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破壊の御子 作者:無銘工房

龍驤の章

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第72話 スノムタの屈辱12-顎(後)

 第三軍を率いる将軍も土煙を上げて疾走してくる集団に気づいた。
「……! あれは、ゾアンどもかっ?!」
 その将軍が言うように、それはゾアンの大軍であった。
 その数は、およそ二千あまり。いずれも四つ足となり、激しく土煙を上げながら、こちらへ向けて疾走してくる。
 その先陣を駆けるのは、もちろん平原最強の勇者と呼ばれるファグル・ガルグズ・ガラムその人だ。
「皆、(おく)するな!」
 四つ足で大地を駆けながら、ガラムは大声を張り上げる。
「あれを牛と思え! 少々危ない角を生やした牛だ! 我らゾアンは、牛を狩るのならば得意であろう!」
 平原にはいない馬を使った騎兵や戦車には驚かされてきたが、もともとゾアンは山刀ひとつで野生の牛に挑みかかり、それを狩ってきた種族だ。荒れ狂う大型動物をあしらうのは得意とするところである。
 その鼓舞に続き、大族長となったガラムの代わりに〈牙の氏族〉をまとめている歴戦の戦士ファグル・ジャガタ・グルカカが叫ぶ。
「ホルメアという牛どもを狩るぞ!」
 それに〈牙の氏族〉のみならず、すべての戦士たちが「おうっ!」と唱和した。
 それを確認したガラムは、ぐんっと音を立てて加速する。
 ひとり突出して駆けてくるガラムに目がけて戦車隊から矢や投槍が飛んできた。だが、左右へと跳躍するようにして狙いを定めさせないガラムの走りの前では、そのいずれも虚しく大地に突き立つだけである。
 矢と投槍をかわしたガラムは、さらに加速した。
 あたかも一個の砲弾と化したガラムは、その勢いのまま敵戦車隊へと突っ込む。
「こしゃくな獣め! このまま馬で踏み潰してやれ!」
 先頭を走る戦車に乗っていた将軍は、御者にそう命じると、戦車の木枠をしっかり掴んで衝突の衝撃に備える。
 いかに平原最強の勇者と呼ばれるガラムであっても、馬と正面からぶつかり合えばただではすまない。馬蹄にかけられるか、撥ね飛ばされるか。そう思われた瞬間、ガラムは地面を削るようにして急停止する。
 そして、轟っと吠えた。
 それからガラムは馬の鼻先をかすめるようにして真横へ跳んで、衝突を回避する。
 これには戦車を曳いていた馬たちも驚いた。思わずその場に急停止してしまう。
 だが、曳かれていた戦車はそうはいかない。
 急激な制動に行き場を失った勢いが、逃げ道を求めて車体を上へと跳ね上げた。そして、跳ね上がった戦車は馬の(くびき)を支点にして、ゆっくりと弧を描くように宙を舞ったかと思うと、次の瞬間には、さかしまになって馬の前の地面に叩きつけられる。
 爆砕するかのように激しく砕け散った戦車に乗っていた将軍と御者は、ほぼ即死であった。
 さらに、後続の戦車が残骸を避けきれずに乗り上げてしまう。残骸をジャンプ台のようにして宙を跳んだ戦車は何とか着地するが、その衝撃に耐え切れずにバラバラに砕け散る。その戦車を曳いていた馬たちは(ながえ)だけを引きずって、どこかへ走り去ってしまう。
 そうした戦果を確認する間もなく、ガラムはさらに動いていた。
 何とか残骸を避けて通り抜けようとしていた戦車へ向けて跳躍すると、空中で自慢の二刀の山刀を抜き放つ否や、こちらを見てアッと驚いている御者と兵士の首筋に刃を走らせる。御者と兵士は首から大量の血を噴き上げながら、走り続ける戦車の上から転げ落ちた。
 瞬く間に戦車三台を仕留めた大族長の活躍に、ゾアンたちの戦意はいやがうえにも燃え上がる。
「皆、大族長に続けっ!」
 グルカカの叫びとともに、次々とゾアンの戦士たちは戦車に襲いかかった。
 ある者は牛の群れを追い詰める勢子(せこ)のように馬を驚かせて戦車を横転させ、またある者は戦車に乗る兵士や御者に直接踊りかかる。
 当然、中には弓矢や投槍で命を落とす不運な戦士もいた。
 しかし、速度では戦車にも引けを取らず、機敏さでは圧倒的に勝り、なおかつその数は戦車の十倍に達するゾアンたちである。程なくして戦車隊は壊滅させられてしまった。
 そして、ホルメア国側にとって不運だったのが、この時代において戦車に乗るのは将校や領主など――つまりは部隊の指揮官たちであったことだ。
 いきなり多くの指揮官を失った第三軍は、統制を失う。
 また、領主らが率いてきた兵の多くは、労役として駆り出された農民たちである。もともと嫌々戦場に出てきていた彼らは、目の前で自分らの領主が殺されたことで、最初から(とぼ)しかった戦意も根こそぎ吹き消されてしまった。
「領主様がやられたぞ! 逃げろ! ゾアンに殺されるぞぉー!」
 その叫びを皮切りに、歩兵たちは一目散に逃げ出してしまった。
 それを追撃しようとしたゾアンの戦士たちだったが、ガラムが制止する。
「追撃は不要!」
 ガラムは手にした山刀をこちらに側面を向けるホルメア国討伐軍第二軍へと向ける。
「我らは、このまま一気に敵主力へ突撃する!」
 ガラムの声に応じて、シシュルが突撃の太鼓を叩き始めた。

                    ◆◇◆◇◆

「……先を越されたか」
 ガラムが第二軍へ突入する際に叩いた太鼓の音を聞いたズーグは、悔しそうに舌打ちを洩らした。
 ガラムが相対した第三軍とは異なり、ズーグの相手となった第四軍の歩兵を率いていたのは国軍の将校であった。その将校は第三軍と同様に戦車隊を目の前で潰されて逃げようとした歩兵たちを何とか踏みとどまらせ、ズーグたちに戦いを挑んだのである。
 しかし、それがかえって不運であった。
 自分らが戦おうとしているゾアンたちを率いていたのは、その強さだけならば平原最強の勇者ガラムすらも超えると讃えられ、またその戦いぶりの激しさは同胞すら震え上がらせると恐れられた《怒れる爪》クラガ・ビガナ・ズーグである。
 戦車部隊を壊滅させられても敵歩兵が撤退しないと見るや否や、獰猛な笑みを浮かべて牙を剥いたズーグは〈爪の氏族〉の中からえりすぐった猛者たちを引き連れて斬り込んだ。
 その後は、まさに虐殺であった。
 ズーグは向かってくる敵を大きな山刀の一撃で兜ごと脳天をかち割り、斬りかかってくる相手は顔面を鷲掴みにしては後頭部から地面に叩きつけ、逃げようと背を向けた相手は強烈な前蹴りの一撃で背甲ごと背骨を粉砕する。
 そのズーグの戦いぶりに触発された〈爪の氏族〉の戦士たちも、自らの族長に勝るとも劣らぬ苛烈な戦いぶりを披露した。
 これに他の氏族の戦士たちはそろって目を剥いて驚いた。
 かつてズーグは、他の氏族の者のみならず同胞からも狂戦士と呼び恐れられていた男だ。ところが、五年前を境にし、それまで敵視していたガラムと手を取り合ったばかりか、そのガラムを大族長に強く()し、その後も大族長として盛り立ててきた。
 これには多くの者が、さすがの《怒れる爪》も《猛き牙》の威風の前にその爪牙を折られたのだとひそかに噂し合ったものだ。
 ところが、それがとんだ勘違いであったと、その場にいたゾアンの戦士たちは思い知らされる。
 あの《怒れる爪》は爪牙を折られたどころか、常に剥き身だった爪牙を隠すことを覚えただけだったのだ。そして、隠している間に磨かれた爪牙は、以前よりもその鋭さを増していた。
 自分らはとんでもない奴を侮っていたと他の氏族の戦士たちが全身の毛を逆立てる様子に、〈爪の氏族〉の戦士たちは得意げな顔になる。
 当の本人であるズーグは、自分の風評などどこ吹く風であった。その代わりに〈爪の氏族〉の者たちが、自分らの族長を侮られていると噂に憤慨していたのだ。
 それだけに、そうした他の氏族の戦士たちの反応に「見たか! これが我ら〈爪の氏族〉の族長よ!」と、そう彼らの目は語っていた。
「さて、と――」
 ひととおり敵の掃討を終えたズーグは、ゾアンの戦士たちをぐるりと見回した。
「――楽しくなってきたな」
 この唐突な言葉に、ゾアンの戦士たちは誰も反応できなかった。誰も言葉を返さないのに、ズーグは不思議そうな顔になる。 
「ん? 何だ? おまえら楽しくないのか?」
 そう言うとズーグは、牙を剥いて笑う。
「俺は楽しいぞ。奴らは、親父たちが無念とともに、その強さを語ってきた強敵だ。今から、そいつらを叩きのめすのだ。これが楽しくないわけあるまい」
 ゾアンの戦士たちの間から熱気にも似た闘志が湧き上がった。
 それを見たズーグは満足げに唇を吊り上げて笑うと、自慢の山刀の背で自分の肩を叩く。
「さあ、行くぞ。狙うは、あの重装槍歩兵ども! もたもたしているような奴には獲物を残してやらんから、そう思え!」
 そう言うなりズーグは先陣を切って走り出した。その後を彼の闘争心に感化されたゾアンの戦士たちが(とき)の声を上げながら続く。
「やれやれ。討伐軍の兵士たちに、同情するよ」
 そうこぼしたのは、第四軍と相対していたドワーフと人間の混成部隊を率いていた人将マルクロニスであった。
 マルクロニスが見る限り、ズーグほど前線向きの将はいない。その剥き出しの闘争心は率いる兵へと燃え移り、皆を恐れを知らぬ戦士へと変えてしまうのだ。彼が率いれば羊すら狼を噛み殺す猛獣となるだろう。
「おい、人将殿。わしらも行かんのか?」
 マルクロニスに声をかけたのは、ドワーフを指揮するためにセティウスの代わりに副官としてついてきたドワーフの戦士であった。
「当然、行くとも」
 そのドワーフの問いにマルクロニスは、さも心外だという顔で答えた。
「ソーマ様にも言われているからね。ここで手を抜いたと思われれば人間の立場がなくなる。――さあ、ゾアンに続くぞ!」
 マルクロニスの号令とともに、人間とドワーフたちもゾアンの後に続いて重装槍歩兵たちへ突撃していった。

                    ◆◇◆◇◆

「何だと……! 側面を攻撃しているのは、ドワーフや人間だけではなく、ゾアンたちだとっ?!」
 そう愕然とするヒュアキスに、伝令兵たちはうなずいてから、さらに続けた。
「ドワーフと人間の混成部隊を相手に手間取っているところへ二千以上ものゾアンたちの奇襲を受けた第三軍の戦車部隊は、ひとたまりもありませんでした。また、それを見て歩兵たちは逃げ出し、第三軍は壊滅状態です!」
「こちらも同様です! 第四軍を敗走させたゾアンたちは、こちらが防御態勢を整える前に投石による激しい攻撃を加えた後に突撃してきたため、一気に近接戦に持ち込まれました! そのため被害は甚大!」
 これまでの戦況を鑑みれば、第三軍と第四軍を強襲したのは、先程まで自分らと相対していたゾアンたちに違いない。
 すなわち現状起きていることは、偽装撤退から転進したゾアンたちによる、第二軍側面への挟撃。
「破壊の御子めっ! 私を閣下と同じ目に()わせようというのかっ?!」
 ダリウス将軍を破ったボルニスの街近郊での戦いを再現しようとしている。
 ヒュアキスは、そう戦慄した。
 しかし、事態はその想像すらをも超える深刻なものだったのだ。
「伝令! 伝令! ヒュアキス副軍団長殿へ、伝達です!」
 さらにそこへ、後方からの一騎の伝令兵が最悪の報せを持ってくる。
「第一軍のラキウス将軍からの救援要請です! 現在、第一軍は強襲してきたゾアンたちと交戦中! 弓兵と軽装歩兵の第一軍では長く持ちません! なにとぞ救援を!」
「何だとっ?!」
 ヒュアキスは自分の顔から一気に血が引くのを感じた。
 第一軍はエルフ弓兵によって損耗し、今は第二軍の後方へと下がっていたはずだ。その第一軍が攻撃されている。
 これが意味するのは、現状が単なる第二軍への挟撃ではないということだ。
「おのれ、破壊の御子めっ! 貴様は、まさか! まさか……!」

                    ◆◇◆◇◆

 戦いに先立ち開かれた軍議において、蒼馬は皆に次のように尋ねた。
「ホルメアとの戦いですが、何をもって僕らの勝利としたら良いのでしょう?」
 それに、皆は顔を見合わせてしまった。
 しばらく待ってみても、誰からもこれと言った答えは出ない。やむなくガラムは、まず妥当と思われる答えを口にする。
「俺たちに向けられた討伐軍を蹴散らすか、それを率いているホルメア国の王子とやらの首を取ればいいのではないのか?」
 ガラムが挙げた勝利条件は、この時代のセルデアス大陸ではほとんどの者が納得するであろうものだった。
「それは、この戦いでの勝利にすぎません」
 ところが、蒼馬は首を横に振った。
「僕が目指す勝利とは、ホルメア国そのものに対する勝利です」
 蒼馬の発言に皆が驚く中で、マルクロニスが疑義(ぎぎ)(ただ)す。
「まさか、王都ホルメニアへ攻め上がるつもりですかな? それはあまりに無謀でしょう」
 ホルメア国に勝利するとなれば、(おの)ずと王都へ攻め上がり、ワリウス王の首級を挙げなければならない。
 しかし、ホルメア国の王都ホルメニアは歴史ある城塞都市である。その防備は固く、糧食などの蓄えも豊富だ。そんな王都を攻め落とすとなると、それは生半なことではない。また、攻略に手間取るようなことがあれば、王都の窮を知り集まった諸侯らの兵に囲まれて、今度は自分らが窮地に陥ってしまうだろう。
 ところが、そのマルクロニスの懸念を蒼馬は否定する。
「王都へは攻め上がりません」
 では、どうやってホルメア国に勝利するのかと疑問を浮かべる皆に、蒼馬は一拍の間を置いてから、次のように断言した。
「僕は、この渡し場での一戦でホルメア国そのものに勝利します!」
 蒼馬の言葉に、誰もが驚愕する。
 そうした皆の驚きの視線が自分に向けられるのを感じながら、蒼馬は皆が取り囲む大きな卓を示した。
 そこには戦場となる渡し場近辺の地図が広げられており、その上にはマルクロニスなどと何度も協議を重ね、ホルメア国討伐軍が敷くであろう可能性が最も高いと思われる布陣の形に駒が並べられていた。
 蒼馬は皆が見つめる中で、駒を手に取り動かし始める。
「まず、エルフ弓箭兵によって敵の弓兵部隊を排除。その後、出てくるであろう敵主力の重装槍歩兵たちをゾアンの投石で削りつつ後退します」
 卓の周りをせわしなく駆け回りながら、蒼馬は駒を動かし続ける。
「ゾアンは撤退を偽装して左右に分かれ、本陣の前へ敵を誘引します」
 ゾアンを示す駒をふたつに分けて、本陣の左右へ押しやる。そして、空いたところへ「黒壁」を示す駒の塊をまとめてずいっと押し出した。
「そして、ハリボテの砦の内側に用意した大量の攻城兵器で、これを全力で叩きます!」
 黒い駒の塊の中へ蒼馬が拳を叩きつけると、いくつもの駒がはじけ飛ぶ。
 それに、皆の口から感嘆の声が洩れた。
 しかし、蒼馬はそれで止まらない。
「ですが、攻城兵器による攻撃は、あくまで敵を混乱させ、その足を止めるにすぎません」
 蒼馬は卓の左右へと駆け回り、偽装撤退といって本陣の左右へと下げていたゾアンを示す駒を「黒壁」の駒の左右へと移動させる。
「敵が混乱している間に、偽装撤退していたゾアンたちを『黒壁』の側面へ転進。まるで獣の上顎と下顎のように敵を挟み込み、噛み砕く。さらに、後方を遮断し、一気に敵を飲み込みます!」
 盤上の駒を激しく動かしていた蒼馬の手が止まった。
 すると、卓に広げられた地図の上では、自分たちを示す駒が敵の駒を完全に取り囲んでいた。
「つまり、これは……?!」
 誰とも知れぬこの呟きに、蒼馬は小さくうなずいて見せる。
「そうです! 僕の狙いは、ただひとつ! ホルメアの武の象徴である『黒壁』の殲滅! これによって、僕はホルメア国に勝利します!」
 国王の首級を挙げるのではなく、敵主力の殲滅によって国に勝利する。
 いまだ国王が国そのものと思われていたこの時代では、にわかに理解しがたい内容であった。
 しかし、それを聞いた瞬間の驚きが去り、冷静になって考えれば、なるほどと納得できる。
 これまでも後先考えずに癇癪を起しているワリウス王ならば、たとえ渡し場での会戦に大敗しても、反乱奴隷討伐を諦めるとはとうてい思えなかった。
 だが、いくらワリウス王が戦おうとしても、それに応じる戦力がなければ戦いようがない。
 そのためにも撃退ではなく、徹底的な敵主力の殲滅が必要なのだ。
 また、殲滅しようとしている「黒壁」は、自他ともに認めるホルメア最強の軍団であり、蒼馬が言ったようにホルメア国の武の象徴である。
 そんな軍団が殲滅されたとなれば、その衝撃は計り知れない。国軍は戦意を喪失するのは無論、諸侯の中から蒼馬へと下ろうとする者が少なからぬ数で出るだろう。
 そうなれば、難攻不落の王都を攻めずとも、ホルメア国は滅んだも同然である。
 そこまで理解が及んだ皆は、さらに驚いた。
 そんな皆に向けて、蒼馬は言葉を続ける。
「ゾアンによって敵を包囲し、これを殲滅する作戦。――これを僕は『ゾアンの(あぎと)』と命名しました!」
 ホルメア最強の軍団「黒壁」を包囲殲滅する。
 それが「ゾアンの顎」と蒼馬が命名した作戦である。
 しかし、すでに蒼馬は完全な包囲ではないものの「ボルニス決戦」においても同様にゾアンの挟撃によって勝利を得ていた。
 また、敵主力をドワーフやディノサウリアンなどの重装歩兵や砦などの要害、時には地形を利用して拘束し、その間に機動力のあるゾアンやエルフ弓騎兵などで包囲し、これを殲滅するという包囲殲滅戦術をこの後も蒼馬が好んで行ったため、今回に限ってつけられた「ゾアンの顎」という名称は、後世ではあまり広く知られていない。
 それよりも、別の名で知られている。
 破壊の御子の抱擁(ほうよう)
 一度(ひとたび)その腕に抱き止められれば皆殺しにされると恐れられ、また実際に数々の敵を殲滅してきた、破壊の御子ソーマ・キサキがもっとも得意としていたと伝えられる包囲殲滅戦術の呼び名である。

挿絵(By みてみん)
 攻城兵器による攻撃によって大打撃を受けた「黒壁」。さらにゾアンたちによる包囲網が完成しようとしていた。
 しかし、ヒュアキスはそれでもなお(あらが)う。

ヒュアキス「真正面に全兵力を向けよ! 狙うは、敵の指揮官がいる本陣だ!」

 今まさに包囲されようとする中でヒュアキスが選んだのは、正面突破。だが、攻城兵器による激しい攻撃の中で、それを行うのは至難の業である。
 それを達成するために、ヒュアキスはついに切り札を切る。

ヒュアキス「『黒壁』熟練兵隊を前へっ!」

 それは「黒壁」の中でも最強の部隊。
 攻城兵器による猛攻もものともせず、味方の屍を踏み越えて蒼馬の本陣に迫る熟練兵隊。
 その危機を前にし、蒼馬に予期せぬ事態が訪れる。

シェムル「ソーマ! 次の指示を! ソーマ……? ソーマ?!」

 そこでシェムルが見たものとは?

次話「スノムタの屈辱13-熟練兵隊」

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包囲殲滅といえば、カンナエ! ハンニバル!
カンナエの戦い以降、あまたの戦場とあまたの戦記において多勢に対する寡兵での包囲殲滅は浪漫ですね!
それと同時に包囲殲滅を試みようとした多くの将軍が中央突破されて敗北し、多くの作家が容赦ないツッコミをする読者に包囲殲滅されるというネタでもあります。
特に、本作の読者の容赦のなさには定評が。今から読者の包囲殲滅に怯える作者ですw
しかし、史実とはいえ、あの状況で包囲殲滅を実行したハンニバル恐るべし。マジで、ハンニバル!
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