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視点が、ジン⇒ヒイラギへと変化します。
内容薄いです。
アライヴ
作:亜月 聖



第28章:裏切りと戸惑い


ヒイラギが、絶体絶命のピンチに陥っているなんて知る由もない俺は、街中を歩いていた。

ヒイラギのために、俺がやれること。それは、雪花組副長という名を生かし、コウガを探し出すこと。
甘ったれたガキを、ヒイラギ達の前に突き出すことだ。

そう思って、頼れる仲間達に、連絡をした。もちろん、ナツメにはしてねえけどな。

ふと、俺の足が、とある繁華街の一角で止まる。見上げると、見覚えのある喫茶店の名前。

俺とヒイラギが、初めて出会った店だ。

この店には随分とお世話になった。ここは、24時間営業、年中無休で有名の喫茶店だ。
俺も何回も利用したし、密談にはもってこいなので、敵のヤクザ達との取引などにも、ここを使わせてもらった。

そして何より、ヒイラギに出会えた。
ヒイラギがいなかったら、今の俺は存在しなかった、と言っても過言ではない。
奴のおかげで、俺は沢山のことを学んだ。
俺より7歳も年下なのに、時々アスカを思わせるような「切れ」を見せる。
頭のいい奴だ。それでいて、気取ることがなく、人の気持ちや「痛み」を、きちんと分かってやれる奴だと思う。
ただのガキじゃない。
一年前、ヒイラギを拾ったときから、そう思っていた。
きっと、俺以外の、たとえばユキヒトなんかに拾われでもしていたら、彼の人生は180度回転していただろう。人を信じず、人を欺くことを快いと感じ、立派な殺し屋になっていただろう。

だから、俺は今でも、ヒイラギを拾ったことを、後悔などしていない。

たとえ、そのせいで親友と決別してしまったとしても。



俺が物思いにふけっていると、背後に人の気配を感じた。
振り返ると、そこには、ヤクザの群れ。
暑苦しいな。
俺は素直にそう思った。
「貴様、雪花組のジンだな」
随分えらそうな態度だな。どこの組の奴だ? 恨みなら四方八方から買っているが。
「何の用だ」
「組長の命令だ。顔貸してもらうぜ」
相手の言葉に、俺はそっとため息をついた。面倒だ。こいつら全員倒すなんて、時間の無駄だ。ま、秒殺だけどな。
俺が身構えた時だった。

「やめなさい!!」
女の声が、薄暗い繁華街一角に響いた。
俺は声のした方を見る。そこにいたのは、二十歳すぎほどの愛らしい顔つきの女性。
「副長!」
ヤクザAが声を上げる。

秋篠組副長、真央。
噂は聞いていたが、会うのは初めてだ。
真央はゆっくりと俺たちに近づいてきた。それだけでも、威圧感を感じる。さすがだ。
倒すには厄介な相手だ。

「副長、どうしてここに」
ヤクザの問いに、真央は思わず背筋をピシッと伸ばしたくなるような、厳しい声で言った。
「この人に手を出してはなりません」
「副長! 正気ですか!?」
ヤクザが声を張り上げる。同感だ。俺も耳を疑った。
「私はいつでも正気です。私と戦いたくなければ、すぐに立ち去りなさい」
真央の脅しから約3秒後。やくざ達は一人残らずいなくなっていた。
根性ねえな。

俺は、目の前で起こった出来事についていけない。

「雪花組のジンさんですね」
「ああ。あんたは、秋篠組の真央か」
「はい」
真央が首を縦に動かした。
「なんで、俺を助ける?」
「すべてを終わらせるために、です」
すべてを終わらせる? どういう意味だ?
俺が首をかしげていると、真央は真剣な表情で言った。
「ジンさん、私についてきてくれませんか」
「ああ?」
「あなたがお探しになっているコウガは、私の弟です。私は、あなたを彼のもとへ連れて行くことができる」
「・・・マジかよ」
「マジです」
なんなんだよ。全員繋がってるってわけか? 意味分かんねえな。
とりあえず、騙されたと思ってこいつについて行くか。
「本当に、案内してくれるんだろうな」
「はい、もちろん」
信用しても良い気がした。

この世界は、裏切り者には容赦がない。組を裏切ったとなれば、真央もただでは済まないだろう。それでも、彼女は俺を助けた。真実を見つけ、すべてを終わらせるために。
並みならぬ決意と、強い意志があるからこそ、今俺の隣に立っているんだろう。
ならば、俺も協力しようじゃねか。それ相応の覚悟を持って。
俺の意志は固まった。

俺は横にいる真央に顔を向け、言った。
「コウガのところへ案内してくれ」
「了解です」
真央は軽くうなずき、踵を返して歩き出した。俺も後を追う。

まずは、甘ったれたガキを捕まえる。コウガに言いたいことはたっぷりとあるが、奴には俺からは何も言わない。俺なんかよりヒイラギの方が、奴に言いたいこと、たっぷりとあるだろうからな。

コウガに会うのが楽しみだ。



「バイバイ、冬樹君」
そう言って、ユキヒトが引き金に手を掛けた時だった。

ピリリリリッッッ!!!

携帯の着信音が、けたたましく鳴り響いた。

ユキヒトの顔が、一瞬ゆがんだ。そして、舌打ちをしながら銃口を下げ、携帯を取り出した。

張り詰めていた空気が緩んだようだ。

オレも、ホッと息をつく。得体の知れない威圧感と、絶望感。それは、オレを恐怖の奈落へと、引きずり込もうとしていた。
電話を掛けてきた相手に、感謝しないとな。

オレがそう思っている間に、ユキヒトは電話に出ていた。
「僕だ。何か用? ・・・何だって?」
一瞬、ユキヒトが眉をひそめたのを、オレは見逃さなかった。

「・・・ふーん。真央がねえ・・・」
ユキヒトの顔に、冷たい笑みが浮かぶ。
オレと萩原は、状況について行けない。
「真央って、アラガキ邸の真央さんのことかな?」
「多分・・・」
萩原の問いに、オレは戸惑いながらもうなずいた。
まったく、何がなんだか分からないな。

「りょーかい♪ 真央は僕に任せて。君達は、もう一人の方に応援に行ってやってくれ。・・・うん。よろしく」

通話を切り、ユキヒトはため息をついた。
もう一人の方って、どういう意味だ?
真央は僕に任せて、ってことは、もしかして真央さんは、ユキヒトを裏切ったって事か?

何故だ? 萩原を呼び出し、オレを罠にはめたのは真央さんだろ? それなのに、一体、何があったんだ?

と、オレの思考はそこで強制的に遮断された。

「冬樹君、由美ちゃん。ゴメンね〜。君達の前に、始末しなきゃ行けない人間ができたから。ちょっと、ここで待ってもらえるかな?」
そう言ってユキヒトは、にっこりと微笑んだ。顔は笑っていても、目が笑っていない。

始末しなくてはならない人間って・・・もしかして真央さんのことか?


ユキヒトは相変わらず、オレに銃を突きつけ、真正面に立っている。
そのまま、ドカッと(何故か)手近にあった椅子に座った。ヤクザたちもどっかりと、腰を下ろす。
オレと、萩原は突っ立ったまま。
ユキヒトは、そのまま携帯を取り出した。視線は携帯だが、左手の銃はオレ達に向いている。
オレと萩原は顔を見合わせた。

「・・・何がどうなってるの? それに、いつになったらアスカさんは来るの?」

萩原の言葉に、オレは心から賛同した。

まったく、何がどうなってんだ?












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