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遠くの花火と遠くの彼女
作:桃山 市


今日は花火大会。
人混みに僕の華奢な体は負けそうだ。
「おいおい。しっかりしろ樹知、はぐれんなよ」
一緒に花火大会に来ていた親友の西村にそう言われるくらい、僕は軟弱。
とりあえず屈強な西村の後ろを歩くことで、人混みに負けずに花火がよく見える場所に来れた。
「疲れたー」
僕はヘナヘナと縁石に腰かけると、周りを見渡した。
そこそこ人がいるが、そう多くはない。
ここは駐車場だが、今日は花火大会なので、車はこの付近には侵入禁止。そのため、この駐車場は車では無く、花火を見に来た者達のためのフィールドとなったのだ。
「でもよ、女の子と二人で来たかったよなぁ」

西村は近くにいたカップルを見ながらぼやいた。
やはり思春期の男は、女の子と一緒にこういうイベントに参加したいのだ。
僕もその一人。

『あの……日山(ヒヤマ)先輩。明日の花火大会、一緒に行きませんか?』
『あ、ごめんね。私は彼氏と行く約束をしちゃったんだ』
『……はい。わかりました』
『ごめんね』
『いえ』

まぁ、彼氏がいる人を誘おうという考えがおかしかったのかもしれない。

届くわけないのに。
馬鹿だな、僕って。

「どうした?何笑ってんだ?」
西村が僕の顔を見ながら言う。
いつの間に僕は笑っていたらしい。
「いや、何でもないよ」
今度は愛想笑いを顔に浮かべながら、僕はとぼけ、再び周りを見渡した。
そして、
ふと、近くにいたカップルに目が止まる。

「先輩……」

先輩だ。
男の人と一緒にいる。
浴衣を着て、綿菓子を持った先輩が僕の視線の先にいた。

笑っていた。

心の底から楽しそうに。
「樹知。カウントダウンが始まったぞ」
西村の声で我に返り、見上げた。
「3……2……1……0!」
打ち上げられた花火から目を背け、僕は先輩に視線を戻す。

ドォン……!

花火が弾け、その輝きは彼女の笑顔を照らした。

明るく、美しく。

その姿が僕には眩しすぎて、ひどく遠くにあるもののように思えて。

「あー、うー、やっぱり僕じゃ届かないよねぇ」
「あ?何?」
「なんでもない」


僕は、両手を伸ばした。

彼女と同じ位、手の届かない所にいる花火に向かって。
届くんじゃないかという、根拠の無い希望を抱きながら。














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