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  幸せのありか 作者:smile
それぞれの気持ち
ぼさぼさになった髪を戻しながら、私は
「絶対レッグって私を犬か猫みたいに思ってるよね。」
するとレッグが鼻でふんと笑い
「最初は子ザルが親とはぐれて森でさ迷っているのかと思った。」
ひ、ひどい。
「サルじゃないし!失礼な!」
私がそう叫ぶと、
ああそうだな、と言ってレッグは私を見て優しくほほ笑んだ。
ふだん無愛想な人がこういう笑い方をするのは卑怯だ。何も言えなくなる。
必死に何か話題を作ろうと視線を動かす。
「そういえば、アレスとの結婚っていうのは本当にしなくちゃいけないの?」
「そうだ。・・・とは言っても、まだユリは幼い。実際結婚するのはあと2,3年先だろう。」

思わぬ展開だった。童顔のおかげで、すぐには結婚しなくてすみそうだ。
「この国の結婚できる年齢っていくつなの?」
自分の年齢設定を明確にするため聞く。
「正確に決まっている訳ではないが、15歳ぐらいだ。」
ちょっと待て、その年齢だと私は12,3歳ぐらいになる。
そんなに幼く見えるのか、それとも彼の眼がおかしいのか。
「で、おまえは何歳なんだ?」
答えを迫られ、焦った私は
「じゅ、じゅうさんさい・・・」
と彼の想像の年齢を答える。日本だったら絶対に通用しない嘘だ。
「じゃああと2年ぐらいだな。」
と言ってレッグは立ち上がる。信じたのか。
「あと、お前の警護を陛下から命令されている。
後宮に本当は男は入れないのだが、今回は特例だな。お前が特別だからだ。
だが、めんどうだから騒ぎを起こすなよ。」
と言って去って行った。

彼が居なくなった庭を再び眺める。
完全に太陽が地平線を超え、世界を明るく照らしている。
落ち込んで冷たくなった心が、温められているようだ。
2年もあれば、なんとかなるかもしれない。
そう自分を励まし、立ち上がる。

テラスから部屋に戻ると、丁度シェリさんが部屋に入ってきた。
「おはようございます。ユリ様。」
とお辞儀をして言う。わたしも
「おはようございます。シェリさん。」
とにっこり笑って返事をした。
それを見たシェリさんは、どこかほっとした様子で頬笑み返してくれた。
きっと心配させたのかもしれない。
「きのうは追い出してすみませんでした。あと、寝衣を出してもらったのに、
ドレスのまま寝てしまって皺になっちゃいました。ごめんなさい。アイロン貸して頂ければ元に戻します。」
シェリさんはどんでもない!という顔をすると
「そんなことユリ様がする必要はございません!我々でいたしますから、どうかお気づかいなく。」
確かにドレスをアイロンがけしたことないし、たぶん相応の技術がいるのかもしれない。
下手にやらないほうが彼女たちにとっても良いのだろう。
「じゃあ、お願いします。色々ご迷惑かけてすみません。」
「いいえ、これが我々の仕事ですから。ユリ様に仕える事が出来て、私は一番の幸せ者です。」
と言って彼女はにっこり笑った。


それから、私は城の中でずっと過ごした。
城の中、といっても後宮からあまり外に出してもらえず、軟禁に近い日々を送った。
アレスとは全く会わなかった。私も彼もどんな顔して会えばいいのか、わからなかったのだろう。
レッグに、近日中に黒器がこの国に現れた事を公式に世界に発表する、と聞いたときは
これで自由になれると思った。実際はその逆だったが。

ある日のこと、シェリに
「エアナ様がお見えになっております。お会いになりますか?」
と聞かれた。誰のことか一瞬分からなかったが、すぐにアレスの恋人ということを思い出す。
私も一度話したかったので、もちろん、と答えた。

「突然の訪問、大変失礼いたします。ユリ様。」
そう言って彼女は静かにお辞儀をして言った。私は
「いいえ。私も話したかった事があるので、大丈夫ですよ。」

小さな丸いテーブルを挟み、向かい合わせに私たちは座った。
シェリさんがお茶とお菓子を持ってくる。
ありがとうございます、とお礼を言ってから再びエアナさんと向き合う。
「たぶん、話したい事っていうのは同じことだと思います。」
「ええ。そうですわね。」
「アレスがこの結婚に反対なのと同じように、私もこの結婚に反対です。
なので安心してください。どうにかしてこの話をなかったことにします。」
まるで宣言するかのように、そう言いきると、なぜかエアナさんは悲しそうな顔をした。
なぜ?ここは喜ぶべきだろう。
するとエアナさんは
「いいえ。私はこの結婚に賛成です。そのことをお伝えに参りましたの。」


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