第三章 愚作 下
「ル、キ」
呟いた後、ZEROは瞬きをする。
『しかし、“ソレ”を作る時には失敗は許されない』
ソレ。
ソレハ、“ミカ”。
ZEROは目を伏せる。
自分には有る失敗が無い、完璧な存在。
完成品。
それはZEROの『心』を、ある筈も無い『心』を萎縮させる。
そして、その完成品はルキの命を奪おうとしている。
ルキは絶対に殺されてしまう。
ZEROガ、ルキヲ、マモラナクチャ・・・
「ルキ!」
叫んだZEROに、瑠樹は怯む。
その一瞬の間、真っ直ぐに伸ばした瑠樹の右腕が緩む。
ZEROが瑠樹の腕の緩んだ瞬間に、腕を跳ね退ける。
瑠樹は息を飲んだ。
そして、ZEROは瑠樹の前に立ちはだかる。
ばっと大の字に両腕を広げ、口を真一文字に結ぶZERO。
男二人は目を見開く。
ミカの瞳が紅く光る。
途端に、ミカの腕からZEROを遥かに凌ぐ光線が発射される。
ZEROは微動だにせず、近付いてくる光線を見据える。
瑠樹が目を見開く。
「ZERO・・・!」
ZEROはゆっくりと振り向く。
そして、にこりと笑った。
「ダ、イ、ジョ、ブ」
そう言い終わるかどうかのうちに、光線はZEROに命中し、貫通する。
ばらばらになったZEROの上半身と下半身がそれぞれ、音を立てて地面に落ちる。
瑠樹は、一度だけゆっくり瞬きをした。
音も無く地面に膝を着く。
無造作に落ちた、ZEROの上半身を拾い上げる。
ZEROの瞳から、完全に光が失せていた。
綺麗だった紫色のショートヘアは焦げだらけになっている。
だらんと垂れ下がったZEROの右腕が、胴体から落ちた。
見るも無惨な姿になったZEROの頭を瑠樹がそっと撫でると、首が千切れ頭部が転がる。
そのZEROの頭を大切そうに抱き抱えた瑠樹は、ゆっくり立ち上がった。
「お前等はそれで満足なのか」
首を二人に突き付ける瑠樹。
「これが望みなのか」
二人は顔を見合わせて、鼻で笑う。
「行くぞ」
「はい、博士」
「ハイ」
ミカと二人が背を向けた。
瑠樹は唇を噛み締め、ふと落ちたZEROの右手に目を落とす。
そしてにやりと笑った。
瑠樹の手で拾われたZEROの腕は、瑠樹の左腕と共に真っ直ぐにミカを向く。
激しい轟音。
そして、煙が晴れた時、ミカの姿はどこにも無かった。
「・・・ミカ」
荒垣が呟く。
「ミカーーーー!!」
地面に崩れ落ちる荒垣。
もう一人の男が、瑠樹に近付いてきた。
身構える瑠樹を手で制する男。
「・・・ミカは、博士の亡くなった娘さんの代わりなんです」
溜め息をつく男。
「それが、何時の間にか大量殺戮用の兵器を作り始めて・・・でも、確かに初めは博士も、愛を持ってミカを作っていたんです」
「それがどうした」
瑠樹のぶっきらぼうな返事。
「だから、だから博士は・・・ZEROに自我をプログラムしたんですよ・・・人間に近付けるために」
瑠樹が目を見開く。
「・・・もう、博士は馬鹿げた物は作らないでしょう・・・ありがとう」
瑠樹は答えなかった。
そのまま瑠樹は男に背を向け、何処かに去っていった。
その瞳に、溢れんばかりの涙を溜めて・・・
死神四 愚作 終わり
五に続く
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