始まりと遭難
目覚めたのは霧に包まれ鬱蒼とした森の中だった。
昨日は自分の通う高校の卒業式で、そして私のこと平田 百合は卒業生としてそれに出た。
式の後、同級生たちとお別れ会としてカラオケに行って飲んで食べて騒いで、
夜遅くに家に帰って、疲れていたため制服も脱がずベットに倒れたとこまでは覚えている。
朝のまどろみの中、肌寒く感じた私は布団をかぶろうと手を伸ばしたが、
目的のものはそこにはなく、代わりに湿り気がある冷たい土に触れた。
「ん?」
指先に異常な違和感を感じ一瞬で覚醒した。
さっと飛び起き、辺りを見回す。
「・・・・え!?」
そこには蔦が絡まる巨木や、地面を這うミミズやムカデ、
その他手つかずの森を思わせる様々な物があった。
雨に濡れた枯れ葉の匂いがツンと鼻を刺し、聞いたことのない鳥の声が響いている。
自分の寝てるはずの部屋が、家が、ずいぶんと風通しの良くなってしまったようだ、
と本気で一瞬思ってしまうくらいその状況についていけなかった。
唖然とその場に座り込んでいたら、膝に何か触れたのでふと見ると、
大量の眼球と足をもつ緑色の巨大芋虫が私の膝の上を這っている。
「ひぃ!」
とその虫を払いその場から立ち上がった。
こぶし大の大きさもあるその虫は、のろのろとまるで何事もなかったかのように
枯れ葉の下に消えていく。
私は今までその地面につけていた髪にも何か付いているのではないかと乱暴に頭を掻いた。
引っ掻いた頭皮の痛みでどうしようもなく冷静になった。
理由はわからないが、自分はなぜか森の中にいるようだ。
再び辺りを見回す。肉眼で見る限り森はものすごい深そうだ。
______泣きたくなった。
ここは地球のどこなのだろう。
なんでここにいるのだろう。
自分の寝てる間に誰かがいたずらで私をここに連れてきたのだろうか?
考えても考えても疑問しか浮かばない。
しかしただ一つわかることは、とりあえずこの得体の知れない虫の這う
この森からはやく抜け出したい気持ちで一杯だということだ。
チラチラと木陰から見える太陽の光が私の肩を撫でる。
私は無意識にその光を進む方向に決めて歩き始めた。
目覚めた地点から歩き始めて半日経ったぐらいだろうか。
見たことのない虫や動物には会ったが、人には会えず、それどころか
歩き続けても文明を感じさせる物に全く出会わない。
もちろん靴は履いておらず、直接地面に触れる靴下は泥だらけだ。
歩いててわかったことと言えば、そこはただの森ではなく山ということ。
それも遭難の代名詞の広大な山脈のようだ。そして私は実際に遭難しているのか。
単体の山なら単純に下に降りていけば人里に出られるのだが
山脈となると話は別で、下ろうとすると逆に遭難しやすくなるらしい、
と、父が酒の席で高らかに演説していたのを思い出した。
ただの酔っ払いサラリーマンのうんちくなのであまり信じたくはないのだが、
半日も経って何も進展がないこの状況に焦らない人はいないだろう。
酔っ払いの言うことを信じるしかない。
信じたからには頂上まで登ってやる!と意気込んでから数時間後、途中小さな川を見つけた。
いくら湿度があるからと言って、汗で体外から出た水分は空気中からは吸収できない。
衛生面は少し気になったが乾いた体を潤そうと川の水を飛びつくように飲んだ。
人目が無いとは不思議と人を奇行に走らせるようで
私はまるで犬みたいに直接川に顔をつけて飲んだ。
もちろん自分が可笑しなことをしていることはわかっているので、
満足するまで飲み終わった後、自分の滑稽さに腹を抱えて笑ってしまった。
意外と人とは丈夫にできているものである。
水分と一緒に心も満たされた気分でさらさらと流れる川を見つめていたら
あることに気がついた。
川は海につながってるということを。
そう。海につながっているということは川を下れば
人里があるだろう平野に出られる可能性が高いということだ。
そして川沿いに歩けば水に困ることはない。一石二鳥ではないか。
半日とちょっと歩き続けたにも関わらずその希望の光に、
棒になりかけていた足の疲れも吹っ飛んでしまった。
そして私は駆け出すように川沿いに山を下りて行った。
これからの旅が自分の予想を遥かに上回る長旅になるということを考えもせず。
初投稿で処女作です。
夜中の変なテンションにまかせて書きました。
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