をふさいでいる岩を収納してキッチンに出る。

「ゆーた。おはよー」「キュキュー」「おはよう」「クーー」

 ベル達が元気に朝の挨拶をしてくれる。俺も挨拶を返しながら、頭を撫でて朝食の準備をする。しかし朝一で幼女。イルカ。少年。子狐がふわふわ浮きながら挨拶してくる光景にも、違和感すら感じる事が無くなった。

 異世界に来てそんなに経っていないのに、慣れって恐ろしい。じゃれて来るベル達をあしらいながら、調理済みの魚介類を魔法の鞄から出し朝食を済ませる。

「裕太。おはよう。昨日は楽しかったわ」

「おはようシルフィ。また飲みたいけどお酒が少ないからね。この世界のお酒を手に入れたらまた飲み会をしようか」

「おう。じゃが異世界の酒をこちらで広めてくれ。あれは美味かった」

 ノモスが朝の挨拶もせずに混じって願望を伝えて来た。うーん。エールやワインが有るみたいだし、蒸留すれば出来るのか? 蒸留前のアルコールの段階で違いがあったはずだけど、似たような物なら作れるかもな。

「おはようノモス。ノモスと契約すればガラス製品を作ってくれるんだよな。蒸留器を作ってくれれば、似たような酒は造れると思う。でも寝かせないと駄目だから時間が掛かるぞ」

「蒸留器? ようわからんが作れるものなら作ってやる。寝かせるのは十二年じゃったか? そのぐらい精霊にとってなんて事無いわい」

 俺にとっては相当な時間だけどな。大精霊って何歳なのか気になるが、シルフィやディーネ、ドリーが居る前では迂闊うかつに聞く事もできない。

「最低三年寝かせれば飲めるみたいだぞ。まあ契約したら作り方を教えるから作ってくれ。でも素人のにわか知識だから、昨日のような美味い酒が出来るか分からんぞ?」

「大まかな事が分かれば何とかする。楽しみじゃの」

 ……こいつ酒の事しか考えて無いな。体形がドワーフっぽいのが関係してそうだ。迷宮都市に行ったら本物のドワーフにも会えるのかな?

 お酒の事を考えているのか、だらしない表情をさらしている土の大精霊を見て思う。本物のドワーフもこんな感じなら、迂闊うかつにお酒の話をすると危険かもしれない。



 ***



「ゆーた。はやくよんでねー」「キュー」「まってる」「クー」

「分かってる。迷宮都市に到着して、宿の確保を済ませたら召喚するから、良い子で待っててね」

 迷宮都市に出発する前にひと悶着もんちゃくあった。ベル達は一緒に飛んで行くつもりだったようで、一緒に行くのがシルフィだけだと告げると、裏切られた的な表情でショックを受けていた。どうやらこの前の空の散歩が楽しかったらしく、今日も楽しみにしていたようだ。

 頭に張り付くベル。キューキュー、クークーと訴えて来るレインとタマモ。無言でウルウルと見上げて来るトゥル。罪悪感がハンパないです。

 ベル達を慰めながら時間が掛かる事を説明して、向こうで落ち着いたら直ぐに召喚する事と、向こうでも飛行訓練をする事を約束して納得してもらった。  

「裕太ちゃん。迷宮都市が楽しくても、ここに戻って来るのを忘れたら駄目よ」

頻繁ひんぱんに戻って来るつもりだから大丈夫だよ。ディーネもちゃんと条件を考えておけよ」

 片道四時間も掛からならしいから、やろうと思えば日帰りも可能だ。数日毎にここと迷宮都市とを行き来して生活するのも悪くないだろう。死の大地に唯一の別荘。良いか悪いかは別として、ロマンはある。

「まあ死なんようにな」

「裕太さんおきをつけて」 

「ああ、出来るだけ危険は避けて行ってくるよ。じゃあシルフィ、行こうか」

「分かったわ。休憩は挟むけど、それ以外にも何かあったら言ってね」

 シルフィの言葉に頷くと、ふわりと体が浮きあがる。精霊達に手を振ると直ぐに姿が見えなくなった。はやい。

 時速何キロなんだ? 泉の家が直ぐに豆粒になって……あっ、もう何処にあるのか分からなくなった。シルフィに任せるとこんなに速いんだ。前回の飛行訓練の時はまさしく亀だな。

「裕太。問題ないなら速度を上げるけど大丈夫?」

 まだ上があるそうです。

「問題無いけど、シルフィは疲れないか?」

「これ位で疲れたりしないわ。じゃあ速度をあげるわね」

 ギュンっとスピードが上がる……? なんか速すぎてそこまで違いが分からないな。風を感じる訳でも無く快適な空間で寝っ転がっているだけだし。普通に熟睡出来そうだ。


 ***


「裕太。疲れてない? そろそろ休憩にする?」

「あー、シルフィ。まったく疲れてないぞ。トイレに行きたくなったら、その時に休憩を頼む」

 体勢は自由だし気が向けば魔法の鞄から出して飲食も出来る。景色を楽しんでいるから今は必要無いが、風景にきたら読書をしたいぐらい快適だ。迷宮都市に本屋があれば買っておきたいが、ファンタジー世界って本が高そうなんだよな。  

「そう? 無理しなくても良いのよ?」

「いや。快適だからまったく無理して無いよ」

 実際、砂のベッドよりも断然快適に眠れそうで、ちょっと悲しいぐらいだ。砂のベッド、俺の中で結構なひらめきだったんだけどな。


 ***


 シルフィと雑談しながら景色を見ていると、死の大地にポツポツと植物らしき物が混じって来た。

「シルフィ。草か木が生えてるよね?」

「ええ。死の大地が終わりに近づいて来たの。これから自然が豊かになって行くわよ。楽しんでね」

 シルフィが言った通り、進めば進むほど景色が豊かになって行く。植物らしき物が微妙に増えて行き。風景に色が付いて行く。草が増えて草原になり、森に変わる。川が流れ湖を見つける。村を見た時は大はしゃぎだ。

「凄いねシルフィ。これが生きている大地なんだ」

「ふふ。気に入った?」

「もちろん。なんかドキドキして来た」

 枯れた大地から緑一杯の大自然。やっぱり人間には緑が必要だよね。この風景を見ると、死の大地が死んでいる事が良く分かる。やっぱりあそこ死んでるよ。人が生きて行く場所じゃ無い。

「そろそろ迷宮都市よ。飛んで行くと目立つから、手前で降りて歩いた方が良いと思うけど、どうする?」

 ……飛んだまま迷宮都市に登場。大注目を浴びてスカウトの嵐。悪くない気もするんだけど、流石に今の状況だと面倒事が凄そうだ。目立つのはある程度慣れてからじゃないとな。

「目立たない所に降りて、歩こうか」

「分かったわ。人目を避けてあの森に降りるわね」

 索敵が終わっているのか迷うことなく森に下りて行く……ドキドキの異世界人里デビューがもう直ぐだ。絶対に楽しんでやる。
読んでくださってありがとうございます。
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