挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
精霊達の楽園と理想の異世界生活 作者:たむたむ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

12/100

十二話 レイン

 水の大精霊と水の下級精霊がやって来た。のんびりした優しそうな美女精霊なので、ここに居着いてくれると嬉しい。

「シルフィ。そろそろ水場を見て貰いたいんだけど、大丈夫かな?」

「ああ、そうだったわね。裕太、岩をどかしてちょうだい」

 シルフィの指示に従って井戸を塞いでいた大岩を収納する。

「ディーネ。これが話していた井戸よ。確認してちょうだい」

「あらあら。大きな井戸ね。それにとっても深いわ。確かに穴の底から水の気配がするわ。裕太ちゃん頑張ったのね」

 何故か偉い偉いと頭を撫でられた。まんざらでもないな。

「ほら裕太。デレデレしてないで行くわよ」

 褒められてデレデレしていたらしい。ブツブツと小声で文句を言っているシルフィが怖い。偶に聞こえてくる言葉には。巨乳が何よとか、精霊どころか人間にまで比較されるなんてとか漏れ聞こえて来る。シルフィに胸の話は地雷らしい。覚えておこう。

「わかったよ」

 光球を出しながら階段を降りる。深い穴を見ると自分で掘ったとは思えない大きさだ。ベルがイルカ型の精霊と楽しそうに飛び回っている。もう完全に仲良しさんだな。


 ***


 長かった。水場にたどり着く為に毎回こんなに時間が掛かると洒落にならん。手押しポンプの構造は何となく知っているけど、これだけ深いと対応できないよな。

「ディーネ。この水なんだけどどうかな?」

「ちょっと待っててね。調べてみるから」

 ディーネが水に手を入れて目を瞑っている。あれで何が分かるんだろう。一晩経ったら濁りが落ち着いてだいぶ水が綺麗になっている。問題の無い水場だと助かるんだけどどうだろう。

「ふふ。凄く良い水場よ。水量も豊富で汚染も無いわ。生きている大地から綺麗な地層を通って水が流れ込んでいるの。そのまま飲んでも問題無いわね」

 生きている大地って百日は歩かないと辿り着けない距離だよな……自然って凄い。そのまま飲んでも問題無いのは更に助かる。たとえディーネがここに住まなくても飲み水は確保できるんだ。出来れば住んでくれた方が助かるのは間違いないけどね。

「ディーネ。ここに住んで貰えるかな?」

 ちょっとドキドキしながら問い掛ける。

「んー。ごめんなさい。このままだと難しいの。でもちゃんと環境を整えてくれるのなら大丈夫よ」

「環境ってどうすればいいんだ?」

「シルフィちゃんに聞いたんだけど、裕太ちゃんって凄い道具を持っているのよね? この井戸を岩で補強して、出入口の部分はすり鉢状に大きく広げて、そこも土が流れ込まないように岩で補強して欲しいの。そうしたら私が上まで水を導いて泉を作るわ。大変だけど出来るかしら?」

 あれ? 確かに大変だけど俺にとって良い事だよね? 泉はやり過ぎだけど、階段の上り下りが無くなるだけで十分だ。

「契約しないと直接的に力を行使出来ないってシルフィに聞いたんだが。泉なんてかなりの手助けになるんだが……」

「あら。大丈夫よ。死の大地に水場を作るんですもの。十分に水の精霊の職分よ。怒られるどころか褒められちゃうわね」

 そうなのか? 境界線があいまいで良く分からん。シルフィを見てみると、頷いているから大丈夫なんだろう。

「分かった。道具は凄くても素人だから、プロ並みの出来を要求しないでくれれば作る事は出来る。それで構わないか? あと先に海に食料を確保しに行きたいから、整備の開始は明日以降になる」

「いいわよ。私は此処に残るから出入口は岩で塞いでおいてね。私もゾンビが落ちて来たら嫌だもの。あと海に行くのならあの子と契約すると良いわ。お魚を取って来てくれるわよ」

 魚!! マジで。釣り糸も釣り針も無いから、海に潜って貝やカニ、海藻なんかをメインに考えていたけど、魚を取って来てくれるのなら、食卓が豊かになる。

「でも、水場を離れて死の大地を移動して平気なのか? 自然のバランスが崩れた場所は、力を奪われるんだろ?」

「その為の契約なの。裕太ちゃんの魔力が貰えれば問題無いの」

「それなら俺もお願いしたいな」

 イルカ型の精霊を手招きする。

「なあ、俺と契約してくれるか?」

 問い掛けると、イルカ型の下級精霊はキューっと頷き頬ずりして来た。とても可愛い。

「ふふ。この子も良いみたいね。じゃあ裕太ちゃん。この子に名前を付けてあげてね」

 ああ、そうだった。名前を決めないと駄目なんだよな。くじけそうだ。……いや。お魚を取って来てくれるんだ。最高の名前を考えないと。

 ドルフィンのフィンは流石に安直だ。もっと良い名前を考えないと。うーん、水の精霊だし水に関する名前が良いよな。水……みず……みずうみ。レイクか悪くない。雨はレイン。これも良い響きだ。水は風よりも名前っぽい響きが多いな。

「よし、決めた。君の名前はレイン。雨って意味だよ。死の大地にも雨が降るようになれば良いと思って、レインにしたんだけどどうかな?」

「キュー! キュー!!」

 鳴き声を上げながら頬ずりして来たから気に入ったって事で良いんだよな。

「契約が成立したわ。可愛がってあげてね」

 うん。二度目の契約もあっさりだな。こんなに簡単だとありがたみが……。

「裕太。どうしたの?」

「いや。あんまりあっさり契約が終わるから、実感がわかないと思っただけ」

「ああ、そういう事ね。それなら私との契約を楽しみにしてなさい。大精霊との契約だから、お望み通り実感がわく演出がついているわよ」

「えっ。何それ。凄いの? どんな演出?」

「ふふ。内緒よ。知りたかったら頑張ってレベルをあげなさい」

 ふむ。隠されると知りたくなる。掌で転がってるけど頑張ってレベルを上げるか。

「魔力がBにならないと駄目なんだよね。気合を入れて頑張るよ」

 戯れて来るレインを撫でて落ち着かせながら、ペットボトルに水を汲み、ディーネと別れて井戸の階段を上る。


 ***


 長い階段を上り、大きな岩で再び井戸を封鎖する。作成しておいたコンロで袋ラーメンミソ味を作る。ドンブリに麺とお湯を入れて粉末スープを混ぜ合わせる。日本だと刻んだネギと卵を追加するが、残念な事に此処には無い。

 ……御馳走様でした。噛み締めて食べないといけないのに、空腹とラーメンの香りにやられて一気に食べきってしまった。

「よっぽどお腹が空いてたのね」

「あはは。まあね」

 ちょっと恥ずかしい。ペットボトルの水をゴクゴクと飲む。水の残量を気にしないで良いのって素敵だ。次は海で大量に食料ゲットして、毎回お腹いっぱいに食べられるようにしよう。さあ海に向かって出発だ。


 *** 


「シルフィ。ありがとね」

「突然どうしたの?」

 いや、ただお礼を言いたくなっただけなんだけど、この子大丈夫かしらって目で見られるとヘコム。シルフィの中で俺はどう言った立ち位置にいるんだろう?

「いや。今も海まで案内してもらってるし、シルフィのおかげでディーネとレインに会えたんだから、感謝を伝えたかっただけだよ」

「ああ、そういう事ね。突然だったからびっくりしたわ。まあ、私も楽しんでるから気にしないで良いわよ。でもどうしてもお礼がしたいのなら……そうね。おもしろい人生を送ってくれれば良いわ」

「……面白い人生って……ハプニング続きの、気の休まらない人生の事だったら断固拒否するけど」

「それも楽しそうね。まあ、好きに生きると良いわ。異世界人で精霊が見えるんだもの、何かしら巻き込まれるわよ。期待してるわね」

「そんな期待はいらないよ」

 平穏無事な人生に憧れがある訳じゃないけど、苦労の連続な人生は遠慮したい。死の大地で生き抜くだけで十分ハプニングだ。この苦境を切り抜けたら趣味に生きよう。

「そう言えばシルフィ。ベルとレインは直ぐに仲良くなったよね。精霊同士の相性とかあるの? 例えば火の精霊と水の精霊が仲が悪いとか」

 ベルがレインにまたがって飛び回っている。イルカに乗った幼女か……大丈夫かな? そもそもイルカが飛んでいる事を受け入れた時点で、かなり異世界に毒されてるな。

「んー、そんなのは無いわね。どの精霊がいなくても自然のバランスは崩れるもの。単純に性格が合わなくて仲が悪い相手はいるけどね」

「そうなんだ。シルフィも中が悪い相手はいるの?」

「いるわよ」

 聞いた瞬間、目つきが急に鋭くなった。もしかして地雷だった? 話題を如何反らせるか悩んでいると、頼りになる契約精霊から救いの手が差し伸べられた。

「うみー」

「キュー」

 ベル、レイン。とってもいい子だね。

「おっ。海が見えたみたいだ。少し急ごうか。食料を大量に手に入れて、井戸の整備も頑張らないとね」

「そうね。あっ井戸に戻る前にここら辺の岩山から大量に石材を確保しておいたら?」

「ん? ああ、そうだな。井戸周辺は岩山が少なかったし、井戸の整備で大量の石材が必要になるね」

「ええ、それに泉になる場所から広めにスペースを取って大きく岩で囲んだらどうかしら。ゴーストやレイスは防げないけど、他の魔物が入って来ない広いスペースがあれば何かと便利よ」

「それも良いね。水が出たんだから、あの井戸の周りを拠点にすると暮らしやすいよね」

「ええ。それにせっかく出来た水場が魔物に荒らされたら気分が悪そうだもの」

 岩で周りを囲むのならあんまり狭いと息苦しい。大き目の体育館ぐらいの広さがあれば、リッチな感じで暮らしやすいかも。水が沢山あるのなら、耕せば畑とか出来ないかな。

 土が死んでるし、耕して水をまいたぐらいじゃ駄目か。生きている土地に行ければ、森に入って大量の腐葉土や土が手に入るけど、町に行けば畑を作る必要も無い気がする。

 まあ、石材は簡単に切り出せるし、魔法の鞄があれば設置もたいした手間じゃない。広めのスペースを確保しておいても良いな。

「そうだね。食料と石材を大量に手に入れて戻ろうか」

「それが良いと思うわ」

 よし。まずは海の幸を大量ゲットだな。頑張ろう。
読んで下さってありがとうございます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ