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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード3『比叡、出撃へ』

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エピソード3-4

2017年1月13日:加筆調整

 4月15日午前10時35分、データのインストールも完了し、別室でARバイザーのサイズ調整を行っていたのは比叡ひえいアスカだった。
『この声が聞こえるのであれば――ARガジェットのOKボタンをタッチしてください』
 耳元にあるヘッドフォンにも似たスピーカーから男性スタッフの声が聞こえる。
音量は爆音と言う訳ではなく普通の音量であり、周囲の環境音も感じ取れるほどの音量に調整されていた。
これは一種の仕様による物らしい。一昔に爆音で伝言ゲームをするという遊びがネット上で拡散し、それを問題視しての対策と言う話もあるが――それは尾びれが付いた話でもある。
基本的にゲーム中のBGM、効果音、演出の類はARバイザー及びガジェットを装備していないと感じる事は出来ないようになっていた。
それが、ある意味でも折衷案とも言えるもので――近隣住民に迷惑がかからないようなシステムを考えた結果、こうなったとの事らしい。
『確認出来ました。それでは、ARバイザーのデザインは――提示された物でデータを構築していきます』
 次にベースとなっていたARバイザーが形状を変化していく。
その形状は全体を覆う様なタイプではなく、目をバイザーで隠し、耳はヘッドフォンで隠れるタイプに落ち着いた。
顔が見えるタイプと言うのは防犯上、コンビニや銀行等でもバイザーを脱がなくてもそのまま入る事が可能なタイプである。
バイクのメットタイプは、顔も完全に隠れる関係で銀行などの強盗対策をしている場所では使用できない。
この辺りは少し手間になるのだが、メットを脱いでから入店する必要性があった。
『個人的にはARバイザーは全体を覆うタイプ――バイクのメットと原理が同じ物と考えておりますが、そのデザインが良いというのであれば――』
 比叡としては不審者扱いされなさそうな形状を選んだ結果が、今回のメットデザインとなる。
実際はデザインで非適用となっている部分が半透明になっているという仕掛けであるのだが、比叡には伝達済――それでも彼女はこの形状がいいという事で、このタイプになった。
デザインを適用する人間がいないだけだが、ARメットを完全に透明化し、素顔を見せた状態でARバイザーを運用すると言う事も理論的には可能である。
それをやろうとすると、止められるというよりはARバイザー部分の一部データが丸見え状態になる為、お勧めはされていないだけだが。
アーマーやインナースーツに関しても、ある程度のカスタマイズは可能である。ただし、本来の効果が減少する為に推奨されない。
さすがに露出度が高いようなセクシースーツの類は不可能と思われがちだが、全裸等でなければ問題はない――とガイドラインには明記されている。
「他のゲームのロケテストでふんどし女子や水着のハンター、アマゾネスの様な外見の人物もいたか――」
 比叡は自分のアーマーが装着されるのを待ちつつ、そんな事を考えていた。
デザインはある程度は指定したが、基本的にはお任せと言う事でスタッフに一任している。
パワードミュージックの場合は、その方が下手にカスタマイズするよりも安全と判断したからだ。


 2分後、今度はインナースーツにARアーマーが装着されていく。
その様子は、まるで特撮ヒーロー等のアーマーが転送されるような――。比叡としては周囲からアームに固定されたアーマーがインナースーツに装着というのを想像していたが。
形状は北欧神話等のモチーフは特になく、汎用アーマーをパッチワークしたような物に落ち着いた。カラーリングもバラバラだったのだが、そこは青に変更している。
ラインはブルーであり、クリスタルのような発光体もブルーにしている。これに大きな意味があるのかは不明だが――。
使用するガジェットは鍵盤にDJのターンテーブルを思わせるリズムゲームに使用されるコントローラ、それをロングソードにしたような物である。
しかし、ソード部分は実体剣ではなくビームタイプであるのだが、これには大きな理由があった。
『ご指定はロングソードとの事でしたが、パワードミュージックでは実体剣を使えません。ARサバゲ等とはルールが異なりますので、その辺りはご理解ください』
 比叡にはスタッフの言う事は分かる。しかし、重さがあった方が振りやすいと思っての実体剣指定でもあった。
見てきた動画ではナックルやトンファーと言った実体系の武器もあったと思ったが――あれも肝心の部分がビームになっているという事のだろうか。
さすがに日本刀等の実体剣で周囲の建造物を損傷させたり、観客にけが人が出たりしてはARゲームの存続も危うくなる。
そう言った事を踏まえての保険としても、逆に色々とやり過ぎな個所があるのではないか――そう比叡は男性スタッフの指示を聞きながら考えていた。
「ビームブレード――そう言う事なのか?」
 ロングソードを試しに数回ほど振り回すと、何かのオブジェクトにロングソードの刃部分が当たる。
しかし、肝心の刃がオブジェクトに激突する事もなく、そのまますり抜けてしまった。オブジェクトがCGで出来ており、その為に剣をすり抜けたのか?
実際には剣をすり抜けたのには別の理由が存在し、それがデスゲームである事を否定し続けている証拠――でもあった。


 午前10時40分、アーマーの装着も完了し、1番ゲートから出てきたのは――ARアーマーを装着した比叡だった。
「これが、ARアーマーとARガジェット――?」
 比叡は近くにあった鏡を見て、改めて驚いていた。
動画サイトにあった動画を見た時には別の意味でもカルチャーショックを抱いていたのだが――本当に自分が装着する日が来るなんて。
VRゲームを題材にした小説も多々あり、それに加えて映像化もされていた。その世界観が現実化したと言えば、ARゲームを知らない人間でも分かるのだろうか。
『ARアーマーの重さは10キロにも満たないでしょう。動きに関しては大きく阻害される事はありません』
『ただし、ARアーマーでも人型兵器等に乗り込むタイプは――相当重いと思われますが』
『では、快適なARゲームライフをお楽しみください』
 最後の一言はシステムボイスだが、それ以外は男性スタッフである。さすがに、その辺りの聞きわけは比叡にも可能だ。
ARアーマーには様々な不具合があると言うネットの噂話は、やはりネット炎上目当ての嘘の煽りやネタでしかない――そう思わせるような展開を見せている。
なお、ARバイザー装着時は目の色が金色に変化しているが――特に演出的な要素以上の役割はない。
これが異能力バトル物だと、意味合いも変化するだろうが、ARゲームはデスゲームとは直結しない事を明文化されている。
「誰でも、これを初めて装備した時には同じ事を思うだろうか」
 比叡は自分の右手を見つめながら、今の心境をつぶやく。リズムゲーム初心者だった自分でも、初めてプレイした時は極度の緊張を覚えた。
しかし、今では新しいリズムゲームをプレイしても、ある機種の応用した物と言わんばかりにあっさりとクリアしていき、次第にそれが当たり前のように感じてしまっている。
この現象は格闘ゲームでは起きないので、おそらくはリズムゲーム限定なのだろう。
次第に、この現象が起きてからはどのリズムゲームをプレイしても初見であっさりとフルコンボを決めていく――それを周囲のギャラリーは驚く。
リズムゲームが上級者専用ジャンルと言われ始めたのが、どの位のタイミングなのかは自分でも分からない。
しかし、自分の様な初見でもあっさりとクリアするプレイヤーが増えたこと――それがリズムゲームでプレイヤー離れが起きている原因なのだろうか?
あるいはアプリゲームを初めとしたリズムゲームが次々と量産されていき、そこから少ないユーザーの奪い合いが起こったのか?
どちらにしても、真実を知る為にも――彼女はARリズムゲームのフィールドへと踏み入れたのだ。
「ここからが本当の意味でのスタートラインだ!」
 比叡アスカ――これが彼女のパワードミュージックデビューとなった。
全ては、ここから始まるのである。
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