異空間戦記 救国の英雄たち(13/27)PDFで表示縦書き表示RDF


異空間戦記 救国の英雄たち
作:山口多聞



新しい朝


 謎の少女真理奈が隊に加わった日の夕方、戦果確認の偵察機が戻ってきた。

 機体はT6テキサンという中古機だが、搭載されたカメラは最新式の物だ。

 早速写真を使っての、詳細な分析に入る。ちなみに、写真と言ってもフィルム式の物ではなく、最新式のデジタルの物だ。印刷用のプリンター、引き伸ばしや画像解析用のパソコン、それらを動かすための自家発電機も彼らはこの世界に持ち込んでいた。

 それらが設置された部屋に、隊長の沢村に藤沢、五十六も集まった。真理奈はまだ正式な隊員ではないので、参加を許されていなかった。

「これが遠景の写真です。」

 偵察下士官の高貫飛行兵曹長がキーボードを叩きながら言った。33歳の彼は元コンピューター会社勤務のサラリーマンで、リストラにより首になっていた所を河口に拾われたという経歴の持ち主だ。趣味がカメラ撮影であったのも、今の役職につけられた理由だ。

 画面には直ぐに、黒煙に包まれた地上の風景が出てきた。

「随分盛大に燃えていますね。」

 写真を見て五十六が呟いた。

「恐らく弾薬や食料に引火した火がまだ燃えているんだろう。」

 沢村が冷静な口調で言う。

「次に望遠で撮った写真です。」

 再び高貫がマウスとキーボードを動かした。

 すると、そこには消火活動をしているのだろうか、動き回っている敵の兵士が写し出されていた。さらに。

「あ!ここ!これ戦車の残骸ですよ!!」

 五十六の言葉に、その場の全員が画面を覗き込んだ。

 五十六が指差す場所には、確かに砲塔こそ吹き飛んでいるが、燃える戦車の車体らしき物が写っていた。

「ふむ。確かに戦車のようだな。我々の世界のルノーに似ているんだったな?」

 ルノーとは、第一次大戦中にフランス軍が実戦投入したルノーFT17戦車のことだ。小型ではあったが、砲塔と車体の組み合わせと言う、現代型戦車の元祖と言うべき戦車だ。ちなみに、フランス軍はこの戦車を第二次世界大戦でも使用している。

「はい、そうです。」

「となると、やはり我々の世界とは科学技術の発達の仕方が違うようだな。これは注意すべき問題だぞ。」

 そうしている間に、高貫が他に数枚の写真を画面に写し出して行く。だが、その後の写真には特にめぼしい物は写っていなかった。それらの写真からわかったのは、今回の作戦は目標を達成していたとうことだけだった。

 それでも、五十六としては始めての仕事をこなせた充足感で一杯だった。

「ふむ。他には特にめぼしい写真はないようだな。よし高貫、それらの写真を全部プリントアウトしておいてくれ、明日の皇国軍との会議に使うことになるだろうからな。」

「わかりました。」

 こうした戦果確認の会議は終わった。




 
 結局その日はそのまま何事も無く終わった。3人は疲れを癒す為に、早めに床についた。

 そして翌日。

 朝6時に起床し、7時から朝食というのがこの部隊の日課である。ただし、それはパイロットの物で、整備員や警備兵はシフト制だから違う。

 五十六が食堂に顔を出した時も、整備兵や警備兵の姿は見当たらなかった。

 ポツンと一人だけ藤沢が座っていた。五十六はカウンターで食事を受け取り、彼の隣に座った。

「おはようございます。」

「ああ、おはよう。」

「隊長はもうお出かけになったんですか?」

 前日皇国軍との会議に出かけると言っていた沢村の姿が見当たらないので聞いてみた。

「ああ、30分ほど前に出て行ったよ。」

「そうですか。」

 会話をしながら、五十六も食事を始める。今日の朝食は洋食だ。ちなみに、この食事も毎日和洋の交互となっている。また、夕食は金曜日にはカレーという海軍の方式を採用している。

 金曜カレーと言うのは、旧日本海軍と海上自衛隊で採用されている方法で、長い海での生活で、曜日間隔を忘れないようにしている方法である。

 と、そこへ。

「おはようございます。」

 食堂内に響く澄んだ声。

「よう、おはよう。」

「おはよう姫神さん。」

 真理奈がやってきた。彼女は食事を受け取ると、五十六と藤沢の正面に座った。

「朝から元気だね君は。」

 五十六がポツリと聞いた。

「だって今日からこの部隊で働けるんですから。」

 その無邪気な表情に、五十六は少し不安を覚える。

(大丈夫かな?)

 と、その時彼は気付いた。

「フォークとナイフをちゃんと使い分けている。」

 洋食のセットだから、当然食器はフォークとナイフだ。しかし、それを彼女はしっかり使い分けていた。

(昨日の洋服といい・・・農村の少女がこうも上手く出来るのかな?)

 スパイではないのだろうけど、彼女には何か秘密がある気がしてならなかった。

「ごちそうさま。」

 ふいに藤沢が言った。見てみると、彼の皿の上の料理は綺麗になくなっていた。

「高野、今日は出撃は無いだろうが、万が一もある、緊急出撃には備えて置けよ。」

「はい。」

 そして食堂には彼と真理奈だけになった。その時、五十六の頭にある考えが浮かんだ。

「ねえ姫神さん?」

「何?」

「いっしょに飛ぶ気はありませんか?」


 御意見などをお待ちしています。











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