遠くに見えるはあっちの姿 -long distance figure -(3/3)縦書き表示RDF


遠くに見えるはあっちの姿 -long distance figure -
作:椎名緋色



終点。


〔終点はキミの笑顔〕



すべての始まりが、終わりで。
終わった物語は、進むことはない。
けれども、また物語は始まって―――。



 
「彼方ーっ」
「ふご」
声が耳に聞こえた。
目覚めには、とてもいい声だ。
「ハル・・・カ?」
「よっす。元気かー?」
彼女は満面の笑顔で背中を叩いた。
俺は寝ぼけながら、それに答えた。



 
彼女は変わった。
いや、変わってくれたんだ。



 
―――。
届けっ!!!
彼女の名前を叫んで、必死に手を伸ばして。
俺の手は、ちゃんと彼女の手を捕らえていた。
直後、俺の腕は悲鳴を上げるように体重を支えた。
軋む腕。彼女の小柄な体躯を支えるのにも、適していなかった。
「離してっ!!」
「離すかよ!!」
叫ぶハルカの手は、しっかりと俺の手を握っている。
本当は死にたくなかったんじゃねぇか。
怖かったんじゃねぇか。
なのになんで―――。
「ボクが生きてたって、いいことなんて何もないんだ!」
「何でそんなコト言ってんだ!ハルカは生きたいんだろ!」
「そんな事、ないっ―――」
彼女の手が、さらに強く握られる。
とっとと引き上げないと、俺の手もヤバい。
「ボクは死にたいんだよ!!」
「じゃあ何でハルカは俺を好きになったんだ!? 死にたくなかったからじゃないのか!?
俺に助けを求めたんじゃないのかよ!! ―――俺だってハルカが好きだ!!
好きなヤツを死なせるわけにはいかねぇんだよ!!!」
「―――っ」
必死の叫びに、ハルカの顔は一気に紅潮した。
クソッ、俺まで恥ずかしくなってくるじゃねーか!
俺は右手に精一杯力を込める。
「今・・・助けてやるから!」
「彼方―――」
彼女は強く、彼方の手を握り返した。
その思いに、答えるかのように。



 
「それにしても、"好きなやつを死なせるわけには行かないー"かぁー。熱いなぁ」
「言うな!叫んだ俺が一番恥ずいんだぞ!!」
「分かってるって。―――あ、ほら。これ」
ハルカは鞄の中から何かを取り出すと、彼方へと渡した。
なんだよこれ、と彼方が言うと
「助けてくれたお礼。いい曲だよ?」
と言って、彼女は歌を口ずさみ始めた。



 
蒼空の向こうに 虹が見える
rainbow and rainbow
虹と名のつく 世界の材料
キミに見えたかな?

虹が大空を裂いて
キレイに キレイに 掛けていくよ
その姿はまるで 橋のよう
虹の架け橋が ボクたちと共に
蒼空・碧空に染めていく
虹は消えない 消えることはないから



 
「いいかどうかは全部聞いてからだなー」
「えー?ボクの歌、ヘタだった?」
「さぁなー」
軽い対応をすると、彼女はポカポカと俺を叩いてきた。
彼女らしい、かわいらしい笑顔で。



俺は彼女を、そっと抱き寄せた。


4作品目を載せました。お楽しみいただければ嬉しいです。













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