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おお勇者よ、死んでしまうとは情けない……えっ、ならお前が行け?【長編版】 作者:黒猫時計

第七章 ネウロガンド編

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魔王城の結界解除

 大穴近くの小屋から飛び立ったクゥーエルは、丘の上に築かれた魔王城を目指して飛行する。
 徐々に近づく丘の周囲は岩盤が堀のように掘り下げられており、城壁が円状に築かれ、地上からではなかなかたどり着くのは難しそうだった。
 過去、幾人もの冒険者が魔王へと戦いを挑み続けるにあたり、この堀と壁は難関だったであろうことが容易に想像できる。
 その点わしらは幸運だと言えるだろう。聖竜に乗ってひとっ飛びなのだからな。
 城の敷地を完全に視界に捉えると、いっちょ前に設けられた庭園にわずかばかりの嫉妬のようなものを感じた。

「……アルノーム城に庭園なんて立派なものはなかったぞ。魔王のくせに生意気な」

 門を出たら水路に掛けられた橋を渡り、城下町はすぐそこという狭い立地だったアルノーム城。
 比べるとなんだか少し情けなく思えてくる。
 まあそんな城など今となっては関係ないがな。王冠ももうないし。いまはハーレム城をどうするか、それしか頭にない。それと魔王を倒すことだ、これを忘れてはいかんな。
 ハーレムに加えるつもりの女子たちを眺めると、どこか緊張を伺わせる顔をしていた。
 わしは景気づけに励ましてやろうと、「だいじょ――」そこまで口にし、バチコンと唐突に弾かれたような衝撃に襲われる。
 皆一様にそうだったようで、体勢を崩しながらもなんとか手綱にしがみ付いて事なきを得ていた。

「な、なんだ何事だ!?」

 手綱がなければ今ごろ落っこちていたに違いない。
 クゥーエルになにかあったのかと思い前方へ目を向けると、小首を傾げた竜がこちらを振り返っていた。

「どうしたんだクゥーエル?」
「なんだか困った顔をしているわね」

「クゥ、クゥ」と切なげな声で鳴くしかない竜は、たしかに困り顔をしていた。
 しかもこの場に留まるだけで、それ以上前に進もうとしない。まさかわしがハーレムのことなぞ考えていたから、機嫌を損ねたのかと一瞬脳裏を過ぎったが。

「――結界が張られてるみたい」

 クロエの一言に、皆状況を納得したのか「そういうことか」と首肯する。
 しかし納得できないわしは問うた。

「結界? そんなもの見えぬが……本当に張られているのか?」
「まあ論より証拠ってね……火遁、狐火!」

 楓が印を結び横薙ぎに腕を振るうと、いくつもの小さな炎が宙に出現した。
 それらはふよふよと漂いながらクゥーエルを追い越し、そして何か透明な壁にぶつかったようにボシュンと弾けて消えた。

「……どうやらそのようだな」
「しっかし結界とは。粋な真似してくれるじゃねえか」
「どうやら、ただじゃ入れてくれないみたいね」

 ソフィアの言にわしの耳がピクリと反応を示す。

「わしならタダで入れてやるのにな!」
「………………」
「あれ?」

 場の空気が一段下がった気がする。
 クゥーエルは先ほどから変わらぬ位置で浮揚しているというのに、おかしい。
 女子たちからはジトッとした目を向けられ、まるで針の筵だ。

「一応断っておくが、城の話だぞ?」

 視線に耐えかねてそう断りを入れると、「なんだ紛らわしい」「またお得意の下ネタかと思いましたわ」と言葉が返ってきた。
 危ない、なんとか誤魔化せたようでよかった。
 と思いきや、なぜか楓からはくすくすと笑われてしまった。わしの考えなどお見通しなのかもしれん。
 すると、和みかけた空気を引き締めるように「とにかくっ!」とクロエが手を叩いて言った。

「この結界なかなか強力みたいだから、なにか他に手を考えないと」
「そうだな。結界を解除するものか、それとも地下道でもありゃいいんだが」

 ――というわけで、堀から魔王城までを覆っている結界の周囲をぐるりと一周し、なにかないかを確認してみた。
 が、特に目ぼしいものは見つからず。
 いざ魔王城へ、そんな矢先の出来事に落胆に肩を落としかけた、その時。
「ん~??」と楓が地上を見下ろして唸った。

「どうしたのだ楓、なにか見つけたのか?」
「みんな、あそこ見て。魔物が歩いてる」

 促され、竜の右翼側から楓が指さす地上を皆で見下ろした。
 すると、地上を歩く一体の魔物が確かにいたのだ。場所は丘の外堀から東へ少し行ったところ。
 ゴツゴツとした小高い岩山の狭い隙間を縫うように歩く巨体は、なにやら巨大な棍棒を引きずりながら、やがて岩陰へと消えていった。
 わしらは顔を突き合わせる。

「あれはなにかありそうだな」
「ああ、間違いなさそうだぜ」
「怪しい臭いしかしないものね」
「行ってみよう!」
「クゥちゃんレッツゴー!」

 竜を駆り岩山へと向かわせると、そこで問題が生じた。
 道は狭く、岩山は先が尖っているものばかりで、クゥーエルが着陸出来そうな場所が見当たらなかったのだ。
 右に左に首を振り、「クゥ……」と困り果てるような声で鳴く聖竜。
 その様子を見ていたクロエが、見かねるように勢いよく立ち上がった。

「わたしが場所を作るよ」

 言いながら手を空へ向けると、少し離れた上空に広がる白い魔法陣。「――ダムドヘイル!」魔法名とともに手を振り下ろした瞬間、魔法陣から光の鏃が無数に降り注ぎ、着弾した地上で爆発を繰り返した。
 尖った山は見る間に削れ、抉れ、やがてひと際大きな爆発とともに吹き飛び、真っ平らに均される。
 聖竜の神殿以上の離着陸場が出来たことにより、余裕をもって降り立つことが出来たのだ。

「クゥちゃんよ、しばらくここで待っていてくれるか?」

 愛らしく頷き返事する竜を残し、わしらは幅の狭い道を行く。
 地面に刻まれた引き摺った棍棒の跡を道しるべに、魔物の後を追った。
 曲がりくねりながらもひたすら直進すると、先の魔物が消えたであろう袋小路で行き止まる。

「行き止まりか、あいつはどこに消えやがったんだ?」
「跡はここで消えてるから、間違いなくここにいたはずなんだろうけど」

 皆で袋小路を見渡す中。
 十数メートルの高さはあろう突き当りの岩壁を見ていた楓が、「あっ」と気づいたように声を上げた。

「ここに亀裂があるけど……なんだろこれ。怪しくない?」

 楓が言う通り、岩壁には二メートルほどの高さまでひび割れのような物があり、不自然に少しだけ前へ突き出ていた。それはまるで入口に蓋をするような感じだ。
 この状況は絵本で読んだことがある。洞窟の先は別の場所へと繋がっているのだ。さしずめこの場合は魔王城。もしも絵本の通りだとするならば……

「お前さんたち、ここはわしに任せるのだ! ――開けゴマ!」

 得意満面で絵本通りに叫んではみたものの、岩壁はうんともすんとも言わない。
 袋小路に木霊した声が岩山に吸われ、静けさを取り戻す。急に胸の内に涼しい風が吹き込んできたような虚しさを覚えた。

「なんと。合言葉が違うのか、絵本のようにはいかんということだな……無念」
「まったく、仕方がないですわね。勇者様、少し下がっていてください」
「……はい」

 ソフィアの言葉に素直に従い、とぼとぼと後方へ下がる。
 入れ違いに前へ出たソフィアは岩壁のすぐ手前まで歩いていくと、腕を引き絞るように後ろへ構え、グッと拳を握り込んだ。

「爆裂破砕拳ッ!」

 叫んで繰り出した連撃はとてつもない速さで、ボボボボと空気摩擦で拳と軌跡に炎が走るほど。
 数十発もの拳撃が岩壁に叩き込まれると、バガバガ音を立てながら岩の扉らしき物体は破壊され尽くした。
 爆裂拳と破砕撃を組み合わせたような破壊力に度肝を抜かれる。
 積み上がる瓦礫の奥には、ぽっかりと口を開ける洞窟の入口があった。

「私にかかればお茶の子さいさいですわ」

 ストレス発散にでもなったのだろうか、すっきりとした顔をしソフィアはそんなことを呟く。
 決して気分を害しようというわけではないのだが、しかしわしは少しばかりの危惧をもらす。

「消えた魔物に気付かれやしないだろうか……」
「なに言ってんだおっさん、出てきたら叩き切るだけだろ」
「そうだよ勇者さん、燃やしちゃえばいいんだよ」
「こんなところまで来てそんな心配するとか、オジサンは心配性だなー」

 女子たちに励まされ、多少勇気を取り戻す。が、上空からでも分かった魔物が引き摺っていた棍棒は、かなりの大きさだったのだ。あんなものに殴られたら一溜りもない。わしなどぷちっとぐしゃっと叩き潰されてしまうだろう。
 皆に「そうだな」と顔は笑えても、膝まで笑ってしまっていては示しがつかん。
 わしはペチンと膝をひと叩きし、高らかに告げた。

「よし! では行くか!」

 頷き返す女子たちを引き連れ、そして洞窟の中へと勇み入った。

 洞窟内はいきなり広い空間だった。松明がところどころ壁に掛けてあるため、光源に困ることはなかったが。
 黒い鍾乳石が連なる荘厳に見えなくもない洞内は、奥へいくにつれ入り組んでいるので、なかなか先は見通せなかった。
 魔物の出現を警戒しつつも慎重に奥へ向かって進んでいく。
 しばらく歩くと、二股に分岐する分かれ道に立つ。

「これどっちに行けばいいのかな?」
「どっちも行って確かめてみればいいんじゃない?」
「それか二手に分かれるかだな」
「どちらかに強力な魔物がいたらどうするのよ」

 やんややんやと意見を言い合う女子たち。
 わしは振り返り、皆に向かって確信をもって断言する。

「こういう場合、左に行くのがいいと絵本で見た気がするぞ」
「それは迷路の話だろ」
「しかも壁に手を付くんじゃありませんでした?」
「その話聞いたことあるけど、結局迷路にもよるから意味ないと思う」
「へぇーそんなのあるんだね。初めて聞いたけど、意味ないなら意味ないね!」

 小馬鹿にされたようでなんだか悔しいっ。
 わしはぷんすか怒りながら、「なら待っておれ、今すぐに行って確かめてくるからな!」と一人左の道へ入ったのだ――。

「……ひどい目にあった」

 結果として、行き止まりの左の道は罠しか仕掛けられておらず。
 踏んだ床がスイッチとなっていたようで、毒の霧は出てくるわ槍は飛んでくるわ、つぶてが飛んできたり巨大な石ころに追いかけ回されたりなんかした。
 石ころは皆のいる分岐まで追ってきたが、またもソフィアに破壊してもらい事なきを得た。装備がグレードアップしたためか、毒の霧以外のダメージは皆無。
 毒はクロエに治癒してもらい、いまは右の道へ入った皆の後ろを、肩を落としながら付いて歩いているところだ。

「おっさんはもう少しくらい慎重になれよな」
「勇み足なのは構いませんが、私たちの迷惑も考えていただかないと」
「すまん……」

 皆の背に向かって謝ると、先頭を歩いていた楓が突然立ち止まり「みんな止まって」と小声で促してきた。
 何か見つけたのかと居並ぶ女子たちの背から向こうを覗いてみる。
 そこには闇色の巨大な球体が浮かぶ、広い空間が存在していた。
 球体は天井から伸びる何筋かの光によって支えられていて、球体から放出されるエネルギーがその筋を通り、洞窟の外へ向かって放出されているように窺える。

「――まったく毎日毎日、こんなところに敵が来るわけでもねえってのに結界の番なんてさせられて。オレはそんなに暇人じゃねえってんだ」

 広間から急に声が聞こえ、見ると球体の周囲をのしんのしんと歩くデカい魔物が、愚痴りながら尻を掻いているのが見えた。
 右手で引き摺る巨大な棍棒から、外で見た魔物に違いない。

「どうやらあれが結界を張っている球のようだな」
「訊く手間が省けたぜ」
「頭悪そうな魔物で助かるわね」
「どうする? 魔物と球で二手に分かれる?」
「あの球、結構厄介そうだよねー。あれは火力で吹っ飛ばした方が楽そうな気がするなー」
「ならば決まりだな。わしらで魔物を叩き、クロエが高位魔法で球を破壊する。これでどうだ?」

 提案に皆「異議なし」と頷き、「ではいくぞ!」わしの号令とともに広間に躍り出た。
 クロエは後方ですぐさま詠唱に入る。
 砂利を踏む音に気付いたか。尻を掻いた手を嗅いでいた魔物は緩慢な動作で振り返ると、ギョッとした顔をした。

「なんだお前たちは!? 敵かッ?」
「見てわからんか。魔王を倒しにやってきた勇者一行だ!」

 言い捨てブランフェイムを抜き放つと、「クソゥ」と吐き捨て魔物は岩石で出来た棍棒の柄を両手で持った。
 下顎から突き出るように伸びる牙。体は黒く体格的にはオークにも似ているが、豚共よりも締まった体つきで頑強な筋肉で覆われていた。
 魔物百科事典で見た記憶がある。たしかこやつはオーガという鬼の一種だ。
 腕均しとしては申し分ない。
 わしは駆けながら腕を後方へ回し、そして――「先制のワルドストラッシュだ、くらえぇえい!」皆に断りなく腕を振り抜く。
 幅広の光の刃は一直線にオーガへ向かう。
 しかし、鼻息荒く棍棒を持つ手に力を込めると、「ふんっ」とオーガは凄い速さで棍棒を盾にした。
 ストラッシュはそれに阻まれ空しく爆散する。

「あぁー! 貴重な一回分がぁああ、許さん!」
「断りもなく先制するからですわ」
「魁はあたしらに任せろよ。大技は隙を突かねえと当たらないぜ。特におっさんのはな」

 わしを置き去りにし、ライアとソフィアが洞内を駆ける。
 魁はあたしらに。言葉通り、その攻撃はほぼ同時だった。
 足の速さを生かしたソフィアがオーガの背後を取り、振りかぶられる棍棒にも構わず直進するライアと挟撃を仕掛けたのだ。
 オーガは膂力をもってさらに大きく振りかぶると――その棍棒は前に振られることはなく、半回転しながら後方のソフィアを狙った。

「チッ、そっちかよ。あたしの方が痛いぜ、後悔させてやる!」

 回ったことで空いた左の脇腹を目がけ、童子切を抜刀し、無視されたことへの苛立ちをぶつけるように斬り抜けた。
 ざっくりと裂かれた胴部からは血が吹きこぼれ、「ぬぅううん」とオーガは呻きをもらす。
 それでも振られる棍棒の速度は落ちず、不意を突かれた形となったソフィアへあわや直撃かという刹那――ソフィアの体を棍棒がすり抜けた。

「なにぃい!?」
「それは残像よ、お・馬・鹿さんッ!!」

 いつの間に上空へ逃れていたのか。いまだ揺らめく実体のような残像を余所に、ソフィアが空から降ってきて、重力と速度に乗せた重い一撃を頭頂部に見舞った。
「グベッ」と口を閉じ変な声をもらしたオーガ。
 そのあまりの衝撃は両の牙をへし折るほどだった。おまけに舌まで切ったのだろう、口からは大量の血をこぼす。

「さーてさて、お次は楓ちゃんの番だよー――土遁、鬼泥咬きでいこう!」

 素早く印を結び術名を叫ぶと、オーガの足元の土が急に波打った。見る間に土は変形し、口を開けた鬼の頭を二つ形作るとオーガの両脚に噛みついた。

「いてててて!」

 あじあじもぐもぐする鬼頭に足を取られ、オーガは体勢を崩し尻もちをついた。

「オジサン、いまだよ! 隙ありワルドブレイクだよ!」
「む? そういうことか!」

 楓はわしのために隙を作ってくれたのだということを瞬時に理解する。
 わしを立てることを忘れんとは、やはり気配りの出来るギャルなのだな。愛い愛い。
 楓に感謝しつつ再び腕を背後に回すと、わしは駆け出した。「いくぞ、」そして一発目のアローを放ち、すぐさま腕を引き戻して走る速度を上げる。

「くらえぇえい! これが勇者のワルドブレイクだぁあああ!」

 オーガの胴部にアローが到達するタイミングに合わせて、跳躍しながらブレイクを叩きつける。オーガの体に刻まれた輝くX字。光量を増し閃光が迸ると、瞬間的に爆発した。
 木っ端微塵となったオーガは肉片と化し、やがて光の粒子となって消える。

「やったね、オジサン!」
「うむ、華を持たせてくれてありがとうな、楓」

 駆け寄ってきた楓の頭を撫でてやると、「それほどでもないけどねー」とどこか得意そうに胸を張る。

「まあ、まだまだな部分はあるけど、おっさんも確かに成長してるんだな」
「あの一瞬で判断できたのは成長と言えますわね。以前よりは威力も増しているようですし」
「ん、そうか? わはは! わし勇者だからな、このくらいなんのなんの!」

 調子に乗って笑っていたら、案の定「調子に乗んな」と怒られてしまった。
 説教タイムかとシュンとしていたところ、「準備できたよ、みんな下がって」とのクロエの言葉に、皆でクロエの後ろまで下がる。
 準備していた魔法の属性はどうやら光のようだ。
 真白い魔法陣の中に立つクロエの体からは眩いばかりの魔力が立ち上っている。

「――ブランデルペスト!」

 魔法名とともに解き放たれた力は大きな光球となり、闇色の球体を取り囲むように三つ浮揚する。そして高速で回転を始めると徐々にその円を狭めていき――闇の球に触れた瞬間に大爆発を起こした。
 まるで爆発を取り込むように何度も炸裂し、膨大な魔力の奔流が渦を巻き始める。刹那、閃光が瞬くとひと際大きな轟音と共に爆縮し、闇の球体もろとも跡形もなく消えた。

「…………なんちゅう威力の魔法だ」
「クロエはすでに賢聖レベルの魔法使いなのかもな」
「一番聖クラスに近いのは確かかもしれないわね。クレリック職はすべてマスター済みって前に言っていたし」
「すごいなークロエちゃん。魔法王国の王女様なんだっけ? アタシも上忍になればこのくらい出来るようになるのかな」

 感心しながらも、どこか不安を感じているような眉の傾き。
 さすがにこのクラスの威力をとなると、厳しいものを本人も感じているのだろう。
 わしは「そうだな」と頷きつつも楓に告げた。

「しかし、楓には楓にしか出来ないこともある。諜報、隠密。そして的確なアシスト。お前さんの忍術にわしらはずいぶんと助けられているのだ。それを忘れんでくれ」
「オジサン……」

 ふと皆を見渡した楓に、女子たちはその通りだと言わんばかりに深く頷いた。

「ありがと、みんな。元気出たよ」

 言って、目に滲んだ涙を拭う楓。
 やはり、仲間っていいなあ。
 こうして助け合いながら、補い合いながら共に成長してゆけるのだ。
 わしもまだまだ発展途上! であればいいが……。

「ん?」

 ふと黒い球体が浮かんでいた真下に光る物を見つけたわしは、一人そちらへ向かった。すると、正二十面体の真っ黒い結晶のようなものが落ちていたのだ。

「なんだこれは?」
「どうしたんだおっさん」

 集まってきた皆に、拾った結晶を見せる。
 覗き込む愛い女子たちの顔が勢ぞろい。
 事が事であったならば、わしのマイサンが暴発してしまいかねん状況だが……いや妄想は置いておこう。

「こいつは……なんだ?」
「たぶんさっきの爆縮で出来たんじゃないかしら?」
「なにかに使えそうかな?」
「一応取っておいた方がよさそだねー」

 何に使用できるのか定かではないが。
 女子たちの進言通り、わしは道具袋へ黒い結晶を大事に収めた。
 これでようやく、魔王城への結界も解けたはずであろう。

「ではクゥーエルの元へ戻るか」

 頷く女子たちとともに、わしは結界の洞窟を後にした。
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