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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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三十五話 収穫

「収穫だーーー」

「しゅうかくだーーー」

「キューーー」

「しゅうかく」

「クーーー」

 俺の魂の叫びにベル達が呼応してくれた。なんか気持ち良い。

 朝起きるとドリーが現れ、オイルリーフが収穫できる事を告げた。寝ぼけていた頭が急激に覚醒し、朝一の叫びにつながった。

「ドリー。全部収穫しても構わないんだよな?」

「ええ、オイルリーフは成長が早いですから、収穫時期を逃すと直ぐに大きくなって味が落ちてしまいます。全部収穫して裕太さんの鞄に収納しておくのが良いですね」

「了解。種ように幾つか残しておいた方が良いかな? 初めての野菜だし繋いで行けたらとも思うんだけど」

「そうですね。数株残しておけばタマモが上手くやってくれますから、残しておくのも良いですね」

 食材が減るのは悲しいが、約百株あるんだし遠征に行けば、街にも行く事が出来そうなんだから問題無いだろう。

「それなら残しておこうか三株ぐらいでいいかな?」

「十分だと思います」

「じゃあ三株残して収穫しよう。ベル。レイン。トゥル。タマモ。お願いね」

 軽快な足取りで畑に向かう。出迎えてくれる緑が目に優しい。申し訳ないけど収穫させて頂きます。しかし虫が居ないから、受粉とかには問題だけど、野菜は綺麗に出来るよな。

 同時期に埋めた他の三種類の植物は、まだもう少し時間が掛かりそうだな。遠征から帰って来たら、一種類は食べられるかな?

「では今から待望の収穫を始めます。収穫したものは直ぐに収納するから持って来てね」

「もってきてねー」

 ベルがドンドン持ってこいとリアクションしている。ベルは回収係りじゃないからね。

「ベルが収穫して持ってくるんだからね」

「はーい」

 分かってるのかな? まあ楽しそうだから良いか。俺もさっそく収穫しよう。

 青々と元気に茂った葉っぱを傷つけないように、しっかりと根元を掴み、ちぎれないように慎重に力をこめる。おお、結構簡単に抜けそうだ。徐々に土が盛り上がりズポッと抜けた。おー。感動するな。根がしっかりとしていて良い出来な気がする。

「ゆーた。とれたー」

「キュー」

「しゅうかく」

「クー」

 感動していると、ベル達がいつの間にか後ろに並んでいた。感動して時間を掛け過ぎたみたいだ。収穫したオイルリーフを俺に渡して来るので、一人ずつお礼を言って頭を撫でる。渡し終わると次に行くぜーって感じでオイルリーフに向かって突撃していく。

 なんか非効率だけど、まあ百株ぐらいだからな直ぐに終わるか。ベル達からオイルリーフを受け取りながら、合間に自分も収穫する。

 あんまり時間が掛からずあっさりと収穫が終了した。ちょっと寂しいけど、出荷する訳でも無いんだから量は十分だろう。

「キュー。キュキュー」

「ん? レインどうしたんだ?」

 レインが何かを訴えているんだが、良く分からない。念話とかそういったスキルは無いのだろうか?

「れいんがおやさいあらうってー」

「ああ、収穫したオイルリーフを洗ってくれるんだな。ありがとうレイン」

 収納していた岩を出し、その岩の上にオイルリーフを出すと、レインが水球で包み込んだ。おお、なんか凄いな水球が微妙に振動しているのか?  

 野菜についた土だけが綺麗に水球の下に沈んで行く。なんか職人技って感じだ。レインがキューっと鳴くと、今度は土で汚れていた岩が綺麗に水で洗われる。洗い終わったオイルリーフが綺麗な岩の上に……芸が細かい。

 オイルリーフを確認すると、根っこの間の土まで完璧に落ちて、艶々のピカピカ状態だ。美味しそうだな。どうやって食べよう?

「キュー」

「ありがとうレイン。おかげで綺麗になってもっと美味しそうになったよ」

 レインの頬? の辺りを両手で揉み解すように擦ってやる。最近、レインのお気に入りのスキンシップだ。ちょっとだらしなく開いた口元が可愛い。

「本当に美味しそうに出来てるわね。死の大地の浅い所ではなく、奥まったこの場所での収穫はあなたが初めてよ。誇って良いわ」

 シルフィがクールビューティ―な表情を緩めて褒めてくれる。確かに凄いことかもしれないが、切羽詰まって育てただけだしどう誇って良いのか良く分からないな。

「確かにそうですね。死の大地で植物を育てるのはとても難しいのです。精霊の力を借りたとはいえ、この成果は誇るべき事です」

 ドリーまで加わった。そうなると当然……。

「裕太ちゃん。とっても偉いわ。お姉ちゃんが沢山褒めてあげるわ」

 ディーネも便乗してくるよな。頭も撫でられながら、美女が近くに居る事の喜びと、ディーネに頭を撫でられる屈辱を両方感じてしまう。毎回の事だが振り払うか受け入れるかとても悩む。

「まあ、確かに誇ってよい事じゃの。しかし風、水、土、植物。かなり場が整っておる。死の大地に生まれた貴重な場所じゃ。いずれは聖域にしてしまうのも手じゃな」

 なんかノモスまで加わって、しかも訳の分からない事を言い出した。聖域ってなんか凄い奴じゃ無いのか?

「あら。それは良いわね。でも聖域にするならまだ足りない物も多いわ」

 シルフィが乗り気になった。ディーネとドリーも話に加わり、大精霊で真剣な話し合いが始まった。

「なあ、おい。何だよ聖域って。意味が分からんから説明しろよ」

「こっちの話じゃ。まだまだ準備が足らんから、その時になったら説明してやる。裕太はせっかく取れた野菜を美味しく調理しておけ」

 ノモスがそう言うと再び話し合いに戻って行った。漏れ聞こえる言葉に精霊王から玉をとか、もう少し森のめんせきがとか、面倒そうな事が聞こえて来る。

 俺、分かった。今、面倒そうな事が動き出して、いずれ巻き込まれるんだろう。詳しく話を聞くと怖くなりそうなので、ノモスの言う通り全力でお野菜を味わう事に決めた。

 さて、どうやって食べよう。顆粒出汁が無いけど湯通しして醤油でシンプルに食べるか。レインが根っこまで綺麗に洗ってくれたから、根っこは炒めるか? 

 小松菜は根っこも食べられるんだが、オイルリーフはどうなんだろう?

「ドリー。話し中悪いんだが、オイルリーフの根っこが、食べられるのかだけ教えてくれ」

「根っこですか? 毒は無いですし食べられますよ」

 それだけ言って直ぐに話し合いに戻って行った。そんなに大事な話なの? 怖いんですけど。

 ……まあいい。いまは調理に集中するんだ。まずは根っこの下拵えだ。細かい髭のような部分をサバイバルナイフで慎重に削り落としておく。後は塩で炒めるだけだ。簡単だな。

 調味料が潤沢ならキンピラにしたい処だが、贅沢は言わないでおこう。葉っぱの部分もサッと湯がいて醤油をチョロリがシンプルで美味しそうだ。

 お湯を沸かして、塩を少しいれ茎から湯がく。葉っぱの部分はサッと湯がいて完成。根っこも簡単に塩で炒める。 

「出来たぞー」

 オイルリーフの湯通し野菜。根っこの塩炒め。簡単すぎるし見た目侘しいが、今の俺には輝いて見える。ベル達は直ぐにワラワラと集まって来たが、大精霊達が動かない。

「なあ、シルフィ。ディーネ。ノモス。ドリー。せっかくの初収穫だ豪勢な物じゃないが一緒に味わってくれよ」

「え、ああ。ごめんね裕太。もちろん頂くわ」

「裕太ちゃんの初野菜。たのしみー」

「儂も貰うぞい」

「ふふ。いただきますね裕太さん」

 ようやく全員が揃ったのでさっそく初収穫を味わう。イルカや狐が野菜を食べるかと思ったが、精霊なんだし今更だろう。

「では、いただきます」

 まずは葉っぱを湯通しした物だな。軽く湯がいただけなので、シャクシャクとした歯ごたえと、野菜独特の風味が口の中に広がる。

 うーん。そんなに好きな味では無いはずなんだけど、足りなかった栄養素の補給に体が喜んでいるのか、とても美味しく感じる。

 根っこの塩炒めは如何かな? シャク? ゴリ? んー、ゴボウというかダイコンというか、繊維が多く良い食感だ。塩も効いているし歯ごたえも良い。これはこれでいけるな。

「うん。ちゃんと出来ているわ。裕太。頑張ったわね」

「裕太ちゃん。おいしいわよー」

「裕太さん、シンプルな味付けですが、野菜の味がしっかりとしておいしいですよ」

 シルフィとディーネとドリーは美味しいと喜んでくれているが、他の精霊達は微妙な感じだ。ノモスは野菜じゃなって感じでパクリとたいらげ。下級精霊達は……。

「おさかなのほうがすきー」

 ベルの可愛い眉毛がへの字になっている。ちょっとショック。

「キュー」

 レインはショボンとした感じだ。俺のテンションが高かったから、相当期待していたらしい。心が痛みます。

「にがい」

 トゥルはシンプルにしかめっつらで、頑張って野菜を消化しようとしている。なんかごめんね。

「クー」

 タマモは食べなきゃ駄目? って感じでこっちを見ている。なんかチワワのCMを思い出す。

 評判が良くないようだ。まあ、子供が好きな味では無いから、しょうがないんだろうが、土の精霊と森の精霊が野菜を苦手ってのもどうかと思うな。

「はは。ベル達には不評だったか。町に行ったらもっと美味しい物を、食べられるようにするから期待しててね」 

「やくそくー」

「キュー」

「おいしいもの」

「クー」

 俺にまとわりついて、口々に約束の確認をおこなう下級精霊達。約束を守る事を約束しながら頭を撫でる。頼むから町にこの子達が気に入る食べ物があって欲しいな。

 でもまあ、俺は野菜を美味しく食べられたから、かなり満足だ。遠征が成功すれば町に行けるから、必死に野菜を作る必要も無かったのかもしれないけど、結果論だし心の支えにもなっているんだから良いよね。
読んでくださってありがとうございます。
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