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リーズ


 風が耳元で囁いた。若々しい、しかし、木の洞を風が吹き抜けるような、虚ろでもある声で。
――よく使命を果たした。これからも、我のために働くことを、期待している。
「は――」
 謁見の間の端で、二人の兄弟は、頭を垂れる。しかし兄は、思い切って頭を上げて声の主を見た。視線の遥か先、巨大な法陣の中央に据えられた石造りの玉座に坐す、法王。
「ひとつだけ、お尋ねしたいことが――」
――何だ。
「使命の意味を。フォルビィはなぜ、死ななければならなかったのですか。私達兄弟が、なぜ見届けなければならなかったのですか」
「兄貴……」
――意味など、お前達が知る必要はない。
「陛下!?」
――意味があるということは、価値があるということだ。ものの価値など、見る者によって違おう。お前達にとって意味の無いことも、我にとってはある。そういうことだ。
「しかし――」
――納得できぬか。では、我からひとつ訊こう。未来は一つだと思うか。
「……陛下が見通されるのであれば」
――ならばなぜ我は、大陸中に目と耳を放たねばならぬ。
「それは――」
――未来は定まってなどおらぬ。我にできるのは、木々の間を擦り抜け、目指す場所へ届くように、羽を風に乗せることだけだ。木々の位置を知るためには目を凝らさねばならぬ。風を読むには耳を澄ませなければならぬ。それでも、すべての羽が風に乗るとは限らぬ。こたびの風に乗れるのは、あの娘であった。そういうことだ。
「わけわかんねえっ!だったら、俺があのミューザを斬ればすむことじゃねえか。俺じゃあ、奴には勝てなかったっていうのかよっ!」
「フェロ!? 控えろ!」
――止んだ風は、風ではない。これ以上、お前達は知る必要はない。だが、お前の望みは叶えてやろう。あの男と、戦いたいのだろう。
「やれるのか!?」
――いまは下がれ。追って使命を与えるまでな。

 二人の背後で、背丈の三倍はある扉が、大きく軋みながら閉じられていく。最後の隙間から、烏の鳴き声が聞こえた気がして、ロフォラは振り向いたが、その時には、すでに扉は閉じられていた。

_

更新日に読んでいただいた方には、merryChristmas。
そうでない方には、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

赤い瞳の天第三部「毒蟲」
今更新分をもって、完結です。

次回更新より、本編は少しお休みさせていただいて、トワロの外伝をお送りする予定です……
あくまで予定は予定ですからねっ。

次回予告

薄汚れた場末の娼館。
トワロを一晩贖ったのは
彼女の罪、そのものだった。

赤い瞳の天・外伝〜贖うは罪〜(仮題)
12/29連載開始っ!

タイトルすら決まってない(泣)

一応外伝ということで、別作品として連載します。
投稿したらリンクしますから、引き続きお付き合いください……
お願い(泣)

12/29追記
外伝連載開始しました。
「贖われざる罪に祈りを」
小説ページトップまたは目次ページ下のリンクからどうぞ。
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