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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード2『ビスマルク、始動』

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エピソード2-8

2017年1月11日付:加筆調整
 4月13日午前10時50分、3人の選曲も終わり、いよいよレースが始まろうとしていた。
「コースは道なりの直線コースか――」
 アイオワはコースのマップをARバイザーで確認し、特に障害物があるような気配はないと感じていた。
アイオワのARガジェットは特に飛行アビリティ等が付いている訳ではない。ただし、ブーツに関してはホバリングが使用可能になっているが。
「飛行禁止エリアである以上、飛行は封印――問題があるとすれば、トルネードのガジェットか」
 ビスマルクはコースよりもトルネードが所持しているガジェットを調べ始めた。
一方で、トルネードは細部のチェックの後、周囲を見回すようなことはなく終始無言を貫いている。
何もやる事を失ったという訳ではなく、スタート待ちなのかもしれない。
「あのトルネードと言うプレイヤー、もしかしてCPUか?」
「仮にCPUだとすれば、ジャミング等が発生した段階で姿が消える。それに、地面をよく見ろ――」
「影が――ある」
「そう言う事だ。ARゲームのCPUアバターには影がない。アバターでも影があるのは、ARFPS等の影の有無でゲームバランスが変化するものだけだ」
「つまり、パワードミュージックでは――」
「影がゲームバランスには影響しない。影響するとすれば、天気だろう。仮に雨が降ったりでもすれば――プレイヤーには圧倒的不利になるのは避けられない」
「それにしても、あのトルネードと言うプレイヤーの目的とは?」
「それをこちらに振られても、どうしようもない」
 周囲のギャラリーもトルネードに関しては色々と疑問は持っているようだが――。
その一方で、ビスマルクは――ある物を試そうと考えていた。それは、現在装備しているARガジェットとは違うガジェットを使う事でもある。
ARガジェットの複数所持と1ゲーム中での切り替えは禁止されていない。ジャンルによっては、ガジェットの切り替えは重要な要素とも言われている。
それを踏まえての物だが、リズムゲームでプレイごとにコントローラを変えるような事は聞いた事がない。
「リズムゲームで複数のコントローラを使用するのは――」
 しかし、切り替えようとした矢先にロックがかかった事によりガジェットを切りかえる事は出来なかった。
厳密にはパワードミュージックに対応していないガジェットだった為、ロックがかけられたという事らしい。


 遂にレースは始まった。最初の選曲はトルネードだが、先ほどとは違ってのランダム選曲を使用しており――。
【レベル6――】
 表示されたレベルは6、楽曲はクラシックアレンジのカテゴリーからだった。
白鳥の湖と言う曲のアレンジらしいが――向こうの楽曲とは大きく異なり、作曲者の名義が異なっている。
作曲者名儀は表記バグと言う訳ではなく、特殊な機種依存文字を使っている可能性の方が高かった。
楽曲のイントロというか出だしが流れるのはゲームスタートエリアからである。スタートして50メートルを過ぎた辺りからだ。
「トランスアレンジ――だと」
 ビスマルクも別の意味で驚いていた。クラシックアレンジ楽曲がリズムゲームで存在し、ARリズムゲームでは収録されている割合が多い。
その理由として、さまざまな事情はあるかもしれないが――超有名アイドルの楽曲を収録するよりは手間が必要なく、楽曲使用料的な意味でもコストパフォーマンスが高いと言える。
もっと別な視点から理由を見ると、ARリズムゲームのユーザーに超有名アイドルの楽曲が合わないという事もある。従来のリズムゲームであれば、若者に人気の曲を入れるのは当然の流れだろう。
しかし、ARリズムゲームはリズムゲームでトップランカーと呼ばれる部類のプレイヤーが非常に多く、彼らが選曲するのがオリジナル楽曲のカテゴリーである。
それを踏まえると、自然とオリジナル楽曲だけを収録するのがARリズムゲームの流れ――と言えるのかもしれない。
 トルネードの方は何も喋る事無く、淡々と進んでいく。50メートル通過ポイントから楽曲の演奏が始まるのだが、急いで通過ポイントへ向かう気配もない。
それを見て向こうの動きを警戒していたのは、アイオワである。ビスマルクの方は様子こそは見ていたが、そう言った余裕もない気配だろう。
 楽曲のイントロは、どう考えても我々が知るような白鳥の湖ではない。トランスと言う事もあり、電子音的なアレンジがされている上に――楽曲のアレンジも非常に強かった。
全く別のオリジナル楽曲で発表した方が早い――というのは厳禁なのは間違いないだろうか。
最初のイントロ部分では特にフィールド上に変化はない。トルネード、アイオワ、ビスマルクもARバイザーに指示された矢印に従って先へ進む。
そのスピードは時速40キロの様なスピードではなく、時速10キロ辺りにとどまっている。あまりにも速度を出し過ぎると、障害物を吹き飛ばす可能性もあってのことのようだ。
中には高速道路を使用したコースなどもあるが――それらがパワードミュージックで解禁されるのは先の話だろう。
高速道路や国道も複数使う様なレース系ARゲームでは、既に警察との連携を取る為のコース調整が行われているが、こうした情報がニュースに出る事も現段階ではない。
「来たわね!」
 イントロが過ぎた辺りで目の前に白い壁が道路から姿を見せたのである。まるで、もぐら叩きのもぐらを思わせるような動きだが――。
完全に壁が出てくると、その壁は消滅をする。どうやら、完全に壁が出るまでに反応をする必要があるらしい。
そして、アイオワはARメットから聞こえる楽曲のリズムに合わせるかのように、全てが出現する前の白い壁を次々と叩いて行く。
足の方は止めず、そのまま矢印の指示に従っていると言ってもいい。テンポよく進んでいるかどうかは見た目では分かりづらいのだが――。
そのテンポは、まるでボクシングのステップ等を思わせる動きと似ている。アイオワがリズムゲームをプレイした事がないのも、こういう動きになっている理由だ。
「普通のシューティングと違って、ターゲットの出現している時間も限られているのか」
 アイオワは自分なりにターゲットの動きをチェックし、次々と叩いて行く。
スピードの方はアイオワの場合が一定に対して、トルネードは不定、ビスマルクもスピードが一定しているのだが――速度はアイオワと違う。
このスピード差に関しては誰も言及はしなかったが、使用ガジェットが影響している可能性は高い。
「そう言えば、リズムゲームをプレイしているはずなのに曲が流れてこない。どうなっている?」
 ギャラリーの一人が、楽曲の流れていない事に対して違和感を持っていた。
プレイヤーにはARメット経由で曲が流れているのだが、ギャラリーはどうやって聞くべきなのか?
「楽曲を聞きたいのであれば、アンテナショップの中継を見れば問題ないだろう。ARゲームフィールドとはいえ、使用しているのは警察の許可をもらっているとはいえ――公共の道路だ」
 ギャラリーの隣に姿を見せたのは、提督服を着ている謎の人物だった。
軍帽も被っており憲兵か何かと思われがちだが――この手のコスプレイヤーは草加市内であれば複数人は目撃されている。
周囲も全く気にしていない以上は、気にしては負けと言う事なのだろう。
「しかし、アンテナショップまで距離があるのに――どうやって観戦すればいい?」
 確かに、ギャラリーの男性が言う事も一理ある。近いアンテナショップでも数百メートル位はあるだろうか。
「どうしてもというのなら、これを使うといいだろう」
 提督服を着た女性がカバンから取り出したのは、特殊な形状のヘッドフォンである。
一般的な物と違うのはパワードミュージック用のARメットでも使われているアンテナが付いている事だろうか?
そして、そのヘッドフォンを装着すると、スピーカー部分から楽曲が流れていた。
どうやら、周辺住民から騒音のクレームが出ないように、ヘッドフォンに楽曲が流れる仕組みらしい。
観客の歓声だけしか聞こえていないのは、この為と言う事なのか――と疑問は残るが。
「ここまで対策をしたとしても、一部勢力はコンテンツ炎上の為に些細なミスを利用してくる。嘆かわしい事だが」
 彼女の名前はあきつまる、ARゲームのガイドラインやルールを守っているかどうかをチェックするガーディアン組織のメンバーでもあった。
楽曲の長さによってコースの距離が変化するのはARリズムゲームではよくあることだ。
リズムゲームでコースと言われてもピンと来ないかもしれないが――ARパルクールのルールを使用している場合は、距離が変化する。
距離の変化しない作品の場合、楽曲の長さは大体が1分40秒位と見るのがいい。
「炎上マーケティングは悲劇の連鎖しか生み出さないが――」
 あきつ丸は別の懸念も考えていたのだが、今はそれを考えるのは蛇足とも思いだす。
この場面で重要なのはレースを中止しようと襲撃してくる可能性のある勢力だったからだ。
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