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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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二十六話 帰還

 現在の拠点の南側に同じ大きさの森用スペースを作った。それからまた手持無沙汰になったので、今日は大量の干物を作成しよう。やる事が無いと心配になって、ノモスに鬱陶しいと怒られるからな。

 大量の魚を捌き海水に浸け込む。今回は一時間半。これなら塩味バッチリなはずだ。多分だけど。

 魚を漬け込む間にトゥルと一緒に畑に水を撒き、ノモスに土の様子を確認する。問題無く混ざり合ったようで、微生物が徐々に増えているそうだ。

 元々小魚や海藻を砕いて大量に混ぜておいたので、今の方が正常な状態に近いと言われた。だが森用スペースに土を入れる時には、もう一度同じ肥料を作れと言われた。

 まあ、小魚を取るにはベルとレインの協力が必要だから、帰って来てからだな。植物の種が来れば死の大地に緑が生えるかもしれない。楽しみだ。お野菜食べたい。

 魚を海水に浸けて一時間半が経過した。干し台に移動して魚を並べる。美味しい干物が出来れば、次はタコとかイカを取って来て貰って加工するのも良いかもな。

 回復魔法が使えれば生の魚にもチャレンジ出来るのに、命の精霊と契約しないと無理とか……死の大地だと難題過ぎるよ。

 森が出来たら木も草も命なはずだから、大丈夫にならないかな? 動物が必要だとかなり厳しい。森が出来ても、死の大地を通って野生動物が自力で来てくれるとかありえないよね。


 ***


 細々とした物を作ったり、プールで涼を取ったり、ディーネやノモス、トゥルと語り合ったりしながら時間を過ごし、ベルとレインが帰って来る予定日になった。

 ちなみにディーネは自分がどれだけ姉としての、威厳と優しさを兼ね備えているのか力説していた。何故姉というポジションに拘るのか、疑問が尽きない。

 何となくソワソワしながら時間を過ごす。細々した事もやりつくしたので、やる事が無くて時間が経つのが遅い。

「裕太ちゃん、やることがないのなら、水路を増やさない?」

「水路を増やす? 増やす分には構わないけど、何処に引くんだ?」

 プールまでの水路はあるし、飲料用の水は収納し、トイレは穴を掘ってオガクズを敷き詰めただけなので、水を引く必要は無い。

「森のスペースまで水路を引いて欲しいの。森でも水は必要でしょ? それに。森にある泉って綺麗よね」

 なるほど。水量は豊富らしいし問題無いか。森に木を植えても雨が降らない死の大地では、水が無いと気が死んでしまう。

 泉があれば水も撒きやすいし、どうしても水路のつなぎ目からは少し水が漏れる。地面がカラカラに乾くのを抑える効果もあるだろう。悪くない提案だな。

「分かった。水路は土を入れた後に作るけど、泉の部分は今から作っておくよ。森の中になるんだからプールぐらいの大きさで良いだろ?」

「裕太ちゃん、ありがとー。形は丸い方がお姉ちゃん嬉しいなー」

「丸? なんでだ? 加工が難しいだけだぞ?」

「そうかもしれないけど。裕太ちゃんも想像してみて。森の中を歩くと泉がありました。その泉はどんな形をしていますか?」

 なんかクイズみたいだな。いや性格診断テストの方が近そうだ。

「あー、確かに四角より丸っぽい感じを想像したけど、どんな意味があるんだ?」

「意味は無いの。でもイメージって重要だと思うの」

 殴りたい。なんだかとても殴りたい。だがディーネは善意でここに居るんだ。助けて貰っているのは俺で、助けているのはディーネ。……胃が痛い。

「わ、分かった。だけど、完全な真円は無理だぞ」

「十分よー。ありがとう裕太ちゃん」

 頭を撫でて来るディーネ。撫でられて少し気持ちが落ち着く事に屈辱を覚える俺。ディーネって頼りになる時もあるけど、天然が殆どを占めているから、お姉さんぶられると違和感が凄いんだよな。

 トゥルを連れて森用スペースに向かう。一番大きな岩を取り出しその中心にトゥルを立たせる。長さを調節した竹を持って貰い、反対側で俺がサバイバルナイフを岩に突き刺しグルリと一周する。

 やっぱり少し歪な円になっちゃったな。簡単なコンパスだから、回っている間にズレが出るのはしょうがない。後は切れ目に沿って綺麗に岩を掘るだけだ。

 泉を作り終えて拠点に戻るとディーネが大喜びで近寄って来た。

「ありがとう裕太ちゃん。とっても素敵だったわ。あの場所が森になったら最高のお昼寝スポットよ」

 ……そんな理由? 確かに森に泉があるのは良い事だし、ディーネに言われなくてもいずれ作ったのかもしれない。でも……ふんふんとご機嫌に鼻歌を歌うディーネを見て思う。神様。あの天然精霊に天罰を与えて下さい。


 ***


 真夜中。遅くとももう帰って来て良いはずなんだが、まだベルとレインは帰って来ない。シルフィもついているし、精霊だから大丈夫だとは分かっているが、あの子達の見た目だと必要以上に心配してしまう。

「裕太ちゃん、まだおきてるの? 帰って来たら起こすから、少し寝ておいたら?」

「うーん、寝ようとしたけど無理だったんだ。このまま起きているから話し相手になってくれよ」

「裕太ちゃんは心配性ね。しょうがないから、お姉ちゃんがお話し相手になってあげるわ」 

「はは、助かるよ」

 話をしながら、ベルとレインが帰って来るのを待つ。精霊の役割やこの世界の事を色々と教えてくれる。意外と為になったな。そしてこの世界、戦争多過ぎ。町に行くのが怖いんですけど。

 話に熱中してしまって気が付いたら夜が明けていた。ディーネの話がなかなか面白かったのが意外だった。特にディーネのお気に入りの場所を占拠したシードラゴンを、天高く打ち上げた話は面白かった。

 その日からシードラゴンは天に登り神になるって伝説が生まれたらしい。ちなみにシードラゴンが神になる事は無いそうだ。打ち上げられたシードラゴンの行方が非常に気になるな。

 朝日を浴びに家の外に出て体を伸ばす。ずっと座っていたからお尻が痛い。岩のベンチは長時間座るのに向かないな。

 体全体を洗浄して空を見上げると、こちらに向かって近づいて来る二つの点が見える。

「なあ、ディーネ。よく見えないんだが、あそこを飛んでいるのはベルとレインか?」

「あら。ええそうよ。ベルちゃんとレインちゃんね。とっても元気そうだから安心して」

「そうか」

 無事に帰ってきて良かった。物を持っているとあんなに飛ぶのが遅くなるのか。何も持っていない時のベルは、まさしく疾風って感じなんだけど、こちらに向かってくる点はゆっくりと近づいて来る。もう少し時間が掛かりそうだな。

「ただいま裕太」

 いつの間にかシルフィが隣に立っていた。先回りして戻って来たんだな。

「あっ、お帰りシルフィ。お疲れ様……って本当に疲れてるね。何かあったの?」

「大きな問題は何も無かったわ。ただ、あの子達は本当にまだ子供ね。予想もつかない行動で随分慌てさせられちゃったわ。当分あの子達におつかいを頼むのをやめてくれたら助かるわね」

 風の大精霊を見れば分かるほど疲れさせるなんて……何があったのか聞くのが怖いな。

「そうだったんだ。本当にお疲れ様。ありがとうシルフィ」

「どういたしまして。さあ、もう着くわよ。笑顔で出迎えてあげてね」

 シルフィに言われて空を見ると顔が良く見えるほど近づいていた。笑顔だし、元気そうだな。

「ベルー、レインー。おかえりー」

 大声で叫ぶと、聞こえたのかベルとレインもぶんぶんと手を振って飛んで来る。

「ただいまー」

「キュー」

 胸に飛び込んで来るベルとレインを抱きしめ、褒めまくる。

「頑張ったねー。無事に帰って来て偉いよベル。レイン」

「がんばったー」

「キュー」

 キャッキャッっと笑いながら腕の中で騒ぐ二人を見て、安堵の気持ちが湧き上がる。次におつかいに出す時はもう少し大きくなってからだな……精霊ってどう成長するんだ?

「あー!」

 ベルが何かに気づいたように声をあげ、飛びあがって俺の前に浮かぶ。なんだ?

「べるたいいん。にんむかんりょー」

「キュキュキュー」

 そう言って小さな葉っぱの包みを差し出す。ヤバいジンと来た。なんか泣きそうだ。いや泣いてないでちゃんと受け取らないとな。

「ベル隊員。レイン隊員。重大任務達成ご苦労であった。見事困難な任務を達成し、無事帰還したベル隊員とレイン隊員を私は誇りに思う。本当にご苦労であった。これで任務は終了した。ゆっくりと休むが良い」

「いえっさー」

「キュッキュー」

 もう一度飛び込んで来たので、抱きしめて褒めまくる。ふと目線を上げると、いつの間にかノモスとトゥルも生暖かい眼差しでこちらを見ている。さすがにちょっと恥ずかしいな。

「ノモス。トゥル。おはよう。ベルとレインが種を持って戻ってきたんだ。さっそく畑に埋めよう」

「うむ。まあ、なんだ。良かったな」

「……良かった」

 ヤバい。とても恥ずかしい。完全にはしゃぎまくって我が子を称えまくる親バカを、遠目から見て関わり合いになりたくはないけど、義理として声を掛けておこうって感じの言葉が送られて来た。

「あっ、ああ。ありがとう。あははははは」

 気まずい。なんかとてつもなく気まずい。シルフィは目を逸らすし、ディーネは何故か感動して涙を流している。誰も頼りにならんな。話を進めて全部を有耶無耶にしてしまおう。

「これが貰って来た種なんだが、ノモスとトゥルは種類が分かるか?」

「ふむ。食い物にあまり興味が無いから詳しくは分からんが、この二つは葉っぱを食べておったはずじゃ。こちらの二つは根っこを食べておったの」

 土の精霊は植物に興味が無いのか? どんな植物か分かってはいるみたいだから食い物として興味がないのか。まあ良い。さっそく種まきだ。ビバ野菜。
読んで下さってありがとうございます。
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