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ファンタジーショートショート:スライム娘

作者: ウーフー

 とある国を囲う城壁の直ぐ外側を流れる小川で、1人の青年が釣りをしていた。

「今日は全然釣れないな。このままだと今日の晩飯が一品減りそうだ…」

そう言いながらも釣れない様子に諦めて帰ろうと、片付けを始めていた。

「ん…?」

片づけが終わり、帰る途中子供達が何かを蹴飛ばしているのを見かけた。それはよく見ると青い透明な体が特徴のスライムであった。それを見かけた青年は、子供達に近づいてこう言った。

「こらこら、スライムをいじめてはいけないよ?」

その声に子供達が反論する。

「お兄ちゃん!だってこいつ魔物だよ?だったら倒さなきゃ!」

そう捲くし立てる子供達に優しく答える。

「魔物だからと言って何でかんでも倒していい存在ではないよ。それにここのスライム達は基本的に私達に無害じゃないか。そんなスライムをいじめていると…夜中に沢山のスライムに襲われちゃうぞぉ!」

男は怖がらせるように言うと子供達は散り散りに逃げ出した。それを見て嘆息ひとつ。そして蹴られて傷ついていたスライムに薬草を与えた。

「君も災難だったね。こんな事もあるから、これ以上人間の住処に近づくのはお勧めしないよ?早くお帰り。」

その言葉を理解したのか、スライムは城壁から離れた森の中へと帰っていった。


 その夜の事である。その青年が1人暮らしをしている住まいに突然客人が現れた。

「ごめんください。」

青年が誰だろうと玄関の戸を開けるとそこには、青い髪をした人形のような美しい女性が立っていた。

「あの?どちら様でしょうか?」

青年が訝しい表情で聞くと

「私、先ほど助けていただいたスライムで御座います。あの時助けていただいていなければ、私はあの場で死んでいたでしょう。この命貴方様に捧げとう御座います。どうか妻としてお側において下さいませ。」

 いきなりの展開に混乱する青年。しかしよく見てみればその綺麗な青い髪はあのスライムの青色そっくりではある。そこで色々問いただしてみると、あの場に居ないとわからない事をしっかりと答えてくる。これはいよいよ本物か。と青年は家に上げる事にした。


 「ご夕食はまだでしたか?それならお作りします。」

そのスライム娘は台所を借り、青年では焼くや湯を沸かすくらいしか使っていなかった台所を所狭しと動き回り、どこにこんな材料があったのかと思うほど立派な料理を作り上げた。

「冷めない内にどうぞ。」

その笑顔に魅了され大人しく席に座る青年。そしてその料理の美味さに感激し、『見た目もスライムとは到底見えないし、この子が嫁で俺はラッキーだ』と思い始めていた。

 それから1人暮らしでは殆どしていなかった夕食時の会話も進み。貧乏で風呂など無い為タオルとお湯で体を拭き就寝する事にした。まだ会って1日も経っていない。そんなスライム娘に彼は自分の寝室を提供し、自分は居間のソファで寝る事にした。


 その夜中の事である。寝ていた青年の上に何か重みを感じた。うっすら目を開けるとそこには半裸になったスライム娘が居た。

「!?」

いきなりの光景に驚いていると

「私、貴方様と1つになりとう御座います。私を見ていてください。」

そこから更にスルスルと服を脱ぐ。遂に全裸になった。

「私を見て…私を…」

その言葉にごくりとつばを飲み込む青年。吸い込まれるようにその裸体から目が離せなくなった。

「私を…ワタシヲ…」

すると次の瞬間人型であったスライム娘の体が真ん中からぱかっと観音開きになった。そこから大量の粘性の液が溢れ出した。

「ぶふぁ!何だこれは!」

いきなり自分に降り注ぐ粘液。どうやっても逃げようにも滑って滑って身動きが取れない。そのうちに自分の服が溶け始めている事に気が付き慌てる青年。それから服が全て溶けると今度は自分の体も溶け始めている事に気が付いた。

「このままでは喰われてしまう!」

だがそこにスライム娘の声が聞こえる。

「アナタサマト…ヒトツニ…」

その声に意識が遠のく。自分がどんどん溶けているのにそれが不思議と快感を覚え始めていた。

「あぁ…気持ちいい。このままずっと…」

「ソウ。ズットイッショニ…」

そして青年の意識は途絶えた。


 あくる朝1人の青年が行方不明となった。警備隊が捜索活動を行ったが有力な証言も無く、捜索は打ち切られた。証言の中に朝、城壁を出て森へ向かう綺麗な女が居たと言う。独り言で「これで一緒…貴方とずっと一緒…」などと言っていたがそれ以上何も掴む事ができなかった。

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