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視点が、アスカ⇒ジン⇒アスカと変わります。
アライヴ
作:亜月 聖



第23章:一つ目の真実


「ヒイラギがアラガキ邸に行けって? 本当かい、ジン」
俺は、電話の相手、ジンに思わず問いかけていた。

ヒイラギと別れ、俺は近くの古本屋で、本を立ち読みしていた。
携帯が鳴り、相手がジンだと知ったときは驚いた。彼が、俺に電話してくるなんて、初めてのことだ。
その用件は、ヒイラギからの伝言だった。
なんでも、ヒイラギが切羽詰った声で、俺にアラガキ邸に行け、とジンに言ったらしい。

なんで、アラガキ邸? あそこにいるのは、アラガキ氏と、真央ちゃんだけ・・・。

「ジン。ヒイラギは理由とかは・・・」
「言ってねえぜ。問い直そうとしたら、切られちまった。その後、何度連絡しても、電源切ってるみてえでさ」
「そうか・・・」
俺は、片手をあごに当て、考え込んだ。ヒイラギの身に何が起こったのかは知らないが、どうやらアラガキ邸へ向かった方がよさそうだ。
「ありがと、ジン。とりあえず、行ってみるよ」
「気をつけろよ」
珍しいことを言ってくれるな、ジン。まさか、彼が俺を心配してくれる日が来るなんて思っても見なかった。
「サンキュー。ジンこそ、いろいろと気をつけな〜」
俺は、ジンにそう言って、通話を切った。
アラガキ邸か。まあ、確かに、俺も確認したいことがあるし。行ってみよう。

いざ、アラガキ邸へ。俺は足早に歩き出した。





アスカとの通話を終えた俺は、そっと息をついた。
そして、頭を上げて、目の前にある白い建物を見上げた。
陰気くせえな。
俺はこの建物が、大嫌いだ。

ふと、アスカの疑わしげな声が、頭の中にリピートされる。
俺からの電話に、随分と戸惑っていやがった。
ま、俺だって、ヒイラギの頼みでなきゃ、絶対にアスカになんか、電話しなかったがな。
ヒイラギの怒鳴り声。一体、何があったんだか。
だが、アスカへの伝言はともかく、秋篠組のアジトの事は気になるな。
さっきは、ヒイラギの真剣さに押されて、教えてしまったが、とんでもなく馬鹿なことをしたような気がする。

ナツメに知られたら、俺、殺されそうだな。あいつなら、やりかねない。
まあ、いい。ヒイラギだって、ガキじゃない。俺は、最近ようやくそのことに気づいた。
ガキだガキだと思っていたが、随分と成長した。人の痛みも分かるようになり、冷静に物事を考えるようになったと思う。
あいつはもうガキじゃない。俺や、ナツメが守ってやらなくても、あいつは生きていける。そんな気がする。

どうして、ヒイラギが秋篠組のアジトへ行こうとするのか、なんて俺には分からない。だが、あいつの好きにさせてやろうと思う。本当に、俺の力を必要としているとき、俺はヒイラギに力を貸してやりたい。ただ、あいつを過保護に守ってやるだけじゃダメなんだ。俺は、ようやくそのことに気づいた。

ナツメ、俺は成長したぜ。だから、お前も早く、成長してくれ。

俺は、入ろうとしていた目の前の病院を一瞥し、すぐに踵を返して、立ち去った。今は、あいつ―ナツメに会ってる場合ではないと思ったからだ。
ヒイラギが、何かを変えようとしている。俺にできることは、その手助けをしてやることだ。ヒイラギが、本当に、俺に助けを呼んだとき、すぐさま駆けつけてやれるように。
俺は、携帯の「A」というメモリを画面上に呼び出した。



「アスカ君じゃないか! 一体どうしたんだ」
アラガキ邸へ向かった俺を出迎えたのは、アラガキ氏本人だった。
真央ちゃんの姿が見えない。
「おじさん、真央ちゃんは?」
「真央は、一時間ほど前から外出中だ」
「そうですか・・・」
嫌な予感がする。勘違いだと良いけど。これ以上、アラガキ氏を落ち込ませたくない。

リビングに通され、俺はアラガキと向かい合って座った。

「おじさん。訊きたい事あるんです」
「何かな?」
俺はゆっくりと、言葉を選びながら訊いた。
「この家に、コウガという少年がいた時がありましたよね」
「ああ」
「ではその時、真央ちゃんは、この家にいたんですか?」
俺の問いに、アラガキ氏は随分怪訝そうな顔をした。
「そりゃ、いただろう。彼女は、一年前から雇ってるんだし。・・・いや、待てよ」
「え?」
アラガキ氏は、眉を寄せながら言った。
「そういえば、いなかったような気がする。あの時、真央は、一週間くらい休みを取っていて、コウガがこの家にいたのも、3日くらいだったしな」

アラガキ氏の答えに、俺は頭の中に電流が走った。
最悪。一番出て欲しくなかった答えが、出てしまった。
「真央がどうかしたのかい?」
アラガキ氏が、不思議そうに訊いてくる。俺は、答えるべきかどうか、迷った。その時だった。
「ただいま戻りました」
静かな声がして、俺は後ろを振り返った。

彼女が、真央が微笑んで立っていた。

「アスカ様。お見えになっていらっしゃったんですね。申し訳ございません。ちょっと出ていたもので」
その言葉で、俺は全てを悟った。

「真央ちゃん」
「はい」
「ヒイラギはどこにいるんだい?」
俺の問いに、真央は薄く微笑しただけだった。
どうやら真央は、自分の正体に俺が気づいたことを悟ったらしい。さすがだ。
一人蚊帳の外にいるのは、アラガキ氏だった。
「アスカ君。真央がそんな事知ってるわけないだろう。君は一体」
「いいえ、おじさん。真央ちゃんは全て知ってるはずです」
迂闊だった。俺は敵の前に、雪花組の「弱み」を見せびらかしていたようなものだ。己の迂闊さに腹が立ってくる。
肝心の真央は、微笑んだままだ。
「真央ちゃん。教えてもらわないと、俺としても、強行手段をとらなきゃいけなくなるんだ。俺はそんな事したくない。だから、教えてくれ」
真央は、黙って俺を見るだけだ。アラガキ氏は、呆然と俺と真央を、交互に見ている。だが、とても口出しできる雰囲気ではないと感じたのだろう。何も言ってこなかった。
良心が痛むが、今はアラガキ氏に説明してるヒマはない。

真央は、ゆっくりと口を開いた。
「・・・行かせませんよ」
今までの明るく、健気な真央の声とは違う、静かで冷たい声だった。
「あなたを、彼の元へ行かせはしません。絶対に」
「・・・俺は行きたいんだけどな」
薄く微笑して言うと、真央は唇の端を吊り上げた。
「絶対に、ダメです」
「じゃあ、君は俺をどうするわけ? 女の君が俺に勝てるとでも?」
悪いが、俺は敵には、女だろうがガキだろうが、手加減はしない。
だが、俺のそんな言葉にも、真央は動揺せず、首を横に振った。
「そんな無粋なまねはいたしません」
「じゃあ、どうする?」
「そうですね・・・。では、こうしましょう」
そう言って、彼女は銃を取り出した。
銃口は、まっすぐ俺に向いていた。
「ま、真央!」
アラガキ氏が止めようと、真央に近づいた。
「動かないでください、アラガキ様。あなたには、危害を加えたくありません。下がっていてください。これは、私と、アスカ様の問題なのです」
「ま、真央・・・。一体、どうして」
「それはね、おじさん。彼女が、ある組織の一員だからですよ」
俺は、真央から視線をそらさずに言った。
アラガキ氏の動揺が、背中越しに伝わった。
「組織って・・・。一体何の」
「・・・・・・」
俺は、一瞬ためらった。アラガキ氏に、言うべきか、言わないべきか。
だが、俺よりも先に口を開いた人物がいる。真央だ。
「アスカ様と、私は、敵対関係にあるんです」
「・・・何だと」
「アスカ様が、何の組織に加わっているかは、アラガキ様もご存知でしょう?」
「! ま、まさか・・・」
どうやら、アラガキ氏も勘付いたようだ。さっすが、俺の親戚・・・なんて、くだらないこといってる場合じゃない。
銃口は相変わらず、俺を狙っている。俺の身も危ないし、もっと心配なのは、ヒイラギのことだ。真央の正体が分かった今、事態は一番最悪で、ドロドロしたものとなっている。一刻も早く、終わらせなければ。それに、彼等が、ヒイラギをおびき出すために、誰か人質を取ってるかもしれない。まあ、大体見当はついてるんだけど。

俺が、そんなことを考えているとき、アラガキ氏は、呆然としながらも真実を見つけようとしていた。
「じゃあ、君は・・・!」
「はい、そうです」
真央は、どこか無邪気で、純粋な悪意を感じさせる声で告げた。

「私は、秋篠組第27代目副長であり、あなたの愛しのミナミ様と、ミライ様が助けてくださった、コウガ少年の姉です」












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