小夜子 作者: 西門 暑さに体が負け、夜の夏祭りは留守番だ。 寂しがるはずの子らは、むしろはしゃいで出かけた。 はや親離れかと、夕立後の縁側でしんみりと胡坐をかく。 宵空の下、脇で食器を並べる音がして我に返った。 「たべよ」 夕餉の素麺に似た色の指が目に入る。 親子そろいの浴衣からのぞく襟元。 坪庭の湿り気に染まらぬ、さらりとしたおとがい。 「……もう一人がんばろっか」 悪戯な声が耳朶をくすぐる。 艶やかな鬢を見つつ、悪くないと苦笑した。