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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード5『炎上マーケティングの始まり』

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エピソード5-10

2017年1月20日付:加筆調整

 午前12時50分、ネット上に拡散したとある動画は――『ある勢力』がARゲームを妨害しようとしているという決定打となった。
投稿した人物が誰なのかは、この際どうでもよかったというのが動画の内容を見れば誰の目から見ても明らかである。
「やっぱり、そう言う事か――」
 動画を店内で見ていたのはビスマルクだった。テーブルの上にはドリンクバーの特殊材質のタンブラーが置かれている。
このタンブラーはホットドリンクを入れても、テーブルから地面に落した位では割れる事もない。
それは例えの話ではあるが、耐久性は非常に高い物と言えるだろう。
実際、これを別のアンテナショップで購入する観光客もいる位だ。海外からの観光客には高い耐久性が喜ばれているのかもしれない。
「この動画を投稿した人物は、内部告発でもしようと言うのだろうか――」
 普通、ファミレス等では長い時間居座る行為に関して、良い目を見られない事が多いのだが――ここは、そう言った場所とは明らかに違う。
しかし、ここはARゲームを観戦する為の施設である為、基本的にARゲームの観戦目的であれば常識の範囲内で店内にいる事は問題視されていない。
この辺りはARゲームを町おこしで行おうと言う草加市の意向もあるのかもしれない。
「あの人物が何者かは知らないが――あの赤いプレイヤーは明らかにチートを使っている」
 ビスマルクが注目していたのは、赤いアーマーのチートプレイヤーである。
なお、この動画にはアイオワの姿もあるのだが、アーマーのデザインも変更されている為、ビスマルクは名前を見るまでは気づかなかった。


 午前12時51分、例の動画を見ていたのはビスマルクだけではなく――ARゲームガーディアンが総動員に近い状態で出動する事になった。
その理由はチートプレイヤーが通報された事なのだが――その規模は尋常ではない。動画を見た人物の通報でガーディアンが出動した訳だが――。
そして、追い詰められた犯人はARFPSのフィールドを展開する事になるのだが、それがテレビで報道される事はなかった。
ARゲームフィールドは、違法動画のアップ等を防止する観点からジャミングが強化されており、特定のアプリやシステムを実装している物ではないと撮影も不可能である。
一方で、ARゲームフィールド内部ではギャラリーから怪我人が出ないように特殊なシステムが実装されているが――詳細は不明だ。
こうしたシステムを、ネット上では『ご都合主義』等と呼称しているのだが――『ご都合主義』は超有名アイドルの方であるという事で、今は『ご都合主義』とは呼ばれていない。
ガーディアンのメンバーには磯風いそかぜの姿があったという話もある一方で、あれは別の姉妹等ではないのか?
様々な憶測が憶測を呼び、ネット上ではある種の混乱と言うか祭りがおこなわれていると言っても過言ではない。


 午前12時52分、アンテナショップを出て別のアンテナショップへ向かって情報を収集しようとした大和朱音やまと・あかね、1分程歩いた所で突如としてフィールドが展開されていた。
「そう言う事か――。株のインサイダー取引も、あの連中が影で糸を――」
 違法ガジェットのバイヤーが逮捕され、違法ガジェットが摘発されているニュースはネット上でも稀に取り上げられる。
しかし、これらがテレビのニュースで放送されない理由は数多くあった。
ネット上では『お察しください』や『大人の事情』と言う事で片づけられているが、憶測だけが独り歩きをするのも危険と言う事で――報道していないのが理由かもしれない。
それが特にアイドル投資家や超有名アイドルだったとしたら――日本政府が力を入れている事業に関係する所が行っているという事だったとしたら?
「憶測だけが独り歩きすれば、それはレッテル貼りや風評被害――ネット上の自由を奪う様な事件に発展する」
 大和は不安そうな顔をしながらも、フィールドが展開された場所へと急ぐ。
そして、ARバイザーを早歩きの状態で被り、ARガジェットを腕に装着、ARアーマーも瞬時に装着された。
まるで――特撮物でも見ているような光景に周囲は驚くが、この光景はARメット等のARゲームに対応したアプリ等で見なければ、目撃する事は出来ないという。
「過去の事例を考えれば、憶測の一人歩きは非常に危険であり――無関係のカテゴリーにも炎上のリスクがある」
 憶測だけが独り歩きし、風評被害を受けた例としては過去の事例として該当するとすれば、超有名アイドルグループの大型ショップだろうか。
移転した場所が豊洲だった事、施設も本来であれば新市場として利用される予定だったものを大改装、2017年夏頃にはオープンした事――。
こうした動きが出来過ぎているとネット上で炎上しそうな予想が多かった。
 そして、新市場に関してもさまざまな情報が飛び交った事、連日のワイドショーで取り上げられた事もあり、『芸能事務所側の炎上マーケティング』というレッテル貼りをされた事でネット上が大炎上する。
それこそ、別コンテンツ勢が『超有名アイドルを炎上させたのは、○○の解散を望むファンの仕業』等と拡散、ネットの海は文字通りの戦場となった。
この論争は後に『超有名アイドル異変』等と形を変え――現在のネット上で語られる都市伝説へと変わって行く。
『ネットの海は平和であり、自由であるべき。特定の芸能事務所が全能の神として君臨する事は許されるべきではない――』
 これは、ネット上が大炎上し、その様子が世界大戦に匹敵すると言う事を訴えようとしたメッセージである。
これが誰のメッセージなのかは分からずじまいであり、結局は誰なのか特定する事もかなわなかったという。
実際、この戦争に巻き込まれた多数のつぶやきアカウント、有名所のブログ等が閉鎖する事態になり、文字通りの戦争と考えるユーザーも存在した。
この様子に関しては『形を変えた第3次世界大戦』という極論も出てくる――それほどの状況だったのは間違いない。
「ネット上の情報を鵜呑みにすれば――同じ事を繰り返す可能性は高い」
 大和はまとめサイトを確認しつつ、何度も考えていた事をつぶやく。
負の連鎖、繰り返される紛争――それをたちきれない事はないはずである。
それを踏まえれば、今回の事を主導しているのは、無限の利益を生み出す賢者の石とも言われるシステムを保持しようとする芸能事務所なのか?
それとも、機密事項でさえもネタバレと言う単語に変更し、海外へ流出させようとする投資家連中なのか?


 午前12時53分、大和はフル装備とも言える武装でフィールドを展開した人物を追跡し始める。
そのスピードは超高速と言う訳ではなく、追いかけても引き離される状態だった。
大和の主砲は威力こそは高いのだが、当たらなければ意味がない。その辺りは向こうも研究済みなのだろう。
最初の数発はあっさりと回避し、主砲の爆発は建造物にもヒットする。
直撃した建造物が破壊される事はなく、爆発のエフェクト発生後には何事もなかったかのようにビルが存在していた。
しかし、これだけの暴れ放題に近いフィールド内でも、プレイヤーがARフィールドの外に出る事は出来ない。
ギャラリーであれば任意に出る事は可能だが――実際、プレイヤーが外に出ようとするとバトル放棄と判定される。
そうした事情を含め、バトル放棄のペナルティを考えて自分でマッチングしたバトルは自分で放棄しないというのがネット上でも常識となっていた。
 それを犯人は全く知らなかった為、最終的には大和の主砲一発で沈められた。
所詮、チートを使ってまで賢者の石の力を手に仕様とした結果が、自身の破滅になるのは分かっていたはず。
大和の方も語る事はなく、そのままフィールドを後にする。


 午後1時、午後のニュースを報道する所では大抵が株のインサイダー取引を扱っている一方、あるテレビ局が動き出した。
『速報が入りましたので、お伝えします。アイドルグループ○○○のファンがアプリゲーム△△△の違法ツールを販売していた事で逮捕されました』
 スタッフから原稿を受け取った男性アナウンサーは速報とは別のニュース記事を読もうとしたのだが、スタッフからこちらを先に読むようにとの指示があり、渡された原稿を読む。
『逮捕されたのは、アイドルグループ○○○のファンである18歳の――』
 主犯格のメンバーは何と未成年の男性だったと言う。その為、テレビでは全く報道されていなかった。
しかし、ネット上では彼のハンドルネームが有名過ぎた為、そこから本名がばれてしまう事になり、ネット上に拡散する事になる。
それに加え、ニュース上ではアプリゲームと言及されていたのだが――ARガーディアン等にとっては、これがARゲームに関係した事件なのは明らかだった。


 午後1時5分、プレイを終了したアイオワをアンテナショップで目撃した比叡ひえいアスカは、何かの違和感を抱く事になった。
ネット上に拡散している違法ツールとはARガジェットの事を指すのは明白なのに、テレビのニュースでは別のアプリゲームと紹介されている。
単純に犯人逮捕が同じタイミングだったと言えなくもないのだが――比叡は何か別の存在がいる可能性を考えていた。
その状況下、比叡はあるニュースをネット上で目撃する事になる。
【あの事件は架空の事件ではなく、現実だった? 超有名アイドルの芸能事務所によるコンテンツ独占計画の全貌とは――】
 そのニュースとは、架空の事件として取り上げられていた物――超有名アイドルの芸能事務所が考えているコンテンツ流通の独占計画である。
独占計画に関してはアカシックレコードにも書かれていたことだが、知っているのはごく少数だろう。
「これは――どういう事なの?」
 比叡は、このニュースを見て驚くことしかできなかった。
これは超有名アイドル事変や他の超有名アイドル絡みの事件と全く同じ流れを意味していたからである。


 同じニュース記事を見つけた、大和は――比叡とは別の反応を示していた。
そのリアクションは衝撃と言うよりは、疑問と言えるのだろうか?
「今回の不正ガジェットの使い手――そう言う事だったのか」
 大和は、今回の不正ガジェットを使用していた人物が超有名アイドルファンと言う事に対し、何か巨大な存在を懸念していたのである。
「不正ガジェットプレイヤーの洗い出しをしていた所に、今回の襲撃事件や一連の事件を発想させる手口――」
 そして、彼女は思った。この世界は、予想以上に崩壊の一歩をたどろうとしていた事を。
それこそ、ARゲームを平和的に利用しようという日常を破壊し、超有名アイドルを唯一神にする為の宣伝道具として利用しようと言う非日常を呼び込む――。
過去には『玩具で世界征服』とも呼ばれていた事、それが『コンテンツで世界征服』という展開になりつつあったのだ。
何としても、デスゲームや世界大戦に発展する前にも止めなくてはならない。
「ARゲームの中立性を守る為にも――最善を尽くす!」
 新たな戦いを予感させるような気配を感じるような、大和の一言は――ARゲームを悪しき勢力から守ろうと言う物に変わりはない。
しかし、その一方で彼女は別の目的を併せ持っているような――そう言う気配も持ち合わせていた。


 この一連のニュースを見ていた、ARガーディアンの一人であるあきつまるは、何かの資料を見ながらニュース記事を確かめていた。
「全ては、始まったばかり。ARゲームを巡る一連の事件はネット炎上では片づけられない大事件を呼ぶ」
 彼女は何を感じているのだろうか? ARゲームで戦争を起こそうという人間を彼女は放置するのか?
「まずは――諸悪の根源を見つける事か」
 あきつ丸以外にも諸悪の根源に気付く人間はいるだろう。
芸能事務所が全否定するよりも速く、諸悪の根源を見つける必要性があった。
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