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神無の世界 作者:赤雪トナ
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20 名剣プライア 後

 そうして八日が過ぎる。クリスティーは決めたようにライドの元へ通い続けた。タイミングが合わず会えなかったり、会えても追い返されたりしながらも、辛抱強く通っていた。
 そんなクリスティーの話を四人は聞いて、息抜きをさせていた。進歩のない状況に溜まっていくものがあると思ったからだ。
 四人がダンジョン探索から帰ると、クリスティーはいつもの位置にいたのだが、初日と同じように難しい顔となっていた。

「またなにかありましたか?」
「あ、イオネ。それに皆さん。なにか、あったのかもしれない」

 最近は一緒に食事を食べるようになっており、椅子に座りつつ話を聞く。

「実は一昨日からライド様に会えていないのだ。最初はタイミングが会っていないと思ったが、それが三日続くとな。それにどうもルバルディア勇隊のメンバーが落ち着かない様子を見せている」
「探索から帰ってきてない可能性があるのか」

 シデルの言葉に頷く。

「それならば急いで事情を聞きに行った方がいいのでは? 危機に陥っているのなら助けに行った方がいいでしょうし」
「ライド様に邪険にされているせいで、ほかのメンバーも私を避けがちでな、詳しい情報を聞き出せないのだ。だからどう動いたものか……」
「あそこは有名だし、管理所にもなにかしらの情報が入っているんじゃ?」

 セルシオの提案にクリスティーは、はっとした表情を見せる。クリスティーは挑戦者ではなく、管理所のことが頭から抜け落ちていたのだ。
 立ち上がろうとしたクリスティーにリジィが聞く。

「えっとプライアってすごい剣を持ってるんでしょ? それなのに帰ってこれなくなるの? 魔物相手ならピンチにならないと思う」
「レジェンド武具は本来の持ち主以外では扱いきれないからな。ピンチに陥ることも考えられるのだ」

 そこらの武具よりは強いが、子孫が使うと希少武具に負けることすらある。子孫以外では使うことすらできない。さらに年代を経ると弱体化していく。

「もしくは」

 セルシオに全員の注目が集まる。

「使えない状況に陥ったか。使えないと持っていても無意味だし。最悪……」
「最悪?」

 続きに嫌に予感がする。喉を鳴らしクリスティーは続きを促した。

「壊れて使えない状況なのかも? 抜いて見せなかったってことは見せられない状態だから、かも」
「たしかにそう考えることもできますわね」
「それだけはあってほしくないな」

 クリスティーは苦りきった表情でそう言い、管理所へと歩いていった。
 管理所では、情報を聞くことができた。数日前に身分証明の問い合わせが届き、ルバルディア家の関係者と認められているからだ。
 その情報によると、ルバルディア勇隊のトップが百六十一階に行くと言ったまま消息を断ったことがわかった。その中には当然ライドもいて、さらにはお金を管理している者もいた。つまり救助を出そうにもお金がなくてできない。借金すればいいのだろうが、アーエストラエアでも有数な集団というプライドが邪魔して金貸しへと足が向かないのだ。借金以外での金策に走り回っている最中らしい。全員のお金をかき集めると二十万と少しは集まるだろうが、それだと宿暮らしどころか食事もできなくなる。自力で助けに行こうにも、トップ以外のメンバーは百四十階辺りしか到達しておらず、助けに行けないのだ。
 この情報を得た時は既に午後七時過ぎで、クリスティーがお金を借りて救助隊を募集しようとしても、金貸しは店仕舞いしていて無理だった。明日の朝一番にお金お借りようと考えて、傭兵ギルドで募集依頼を出し、帰ってきたのは午後九時だった。

「お、帰ってきたな」
「四人とも待っていたのか?」
「どうなったか気になって」

 セルシオたちは平気そうだが、リジィは少し眠そうにしている。
 そんな四人に経緯を話していく。

「百六十一階か。俺たちが行ける階なら探しに行けたんだがなぁ」
「その気持ちだけで十分だ。少し聞きたいんだが、金貸しのいる場所を知らないか? 傭兵ギルドで聞き忘れてな」
「いくらぐらいかかるものなの?」

 セルシオの疑問に、十六万コルジと答えた。
 百五十階辺りの救助で十六万の依頼は高額となる。これはクリスティーが同行するのでその護衛も含めているということと、確実にライドの元へたどり着きたいので強者を雇うからだ。

「それなら出せるけど」
「一万六千ではないぞ? 十六万だぞ?」
「そんなにお金持っていましたの?」

 クリスティーとイオネが意外といった表情を見せている。
 奴隷だったことやお金を稼いだことは話していないので、セルシオが百万以上持っていることをイオネも知らないのだ。

「出せるよ。きちんと返してくれるなら出すよ? 使う予定のないお金だし」
「それはありがたいが、生活用のお金もなくなるのでは?」
「出しても余裕ある」

 なにか裏があるのだろうかとクリスティーはじっとセルシオの目を見る。それにセルシオは不思議そうな顔でいるだけだ。そこに邪なものを感じ取れず、クリスティーは甘えることにした。

「では借してもらえるだろうか? 利息は一ヶ月三パーセントほどでいいだろうか?」
「利息ってなに?」

 借金をしたことがないセルシオは、借金に関しての細かいことを知らず首を傾げる。
 クースルトからお金を借りていれば知る機会があったのだろうが、結局は借りておらず知る機会がなかったのだ。文字ツールで得た知識の中にも利息に関して知識はなかった。
 利息の説明をシデルから受けて、セルシオは首を横に振る。そういうもの目当てに提案したわけではない。恩を受けたお返しにと提案したのだ。

「アカデミーからの謝礼が利息分だったってことでいいと思うよ」
「……ありがとう」

 クリスティーは深々とお辞儀をする。貴族としてははした金でも、借りたことでルバルディア家に関して変な噂を立てられでもしたら困る。それを回避できるのはありがたかった。いつか恩を返すと心に誓う。
 その日の話はそれで終わり、翌朝ダンジョンに行く前にセルシオはクリスティーと一緒に傭兵ギルドへと向かった。ギルドにお金を渡しておくためだ。ほかの三人は先に管理所へと行ってセルシオを待つ。

「来たか。こっちは信頼できる奴らに声をかけておいたぜ」

 ギルド職員のそばに四人の男女がいる。その四人の中にセルシオが会ったことのある者がいた。以前バデリア親衛隊が暴走した時に事情を話してくれた女槍使いがいるのだ。しかし両者ともその一度の出会いを覚えていないので、反応することはなかった。
 四人は腕に黄色の布を巻いている。
 それは彼らがオールドべム戦団ということを示していた。オールドべム戦団とは設立三百年を誇るトップパーティーの一つだ。最古のパーティーはガッドブーム戦団で、設立五百年となる。この二つはアーエストラエアだけではなく、世界的にも有名だった。そしてオールドべムがガッドブームをライバル視していることもわりと有名だ。
 救助隊によろしくと挨拶を始めたクリスティー。それを見てセルシオはさっさと用事を済ませてしまおうと職員に話しかける。

「お金の受け渡しはどうしましょうか?」
「ん? お前さんが持ってきたのか?」
「はい」
「こっち来てくれ」

 職員に連れられてセルシオはカウンターへと移動する。
 職員は掌が納まる程度の底の浅い箱をカウンターに出す。その箱にはコードがついており、別の機材に繋がっていた。

「これに手を入れて、十六万コルジ出してくれ」
「溢れませんか?」
「大丈夫だ。腕輪からこっちの機材に移動するからな」

 職員が大丈夫だと言っているのだから問題ないのだろうと、従い十六万コルジを出した。
 硬貨が溢れることなく、セルシオの所持金から十六万が減った。

「入金を確認した。これで依頼は成立だ」
「俺はお金を持ってきただけなんで、もう帰っていいんですよね?」
「ついていかないのか?」
「はい」
「なら帰っていいぞ」

 許可を得たセルシオはクリスティーに声をかけてギルドを出る。
 管理所で三人と合流したセルシオは、そのままダンジョン探索へと向かった。その三十分後に自己紹介など話し合いを終えたクリスティーたちもダンジョンへと入っていった。入るためだけに、クリスティーは管理所に登録していた。

 クリスティーが宿に帰ってきたのは二日後の午後三時だ。その間ずっとダンジョンにいた。これは百六十一階を隅々まで探したからだが、深く潜っていくと一日かけても最短ルートで帰還の岩から出発の岩にたどり着けないこともあり、泊り込む準備をして挑む必要が出てくる。
 探索から帰ってきた四人は、顔色の悪いクリスティーから部屋に誘いを受けた。クリスティーは一人部屋で狭いので、四人の部屋に行くことになる。

「それでその顔色の悪さはどういうことですの? 見慣れない剣を持っているということは回収はできたのでしょう?」
「ライドって奴が死んじまってたか?」

 それならば消沈していても無理はないだろう。

「いえライド様は大怪我なさっていたが、生きてはいる」

 ライドたちは転送系の罠に引っかかり、パーティーがばらばらになっていた。仲間がいれば倒せる魔物も一人では厳しく、なんとか仲間と合流できた時には皆ボロボロだった。これは駄目だと帰ろうと考えていたらアラートアイの上位種に遭遇し、退路が塞がれ決死の覚悟で魔物を撃退したはいいが動くことすら難しく、魔物を通さない障壁を発生させるアイテムを使って休み、傷を癒していた。その障壁はずっとあり続けるわけではなく、三時間と短い。アイテムは合流するまでに使い切り、癒しきれない傷と体力のまま、帰還の岩目指して少しずつ進んでいたところを、救助隊に発見されたのだった。

「私たちを見て、安心したのだろう。パーティー全員が気絶してしまった。一時間ほどその場で待機して休ませ帰ってきた。その休ませている間に、剣を回収させてもらった」

 ライドたちはダンジョンから出ると再び気絶したので、プライア回収には気づかなかった。

「ここまでは問題ないよね」
「ああ、問題なかった。問題はその後だ。一応本物か確認するために剣を抜いてみた……」

 その時の再現のつもりなのか、クリスティーは持っていたプライアをゆっくり抜いていく。

「折れてる」

 半ばから折れている剣を見てリジィが漏らした言葉に、沈痛な面持ちでクリスティーは頷く。
 刃は曇り一つなく磨きぬかれた美しいものだ。数百年前のものだと信じられないくらいに。折れていなければ観賞用の剣としても非常に高い価値がついただろう。
 折れたのは劣化していたせいだ。強化されたといっても時間の流れには勝てない。このプライアだけではなく、ほかのレジェンド武具も壊れたという報告はあるのだ。耐久年数でいうと常に使っていた場合四百年弱。保管されていた場合は千年ということがわかっている。千年以後は軽く振った程度で壊れてしまうほどに脆くなる。
 プライアもこの例に漏れず、劣化が始まっており、ライドが百五十階で戦った強化体との攻防で壊れてしまったのだ。
 これにはライドも本家から責められる想像しかできず、必死に隠していた。最悪ルバルディアの名を取り上げられる。そうするとライドは剣を持ち出したのではなく盗んだ犯罪者となり、挑戦者や傭兵に追われることになる。
 だからクリスティーの前で抜かなかったのだ。時間稼ぎでしかないとわかっていながら。
 クリスティーは剣を鞘に戻す。

「どうしたらいいと思う?」

 聞かれても困るというのが四人の心境だ。

「どうもこうもありのままを報告するしかないと思う」

 リジィに同意するように三人も頷く。

「折ったのはあなたではありませんし、責められる心配はないでしょう?」
「それはそうだが、本当に折れていたのを見るとどうしたものかと頭を抱えてな」
「持って帰ればわかることですから、早く報告した方がいいと思いますわ。あちらでなんらかの対策を考えてくれるかもしれません」

 対策といってもなにも思いつかないだろうなと全員が思っていた。
 レジェンド化された武具を修理できた者の話など聞いたことがない。

「……それしかないか。今から連絡取ってくる」
「いってらっしゃい。後で愚痴でも聞きますわ」
「……頼む」

 気の重そうな様子で、宿から出て行った。
 一時間ほどして帰ってきたクリスティーと四人は夕食を一緒に食べて風呂に入った後、部屋で酒盛りをして愚痴を聞いていく。今日の鍛錬は中止で、クリスティーの憂さ晴らしに付き合うことで時間が潰れた。
 時々息抜きさせていたが、それでもストレスはあったのだろう、ライドへの不満が次々と溢れ出し、最後は酔いつぶれた。
 リジィの分のベッドが空いているため、そこに寝かせて三人も寝る。リジィは途中でリタイアし、セルシオの膝を枕にして寝ていた。
 翌朝、五人で朝食を食べている時に見慣れない男が慌てた様子で宿に入ってきた。鉄色の髪はぼさぼさのまま、着ている服も乱れていて、余裕のなさが現れていた。
 その音に二日酔い気味のクリスティーは顔を顰める。

「クリスティーっ!」
「大声出さなくてもわかりますよ。二日酔い気味なんで騒がないでください、ライド様」
「こいつがルバルディア勇隊のトップか」
「そうです。この方がライド・ルバルディア様。ルバルディア家長男です」

 シデルの言葉にクリスティーは頷き答えた。

「紹介なんかいいっ。剣は!? 剣はどこだ!?」
「だから大声は……剣は部屋です」
「……見たか?」
「折れてましたね。当主様に報告しました」
「……もう報告したのか?」
「昨日のうちに」

 がっくりとその場に膝をついた。ライドは報告をなんとか止めさせようと来たのだ。

「……こうなったら逃げるか?」
「私としては報告の返答を待った方がいいと思います。逃げたら大陸中に手配書が出る可能性もありますよ」

 逃げられたらめんどくさいことにしかならないと思い、待機を勧める。
 勢いよく顔を上げたライドは、必死な表情でクリスティーを見て頼む。

「フォローしてくれっ頼むっ」
「フォローって無理ですよ。どんなことを言えば折れたことを誤魔化せるのです?」
「……そうだっ。剣が盗まれて取り戻す過程で折れたとかっ!?」
「家宝を持ち出して、さらに盗まれて、折れた? 現状と変わらないと思いますよ」

 盗まれるなど管理が杜撰だと指摘され、叱責を受けるだろう。

「ほかにはなにかっなにかないか!?」
「下手に言い訳したら状況悪化するだけだと思います」
「他人事のようにっ」
「他人事ですよ。だいたい勝手に持ち出すこと自体おかしいのです! 継承権はオディア様にあるのですよ!? どうして持ち出したりなんかしたんですか!?」

 大きな声を出し自爆したクリスティーは頭を抱える。

「……憧れだ。先祖がプライアを持って栄光を得たように、俺もプライアを持って活躍したかった」

 幼い頃からの夢だったのだ。触ることすら禁じられていた剣を手に、魔物を斬り、難問を解決し、喝采を浴びたかった。
 成長してプライアを持つことすらできないと知った時は絶望した。自分だって勇者バムの血を引いているのにどうしてだと。
 そうして持ち出しても勇者に負けない活躍をすれば、継承権が移るのではと思いプライアを持って家を出たのだ。
 結果は一都市で名を上げはしたが、それでは誤魔化せないほどのヘマをしてしまった。

「とりあえず宿でおとなしくしていてください。返答がくれば、それを伝えに行きますから。もうなるようにしかなりません」
「……」

 昨日のクリスティーと同じように消沈した様子で、ライドはとぼとぼと帰っていく。
 少しでも状況をよくできた可能性があったとしたら、折れた時点で正直に報告していた場合だろうか。

「少し可愛そうだったね」
「言ったように私ではどうしようもないからな」

 リジィの言葉に、クリスティーは表情に苦いものを浮かべた。

「これからルバルディア勇隊はどうなるんだろうな」
「さあ、わかりませんわ」

 シデルが抱いた疑問に、誰も答えは持っていなかった。
 そして翌日、体が訛るということと暇ということでクリスティーがダンジョン探索についていき、宿に戻ってくると待ち人がいた。
 ルバルディア勇隊のメンバーらしいが、クリスティーには見覚えがない。二ヶ月前に入ったばかりの下っ端らしいので無理はないのだろうが。

「何者かは一応わかった。それで何用なのだ?」
「あんたが奪っていったプライアを返せっ」

 往来でプライアのことを話す少年に、クリスティーは顔を顰めた。

「プライアを? あと声をおさえろ」
「それは俺たちルバルディア勇隊の象徴だぞ!」

 ライドはあれをプライアだとは公言していなかったが、抜いた時の輝きを見た者はプライアだと確信していた。
 この少年は勇者の子孫というライドに憧れてルバルディア勇隊に入ったのだ。ライドがプライアを持って颯爽としている姿が少年にとっては当たり前だったのだ。
 昨日からライドの腰にはプライアはなく、また元気もない姿を見て、自分がライドを助けるのだと奮い立ちクリスティーに会いにきた。
 だがそんな事情などクリスティーには関係ない。

「なにを言っている。これはルバルディア家の象徴の一つだ。勝手にそちらの象徴にされては困る」
「ルバルディア家のものっていうならライドさんのものじゃないか!」
「違う。これはルバルディア家長女オディア様が正統に受け継ぐものなのだ。勝手に持ち出したのはライド様だ。私は当主様から取り返すように命を受けてやってきた。持ち帰るのを邪魔される筋合いはないっ」
「そ、それでもそれはライドさんが持つべきものだ」
「下らん戯言を聞く気はない、帰れっ」

 怒気を込めたクリスティーの視線に怯んだ少年はそのまま宿を出て行った。
 注目が散ると同時に、クリスティーは大きく溜息を吐いた。

「お疲れ様」

 労いの言葉をかけたセルシオに手を上げて感謝を示す。

「ああいった者は、ライド様が慕われているという証拠なのだろうが」

 困ったものだと首を横に振る。
 少年のような者はこの後もちょくちょくと現れた。そうして七人目でクリスティーは切れた。

「いい加減にしろっ。お前たちのそういった行動がライド様を追い詰めていっているとなぜわからん! これは貴族であるルバルディア家当主から正式な命令を受けて取り返しにきたものだ! ルバルディア家は王からも目をかけられている家だ! これをお前たちが取り返すということは、貴族から奪うということと同じだ! 当主が王に相談すれば一国を挙げて取り返しにもくる可能性があるのだぞ!」

 ここでクリスティーはプライアを勢いよく突き出し、

「一国を相手するつもりがあるなら持っていけ!」

 ルバルディア勇隊のメンバーに啖呵をきった。
 その剣幕に押されたということもあるが、一国相手という規模の大きな話に気後れしたメンバーたちは顔色を悪くして去っていった。
 これ以後はルバルディア勇隊が訪ねてくることなかった。
 待っていた返答は三日後にきた。ライドは緊張しっぱなしで、ダンジョン探索どころをではなかった。クリスティーはライドを慕う者を相手する以外は、諦めの境地にも似た感じで苦しむことなく穏やかに過ごしていた。
 クリスティーがプライアを所持していることは知られているが、啖呵が噂になったのだろう誰一人としてプライアのことを聞いてくることはなかった。
 クリスティーへの内容は、仕事達成を労わるもので剣が折れていたことを責めるものは一切なかった。
 ライドへの内容は、一度帰って来いというものだった。それ以外には帰ってこなければルバルディアの名を剥奪とだけ。叱責がないことが余計に不安を煽られた。

「皆、世話になった」

 旅支度を整えたクリスティーが宿の前で頭を下げている。プライアはなくさないよう全体を布で巻かれて、荷物の縛り付けられている。

「借りたお金は遅くとも再来月には支払われる」
「わかりました。世話はお金くらいで、あとは会話くらいしかしてませんけどね」
「いやいやその会話などが助かったのだ。ずっと一人で悩むなんてことにならずにすんだ」
「少しでもお役に立てたのなら幸いですわ。元気で過ごしてくださいね」
「イオネもな。短い間の付き合いだったが、友達になれたと思う。いつかまた会いたいものだ」
「私もですわ」

 そう言って二人は手を差し出して握手する。戦いでも互いに刺激し合えたが、普段の暮らしでも気があったのだ。
 手を放したクリスティーは爽やかな笑みを残して、ライドの待つ宿へと去っていった。

 ルバルディア家に帰ったライドは当然叱責を受けた。だがその叱責は剣を壊したことへではなかった。
 誇り高い勇者の子孫ともあろうともが、盗人のような真似をしたことを怒ったのだ。
 剣を壊したことへの叱責もあったが、壊れない物などなく壊れてしまったものは仕方ないと軽いものですんだ。
 ルバルディア家の誇りはレジェンド武具ではなく、勇者バムの勇姿と持っていた志なのだと説教は長く続いた。
 罰は根性を叩きなおすということで、一年間の領地謹慎。ライドはその旨をルバルディア勇隊に手紙で伝え、仲間たちにパーティー存続を頼んだ。
 プライア目当ての者や勝手に持ち出したということに幻滅した者が抜けたものの、多くは残りルバルディア勇隊は存続した。
 折れたプライアは誰にも使えないように、ガラスケースの中に抜き身まま収められる。時々博物館に貸し出され、多くの者が見られるようになった。剣に直接触れず動かせる保管方法のおかげか、プライアは長く長く存在することになる。
感想誤字指摘ありがとうございます

》もしやお姫様抱っこ
YES。リュックを背負っているので背負えないのです
+注意+
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