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おお勇者よ、死んでしまうとは情けない……えっ、ならお前が行け?【長編版】 作者:黒猫時計

第三章 ロクサリウム編

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冒険者ギルド

 昔読んだ絵本の世界そのもののような、レンガ造りのロクサリウムの街をしばらく歩き、わしらは商店街へ赴いた。
 装備を一新するためにも、ここの武具の相場をまず知ろうと思ったからだ。いまの所持金では足りないと分かっているが、目標とする金額が分かればただ闇雲に金を稼がなくてもいい。
 まあ、多いに越したことはないが、やはり目標設定は必要だろう。
 向かった武器防具店には、門衛らが身に着けていた中級装備があった。
 フレイムタン、アイスブランド、サンダーブレード。どれも12000Gだ。魔物には弱点となる属性があるモノもいるらしく、効率よくダメージを与えるためにもこれらは三種持っていた方がいいとライアに聞かされた。
 ちなみに防具もそれぞれの属性を軽減するものがあり、値段は各々20000Gだ。全部揃えるとなると……きゅ、96000G?!
 ああ……また風俗が遠のく。仰ぎ見た空が目に染みるな。
 そんなわしを横目にし、「担当属性をばらけさせるって手もあるけどな」と付け足したライアはというと、

「おっ、この刀はいい感じだな」

 並べられた商品の一つを手に取ると、それを吟味し始める。
 漆黒に塗られた鞘から抜くと、薄紫の波紋が美しい白銀の刃が陽光を反射した。
 商品名は『紫電の太刀』
 どうやら電撃を纏わせることが出来るようだ。

「しかも珍しいことに鍛造だぜ!」

 ライアは嬉しそうに、鍛えられていることに歓喜する。

「たしか、ここには大きな工房があった気がするわ。魔法使いが火を起こすから、一般的な武具屋よりも燃料費なんかが安く済むのよね」
「なるほど。街の人間同士で助け合っているのだな」

 燃料にかかる労力や費用を、その分武器に注ぐことが出来るというわけだ。
 それにしても、燃料費が浮くのならもう少しくらい安くしてくれてもいいと思うのだが。……まあ、魔法を込めるための宝石とやらが貴重だから、この値段もやむなしという感じなのだろうが。

「決めた! あたしはこいつを買うぜ!」

 声を上げたライアは、店主に購入する旨を口にした。
 わしは値札を見てみる。……30000G、だと? こんな大金を迷いもせずに即決とは。一体いくら持っとるんだ……。
 さらに腰から黒鞘の方を外し、店主に差し出して言った。

「あ、ついでにこの刀を売りたいんだが、いくらでもいいぜ」
「ちょいと見させてもらいますよ……」

 武器屋の店主は刀を抜くと、刀身を弱く叩いたり表裏をくまなく観察したりして、再び鞘に戻す。

「こいつは鋳造ですね。それにわずかに錆が浮いてますし。中古でも売れないので、買い取りは800Gになりますが?」
「ああ、それでいい」
「かしこまりました」

 ライアは店主から売値分のGを受け取り、紫電の太刀を購入し清々しい顔をしてわしの元へ。

「あたしは一応雷属性にしたからさ。おっさんは炎か氷辺りにしたらいいんじゃないか?」
「ああ、属性をばらけさせる云々の話か」

 確かに、一人で複数属性持てば便利だろうが、金がかかるし荷物もかさむしな。分担させるならば、わしも戦闘での役割を持てることになる。少なくとも足手まといにはならなくなるのでは……。

「では、わしはフレイムタンという剣にしようと思う、が」

 道具袋から財布を取り出して所持金を確認。
 町へ入る都度しこしこ素材を売っていたが……やはり足らんな。ふとそこで、ライアのように装備品を売れば良いのではないかということに気づく。
 いますぐに売っても問題ない物と言えば。
 盾、くらいか。しかし、二人がグリズリー退治をしてくれた報酬で購入したものだ。わしにとっては思い出も同然。二人と旅をした証でもある。売っていいものだろうか……。
 答えは否、だな。これはある意味、わしの宝物だ。表面が溶けて使い物にならなくなっていたとしても、わしはこの盾は捨てん。

「――ふむ、もう少し金を貯めてからくるとしよう」
「なんだよ、その盾売らないのか?」
「これは、まあ取っておく」
「かさばりますよ?」
「良いのだ」

 わしは首を振って微笑を浮かべた。不思議そうな顔をした二人が小首を傾げる。
 この思いは、今際の際にでも話すことにしよう。きっとわしの愛を受け、二人は股を、あいや頬を濡らすことだろう。それまでは胸に秘めるぞ!
 次は道具屋と踵を返そうとした時、店主の男が少し遠慮気味に声をかけてきた。

「あの、余計なお世話かもしれませんが。道具や装備品のかさばらない魔法の袋が道具屋に売ってますよ?」
「なんだとッ!? それを早く言うのだ!」

 そんな便利アイテムがあるとは知らなかった。
 わしらはさっそく道具屋に走り、その袋を見たのだが。値段が9000G(しかも10%OFF)となっていて、結局わしには手が出なかった。二人はしっかりと購入したがな。
 金がないなら依頼をこなすしかないという話になり、『冒険者ギルド』いわゆる斡旋所へ向かうことになったのだ。

 商店街を東に抜けしばらくすると、青い看板を掲げた赤レンガの大きな建物が見えてきた。
 斡旋所と聞くと微妙な思い出しかないが、それでも金を稼ぐには有用。ここは斡旋所ではなくギルドだと言い聞かせて、わしはその扉を開けた。
 ロビーに足を踏み入れ、そして驚く。グランフィードなどとは比べ物にならないほど盛況だったからだ。
 二階まで大勢の人々で埋まり、掲示板も上下二段になっていて張り紙で埋め尽くされている。この勢いなら二階にも掲示板がありそうだ。

「ロクサリウムとはそんなにやることがあるのか?」
「まあ魔法都市だしな。それなりに仕事が多いんだろ」
「前の土地と同じに考えてはいけませんよ。なにせここは大陸なのですから」

 そういうものか。
 人々が多いということはそれなりに困りごとも多い。仕事も多い。だから必然的にやれることも多くなる。
 グランフィードならまだしも、アルノームなんかは本当に小さいしな。城下町のほかにあるのは村一つと二階建ての尖塔だけ。
 そんなド田舎と都会を比べてはいかんか。

 いや、そんなことよりもだ。
 あの魔法使いの女子はここにいるのかいないのか。それが非常に気になるところだな。ゴンザスの村に立ち寄っていないとするならば、この街を目指した可能性は高い。途中のオルファムでも町人に聞いたが、見ていないと言っていたし。
 それに魔法使いということは、もしかしたらロクサリウムに縁のある娘かもしれんしな。あの容姿の美しさはそうそうお目にかかれない。息を呑むなど初めての経験だった。
 もう一度会えたらな。
 そんなことをぼうと考えながら、人々の間を縫って掲示板へ。
 見上げると、膨大な量の依頼が大手を広げてわしを迎えた。
 ざっと流し見てみると、魔物の討伐や町へのおつかい。お屋敷のメイドだったり喫茶店のバイト。もちろんカジノや風俗なんかの依頼もある。

「これでは目移りしてしまうな」
「そう言う割には、さっきから見てるところがずっと一緒だぞ?」
「本当に懲りませんね」
「そんなことはないがな」

 わしだって負けた時は懲りた気がした。勝った時は嬉しかったが。
 それに調子に乗って風俗に向かい、目と鼻の先で強盗に遭った時なぞは落ち込んだものだ。
 やめようとはさすがに思わなかったが、それでも傷心した。
 しかし、なにかを得るためには時に踏み込んだことをしなければならないと、昔読んだ絵本の主人公が言っていたのだ。覚悟がなければ得られるものも得られないと。
 だからわしは、ここロクサリウムで踏み込んだことをしてみようと思った。
 視線を上げた先で、一つの依頼がわしの目に留まった――。
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