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パイリン・ザ・ゴーレムマスター 作者:大滝よしえもん
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ゴーレムマスター御一行様を待ち受けたり追っかけたりの誰かと誰か

戦国の時代には守りの要であったツィタデルブルク。その中心にある大空龍タイクーロン教騎士修道会支部。今では常なる静けさに満ちているはずの、建物の奥にある一室から、相応しくない異音が響いた。

南の森で確認された大爆炎。盗賊団をアジトごと滅ぼしたというそれが、ゴーレムマスターの仕業であるらしいとの報告書を読んだその男は、絶句し続いて目眩を感じ、壁に体を打ち付けるようにもたれかかった。

 報告書を持ってきた従者は慌てて彼を助け起こそうとしたが固辞され、再び呼ぶまで下がっているようにと命じられた。
続いて襲ってきた悪寒に震えながら、男はようやく自力で椅子に腰を下ろし、震えでままならぬ手でなんとか引き出しを開け、紙とペンを取り出す。彼もまた、報告しなければならない相手がいるからだ。

だから言ったのだ……奴らを密かに監視し、生け捕りにしてその新たなる技術を手に入れ、教団の威力として加えようなどという考えは危険であると……奴らが自分たちを許すはずがないではないか!

 あの大戦で、あれだけ国家平定に協力したのに、石もて追われるどころか剣と銃もて追撃され、一人残らず海の向こうに追い落とされた奴ら……我らを許す道理などあろうか!

中央教区の要人に警告するべく、彼はペンを走らせる。奴らは危険すぎる、奴らは再び駆逐されねばならない、奴らが、ゴーレムマスターが、いつの日にか必ず、復讐のため現れるその前に!

インクが乾いたのを確認し、封筒に入れて蝋で封をし印章を押してから、彼は先ほどの従者を呼んだ。
「お呼びでしょうか、院長殿」
 心配そうに声をかけてきた従者を、血走った目で睨み付けるようにして彼は言った。「……これを、至急中央管区の例の宛先へ……至急だぞ」





 この大陸の東の果て、即ちヴィルデグリュンの平原を走っていた、あの列車が行き着く先の港町。ここは現在一大漁港でもあるが、それ以外にもう一つの顔がある。

 海を越えた先は島国・倭国ヴァーラントである。ゴーレムマスターの本場でもあるその国は、統一戦争終結以来18年、この国・地竜帝国ドラッケンライヒとは断交状態であり、公的には行き来すら禁じられている。

 故に昔から一番の貿易港であったこの街も、漁港へと変わっていったのだが……それは表向き。貿易商人たちがそう簡単に漁師に変われるわけはないし、莫大な利益を生む貿易を、中央から命じられたからと言って、あっさり止めるわけがないのである。

 従ってこの港に多い超大型の漁船、しかし魚を積む倉庫は表層だけであり、下の荷物の大部分は、ヴァーラントからの交易品という密輸船なのである。それに運んでいるのは品物ばかりではない。ヴァーラントからの密入国者、ヴァーラントへの違法出国者をも潜ませ、今日もまた一隻、東の水平線にその姿を現した。

 「おお、いいタイミングだね旦那、ちょうど陸が見えてきたところですぜ」
船倉から上がってきたその男に、水夫頭がヴァーラント語で声をかけた。

 その男……旦那、と声をかけられたのだから男なのだろうが、その見た目だけでは性別が判断し辛い。細身で長身、潮風を避けるためか、髪と顔を覆ったスカーフのせいで、ほとんど目と口の一部しか見えてはいない。切れ長で睫の長い瞳は柔らかな光を湛え、それに適した形容詞は「美しい」の只一言。そこだけに目をやれば、「男」は美女以外の何者にも見えないだろう。

 「あの娘も、この船で渡ったとおっしゃてましたね」
しかしその口からの一声は、低く男らしい、すばらしく渋い響き。男もやはりヴァーラント語で応えた。
 「まず間違いありませんや、旦那とよく似た黒い格好で、黒い瞳に黒い髪」
「同業者ならたいていこの格好ですよ。それにヴァーラント生まれはたいてい黒い瞳と髪」

 一旦言葉を切り、少し思い返してから男は続けた。
「ああ、もっともあの娘が生まれたのは、ヴァーラントではなくあの地でしたがね。それに……同業者でこの18年、向こうに渡ったのは彼女しかいないはず」

客に詳しい事情をあれこれ尋ねるのをいつもは遠慮している水夫頭だったが、この妙に興味をひく何かがある男をもっと知りたくなり、話を続けることにした。

 「その娘さん、旦那とはどんなご関係で?」
再び何かを思い返しながら、男は話を続ける。
「赤子の頃は……実の娘のようなもの。幼児の頃には、いつも後をついてくる妹のようなもの。もっと大きくなってからは、よく学ぶ弟子であり、そして今は……」
「今は?」
「妻です」


 *


「シリアス警報~ッ!」
 ツィタデルブルクまであと数キロという街道の途中、唐突にパイリンが絶叫した。
「エッちゃん吃驚びっくり~!」
「何なの師匠、いきなり!」

 なんか冷や汗らしきものを垂らしながら、パイリンが震える声で語り出す。
「つい今しがた、僕たち私たちのゲラゲラ愉快話をだいなしにするような、ドロドロと暗い殺意を燃やす奴とか、逆に胸を焦がすようなラブラブな想いを抱いた奴が、どこかでオレのことを考えている感覚がキタ~ッ!」
「言葉の意味はよくわかんないけど、また電波?なんか変なモノ受信したのかな」

 「前者は何者だか全然わかんねえけど、後者は……いかん!あのお方に捕まったら、愉快痛快コミカルファンダジーアクションが、エロエロ18禁へと変わる激しい悪寒」
「ハイハイ、言葉の意味はもうサッパリわかんないけど、疲れてるみたいだから、あっちに見える茶屋で一休みしましょうね」
「エッちゃんはパンケーキとお茶を希望なのデス」
「却下!シャキシャキ歩いて街まで行って、悪党ぷちコロして稼いでからだッ!」

 そんなわけで、彼らの旅は続いているったら続いているので、もうしばらくお待ちください。
……嫌も応も無しに!  (インターミッション・終)
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