異空間戦記 救国の英雄たち(25/27)PDFで表示縦書き表示RDF


異空間戦記 救国の英雄たち
作:山口多聞



初空戦


 出撃して30分。2機は既に旧国境を越えて、旧トルアン王国領に侵入している。恐らくすでに探知されているはずであるが、まだ連絡手段が発達していないこの世界なら例え発見されても致命的な事にはならない。

 五十六は地図で地形を確認しながら、目標の敵後方基地へと一直線で進む。そして目標まで5分の地点にまで近づいた。

「大河飛曹長。まもなく目標である。カメラを起動状態にして、各種武装チェックせよ。」

「了解!!」

 2機は主翼に装備されたカメラが写せるようセットし、さらに機銃とロケット弾の安全装置を解除した。

 機銃を試射し、弾がしっかり出るか確認した。

「カメラ、機銃共に異常なし!」

 大河機からの無線連絡が入る。

「ようし。目標まで後2分。」

 そして敵補給基地が視界に入ってきた。

「でかい・・・」

 敵の補給基地の規模は予想以上に大きかった。自衛隊の駐屯地並の広さがあり、そこに物資が山積みされていた。さらには鉄道の線路を引き込んであるのか、SLが出している煙が何条も空に延びていた。

「ようし・・・敵対空砲火に注意しつつ接近し写真撮影、終了後は機銃掃射とロケット弾による攻撃を行え!!」

「了解!!」

 2機は編隊を解いて急降下する。五十六は今回取り付けられたカメラのスイッチに手を掛ける。

 大量に積み上げられた物資、動き回る兵隊たち。さらに先日の前線補給基地攻撃で見た戦車が数十台単位で並んでいるのが見えた。

 それらを2人は写真に収めていく。もっとも、危険でないわけではない。所々で敵が機銃や小銃を空に向けて撃っているのが見えた。その多くがこちらのスピードに追いつけず無駄弾となっていたが、まぐれ当たりする確率だってある。

 幸い五十六も大河も被弾しない内にフィルムを全部使いきった。

「中尉、写真撮影終了しました!!」

「こっちも終了した。ようし、ロケット弾と機銃を適当にぶち込んでサッサと帰還するぞ。」

「了解!」

 2人は高度を多少とってから、攻撃を開始した。今回積んでいるのは5機の機銃と2発のロケット弾だ。先ほどは適当にぶち込めと言ったが、やはりある程度効果的な攻撃をするのがベストである。

 五十六は狙いを停車中の戦車と列車に定めた。戦車の前線進出を抑えることは大きなメリットとなるし、SLを破壊すれば物資の輸送速度を大幅に抑えることが出来る。

 まず戦車の車列に機首を向けた。照準機の中に戦車の姿が入る。五十六は狙いが真ん中に入ったところでロケット弾を発射した。

 パシューという音を立てて発射された2発のロケット弾の内、1発は外れたが、もう1発は戦車に直撃し大破させた。ただし、燃料や弾薬を積んでいなかったのか、大爆発はしなかった。

「チッ!!」

 思わぬ結果に舌打ちしつつ、五十六は頭を切り替え次の目標に向かった。

 基地内に引き込まれた線路上に何十両もの貨車や客車を連結したSLが何本も停車していた。五十六はその内の1両に狙いを定めて機銃掃射を開始した。

 ダダダダ・・・

 主翼の12,7mm機銃と、機首の7,7mm機銃が発射される。すると、慌てて機関車から乗員が飛び出すのが見えた。五十六にしても無用な殺生はしたくないから、好都合である。

 機銃弾はSLに命中し、火花を散らした。次の瞬間にはボイラーに直撃したのかその機関車全体が濛々と白い煙に包まれた。これでもう走行は出来ない。撃破1である。

「よし。」

 戦果を見届け上昇する。すると、大河機が寄り添ってきた。

「中尉、この辺で帰りますか?」

「そうだな・・・むやみに戦果を欲張る事もあるまい、帰還しよう。」

 そう言って、前方の空を見た瞬間である。彼は空中に10ばかりのシミのような物が存在するのに気づいた。

「何だ?飛行機?味方が後続で爆撃隊を発進させたのか?」

 五十六は味方の編隊だと思った。しかし、すぐに大河が否定してきた。

「いえ、そんな予定はないはずです。」

「じゃあ、あれは?」

 2人が不思議がっている間にも、その物体は近づいてきた。そして機影が確認できるまでに近づいた。間違いなく飛行機である。しかし、味方ではなかった。

 2枚翼に固定脚というかなり古めかしいスタイルだ。そして五十六にはその姿に見覚えがあった。

「まさか・・・第一次大戦中のニューポールか!?」

 ニューポールとは第一次大戦時にフランスの主力戦闘機を作った会社である。戦後は日本へも機体を輸出している。

 そのニューポールに間違いなかった。写真で見たそのままである。

「まさか飛行機がもう出てくるなんて・・・」

 戦車を見たときに科学技術の進歩のレベルが違うとは思っていたが、早すぎる。五十六はその事実をあらためて認識し、うめいた。

「中尉、どうします?逃げますか?」

「ここまで近づいちゃ無理だ。それに敵は帰還針路を防いでいるから逃げるのは間に合わない。戦闘を行うぞ!!」

「了解!!」

 2人は始めての空中戦に挑んだ。相手は旧式機だ。こちらが最高速度が550km以上出るのに対して、敵は200kmが精一杯である。しかも武装もこちらが5挺なのに対して、相手は1,2挺だ。子供と大人の勝負と言ってよい。

 しかし、油断すればこちらが落とされかねない。いちおう相手も銃を使えるのだから。

 12機の敵機は機銃を乱射しながら、がむしゃらに近づいてきた。五十六と大河はその機銃をよけながら、敵機とすれ違った。そしてそのまま旋回して後ろにつく。

 五十六は照準機の中に入った後方の機体に目標を定めた。

「許せ、戦争だ!!」

 発射レバーを握り機銃を発射する。銃弾は目標の敵機に吸い込まれるように命中した。布で出来た機体では、機銃弾は貫通してしまうだけで発火はしない。しかし、5挺の機銃から吐き出される数十発の銃弾を受けては機体を穴だらけにされてしまい、さらにパイロットも負傷する。

 その敵機はあっという間にバラバラになり落ちていった。

 あまりにも呆気ないほどに撃墜できた。

 五十六はそのまま隣の機体にも一連謝したが、これは撃墜できぬまま敵機を追い越してしまった。

 見ると、大河機も1機を撃墜していた。

 2機を撃墜されてしまったためか、敵機は大混乱に陥っていた。もはや編隊としての体をなしていない。

「ようし、今のうちに脱出だ。」

「了解!!」

 2機はその高速を生かして戦場を離脱した。そして何事もなかったように基地に帰還した。


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