挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

42/100

四十二話 契約

 リッチを討伐して、目標の魔力がBランクまで上がった。シルフィにここで契約しちゃう? って言われてちょっとビビっている森園 裕太です。

「契約ってこんな場所でも良いのか?」

「ん? 問題無いわよ。契約者と風があればすぐに出来るわ」

 そんな感じなのか……簡単みたいだし、目的が叶う段階になってビビるとか男がすたる。前にシルフィが大精霊の契約は派手だから、楽しみにしてなさいって言ってたのが、若干不安ではあるが行くしかない。

「分かった。ならシルフィ。俺と契約してくれ」

「ふふ。分かったわ。じゃあ行くわよ」

 え? 何処に? えっ? みるみる間に地面から体が離れ、雲を突き抜け周りにはただ青い空が広がる。眼下には雲の絨毯じゅうたんと海。赤茶けた死の大地も見える。

 普通なら気絶してしまいそうな高所に居るのに、恐怖がまったく無い。ただ信じられないほど美しい風景に目を奪われる。

「裕太。裕太。ちょっと裕太。聞いてるの?」

「ん? ああ、凄い綺麗な景色だな。見惚れていて話は聞いていなかった。すまん」

「まあ、しょうがないのかしら? どう、この世界も結構綺麗でしょ?」

 シルフィが嬉しそうにこの世界を自慢する。確かに凄く綺麗だ。空も海も何処までも透明で、死の大地に緑が無いのが少し残念に感じる。

 日本に居た時に飛行機で見た景色も綺麗だったが、周りに何も無いからか、自然の全てを直接感じているような気分になる。排ガスとか無いぶんこっちの方が綺麗なんだろうな。 

「ああ、綺麗だ。他に言葉が思いつかないのが情けないな」

「ふふ。裕太が詩人だったら、この世界をどんなふうに表現したのかしらね」

 詩人……えーっと。青く透明な空。キラキラ光る青く透明な海。赤茶けた大地……俺には詩人の才能は無いな。

「まあ、どんな言葉でもこの光景は再現できないよ」

 俺、良い事言った。

「そうね。その目で見るのが一番よね。じゃあ裕太。そろそろ契約を始めるわね」

「ああ。頼む」

 俺とシルフィのまわりを風が回り始めた。風はドンドン速く大きくなって竜巻の様だ。その竜巻に何処から来たのか様々な生き物が……あれは精霊なんだろうな。人型。動物型……いろいろな精霊が風に乗ってこちらを見ている。ベル達も居た気がするんだが見間違いか?

「私はシルフィ。風の大精霊。契約を望むのであればこの風玉ふうぎょくを取りなさい」

 シルフィが神秘的な雰囲気に変わり、畏怖を感じるほど澄んだ声で言う。いつの間にか水を掬うように出されたシルフィの両手には、風を凝縮ぎょうしゅくしたような玉が浮かんでいる。なんか凄そうなんだけど触って良い物なのか? いや取らないと契約出来ないんだ。取るしかない。

 出来るだけ震えないように、両手で玉を慎重に包み込み引き寄せる。何ともない。これからどうするんだ?

「裕太。大丈夫だから落ち着いて」

 ちょっとビビってるのがバレたのか、何時もの雰囲気に戻ったシルフィが声を掛けて来る。シルフィは信頼できる。信じて平常心だ。

「風玉を自分の心臓がある場所に押し当てなさい」

 再び神秘的なモードに移行したシルフィの声に従い、風玉を心臓部分に押し当てると、玉が解け優しい風を吹かせながら俺に吸い込まれて行く。

「契約は成った」

 シルフィの言葉で周囲を囲っていた竜巻のような風は弾けただ静かな世界が広がった。

「終わったわよ。どう? お望み通り結構派手だったでしょ?」

「あ、ああ。思った以上に派手だった。ただ、何が何だか分からないから説明してくれるか?」

「そうね。まずは風玉の事かしら?」

「頼む」

「あれはね。私と裕太を繋ぐ為の器ね。大精霊の力は大きすぎるから、私の風を受け入れないと契約が出来ないの。要するに風玉を介して私と契約しているのね。あくまでも魔力的な物だから体に負担はないわ。安心しなさい」

 んー。よく分からないが、風玉があるからシルフィと繋がりが出来るって考えで良いのかな? まあ、体に負担が無くて契約が出来たんなら良いか。

「何となく理解した。なんか竜巻の中に精霊が沢山居たんだけど、あれはなんでだ?」

「単なる野次馬よ。風の精霊は好奇心が強いの。空で珍しい事をやってたから見に来たのね」

 なんだ……ちょっとみんな祝福に来てくれたのかな? っとか考えてたけど違うようだ。来てくれてありがとうとか言わなくて良かった。赤っ恥だ。

「そうだったのか。しかし、大精霊との契約は毎回こんな感じなのか? 感動はするけど、大変だな」

 何故かシルフィがツイっと顔を背けた。……このパターンは何かやましい事があるパターンだ。

「シルフィ。何か言っておいた方が良い事があるんじゃ無いのか? どうせディーネ達と契約する時にバレるぞ?」

「……ちょっと演出を加えただけよ。裕太に大精霊との契約は派手になるって言ったてまえ、普通の契約方法じゃ弱いかなって思ったのよ」

 風の大精霊が見栄っ張りだったことが、意外な所で判明した。

「えーっと。何の演出を足したんだ?」

「空に飛ぶとこ。別に地上で風に囲まれて風玉を渡せば済んだんだけど、空の方が派手かなって思ったの」

「そ、そうか。なら何の問題も無い。空の上は綺麗で感動したからな。ここで契約出来て俺はありがたいな」

「そうよね。地上だったら土も風で巻き上げちゃうから。結果的にこっちの方が良かったと思うわよ」

 土を巻き込んだ竜巻か。それなら綺麗な風の竜巻の方が気分は良いな。

「ああ、そうだな。演出があった方が良いよな。綺麗な景色を見せてくれてありがとう」

「気に入ってくれたのなら良かったわ」

「ああ、この景色はいつでも見に来る事は出来るのか? それと全く寒くないんだがどうなってるんだ?」

 この世界では上空でもあったかいとか有り得るのかな? 地平線は丸みを帯びているから地球と変わらない丸い星っぽいんだけど。

「私と契約したんだもの、私に言えばいつでも来れるわ。でも精霊王様に呼ばれたりとか居ない時もあるからその時は無理ね。あと寒さを感じないのは見えないでしょうけど、温かい風で囲まれているからよ」

 精霊王様か……精霊が身近にいない時もあるんだな。タイミングしだいでは危険な気がする。

「居ない時に危険が迫って召喚しても来れないのか?」

「精霊王様の時だと来れないわね。でも呼び出しなんて何百年に一度、あるかないかよ。そのタイミングで危機に見舞われたら裕太。運が悪すぎるわ」

 めったにない事なんだ。隕石が頭に当たる可能性を怯えるぐらいな気がする。確かにそれは運が悪い。 

「運はBランクだから、大丈夫そうだよな、安心した。ベル達が心配だしそろそろ戻ろうか」

「そのまま拠点に飛んでベル達を召喚する事も出来るわよ?」

 確かにそっちの方が効率は良さそうなんだけど、なんか味気無いよな。

「せっかくだから。ベル達と一緒に飛んで拠点に戻るよ。そう言えば飛び方ってどうすれば良いんだ?」

「分かったわ。飛び方は下で説明するわね」

 なんかエレベーターから降りるようにスーッと下降していく。温かい空気が箱状なら本気でエレベーターだな。

 高度によって変わる景色を楽しみながら下に降りると、ベル達がわーっと寄って来てもみくちゃにされた。どうやら契約が出来た事を祝ってくれているらしい。

「べるみたよー」

「キュー」

「すごかった」

「ありがとう。竜巻の中にベル達が居たような気がしたんだが、やっぱり見に来てたんだな」

「そうー。しるふぃとつながったとこもみたー」

「キュキューキュキュー」

「風がすいこまれてた」

 自分達が見ていた契約風景を興奮して話してくれる。撫でて落ち着かせながらゆっくり話を聞く。精霊達から見てもなかなか幻想的な光景だったらしい。電池を消費してもスマホで録画しておくべきだったか。……スマホに精霊って写るんだろうか? 機会があれば確かめてみるか。

 まとわりついて来るベル達と戯れて、何となく達成感を味わう。シルフィとの契約は一つの目標だったからな。やり遂げたよ。

「シルフィと契約したから、泉の家まで皆で飛んで帰るぞ」

「ゆーたもとぶの?」

「おお、飛ぶぞ。みんなで一緒にスイスイ帰るぞ」

「ふぉぉ。たのしそー」

「裕太。その事なんだけど、練習しながらゆっくり飛ぶのなら、帰っている間に夜になると思うわよ。今から出発する?」

 ……せっかくの初飛行、時間に追われて飛ぶのも、夜間飛行に突入するのもなんか勿体ないな。夜間飛行も楽しそうではあるが、明るい世界を十分に楽しんだ後が良い。

「今日は此処に泊まって明日の朝一で出発しようか」

 俺は楽しく空が飛びたい。朝日を浴びて空の旅だな。ある意味人類の夢みたいな行為だワクワクして来た。

「よし。今日は色々あって疲れたし、早めに夕食にしてさっさと寝よう。ベル。レイン。トゥル。今日は頑張ってくれてありがとね。シルフィも契約してくれてありがとう」

 それぞれにしっかりとお礼を言って、夕食を準備する。魚介を出して食べるだけなんだけどね。食べながら飛び方をシルフィに聞く。

 一番簡単なのはシルフィに全てを任せる方法だそうだ。目的地まで最速で運んでくれるらしい。普段の移動は大体シルフィにお願いする事になるんだろうな。

 でもせっかくだからある程度自由に飛びたい。その方法はちょっと難しそうだが出来ない事は無さそうだ。

 シルフィが風の繭で包んで浮き上がらせてくれる。そこから魔力で風の繭に働きかけて、方向転換とスピードの制御を行うらしい。

 生活魔法しか使えないから魔力で働きかけるのは難しそうだが、ダイレクトに魔力の動きが分かるから魔力操作の訓練にもなるそうだ。

 あと落ちたら助けてあげるから大丈夫よって、シルフィに笑顔で言われた。落ちる事があるの? って聞いたら、普通なら落ちる事は無いが、魔力操作をミスって地面に突っ込んで行く可能性があるそうだ。緊張して来た。
読んでくださってありがとうございます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ