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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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四十三話 空の旅

「あーさーだー!」

「あーさーだー!」

「キューキューキュー!」

「あっ、あさだー」

 昨日は早く寝すぎて、暗い内に目が覚めてしまった。リッチとの戦闘やシルフィとの契約など、イベントが目白押しで精神も肉体も疲れていたからしょうがないが、朝日が昇るまでの時間がやたら長かった。

 朝日が出たら空を飛ぶ予定なのに、時間の進みが遅くて遅くて、身支度を整え朝食を済ませてもまだ真っ暗だった。シルフィに少し落ち着きなさいと言われたが、ワクワクが抑えられない。

 昨日の寝る前にシルフィに飛行中に落ちる事もあると言われてビビったが、シルフィが助けてくれるって言ってるんだ、何の問題も無いと吹っ切れた。後は朝日が登ったら空を飛ぶだけだ。

 一刻も早く朝日が昇る事を願ってまんじりとしない時間を過ごしたら、朝日が昇った時のあのテンションはしょうがない事だと思う。

「さて、さっそく出発するの?」

「うん。シルフィ。よろしくね」

 自分のテンションが抑えられない。子供の頃の遠足前日の気分だ。

「絶対に大丈夫だから、落ち着いて魔力を操作すること」

 残念な子供を見るような目でたしなめられた。いや、まあ、いい大人がテンションマックスではしゃいでいたら、そんな目をしたくなる気持ちも分かるんだけど、優しく見守ってほしい。

「分かった」

 俺が出来るだけ気持ちを落ち着けて返事をすると、シルフィが俺に手を向けて魔法を放った。無詠唱なんだね。風が体を包みふわりと持ち上がった。

「もう魔力操作で飛ぶ事が出来るから、ゆっくりと試してみて。魔力を込め過ぎては駄目よ」

 昨日教わった通り、風のまゆに魔力を這わせ後方に風を吹き出すイメージをする。

「ファッギャーーーーーーー」

 視界が凄い勢いで流れて訳が分からん。口が勝手に叫び声をあげている。何をすれば良いんだ? 混乱していると、ふわっっと風が流れ俺はシルフィに抱きとめられていた。

「えっと。あー。どうなったんだ?」

「裕太はいきなり高速で飛んで行っちゃったわ。魔力を込め過ぎたら駄目って言ったでしょ」

「それは分かっているんだが、生活魔法以外に魔力を使っていないから、魔力の感覚が良く分からない」

 なんか俺なら大丈夫って根拠がない自信があったのに、一瞬でポッキリと折れた。マジで怖い。

「……練習するしかないわね。飛ぶのは私に任せて、魔力操作から練習する?」

 怖かった。確かに怖かった。心臓もバクバクいってる。でも助けて貰えると分かっているのに、ここであきらめる選択肢は俺には無い。

「シルフィ。出来れば飛びながら練習したいんだけど、いい方法がない?」

「んー。自由度は下がるけど、手を繋いで飛ぶ? それなら暴走した時には干渉できるわ」

 自転車に乗る練習で後ろを支えて貰う感じか? でもそれなら暴走しなさそうだし練習にもなる。

「それでお願い」

「分かったわ。じゃあそろそろ行きましょうか」

 シルフィに手を繋いで貰い、今度こそ慎重に出発す……シルフィに手を引っ張られた。魔力が多かったらしい。そのあと何回か手を引っ張って止められ、何とか出発出来た時には一時間程経過していた。


 ***


「そう。それで良いの。曲がりたい方向に体を傾けて、それと同時に曲がりたい方向の魔力を減らす。そう。コツが掴めて来たみたいね。慣れたら減らすんじゃなくて、反対側を増やす事でスピードを落とさずに曲がる事が出来るわ」

「ふー。ありがとう。何とか分かって来た気がする」

 一度飛び始めたら最低限の魔力で普通に速度が出る事が分かった。洗浄よりも圧倒的に魔力消費が少ない。シルフィが付けてくれた風の繭に切っ掛けを与えるだけなので、その程度で十分らしい。

 それなのに最初は洗浄よりも強めに魔力を込めていたから、あんな事になった。でも空を飛ぶ時に使う魔力が、そんなに少ないとは誰も思わないはずだ。シルフィの風の繭、高性能過ぎる。

 ただ。この風の繭とシルフィに飛んで連れて行って貰うのでは、兎と亀の速度差があるらしい。町に行く時には体験するんだろうな。

「きゃはは。ゆーた。こんどはこっちー」

「おー。今行くから待ってろよー」

 体を左に傾け魔力も減らす。そうすると曲がった距離とスピードが落ちたぶん、ベルの後方になるので、魔力を込めて前を飛んでいるベルに追いつく。

「ゆーた。きたー。きゃはははは」

 ベル達は俺が上手く飛べないので練習に協力してくれている。なんかようやく歩き出した子供を呼ぶような雰囲気でちょっと恥ずかしい。

 次はレインに呼ばれてそこに向かうと、ヒレで頭をポンポンされて、トゥルに呼ばれてそこに行くと偉いと褒められる。ベル達と楽しく飛び回って泉の家に帰る予定だったんだけど、ちょっと想像と違うな。

「そういえばシルフィ。なんで普通に会話が出来るんだ?」

 飛ぶ事に精一杯で今まで全然違和感が無かったけど、冷静に考えると声を張っている訳でも無いのに、飛んでいる中で会話が出来るのがおかしい。

「契約しているんですもの。お互いに話そうと思えば通じるわよ。だからディーネがここにいたら裕太の声はディーネに届かないわ。まあディーネのほうが魔法を使って声を聞くでしょうから、その場合も問題無いわね」

 契約してると色々と便利なんだ。他にどんな便利な機能があるのか知りたいが、今は空を満喫しよう。空を飛びながら色々な練習をする。

 自分ではまだ出来ないが、シルフィが引っ張ってくれて、きりもみ飛行や宙返りなど色々と楽しませてくれた。風圧も無いし風も吹きつけられないので、落ち着いているとジェットコースターよりも怖くない。

「空を飛ぶのはどう?」

「最高に気持ちが良いよ。でも死の大地だと、景色が単調で少し残念だな」

 死の大地を飛んでいるので、色の変化がほとんど無い。本当に不毛の大地だよね。

「気に入ったのなら良かったわ。景色が単調なのは町に着いてからのお楽しみね」

「この世界の生きている大地の景色は綺麗?」

「ええ。自信をもって綺麗って言えるわ。戦争が起こっていない場所はね」

 なんか精霊って戦争している人間に厳しいよな。まあ、死の大地を見れば理由は明らかなんだけどね。しかし豊かな自然かー。死の大地に居ると緑にえている自分がいる。日本に居た時は自然とか気にした事が無かったけど、改めて自然って大事だよね。

「俺は戦争に関わり合いたくないんだけど、大丈夫な町はあるの?」

 正直、戦争が起こっていようが関わって来なければどうでも良い。でもどうせなら色々と世界を見てみたい俺としては鬱陶うっとうしい事この上ないな。

「あちこちで戦争しているけど、攻められない立地の国や場所は結構あるから大丈夫よ」

「なら安心だな。町に行くのが更に楽しみになって来たよ」

「ふふ。この世界を楽しんで貰えると私も嬉しいわ」

「せっかくの異世界なんだし全力で楽しむよ」

 あー、でもこの世界って治安が悪いんだろうな。人に襲われた時とかどうしよう。なんかあれだけアンデッドと戦うと、人でも襲われたりしたら反撃は出来そうな気がするが、気分は良くないだろうな。

「どうかした?」

 嫌な事を考えていたのが顔に出ていたのか、心配そうにシルフィが聞いてくる。

「町に行く事を想像してたら、人に襲われる可能性も思いついちゃったんだよ。やっぱり盗賊とかガラの悪い人が居るんだよね」

「そうね。いるわよ。でも裕太の場合は町中を注意すれば問題無いわ。空を飛んで移動するのに盗賊に会う事はないわよ。まあ、冒険者になって護衛依頼や森に入ったりするようになれば、出会う可能性はあるけど、私が索敵していたら、見つかる前に避けられるわね」

「なら安心だ。シルフィ。頼りにしてるね」

「せっかく契約したんだもの。出来る事はするから安心して良いわよ」

 シルフィ。頼りになるな。転移した場所は最悪だったけど、出会いは最高だったのかもしれない。

「そろそろ到着するわよ」

 考え事をしているともう到着らしい。歩いて三日の距離なのに、飛ぶともたもたしていても数時間で到着するんだ。便利過ぎる。

「あっ、ほんとだ。岩の壁も目立つけど、わずかでも水と緑があると全然雰囲気が違うね」

 上から見ると泉がキラキラと反射して、横の畑にも緑があって、死の大地とはとても思えない。

「裕太の努力の成果ね。空から見るとあなたの努力が良く分かるでしょ?」

「うん。全体を見ると結構頑張ったなって思うよ」

 目の前の出来る事をチート道具と精霊に頼りながらコツコツとやってたら、意外と凄い事になってた!

「ふふふ。誇って良いと思うわ」

「ゆーた。えらいー」

 シルフィと近くを飛んでいたベルが褒めてくれる。なんかジーンと来た。

「ただいまー」

 スタッとかっこよく泉の前に着陸すると、ヒュンっと何かが顔に張り付いた。

「く、くるしい」

「ほら。タマモちゃん。裕太ちゃんが苦しがっているわよ」

 このモフモフはタマモか。まあ分かってたけど。

「タマモ。ただいま。寂しかったのか。遅くなってごめんね」

 クークー鳴きながら一心不乱に顔をペロペロしてくる。凄く可愛いけど、申し訳ないな。

「タマモ。お留守番ありがとうね。畑は元気に育ってる?」

「クーククー」

 モフモフな尻尾をぶんぶん振りながらコクコクと頷く。自信満々だな。でもキツネって尻尾を振ったりしなかったと思うんだけど……目の前を幼女とイルカが飛んでいる。今更だな。空を飛ぶ幼女とイルカがいるのにキツネが尻尾を振る事に驚く理由も無いか。

 頑張ってくれたみたいだし、ご褒美に全力でモフる。俺にとってもご褒美だからウインウインでナイスだよね。

「裕太ちゃん。タマモちゃんばっかり構ってないで、お姉ちゃん達ともお話しましょうよ」

 ふとディーネの方に顔を向けると、ノモスとドリーが揃ってこちらを見ていた。帰りの挨拶をしないとな。タマモを抱っこしたくて、密かにウズウズしているトゥルにタマモを渡して挨拶に向かう。

「みんなただいま。リッチを倒して、シルフィと契約できたよ」

「お帰り裕太ちゃん。次はお姉ちゃんと契約ね」

「いや、契約するための条件では、ディーネが一番最後になると思うぞ」

「えっ? なんでなの?」

 いや、だってノモスの条件を終わらせないと水路は作れないし、先に街に行くから、土を持って帰って来て混ぜるだろ。ノモスとドリーが先で、その後にディーネだろ。

「ガーン」

 自分でガーンって言った。普通に開拓の順番的にそうなるよね。取り敢えず崩れ落ちて、お姉ちゃんが二番目に契約するはずだったのに! とか言っているディーネは放置して、ノモスとドリーと話そう。

「ふむ。条件達成の道筋が出来ておるのなら何もいう事はないの。頑張るんじゃぞ」

「私も契約を楽しみにお待ちしていますね。あとタマモが寂しがっていたので、構ってやってください」

「はは。出来るだけ頑張るよ。タマモとは出来るだけ一緒に居る事にするね」

 まだまだ厳しい環境なのにここに戻って来ると結構落ち着くな。
読んでくださってありがとうございます。

感想欄でアンデットではなくアンデッドとご指摘を頂きました。コツコツと修正していきますのでよろしくお願いします。……アンデットだと思ってましたorz。
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