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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード4『大和、出撃!』

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エピソード4-6

2017年1月15日付:加筆調整
 4月16日午前9時30分、時を同じくして谷塚駅近くのアンテナショップでARガジェットを装着し、準備をしている人物がいた。
それは、エントリー再開待ち状態になっていた長門ながとクリスである。
彼女の場合は、パワードミュージックの新規エントリー停止騒動に巻き込まれる形で登録が出来ない状態になり――現在の状況に至っていた。
エントリーの出来ない理由は襲撃事件が原因だと言う事は後に知ったが、それでも納得できない部分はある。
ARゲームで事前登録の中断がされる理由は、大抵がゲームバランスの調整や登録者が予想より少ない等の理由がメインだったからだ。
それこそ、ソーシャルゲームでも良くあるようなサービス開始前のトラブルで聞かれる事例と同じと言える。
その為、今回の理由に関してはARゲームの運営本部への乗り込みも考えていた。
しかし、この事件は思わぬ方向に動き出す――長門も知らない所で、何かが動き出していたのである。
『――たった今届いたニュースです。芸能事務所E社は、芸能事務所A社を潰すという脅迫状を送ったとして――』
 長門は別の場所に置かれたテレビを見ながら待機していたのだが、ニュースの内容を聞いて目が点になっていた。
このニュースを目撃したギャラリーも、状況把握が出来ておらず――中には誤報扱いする人物もいる。
「E社のアイドルが脅迫状? それこそ信じられないだろう」
「そういう筋書きで芸能事務所A社を目立たせるという闇取引をしたのだろうな」
「そんな事をしても、ファン離れが加速すると言うのに」
「まるで、不祥事の暴露合戦じゃないか。何処かのゲームでアイドルの暴露合戦をパロディで淹れた作品もあるが――」
「このニュース、続きがあるぞ?」
『一連のARゲームを巡る襲撃、違法ガジェットの流通に関しても自分達の仕業だと自白しており――』
「おいおい、それは本当か?」
「パワードミュージックのエントリーも再開されたみたいだが、後味の悪い結果だ」
「そういうシナリオで――とも言えない程の展開だな」
「これが、資金力のある芸能事務所のやる事か?」
「あれは絶対悪や必要悪と言う存在ではない――悪は悪でも、ゲスな悪としか言いようがない」
「仕事人ナインはいないのか? 彼らなら、超有名アイドルでも――」
「仕事人ナインは、さすがに違うだろう。それはフィクションの世界の存在だ。ARゲームならば、ガーディアンの出番だろう?」
 一連の事件の犯人が芸能事務所Eのアイドルと言う事が報じられ、周囲も動揺を隠し切れていない。
何か別の話題でごまかそうと考える人物もいるが、それでも芸能事務所Aがやっている事はグレーゾーンどころの話ではないだろう。
それこそ、ネット炎上を仕掛けるつぶやきユーザーと同じ事を芸能事務所がやっているのだ――。
一連の芸能事務所が行っている事、それを有名無罪と言う言葉で片づけるには無理が生じる。それは、誰の目から見ても明らかだろう。
「一体、向こうの目的は――何だと言うのだ」
 長門の方もニュースを聞き、勢力の動向を調べようとネット検索を行うのだが――大方の予想通りの展開となっていた。
芸能事務所なのか、あるいは芸能事務所がつぶれると都合の悪いアイドル投資家なのか――つぶやきサイトには、サクラと思われる書き込みが相次いだのである。
目的としては情報のかく乱の為か、その目的は達成されたも同然だ。この状況を見た長門は、ため息しか出てこない。


 一連の芸能事務所に関する事件は、大きく報道される事となった。その理由として、脅迫状と言う手段に出た事が挙げられる。
しかし、それだけで大きくニュースになるのだろうか? 芸能事務所が行った事を考えると、いたずらでは済まない事も理由の一つかもしれない。
「芸能事務所Aに脅迫状を送ったという事実だけを切り取り、あたかも芸能事務所Eが送ったように見せかける――そう言うパターンか」
 ある場所へと移動していた比叡ひえいアスカも、移動中にこのニュースを知った。
本当に、このニュースが本物なのかどうかを調べるよりも――今の比叡にとっては重要な事があり、そちらを優先しなくてはいけなかったのだが。
「おそらく、犯人は芸能事務所Aの信者かアイドル投資家か――?」
 比叡は単純に犯人の正体が簡単なものではないか、と考えていた。重要視する事よりも優先する事であれば、こちらを調べる必要もあるとも――。
しかし、今の彼女が重要視しているのはアカシックレコードである。それに加えて――。


 午前9時35分、アンテナショップ行きのバスに乗り込んだのは明石零あかし・ぜろ、向かうのは谷塚駅近くのアンテナショップだ。
このバスはARゲームプレイヤー専用に近い位、インナースーツを着用している乗客が大半なのだが、これに関しては明石は何もツッコミを入れる力もない。
「周囲の人物は、ほぼARゲームのプレイヤーか。インナースーツのバージョンやパターンによっては――と思ったが」
 バスを利用する乗客は、全てARゲームプレイヤーであるという事なのだが――明石が気にしていたのは、インナースーツの形状やカラーリングである。
中には実戦向きと言うARガジェットも存在、あまりにも強力な物は軍事兵器と呼ばれる事もあった。
実際に一部のチートガジェットや違法ガジェットが、軍事兵器に近い性能を持つのだが――。
仮に、そう言った物が出回るのか――と言うのは明石には把握済。一部のネット勢力等も、こうした不正ガジェットは罰金制度を加えてでも規制すべきと声を強くしている。
「チートに罰金刑を導入しても、ばれなければ問題ないというプレイヤーが出てくるのは明白だ。それに、芸能事務所が絡むと――自体はややこしくなると言うのに」
 明石の方は、あまり喋りたがらないような性格なのだが――チェックしているつぶやきサイトのタイムライン的には、ツッコミを入れずにはいられなかった。
バスの方は高速で移動している訳ではないので、渋滞等に巻き込まれると時間がかかってしまう。
しかし、特殊系列のARバイザーユニットやブースターユニットと呼ばれるような物は移動手段にも使えるが、それは一部の限定されたエリアのみ。
下手に一般道の許可されていない道路で乗り回そうと言うのであれば、大変な事になるだろう。
「急がば回れ――と言う事か」
 特にやる事もないので、明石はバスの窓から見える風景を眺める事にした。
西暦2019年とは思えないような近代化ビルに混ざる平成初期辺りの様な住居やアパート、耐震性の高いマンションに混ざる建造物もある。
電車に関しては、高速鉄道の類はこのエリアで見かける事はない為、私鉄の類がメインなのだが。
ARゲームのアンテナショップは近未来を思わせるのに、全体が近未来の様な光景にならないのには――工事の遅れなどとは別の事情もあった。


 午前9時50分、長門はエントリー再開をアンテナショップ内で待っていたのだが、そこである人物に遭遇する。
『長門クリス――』
 外見はブルーとホワイトのツートンカラーのインナー、全身アーマー、それ以外には音楽ゲームのコントローラを思わせるようなビームサーベルを両肩に収納しているように見えた。
ARメットは全体を覆うタイプ、ツインアイが特徴な特別仕様――装備のカスタマイズ具合からはワンオフとも感じ取れる。
しかし、これほどのARガジェットを持っている人物を長門は見覚えがなかった。なのに、向こうは名前を知っているのはどういう事なのか?
「覆面騎士や謎のヒーローを自称しそうな人物に、自分の名前を知っているような知り合いはないが」
 半分冗談気味に長門は対応する。それを聞いて謎の覆面騎士は対応に困っているようだ。
『失礼した。私の名はヴェール……いや、今のは忘れてくれ』
 迂闊にも別の名前を名乗りそうになったが、長門は聞き流している。
もしかすると、ハンドルネームでも名乗りそうになったと勘違いしているのか?
『改めて名乗ろう。私の名は、西雲響と言う。機会があれば、よろしくお願いしたい』
 男性声の人物――明らかにボイスチェンジャーなので怪しいかもしれないが、彼は西雲響にしぐも・ひびきと名乗った。
西雲と言う単語は、あまり聞きなれないような苗字なのは間違いないだろう。
「よろしく頼む。西雲――響」
 少し間が空いたような反応だが、長門は西雲と言う苗字には聞き覚えがあった。
確か、アカシックレコードで――とも思ったが、今はそちらに関わっている暇もない為、ひとまず置いておく事にする。
今はパワードミュージックのエントリーの方が重要だからだ。
西雲が何故に、この場に姿を見せたのか――それは長門の知る所ではない。果たして、彼の目的は何なのか?
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