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イットワズファインデイ。
作:一柳 紘哉


気持ちがいいほど晴れた日に澤田健司は学校に行かなかった。

気持ちがいいほど晴れた日に山田卓も学校に行かなかった。

気持ちがいいほど晴れた日に僕も学校に行かなかった。

そんなある日の話。

僕の真上を列車が通る。ガタンゴトン。
鞄を枕にして、川原で鉄橋の隙間から見える気持ちがいいほど晴れた空を飽きることなく眺めていた。
今は急いで鉄橋を渡っていく列車が隙間から見える。
列車の影も列車に追いつくために僕の体の上を走ってく。
耳に残る甲高い列車の音が過ぎると、草木の匂いが混じった風が僕の周りを遊んでいく。
そこで僕は思う。何で学校行かなかったんだろと。
朝起きて、何時もとおんなじ朝食食べて、鏡の前で歯を磨いて、髪にワックスつけて、行ってきますを家族に言い終わったら行きたくなくなった。
うん間違いない。
その瞬間に学校に行くのを諦めた。
突発的だな。まるで僕じゃないみたいだ。
でも風が気持ちがいいし、草の匂いを嗅いだのも久しぶりだ。なにより気持ちがいいほど晴れた空があるから後悔はしてない。
自分がだんだん小さな小さなものになっていく。
生かされていることにきずく。
久しぶりになんだか自分が動物だと再認識した。
ゆっくりと目を閉じる。
瞼に光が焼き付いていて、目を閉じていても暗くならずに目の前が緑色になった。
意識を細くしていき、眠ろうとしたら歌が聞こえてきた。


そうさ僕らは動物さ
この広い世界の一員さ
でもそうだと思いたくなくて
まだ見たことも聞いたこともない世界に駆け出したくていつも叫んでる
壁が僕らをさえぎってその向こうにあると思い込んでる世界にいけないんだ
壁を壊したい
でも僕らには力がないから待ってるんだ
小さな小さな破壊者を

周りが静かなおかげで歌詞が全部聞き取れた。

「ねぇお兄さんそこで何してるの?」

声に驚いて体が痙攣するように一瞬ビクッとなる。
目を開けると日に焼けた黒い肌をした子と、眼鏡をはめて髪をツーブロックにした男の子が、僕を覗き込む形で見ている。
犬とか猫ってこんな目線なのかな。
とりあえず腹筋を使って起き上がり、頭をかきながら答える。

「うーん……昼寝かなぁ」

黒い肌の子があからさまに肩を落とす。
眼鏡をはめた子が草をちぎりながらしゃべる。

「ほらー。やっぱり違ったー
 絶対違うと思ったもん僕。もう行こうよ健ちゃん」

健ちゃんと呼ばれた黒い肌の子は、じゃあランドセルとってきて卓。と言って小石をけった。
卓と呼ばれた眼鏡の子は草むらからランドセルと片手で持てる大きさの旗を持ってきた。
旗には黒い三重丸が描かれていて、一番外の丸と中心の丸には赤く色が塗ってあった。

「ねぇねぇランドセルってことは小学生だよね?
 学校には行かなくていいの?」

黒い肌の子、健ちゃんがランドセルをもらい肩にかけながら答える。

「今日は行かなくていい日なの。
 てかあんたも行かなきゃじゃん
 それって高校せーの制服でしょ」

「僕も今日は行かなくていい日なの」

また鉄橋を列車が過ぎる。
音がうるさいのか健ちゃんはしかめっ面をして鉄橋をにらんでいる。


「よくこんな五月蝿いとこで昼寝できるね」

「少し寝ては起こされるの繰り返しだよ
 でも気持ちいいよ」

健ちゃんはふーんと興味なさそうに答える。

「ねぇ健ちゃん今度はあっちに行ってみようよー
 僕はねあっちに来ると思うんだ」

そうだね。と答えて歩き出そうとしている二人に尋ねる。

「ちょっとまって。
 ねえ君たちはこの川原で何してるの?」
彼らは歩き出すのを止めて、向かい合って話し始めた。
どうする?教える?とゆうひそひそ声が聞こえる

「絶対に笑わない?」

卓君は恐る恐る尋ねてきた。
僕はもちろん笑わないと大きな笑顔で言った。

「僕らはね探してるんだ破壊者を。
 僕とね健ちゃんはおんなじ夢見たの。この川原で遊んでると歌が聞こえてきて、後ろを見ると破壊者がいてね、破壊者は僕らを抱っこしてくれると嫌いなもの全部ぶっ壊してくれるの。先生とか、ピーマンとか嫌いなもの全部」

「歌って…さっき歌ってた歌?」

健ちゃんが卓君から旗を取り上げて言う。

「そうだよ
 もっかい歌ったげようか」

「じゃあお願い」

笑顔で僕が答えると、大きく息を吸い込んで歌いだした。

そうさ僕らは動物さ
この広い世界の一員さ
でもそうだと思いたくなくて
まだ見たことも聞いたこともない世界に駆け出したくていつも叫んでる
壁が僕らをさえぎってその向こうにあると思い込んでる世界にいけないんだ
壁を壊したい
でも僕らには力がないから待ってるんだ
小さな小さな破壊者を

いい歌だねと僕が言うと彼らは恥ずかしそうに笑った。
ぼくも歌っていいかなと訪ねると、彼らは、もちろんと言ってくれた。
僕は目を閉じて風になった気持ちで歌った。
外にいればいつでも聞こえてくる風の音にそっくりな気持ちで歌った。
目を開けると彼らは消えていた。
もしかしたら破壊者を見つけて抱かれていってしまったのかもしれない。
そうだったらいいなと思って僕はまた鞄を枕に横になった。

あれからよくこの川原に来るようになった。
雨の日も雪の日も、あの歌を口ずさみながら。
僕もいつか破壊者にあって、すべてを壊してほしいと思うから。














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