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異空間戦記 救国の英雄たち
作:山口多聞



部隊集結


「あのさ、姫神さん。ちょっと良いかな?」

 五十六は真理奈に聞いた。

「はい!?なんでしょう?」

「君って一体何者なの?」

「え!?私は、ただの農村の娘ですけど・・・どうしてそんなことを聞くんですか?」

 伝声管から伝わってきた声は、冷静さを保っているものの、どことなく焦りを含んでいるような感じがした。

「いや・・・俺が聞いたところじゃ、確かこの時代の人間って洋服を着る事は滅多にないらしいじゃないか。それなのに、君は洋服を困りもせず着こなした。それに、やっぱりこの時代の人間になじみが無いはずのホークやナイフも上手く使いこなしていた。だから、俺には君がとてもただの農村の娘とは思えない。だから、聞いたまでだよ。」

「・・・」

 伝声管からは、しばし何も帰ってこなかった。

「答えたくなかったら、答えなくても良いよ。別にそこまでして詮索する気はないから。」

 今の所、これはあくまで五十六の好奇心であった。彼女の身辺調査は一応行われているが、もともと日露戦争と同レベルの科学のこの時代では、即座に身元を調べるためのシステムが存在するはずが無かった。

「・・・その・・・いつか話すときが来るでしょう。それまで待ってくれますか?」

 彼女からの返事はそれだけだった。

「わかった。じゃあ待つことにするよ。お、燃料がもう終いだ。」

 見ると、燃料計の針は空に近づいていた。元々1時間分しか入れてなかったから消耗は早い。

「ようし、じゃあ着陸しようか。」

 五十六は機種を滑走路に向けた。テキサンは練習機であるから、全ての動作に素直に答えてくれる。着陸も容易であった。

 着陸すると、整備兵が滑走路の隅に行くよう誘導した。

(なんで滑走路の隅に動かすんだ?) 

 格納庫に入れると思っていただけに、この支持は以外であった。

 とりあえず、支持された場所に機を持っていき、エンジンを止めた。直ぐに整備兵がチョークと呼ばれる車輪止めをする。

 五十六は機体から急いで這い出すと、側にいた整備兵に問いただした。

「どういうことですか?なんでこんな隅っこに止めさせるんです?」

 すると、眼鏡を掛けた若い整備兵が寄ってきた。

「すいません。急に他の受け入れ機のためにスペースを開ける必要になったので、滑走路の隅に移動してもらいました。」

「受け入れ機?あれ、今日向こうから運んでくる機体なんかあったっけ?」

 寝耳に水の事である。

「それがつい30分ほど前に連絡が来たんですよ。」

 そう彼が言い終えたとき、西の空から爆音がしてきた。

 五十六に整備兵、そして機体からやっとこさ降りた真理奈の3人が西の空を見た。

 この日の雲量は3.そんなに多くは無い。機体は直ぐに見えた。数は7,8機。いずれも小型単葉の単発機だ。

 五十六にはシルエットから、それが直ぐにT6改造零戦と、Yak戦闘機である事がわかった。間もなく、それらの機体は次々に着陸した。

 と、着陸する機体を見ながら、五十六はある事に気付いた。

「あれ、これって確か海鷲島の稼動機全部じゃないか?」

 彼がもといた世界で訓練拠点にしていた海鷲島。そこに残されているはずの練習機を除いた機種の機数と、今飛んできた飛行機の機数は同じだった。

「その通りだ。高野飛曹長。」

 聞き覚えのある声に、彼は振り向いた。

「河口さん。」

 彼の後ろに立っていたのは、この部隊の生みの親で、彼がこの世界に来るきっかけを作った男である河口であった。

 その彼、今日はピシッとスーツで身を固めていた。

「あなた。どうしてここに?」

 突然表れた人物に驚く五十六。

「いやね、実は海鷲島のことを警察に嗅ぎつかれてな。今日捜査官が島に来る事になってしまって。一応機体は全機フル装備だからそのまま調べられては銃刀法違反で即刻逮捕、押収されてしまう。」

 その言葉に、五十六は納得した。

「なるほど。つまりこちらに航空機を回したのは、警察から逃げるためですね。さすがに異世界までは追ってこれませんからね。」

「その通りだ。」

「しかし、随分無理をしてませんか。」

 彼はフラフラ怪しげに着陸したT6零戦を指差した。

「仕方ないんだ。パイロットの数が足りなかったんだ。一応ある程度はスカウトしたんだが、養成が追いつかないんだ。・・・ところで、その娘さんは誰だい?」

 河口は真理奈の事を聞いてきた。

「あ、彼女は我が隊に志願してきた一般市民です。」

 真理奈が河口にぺこりとお辞儀した。

「姫神真理奈です。よろしくお願いします。」

 五十六は、勝手に志願兵を入れた事に河口が腹を立てないか心配した。しかし。

「ああ、それはありがとう。この部隊は人手不足だから。しっかりがんばってくれ。」

 と、型通りの言葉を言っただけだった。

 しかし、この時五十六も真理奈も気付かなかった。彼が、何か腑に落ちない表情をしていたことを。


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