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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード9『交差する日常と非日常』

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エピソード9-10

2017年2月3日付:加筆調整
 午後4時50分、各テレビ局がニュースを伝えるのだが、芸能事務所倒産のニュースを取り上げていたのは1局だった。
他局では都議会の動向等がメインで、それどころではない――と言うべきなのだろうか?
あるいは――芸能事務所の圧力なのか? その真相はネット上でも偽情報が多く、特定が出来ない状態だ。
【芸能事務所のニュースが報道されていないのは、あの事務所が圧力を賭けたのか?】
【4時40分頃は続報を伝えていたような気がしたのだが、10分で買収などの準備が出来るとは思えない】
【他局では、芸能事務所の所属アイドルが不祥事を起こした事で謝罪に追い込まれたと報道されている】
【都議会の動向と言う事は――今回の芸能事務所側の不祥事が国際スポーツ大会に影響を与えているのかもしれないな】
【おそらく、都議会は一連の超有名アイドルファンによる事件を悪質と判断し、最終的には――】
 都議会が何をテーマにしていたのかは不明だが、大抵はネット上で容易に予想できる。
ニュース等では豊洲の市場問題や不祥事等を取り上げているのだが、ネット上は国際スポーツ大会の東京開催を取りやめようという物だ。
その原因は超有名アイドルファンが起こした事件が海外ではサイバーテロと同格の事件が起きたと報道しているからだ。
今やネット炎上は世界共通語となりつつあり、これに関して日本政府が対応に乗り出す事になる一歩手前と言える。


 午後5時10分、谷塚駅付近のアンテナショップに姿を見せたのは――何と比叡ひえいアスカだった。
入店しようとした比叡を止めたのは、意外な事に大和朱音やまと・あかねだったのである。
これには比叡も少し驚いたような表情を見せていた。
「古代ARゲームや歴史認識問題――それは、ありもしないような捏造。WEB小説からネット炎上に使えそうなネタを引っ張り出したに過ぎない」
 比叡はARガジェットを大和に突きつける事はなく、早速ネットで話題となっているニュースサイトのページを大和に見せた。
タブレット端末に表示されたニュースの内容、それはARゲームが日本の芸能界すらも変えてしまう可能性があると言う記事なのだが――。
実際には、芸能界を変えてしまうとする記述よりも、一部のエアプレイ勢力の夢小説や二次創作等がARゲームの商品価値を落とし、超有名アイドルの進出を妨害しているという物だった。
しかし、比叡はこの記事に関して全く信用しておらず、逆にアフィリエイト収益を狙ったネット炎上記事であると断言する。
「だが、どんなものにも裏が取れなければ動く事が出来ないという事情がある。違法ARガジェットの裏取引、RMT、不正ツール……事例は無数にある」
 大和の方は記事に関して否定するような事もしなければ、肯定をするような事もなかった。
彼女が比叡の視線を逸らすような事はなく、比叡の目を見て話しているようでもある。


 その後、いくつかのやり取りがあったようだが、それに対しても大和は明言する事は避けた。
おそらくはネット炎上を回避する為、あえて推論でしか過ぎない事を真実と言えない可能性もあるのだろう。
「これから起こりうるだろう大規模テロ――それを止める為にも、我々は動くべきなのだ。力を持つ者が力を暴走させようと言う超有名アイドルをせん滅するべき」
 比叡が指を鳴らした瞬間、大和の背後を取ったのは――何と、ウォースパイトである。一体、どういう事なのか?
ウォースパイトの方は武器を構えている様子もなく、ただ大和の背後を取っただけにすぎない。逃げ道をふさいだという事か?
一部のギャラリーにとっては、状況が全く読めないのだ。そして、最終的には通り過ぎていく。自分達には関係ないと思いながら。
 唐突に姿を見せたウォースパイトに対し、大和が驚くようなリアクションをする事はなかった。
既に見慣れている――と言う可能性はないと思うが、ギャラリーとのリアクション差はどういう事か?
「ARシステムを使用するのが100%善人とは限らない――とは会議でも言われた事だが」
 大和は一言しゃべった後にARバイザーを取り、比叡に素顔を見せる。
しかし、ARゲームの会報誌等でも見る顔の為、大和の顔を見覚えがないという事はなかった。こちらも驚きは少ない。
むしろ、最近になって顔を覚えたという可能性もあり得るが――それ程に比叡は大和の知識が不足しているのかもしれない。
おそらく、知っていたとしても会報誌等の情報やネット上のまとめサイトレベルだろう。
「ARゲームで命のやりとりをするデスゲームを全面禁止し、それを今後も撤廃しないという事――それを忘れてはいないだろう?」
 そして、大和はウォースパイトの方を振り向く。ARバイザーなしではウォースパイトを認識出来ないはずなのに――である。
周囲のギャラリーもARバイザーを身につけていなかったり、それに類するシステムを起動していない人物にはウォースパイトの姿は見えない。
それなのに、大和はウォースパイトを殴り飛ばそうとするようなリアクションを見せたのだ。
「比叡アスカ、人は誰にでも光と闇の感情を持っている。しかし、闇の感情に飲まれてARゲームを使用すれば、その用途はネット炎上等に悪用されるだろう」
 大和の拳はウォースパイトの顔面スレスレで止まる。おそらく、意図して寸止めをしたのかもしれないが。
当然、大和はARバイザーを外している為にウォースパイトの姿は見えていないはず――それなのに、彼女にはウォースパイトが見えていたのか?
「あなたは――あなたは、超有名アイドルが何をしようとしているかを知っているの?」
 比叡は大和に向かって叫ぶ。そして、何もない空間から別のARゲームで使用するソードビットを呼び出した。
何故にソードビットを比叡が持っているのか? おそらくはパワードミュージックをプレイする前にも別のARゲームをプレイしていた可能性を大和は考えた。
しかし、比叡はソードビットを放とうとはしない。おそらく――。


 5分後、他にも2人のやり取りはあったのだが――周囲のギャラリーが拡散する事はなかったと言う。
強力なジャミングを展開していたというよりは、運営側が情報のシャットアウトをした可能性もあるだろうか。
しかし、実際には運営がシャットアウトしていた訳ではなかった。
断片的ではあるのだが、SNS上にやりとりの動画がアップされていたからである。
その中身を下手に拡散すれば、それこそネット炎上を煽る可能性を懸念していたのかもしれない。
「やっぱり――予感は的中したみたいね」
 SNSの煽り方等を見る限り、悪い予感が現実化したとスーパーの買い物帰りだったローマは思う。
悪質なアイドル投資家が何者家から資金をもらい、ネットを炎上させ――ライバルを潰していく構図は、まるでだまし討ちである。
一体、この流れはどうしてこってしまったのか? アイドル投資家等は逮捕されている状況なのに、この勢いが衰えないのはどうしてなのか?


 午後5時30分、SNSで大きな事件となったのは比叡の言動ではなかった。
それは、悪質なアイドルファンの行動が海外で問題視され、遂にはネット炎上する寸前だったからである。
「ここまでの展開になるとは――情報の提供が遅すぎたのか、あるいは別の何かが大物を釣り上げようとしているのか」
 コンビニ前でタブレット端末を片手にタイムラインを見ていたのは、私服姿のビスマルクだった。
「超有名アイドルファンが起こした事件の爪痕――それは、マスコミも反省するべき側面を持った事件になるのは間違いない」
 ビスマルクの懸念、それは超有名アイドルファンの言動がネット炎上を起こし、遂には――と言う箇所だろう。
自分が動画で投稿したメッセージも無駄に終わってしまったのか――今は、それを考えても仕方はない。
「こうなってくると、連中はARゲームを敵視するどころか、自分の思うがままに改悪してくる事も避けられないだろう」
 ネット炎上が次第に大きくなると、それは戦争状態と変わりがない――とはアカシックレコードに書かれていた事ではない。
後からネット上でつぶやきとして拡散したメッセージである。
日本の混乱、超有名アイドル以外のコンテンツを完全駆逐する――そうした流れが再び動き出そうと言う瞬間なのかもしれない。
「今まで動画を投稿してきた流れは――無駄になってしまうのか? それ以外に――出来る事はあるはずだ」
 ビスマルクは改めて考える。今は起こってしまった事を悔やむよりも――何とか阻止しようと動く方が先のはずだ。
5月2日――ビスマルクの懸念していた事件は現実となる。
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