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精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
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十三話 海

「海だー」

「うみだー」

「キュー」

 水確保の為にせっかくたどり着いた海に背を向けた悔しさ。今こそリベンジの時。人の手が入っていない、豊かな海の海産物をこれでもかと乱獲してやる。

「さて、ベル隊員。レイン隊員。君達に重大任務を与える」

「うっ?」

 ヤバい。ベルが話に付いて来られなくて、首を傾げている。日本のノリでやったら理解出来ないのは当然だよな。でもここで急に冷静になるのも恥ずかしい。力技で押し通すしかないな。

「ベル隊員。返事はイエッサーだ。出来るな?」

「いえっさー」

「よろしい。では改めて任務を申し渡す。ベル隊員はレイン隊員と協力して、この海の海産物を確保するのだ。魚は言わずもがな、エビやカニの確保も忘れるな。なに遠慮することは無い。容量無制限で時間停止の魔法の鞄がある。取れるだけ取って来い。いいな」

「いえっさー」

「キュー」

「よし。行け」

 楽しそうに海に突撃していくベルとレインを見送り、無駄に書いてしまった冷汗を拭う。危なかったが何とかなったな。ふと振り返ると呆れた表情でシルフィが俺を見ている。

「いきなり何をやってるのよ」

「………………聞かないでくれ」

 シルフィの視線がグサグサと突き刺さる。こっちを見ないで欲しい。

「あー、俺は貝や海藻を集めるけど、シルフィはどうする?」

「……はぁ、答える気は無いのね?」

「シルフィはどうする?」

 恥ずかしくて冷静に説明出来ない。絶対にしらを切り通す。

「はぁ。分かったわよ。もう聞かないから、その覚悟を決めたぜって顔をやめなさい。無駄にキリッとして気持ち悪いわ」

 失礼な! でも何とか切り抜けた。海は恐ろしいな。大人になっても童心に帰ってしまう。

「私は契約していないから食料の確保に協力は出来ないわ。のんびりしているから、裕太は頑張って食料を集めて来なさい」

「いえっさー」

 シルフィと別れて服を脱ぎ、パンイチになる。トランクス派で良かった。流石にブリーフで海は恥ずかしい。

 軽く体を解して海に入る。水温は少し冷ってする程度、なかなか快適だ。遠浅の海に潜ると高い透明度で美しい世界が広がる。

 ゆらゆらと揺れる海藻。美しい珊瑚。色鮮やかな小魚達。まるで南国の海だな。暫く食料の確保も忘れて海の中を漂う。こういう行為を命の洗濯っていうのかな? 幸せだ。


 ***


 いかん。素晴らしい光景にただただレジャーを楽しんでしまった。初期の目的の食料確保に邁進しなければ。

 食料目的で海の中を探すと結構地球で見た事あるような貝もちらほらと見つかる。名前は違うかもしれないが、シャコガイ、サザエ、アワビ。砂地を掘り返して見るとアサリやハマグリも見つかる。

 ただこのタイミングで最大の誤算が発生する。魔法の鞄には生き物が入らないようだ。頑張って集めた沢山の貝……貝殻を割って殺すと身が無駄になる。この場で調理するしかない。

 アサリとハマグリは砂抜きして酒蒸しだな。アワビとサザエは……流石に生は怖いから焼くか。シャコガイも食べ方が分からないから焼いておこう。

 そもそも見た目は同じでも食べられるとは限らないんだよな。シルフィに聞いておこう。

「シルフィ。貝を取ったんだけど、食べられるか分かる?」

「あー、そうね。食べた事は無いから美味しいかどうかは分からないけど、港で売っていたのを見た事があるから食べられると思うわ」

 良かった。結構取ったから食べられなかったら辛い。砂抜きを待つ間に海藻を取ってこよう。海藻は良く分からないのでワカメにコンブを重点的に採取する。

 昆布出汁が作れるなら、食生活が少しは豊かになるな。浜辺で乾燥させておこう。

 本来は取れるだけ取るつもりだったけど、調理が必要ならこれ位が限界だな。後はベル隊員とレイン隊員に期待しよう。

 遠目で縦横無尽に跳ね回るベル隊員とレイン隊員が見える。キャハハハっととっても楽しそうだ。ちゃんと魚を取っているんだと信じよう。駄目だったらまた明日再挑戦だ。

 まずやる事は……コンブを砂浜に並べる。次は……酒蒸しだから蒸すために、シャベルの角度に合った蓋が必要だな。岩で作るか。

 シャベルの角度に合わせて岩を加工する。うん、大体こんな感じだ。後は酒蒸しを入れる器も必要だな。ドンブリがあるけど、それに入れたら他の食事がしたい時に困る。あと二つ作っておくか。

 木を伐り出し朝と同じ手順でサクサクと二つのドンブリを完成させる。後はスプーンも必要だ。作っておく。そろそろ調理に掛かるか。コンロを準備して火を熾す。手慣れて来たな。

 次はシャベルに洗浄を掛けてコンロの上にセット。アサリとハマグリを入れて、日本酒をぶっかけて蓋をする。暫く待って蓋が開いたのを確認して、貴重な醤油をキャップ二杯分振りかけてもう一度軽く蒸して完成。

 たまらん匂いだ。身もプリプリだし、貝の出汁が出まくった酒蒸しのスープは洒落にならんほど美味しいからな。今すぐしゃぶりつきたい。

「いい匂いね。裕太の故郷の料理?」

「ああ、単純な料理だが、故郷の酒と故郷の調味料を使った、なかなかの自信作だ。一つ食ってみろよ」

 シルフィがお酒の所で、ピクッってしたような……気のせいか?

「いいわよ。貴重な食料でしょ裕太が食べなさい」

「使った調味料はわずかで、食材は海で取れたものだよ。遠慮しないで試してみて」

「……そうね、美味しそうだし異世界の調味料にも興味があるから、一ついただくわ」

「うん、どうせならそのでっかい奴が良いよ。俺の世界だとそのハマグリは人気食材なんだ。手づかみで行けるけど熱いから気をつけてね」

「ええっと、これね。精霊にとってこの程度の熱は関係無いわよ。じゃあいただくわ」

 シルフィがハマグリを口に含む姿をドキドキしながら見守る。

「あら、美味しいわね。磯の香りと貝の味、裕太の故郷の調味料かしら。それが合わさって、とても美味しいわ」

 いい笑顔を頂きました。味覚が違ったらどうしようも無いからな。美味しいって事はこの世界の味覚も似た感じなんだろう。町に行くのが楽しみだな。

「気に入ったのなら良かったよ。その貝殻で底に溜まっているスープを、すくって飲んでみるて」

「へー、こうかしら? ……あっ……おいしいわね。凄く貝の出汁が出ているわ。調味料とお酒のコクも効いてるのかしら? とにかく美味しいわ」

 高評価だな。俺も一つ食べるか。ハマグリを手に取り口に含む。肉厚な貝の身を噛み締める度にあふれる貝の旨み。最高だな。スープも一口……酒が飲みたい。このまま貝と酒を交互に繰り返してグデングデンになりたい。

 でも駄目だ。ゾンビに食われる。未練を振り切り酒蒸しをドンブリに移して収納する。次は貝を焼こう。アワビとサザエ、刺身で食いたいけど、一応焼いておこう。

 アニサキスだっけ? あれって貝にもいるのか? 分からないけど用心だけはしておこう。身の安全が確保出来たら刺身もバンバン食ってやる。

 貝を焼いては収納。焼いては収納を繰り返す。全ての貝を焼き終わる頃、ベルとレインが戻って来た。隊員ゴッコを続けるか迷ったが、コッソリやめて無かった事にしよう。

「たくさんとってきたー」

「キュー」

 振り返るとベルとレインがフヨフヨとゆっくり飛んで来た。大きな水の塊を浮かべていて、その中にはみっちりと魚介がつまっている。何で逃げ出さないのかな?

「おー。大量だな。偉いぞ二人とも」

 全力で二人を撫で繰り回す。さて魚も下処理をしないとな。山盛り積み重なっているから急がないと。シメて内臓を取って収納で良いか。その前にベルに頼みごとをしておこう。

「ベル。あそこに並べてある海藻に優しく風を吹きかけて、乾かして欲しいんだが出来るか? レインはベルの手伝いを頼む」

「いえっさー」

「キュー」

 ベル、忘れて無かったんだね。シルフィが変な事を教えるんじゃ無いわよって目で見てる。気が付かなかった事にしよう。魚をさばかなきゃ。

「シルフィ。この魚の山の中に毒を持っていて危険な魚や食べられない魚はいないかな?」

「うーん、市場に出ている魚は分かるけど、見た事無い魚も結構いるわ。知っているのは教えるから、それ以外はシメるだけにして、ディーネに聞いた方が良いわね」

「分かった。知っているのだけ教えてくれ」

 シルフィの許可が出た魚はシメて内臓を取って収納。南国の海に似ているからかカラフルな魚が多い。しかし凄い量だな。お願いした通りエビとカニも混ざっている。シルフィに判断がつかない魚はシメるだけにしておく。

 エビとカニのシメかたが分からない。伊勢海老みたいなエビやタラバガニみたいなカニもいる。しょうがないのでエビは頭をひねって直ぐに収納。カニは茹でて直ぐに収納した。


 ***


「あー、ようやく終わった。これだけ魚があれば当分持つだろう。餓死する事は無くなったよ」

「ふふ。良かったわね。魔力が上がるまで持つのなら、大きな失敗をしなければ生き延びられるわよ」

 そうなんだよなー。日本と違って死が身近にあり過ぎる。気を引き締めて頑張ろう。

「うん。生活環境を整えながら地道にレベル上げを頑張るよ」

「それが良いわね。そろそろ拠点に戻る?」

「そうだね。コンブを回収して、あっ。砂も大量に欲しかったんだ。ついでに採取してくるよ」

 砂のベッドも作らないとな。これで堅い岩の寝床ともおさらばだ。コンブを回収しに行くとベルがレインにまたがり風を吹かしている。レインが移動するとベルも移動するので、広範囲に優しい風を吹き渡ることになる。あの子達は天才かもしれない。

「ベル。レイン。ご苦労様。とってもよく乾いているよ。ありがとう」

「えらいー?」

「キュー」

「二人ともとっても偉いよ。とってもいい子だ」

 二人の頭を撫でまくりの褒めまくりだ。

 ニコニコしながらコンブを回収して、砂浜の砂も大量に収納する。これだけ収納すればベッドの二つや三つは作成可能だろう。

「よし。回収完了。拠点に戻るよー」

「いえっさー」

「キュー」

「裕太。ベルの返事このまま続けさせるの? 訂正は早い方が良いと思うわよ」

 イエッサーは特別な返事で特別任務を受けた時のベル隊員専用の返事だと説明した。少し不満そうだったが何とか納得してくれたので一安心だ。テンションにかまけて余計な事をすると苦労が増えるな。
読んで下さってありがとうございます。
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