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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード2『ビスマルク、始動』

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エピソード2-4

2017年1月9日付:加筆調整
 4月13日午前10時35分、先ほどのアンテナショップの外にあるARゲーム専用のコース――そこには100人以上のギャラリーが既に集まっている。
ここで行われるのはパワードミュージックであると何処で聞きつけたのか不明だが、物好き達が数人規模で集まってきた。
その後、ギャラリー専用エリアに空席が減る程の客が駆けつけた結果――100人以上の観客が集まっていたという。
「これは予想外だったと言うべきなのか――」
 先にスタート地点へ姿を見せたのは、ホワイトのARアーマーにリズムゲームのコントローラを思わせるようなナックル、ARメットの両耳にはアンテナ――。
これがパワードミュージック初体験となるアイオワだった。
装備の方は先ほどのアンテナショップで購入した物であり、ナックルに関してはAR対戦格闘もプレイしていた名残と思われる。
ただし、こちらのガジェットにはアガートラームの様な特殊効果は存在しないと思われるのだが――それを判断するのはアイオワではない。
「チュートリアルの方は確認したが、正直な事を言うと――不安要素の方が高い」
 アイオワの方は冷静なのだが――チュートリアルをチェックしたからと言って、上手くプレイ出来る可能性はない。
一方で、ARアーマーの耐久度を踏まえれば、大事故と言えるような物は起きにくいだろうが――事故が全く起こらないという保証もない。
アーケードゲームの場合ならば筺体破壊等の行為をすれば、出入り禁止になるだろう。
しかし、ARゲームの場合は建造物を破壊すれば大損害のレベルを超えるかもしれない。
パワードミュージックでは建造物破壊等によるボーナスは存在せず、壊せるオブジェクトも出現する白いノーツと呼ばれる物体に限定される。
つまり、ノーツ以外を破壊する事は物理的に不可能であり、仮に壊せたとしたら不正ガジェットを使っていると判明してしまうのだ。
「単純に走るだけなのか? それならば、ARゲームでなくてもマラソンや駅伝の方が――」
「パワードミュージックの凄い所は、単純に走るだけではない所だ。見れば分かる」
 観客の中にはパワードミュージックを全く知らない人物もいるのだが、それでも普通に説明するよりは『見れば分かる』で納得してしまう。
ネット上でもパワードミュージックのルールやシステムなどを説明するよりは、チュートリアルではなく先に有名プレイヤーの動画を見た方が早いと言う人もいる。
それ位にパワードミュージックは説明よりも体感する方が早いという意見が多数を占めていた。
確かに、それも楽しみ方の一つかもしれないが――逆に未プレイのユーザーがプレイしたような気持ちで実況者等を絡めた夢小説等を書くのではないか、という懸念もある。
実際問題でブラウザゲームでは、そのような事例が出ており、中には商業一次創作のみを認めている作品も出た位だ。
ARゲームでも、有名プレイヤーを題材にした夢小説が同人誌即売会や小説サイトで検索すれば多数出てくるという問題も抱えている。
こうした勢力の影響で、炎上マーケティング等の単語が生まれたとされており、一種の風評被害もあるのだが――真相は不明だった。
【ここの所、新人プレイヤー同士のバトルが続くな】
【有名プレイヤーばかりがピックアップされるとは限らないだろう。あまりにも無双が続けば飽きられる】
【あの解散したアイドルグループみたいに――?】
【始まりがあれば何とやら、だ。向こうの場合は芸能事務所側の戦略ミスがスキャンダルにつながり――自爆したと言うべきか】
【しかし、これで芸能事務所がA社だけになるとは考えにくいが】
【噂によれば、B社は国際スポーツ大会の日本開催で莫大な資金を提供した噂がある。週刊誌がソースではない以上、作り話と切り捨てられない】
【最近の週刊誌のスキャンダル報道は芸能事務所A社から原稿料をもらい、彼らの筋書き通りに書いているだけに過ぎない】
【そのバイトをしているのがフジョシ勢や夢小説勢と言う話もネット上で浮上している位だ】
 ネット上でも、様々な話が飛び交っているが――大抵の人間は真相を確かめることはせず、大手のまとめサイト等の意見をそのまま鵜呑みにしてしまう。
そういったネット住民が増えた事で、炎上マーケティングが過熱していった事情もあるのだが――。
しかし、一連のタイムラインを追いながらARゲームをプレイ出来る程、アイオワに余裕と言う物はないだろう。
逆に、こうした行動自体が歩きスマホ等と同系列に見られてしまい、ARゲームが炎上するという事態に――とも考えられる。
「ここまで来ると、言葉にも出来ないか――」
 別の場所で一連のまとめを見ていたのは、ある場所へと向かっていた天津風あまつかぜいのりである。
彼女にとって、ARゲームは自分が一番輝けるであろう場所の為か、一部勢力のタダ乗り宣伝や超有名アイドルの広告塔として利用されるのが我慢できないでいた。
その不満を爆発させ、複数勢力を無差別に駆逐するのは簡単だろうが――そんな事をしても、悲しみの連鎖を生み出すだけであり、根本的な解決にはならないだろう。
それを百も承知の上での一言なのかもしれない。


 1分後、相手の方も姿を見せた。こちらはブラックのARアーマーにガジェット、インナーもブラックである。
しかし、彼が何かを喋るような事はなかった。これに関してはアイオワも違和感を持ったが、向こうの話を聞いてストレスをためるよりはマシと考えた。
ギャラリーの方も相手が無言と言う事に何か変だという印象は持ったが、特に違和感は感じなかった。逆に実況勢を初めとしたプレイヤーよりは、ゲームに集中出来るという事だろうか?
「既に向こうは曲指定済みか――」
 アイオワがARメットでステータスを確認すると、そこには既に楽曲を指定済、スタート待ちと言う状態になっていた。
相手の方は既にスタート位置についている為、アイオワの方もスタート位置に。
【LV7】
「レベル7――?」
 アイオワは楽曲タイトルよりもレベル表記の方に目が向いた。
リズムゲームの場合、難易度設定と言えばレベル表記と別にBSCかんたんADVふつうEXTむずかしいという表記が多い為だ。
レベルに関しては譜面のレベル表記として使用され、最大10や最大12辺りが標準で使われている。しかし、パワードミュージックの場合は単純に数字表記だけなのだ。
数字表記と言っても、数字の色は黄色で書かれており、何となくだがADVと同じ感覚だろうと言うのは分かる。
リズムゲームのレベル表記を知らないプレイヤーにとっては、混乱する可能性が高い表記かもしれないが。
「とにかく、相手がそれ位のレベルであればクリアできるという目安と見るべきか――」
 アイオワが警戒していたのは相手プレイヤーのレベルが不明である事――その為、レベル7をクリアできる実力を持っていると考えていた。
「レベル7とは大きく出たが――大丈夫なのか?」
「パワードミュージックのレベルは15段階、最大で15ではなく12+++と言う話だ」
「それなら、12で片づければ――」
「それをやれば、難易度詐欺という事になるだろう。リズムゲームの場合は難易度調整が他のジャンルよりも非常に難しいと聞く」
「格闘ゲームなら、対人戦も含めて?」
「そうなるだろうな。しかし、音楽ゲームは対戦という要素もあるが――基本的には譜面難易度に左右されやすい。そこが格ゲー等とは違うのかもしれない」
 ギャラリーの方も相手がレベル7を選曲した事には驚きの声を挙げているようだ。
アイオワが難易度の感覚を掴んでいない事もあり、彼女は難易度3を選んだのだが――。
【LV3】
「向こうはレベル3を選んだようだな」
「スコア狙いなのか、それとも初心者なのか?」
「実際、向こうは初プレイらしい。それに対してレベル7を選曲するなんて――」
「リズムゲームで初心者狩りと言う概念はないが、これはどう考えても勝負にならないだろう」
 周囲のギャラリーはアイオワがレベル3を選んだ事に対しても驚いていた。
ギャラリーにはパワードミュージックのステータス表示がされていても、それを読み解くには実際にプレイしている事が必要となる。
あるいは公式ホームページをチェックすれば、ステータス画面の見方は載っているので、そこからもチェックする事は可能だろう。
しかし、ゲーム観戦にも公式ホームページへ誘導するような考え方は――ユーザーに優しいと言えるかどうか、その辺りの賛否も分かれている。


 午前10時37分、まもなくスタートと言う気配だが、相手は何も話さない為、どのようなタイミングで始めればいいのか分からない。
アイオワの方もどうやってスタートすればいいのかチュートリアルでも完全把握していない事もあり、若干戸惑っている。
【ARガジェットの光っているボタンを押せば、スタートのカウントダウンが始まる】
 アイオワのARメットのバイザー部分にショートメッセージが唐突に表示された。
メッセージ主は不明となっている為、誰なのかは分からない。完全に外部の人間なのか、運営によるサポートなのか――判断に迷う。
【スタートのカウントダウンが始まってからでは楽曲のキャンセルは出来ない。楽曲の選曲時間切れの場合は、どちらにしてもキャンセルは不可能だ】
 次のショートメッセージを確認し、選曲時間が残っているのかを確認すると、選曲時間が0になっていた。
つまり、これ以降はキャンセル不能と言う事になる。
【次に対戦相手を待つ事になる。おそらく、自分を含めて2名だろうから――】
 次に送られたメッセージは途中で送信されており、メッセージが途切れている。
『乱入者が現れました。3名でレースを行います』
 インフォメーションメッセージと思われるアナウンスがアイオワの耳付近に流れる。丁度、この位置はARメット用のスピーカーがある。
要するにヘッドフォンである。リズムゲームでは爆音でプレイ中の楽曲が聞こえないという展開になる事を回避する為、ARバイザーにはヘッドフォン装備が必須となっていた。
これらを踏まえると、他のARゲームで使用しないようなオプションでも――ARリズムゲームでは必要と言う事なのかもしれない。
「このタイミングで乱入者なんて――?」
 アイオワが乱入者反応のあった背後を振り向くと、そこには北欧神話を思わせるようなアーマーデザインのプレイヤーがいた。
そのデザインや装備を見ると、どう考えてもパワードミュージックではなくARサバゲやARTPSなどのジャンル違いと思う様な装備もある。
実際、肩の連装砲や背中のレールガン等は、そちらで使う物に近い。しかし、この人物もリズムゲームのコントローラのデザインをしたロングライフルを持っていた。
このロングライフルは、アイオワが使用しているガジェットとは少し形状が異なり、ポップなカラーリングと5つのボタンが特徴的な物――。
「面白そうなレースね――」
 グリーンのセミロングヘアーの女性、彼女が右手に持っていたARメットを被り、レースへと乱入したのである。
『乱入者が現れました。最大人数10名でレースを行います』
 彼女がビスマルクと言う事はアイオワが気づいていないのは当然だが、それ以上に向こうが8人という多勢で乱入したという事実にもこの段階で気づかなかった。
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