12年前、戦争があった。
いや、戦争なら何度でも起こっている。
12年前の戦争で起こったこと。それは一つの国が滅んだことだった。
フィツール王国。この大陸の東部に位置する中規模の国家。
その国の7代国王と8代国王の悪政によって疲弊した国力は、最早回復のしようのないレベルであった。
有能な臣、精鋭、蓄えた国庫の財産。それらのほぼ全てが失われた。宮廷は腐敗、官吏は私利私欲に走り、民衆は国家のことを見放しつつあった。
若くして国王となった9代目はその現状を打開すべく、改革を断行。無能ながらも要職に就いていた者を全て更迭し、能力があると見れば若い者でも要職に就けた。
国王自らの私財すらも国庫へ入れ、寝食を忘れて業務に取り組む国王。まだ30代後半であるにも関わらず、非常に老け込んだ姿に国民は心を打たれ、すでに見放していたフィツール王国への忠誠心を再び抱くに至った。
が、それで済めばこの話は始まらないし、世界もそう甘くはない。
年明けと共に攻め込んできた隣国のナディア帝国。フィツールは最後まで抵抗するも、最後は国王と王妃の自害という結果でその戦の幕は閉じた。
それが12年前の戦争。
フィツール王国全域はナディア帝国の支配下に置かれ、優秀な都督ディアスがフィツールを治めることとなった。
ディアスの政は決して悪政ではない。事実、反乱は年を経るごとに減少の一途を辿っていた。
そして、フィツール王国が滅亡して12年。
物語は南方のヴェステアから始まる。
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