第2章:一ヶ月前
―1ヶ月前。
「彼女ができた?」
ナツメの言葉に、オレは素っ頓狂な声を上げた。そんなオレの反応も、ナツメは予想済みらしい。幾多の女性を虜にする、綺麗な笑みを浮かべていた。
「ああ。オレよりも年下でな・・・。ミナミという名前なんだ」
頬を染めて、ナツメは語った。オレは、うれしいような寂しいような気分だった。
オレと、ジンとナツメ。この3人組でいつもいろんなことをやってきた。ケンカも、3人でやってきた。ジンとオレだけ、ナツメとジンだけ、とかいうことはなかった。
きっと、ナツメのことだから、彼女をそれはそれは大切にするだろう。オレ達と遊ぶよりも、彼女と遊ぶだろう。こっちが、妬きたくなるくらい、ナツメはその彼女を愛するのだろうな。
でも、正直、オレはそこまで嫌じゃなかった。だいだい、ナツメは今まで彼女がいなかったことのほうが、おかしいのだ。男のオレも惚れ惚れするような、性格もルックスもナイスな奴なんだ。
ナツメが幸せならば、それでいい。
オレは、そう思った。だが・・・・。
「くそったれ」
地べたに座り込んだまま、ジンはそういった。
オレと、ナツメはジンに顔を向けた。ジンは、その傷の目立つ顔を上げて、ナツメをにらんだ。
「さっさと、愛しの彼女のところでも行けよ。どうせ、お前にとっては、おれやヒイラギよりも、その愛しのミナミちゃんのほうが大切なんだろ」
灰色の目を、ナツメに向け、冷たく言い放つジン。オレには、ジンの気持ちは、半分ぐらいにしか分からない。一緒にいたい気持ちは分かるが、なにもそこまで嫌味を言わなくてもいいと思った。
「おい、ジン。何もそこまで言わなくったって・・」
「いいんだよ、ヒイラギ」
ジンを、柄にも無くたしなめようとするオレの肩に、ナツメは手をやさしく置いた。
「もう、俺はお前達に会えないかもしれないんだから」
「え・・・・」
オレは、耳を疑った。
「ふん、やっぱそうなのか」
苦々しげにそうつぶやくジンの言葉も、俺の耳には入らない。
「おい、どういうことなんだよ、ナツメ!!」
食って掛かろうとするオレに、ナツメは静かに、しかしハッキリといった。
「オレは、組をやめる。足を洗って、この世界から身をひく」
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