挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
パイリン・ザ・ゴーレムマスター 作者:大滝よしえもん
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

20/29

ゴーレムマスター vs 自称義賊 vs 多頭亜竜(3)

(3)

 鉱山の村・ゴルペンドルフを囲む山々の、西側に位置する一つ、それが紫水晶アメジストを産出するティーフリラミィネ。他の鉱山と異なり、ここだけは大空龍教団中央教区の直轄地であるのは、以前語ったとおりである。

 「紫水晶アメジストはここらの山の水晶の中でも一番高価、しかも埋蔵量が半端無いと言われていた。18年前にコレを、休戦の取引材料として辺境伯から譲渡された教団は、貴重な資金源ができたと大喜びしたと聞くネ」
 深夜、林の中、一行の先頭を行く怪盗ガイガーは、前を向いたまま後に続くパイリンたちに語り続ける。

 「ところがそれも10年前までの話。それまで沢山掘り出されていた水晶の産出が、イキナリ止まったンだよネ。」
 この鉱山だけは、人夫も教団が他所から連れられてきた専属の者しか入れなかったという。ところが近年、何故か人夫たちは解雇され採掘も中止され、以来山の周囲を教会騎士団が物々しく警備しているだけである。

 「で、お前はその理由を知っていると?」ガイガーのすぐ後ろを歩くパイリンが言った。
 「もちろン山の水晶が底をついた、とかじゃないヨ、それどころか閉鎖の直前、最深部で巨大な水晶の原石が集まった洞窟が見つかっているくらいだしネ。」

 人目に付かぬよう村から山への通り道を避け、山の向こう側に回り込む、林の中を進む一行。空を見上げると木々の狭間から、電撃竜ブリッツドラッケンを駆る教団騎士が二騎、月の光に照らされながら地上を行く物を見逃すまいと、互いに離れて大きく旋回しながら飛んでいるのが見える。
 ちなみに電撃竜ブリッツドラッケンとは、以前遭遇したゲアリック強盗団が使っていた戦爆竜ヤーボドラッケンとは色違い、下顎の突起が二又に別れた形の亜種である。その翼を持つトカゲのようなシルエットが実際良く似ている。

 しかし大きく異なるのがその攻撃方法。戦爆竜ヤーボドラッケンが体内に発生させた可燃性ガスに、生体電流で点火し吹きつけるのに対し、電撃竜ブリッツドラッケンは発生できる生体電流がより強力で大容量、その名の通り上空から落雷のように放って攻撃することができるのだ。
 もちろん狙いは大まかであり、この能力を生かした野生の電撃竜ブリッツドラッケンは海や川に電気を放ち、痺れて浮いてきた魚を食べているのだが、これが戦場ではどう役にたつか?というと、剣や槍、鎧で武装した地上の兵にとって大変な脅威となるのだ。

 ドラッケンから地に向けて放たれた雷は、避雷針ならぬ金属製の装備めがけて飛んでいく。本物の雷ほどの電圧ではないためこれで即死することは稀であるが、被雷した者をショックで戦闘不能に陥らせるには充分な威力。
 故に敵として電撃竜が現れたら金属の武器や鎧を投げ出さねばならず、同時に地上の敵が押し寄せてきたらどうなるかは言うまでもない。この殺さない程度に敵を無力化できる能力は警備用として便利であり、この鉱山の騎士達にも重用されているわけだ。

 「アレに見つかるとやっかいだからネ、ちょっと遠回りして林に隠れて、裏の一番小さい鉱山入口跡に向かってるという訳サ」
 「そこから中に入れるのか?」
 「一見、岩や板で塞いで入れないようにしであるンだけど、先月からボクが何日もかけて、こっそり抜け穴を作っておいたのサ」

 警戒中の電撃竜ブリッツドラッケンの一騎が上を通り過ぎたのと同時に、一行は林の中から全力疾走、うまく見つからずに鉱山入り口に取り付いた。
 ガイガーが「立ち入りを禁ず」と書かれた剥がれかけの板を除けると、なるほど一見してわからない程度の、なんとか人一人くぐれる程度の穴が空いている。
 もう一騎の電撃竜ブリッツドラッケンが廻って来る前に、急いで中に潜りこまなくてはならないのだが、しかし最後に巨体のヘルツマンが引っかかってしまった。怪力で無理矢理穴を広げることもできるのだが、それを見回りに発見されたら元も子もない。

 「仕方ねえな……ヘルツマン、スネークモード!」
命令を聞くや否や、ヘルツマンの全身鎧はバラバラに分解!その鎧の中身はゴーレムの神経索、それが鎧の各部を繋げたまま一直線になり、ヘビのようにズルズル這いずって穴を通り抜けてしまった。
 「うわキモッ!キモいけど便利だネ、ゴーレムってのは!」……
 「今なんつった?」ガイガーの一言に対し低い声で尋ねるパイリン。

 「いや便利だナ、ゴーレムって……」と応えたところで、パイリンの右腕の籠手ガントレットから隠し刃が飛び出し横一閃!直後、ゴロンと地面に落ちるガイガーの生首が、穴から差し込む月の光に照らされる!
 いきなりの殺人現行犯目撃、「エッちゃん愕然~!!」「師匠何すんの!!」弟子達の叫びに、押し殺した声でパイリンが答える。
 「静かに!見張りに気付かれるだろ~が!……血が出ない、だいたい手応えがおかしかったし、刺突用のこの刃で首筋を斬るならまだしも切断は無理だし、つまり」

 「つまりそのボクは偽物というわけだネ」一行が振り返ると、声の主、即ちもう一人のガイガーが穴から入って来るところだった。
 「またエクトプラズムの擬態?!どんだけ用心深いの!」アントンがそう言う足下で、先のガイガーの「死体」は白く変色、またも雲のように形を失い、二人目のガイガーの口に吸い込まれ消えた。
 「しかしなんでまたイキナリ殺そうとするの?」「『ゴーレム』と言ったな、お前」
 「うんそうだヨ、ゴーレムマスター殿」

 「ハーッ!」今度は縦に一閃、二人目のガイガーの頭の天辺から股間にかけて刃が走り、背中の皮一枚残した「ガイガーの開き」になってしまった!
 「またも柔らかすぎのヘンテコな手応え!しかも内臓が見えず中は真っ白け、つまり」
 「つまりまた偽物というワケだネ」と言いながら、三人目のガイガーが入ってきた。
 「いーかげんにしてください!」思わずアントンのツッコミが入る。
 「天丼ネタデスね、しかしドッキリとしてはともかく、ネタとしてはイマいちデスね」エンジェラのお笑い評論は完全にズレてるし。

 「つまり、ボクがキミをゴーレムマスターであると知っていることがお気に召さない?」
 「うん、だから死ね」容赦なく三度刃が走ろうとしたその刹那、
 「イヤイヤ、まずは話をお聞きなさいって、お嬢さン」四人目のガイガーが穴から入ってきた。
 「え~っと、どっちを殺せばいいのかな?……どっちも殺せばいい?ハイ決定」
 「イヤイヤイヤ、だからまず説明を聞きなさいと言ってるでショ!」

 「師匠、この調子じゃ次々に新しいギュン太くんがやってきて延々と殺しまくりになって、ちっとも話が進みそうにないから、聞いてあげたら?」
 実際は実体のガイガー一人に、エクトプラズムが三体なのは昼間に聞いていたので、これで全部と知っているのだが、このままでは本当にパイリンが皆殺しにしかねないので、アントンはあえてそう言ってみると、パイリンが刃を畳む音がした。

 「そもそもキミを頼ったのは、ゴーレムの力が必要だからナンだよネ」四人目のガイガーの口に、形を失った二人目のガイガーが吸い込まれている間、三人目のガイガーが語り出した。
 「獲物がデカいンだよ、今回は!水晶の原石っていうか、もう宮殿とかの『柱』って感じで、人力で持ち出せるシロモノじゃ無いワケで」
 「それでゴーレムを?でか、どうしてオレがゴーレムマスターだと知った?」

 「先日の『奉納闘竜祭』」三人目は話を続ける。
 「ボクも観にいってたンだよネ、キミ、名を変えて出てただろ?で、操ってる竜が、死霊使いのボクには生きてるようには見えなかったンだよネ」
フムフムそうだろう、と言いたげに、ご同業のエンジェラが側でうなずく。

 「聞けばあそこの騎士長の代わりに出場したっていうだろ?で、給仕に化けたエクトプラズムを貴賓席にいた騎士長とお偉いさんの側に近寄らせ、彼らの会話を立ち聞きさせたのサ」
実に便利なエクトプラズムである。エンジェラの普段は使えないくせに、いざとなると最終兵器みたいに危険な二匹とは大違いである。
 「そしてら、本当は竜使いじゃなくて死霊使いだって言うじゃナイ?でもおかしいよネ、死霊使いに死んだ竜を蘇らせる技なんて無いはずなのに」
なるほど、本職から見ればさすがにあれはありえないものであったか。

 「そして上手い具合に、ボクの本拠地ともいうべきこの鉱山村に向かうと知って、隠れて後を付いていったんだけど……なンか妙な歌を歌ってたじゃン?ゴーレムがご立派♪、とか何とか」
あれ聞いていたのか!まさか伏線であったとは、神もとい作者ですら気付かなかった驚きの事実である。
 「そこで閃いたネ!ゴーレム!よくは知らないけど、伝え聞くゴーレムマスターの技で、竜の死体を操ったンじゃないかナって!」

 「いけませんねギュン太くん!せっかくの天然の『おいしい』キャラクターが台無しな、お利口さんな推理力!ここはボケてボケて!」
 「エッちゃんさんは何でいつも価値基準がお笑い関係なの?いやこれに関しては人のこと言えないと思うの」
 「クッ、バカなんだか利口なんだかよくわからん野郎だな」ムムッ口をMの字に、眉をWの字した難しい顔をするパイリン。まあ確かに只の本バカならば、義賊として今まで捕らえられず逃げ続けられることなどできはしないだろう。

 「ゴーレムマスターであることを秘密にしておきたいのはよくわかったし、お尋ね者同士の義理もあるし他人に言うつもりは無いからサ、ここは一つ、お宝を手に入れるのを優先でネ、お願い」
ぬぅ~と暫く唸って悩んでいたパイリン、
 「よしわかった、今回はそれだけリスクを負う価値のあるお宝が手に入ると言うんだな?」
 「そう考えていただいて結構だヨ」
 「ならばここは倭国ヴァーラントにおける究極の約束の儀式『指切り』で誓ってもらおうか」
 「なンて恐ろしい!そして残酷な約束の儀式、指を切断するなんて」
 「いやマジで切り落とすんじゃなくて、互いの小指をからめて約束して、その後離して終了するんだよ」

 そう言って差し出してきたパイリンの小指に、ガイガーは恐る恐る自分の小指をからめる。
「指切りげんまん、ウソついたら貴様の愚息を根本からバッサリ割礼~♪、ナニ斬った!」
「なンて恐ろしい!そして最低な約束の儀式!」すっかり顔が青ざめてしまうガイガー、隣の偽物も全く同じ表情で青ざめている。
「ボクもまったくそう思う」やはり青くなったアントンの一言は、男子共通の思いである。

 そして再び一行を先導し、坑道を進み始めるガイガーズ(複数型)、一人は当然偽物だが、またどっちが本物かわからなくなってしまった。無事だった偽物を本体に引っ込めることなく、そのままで行くらしい。
更に再び二人の口から出てきた、先ほど斬られたエクトプラズムは人型の時よりずっと小さく、今度は人魂のように青白い炎で輝きながら、行く先を照らしている。
「なんて便利!同業者としてその技術にエッちゃん嫉妬!ブル嫉妬!」どうやらエンジェラ、色々な面でガイガーをライバルと認識してしまったようだ。

 さらに後を僅かに遅れて続くパイリンに、アントンが小声で話しかける。
 「ねえ師匠、実は『やっぱ後で殺そう』とか思ってるんじゃないでしょうね?」
 「鋭いねチミィ!すっかり以心伝心じゃないか、我が弟子よ」ニヤリ、とそれはそれは邪悪な微笑み。
 「やっぱりかい!鬼ですかい!畜生ですかい!」

(続く)
cont_access.php?citi_cont_id=37065804&si
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ