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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード2『ビスマルク、始動』

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エピソード2-2

2017年1月7日付:加筆調整
 4月12日、アンテナショップでは昨日までのフィーバーが嘘みたいな状況になっていた。
パワードミュージックの一角だけ、何故か客足が鈍いのである。
ゲームのエントリー自体は無料に近いが、ARゲームの場合はガジェットやインナースーツ等の準備が必要だ。
それらをレンタルする事も可能だが、継続プレイとなるとレンタルよりもガジェットの購入が手っ取り早くもなるだろう。
それに加えて、プレイする為の敷居の高さなども敬遠される原因になっているのかもしれない。
 一方で、イースポーツに対応したARゲーム、それも賞金制度が導入されている作品はうなぎ昇りという勢いで登録者数を増やしている。
賞金制度を導入したからと言って、ARゲーム自体の敷居が低くなったと考えるのは浅はかであるのは言うまでもないだろう。
中にはARゲームよりも別のイースポーツやギャンブルの方が稼げると言いだすような勢力もおり、賛否両論となっていたからだ。
こうした状況を見て、一部勢力は――。
【今の内にARゲームに批判的な記事を書けばアクセス数を簡単に上げられる】
【逆にこの件を利用してアイドルグループの解散を撤回させる】
【超有名アイドルの方がコンテンツ的にはおいしい商売である】
 こうした考えを抱き、まとめサイトや炎上サイトでARゲーム批判をあおり、超有名アイドルが神コンテンツであると拡散する。
結局は過去に行われていた事件を全く学習していない――そう思わせる展開になっていたのだ。
この状況を端的に表現すれば、ARゲームに対する罵詈雑言――と言うべきか。
それが単純にまとめサイトだけであれば、おそらくは『全く学習していない』という言葉は使われない。その言葉を使う事には理由があるからだ。
【マスコミがまとめサイトを運営し、超有名アイドルの芸能事務所からわいろを受け取り、神コンテンツとしてタダ乗り宣伝を行う――つぶやきサイトは、何時しか戦場となった】
【その戦場では死者が出る事はないのだが――書き込みを見て悲しむ者、激怒して報復を仕掛ける者――様々な人種がいる】
【広がって行く悲しみの連鎖は、経済にバブル崩壊以上の衝撃を生み出す事になる。一時的なロストとは比べ物にならないだろう】
【つぶやきサイトを使わなければ問題がない――と思われるが、これをマスコミが報道すれば、嫌でも知る事になる。回避手段は緊急事態でも映画やアニメ等で平常運転するあのテレビ局だけだろうか】
【これを繰り返すという事は――】
 これはあるFPSゲームのテンプレを改変した嘘字幕シリーズの一文だが、これこそがこの世界における超有名アイドルの現状である。
第四の壁の先の芸能事務所がこの状況を知るはずもない。メタ発言を使用すれば、それだけ週刊誌などからたたかれる可能性も高いだろうか。
そして、こうした発言が周囲の読者等が影響を及ぼしている訳でもない。この世界だけで完結している現状である――と考えている人間も多かった。
「いつしか、アカシックレコードはフィクションと言われているはずが――予言者と言われる時代になった」
 一連の炎上系とは全く無関係のまとめ記事を見て、ふと物哀しい目をしていたのは天津風あまつかぜいのりである。
彼女の場合、ネットは自分が装着しているARバイザーで閲覧する為、周囲がどのようなサイトを見ているのかを把握するのは不可能だ。
「この世界の出来事はこの世界だけで完結しているはず――第四の壁という概念自体はあり得ない」
 そして、天津風はインナースーツを用意し、パワードミュージックへのログイン準備を始めていた。
スーツの準備が完了後、天津風がタブレット端末に出現したエンターをタッチする事で、瞬時にARアーマーが装着されていく。
《データ照合完了……エントリーを開始します》
 天津風のARバイザーにはエントリー開始のメッセージが表示されており、あとはエントリーを待つだけである。
乱入される可能性はゼロではないが、一応警戒する必要性はあるだろうか?
「ネット炎上をビジネスにしようというまとめサイトの管理人などは言語道断だが――超有名アイドルの芸能事務所のコマとなり下がったネット住民も同罪とは思わないのか」
 天津風はふと思う。昨今のネットを炎上させればもうかる的なビジネス理論が拡散しているという噂――それに対して非常事態であると。
そうした情報が拡散されるだけでも、一部勢力を有利にするだけだと思わないのか?
「ネット炎上によって、超有名アイドルファン以外を狩ることが勝利条件のデスゲームへと発展すれば――日本は壊滅的ダメージを受ける」
 このつぶやきが他に聞こえる事はない。ARメットのミュートシステムを使用しており、外部に声が聞こえる事がなければ――他の人間が拡散出来る手段もなかった。
「ARゲームはゲームであり続ける事が必要なのだ。ゲーマーの血が騒ぐような――」
 そして、天津風は出撃する。彼女が望むゲームを――超有名アイドル等の干渉を一切受けないようなフィールドを作る為に。
「ここまでARゲームにおせっかいを焼くのは――どうしてだろうな」
 天津風は改めて思う。自分が好きなARゲームだから――その環境を良くする為に活動するのは当たり前だ。
そして、運営へ意見を投下したとしてもそれが即時反映されるとは考えにくいのは当然だが、それ以上にネット炎上や一部勢力の行動が更に――というのも日常茶飯事と化している。
そうした世界だからこそ、天津風はやむなくARガジェットを手に悪しき勢力を駆逐していく事を決めた。
このような強行手段は基本的に歓迎されないのだが、状況が状況だけに止める手段が存在しない。
それも、ARゲームのフィールド内で展開されている以上は――。


 4月13日午前9時40分、アイオワは別のアンテナショップへ足を運んでいた。
昨日のアンテナショップはパワードミュージックが未対応と言うのもあるが――様子見と言うのが大きい。
他のタイトルでも同様の対応なのだが、ゲーム自体が未設置のアンテナショップでも事前登録やアカウント作成は可能である。
これは、そこまで遠出を出来ないプレイヤーに対する配慮とも言えるのだが、それ以上に他の理由があるのだろう。
「エントリーだけならば問題はないが、ガジェット等を揃えるのは規模の大きいショップの方が早い――」
 彼女が足を運んだアンテナショップは谷塚駅より徒歩10分程度の距離だが、その規模はかなりの物だったのである。
高層ビルとまではいかないが、規模としてはショッピングモールと言っても過言ではない。
ここまで行くのに、アイオワはバスを利用したが――道が分かれば徒歩でも行く事が出来るだろう。
「それにしても、このアンテナショップは他と規模が違うように思える」
 アンテナショップの場合、スーパー位の規模があればゲームの筺体などを設置する訳ではないので、エントリー手続き等はこれで足りる。
総合デパート位の規模だとARゲームのエントリーだけでなく小規模のARゲームであれば設置もされているレベルだ。
それがショッピングモールとなれば、ARサバゲ等であればフィールドレンタルなども可能、かなりのARゲームをフォローしていると言っても過言ではない。
中には一見するとARゲームとは関係ないような書店やフードコート、果てはマッサージ専門店まで――。
この店舗は最近オープンしたばかりと言う訳ではないのだが、谷塚駅近辺でARゲームを多く扱っていると言えば、このアンテナショップを指名するユーザーは非常に多いのだ。
「その昔、VRとARの区別がつかなかったというユーザーがいたという時期もあったが――それが嘘のような変わりようだ」
 アイオワは、過去にVEとARの区別がつかなかった時期を思い出した。
VRゴーグルやVRゲームに特需が出た時期、ARゲームも一部で存在はしている。
しかし、ユーザーがどのような違いがあるのかと言われても突っ込めない事態が発生した。
端的に説明してどちらも同じと言う人物もいたのだが――それは説明放棄と取られてもおかしくはない状態と同種である。
「今でこそ、VRが仮想現実、ARが拡張現実であって――別物であるという認識もあると言うが」
 こうした見分け方が出来ていなかったのは、Web小説でVRMMOを取り扱っている小説が多く出回った時に――。
そんな事を考えていたアイオワだが、歩いている内に目的の場所に到着した。
「パワードミュージック専門の――ショップ」
 看板がある訳ではないのだが、スペースの入り口には『パワードミュージック専門』と電光掲示板に書かれている。
しかし、待機していると思われる客の数を見ると――パワードミュージックのエントリーをする為に集まっているような人数ではない。
行列が出来ている訳ではないが、20人前後が開店を待っているような気配だった。
エントリーに関して言えば、昨日と今日は落ち着いているという話をネット上で確認している。ネット上での受付も今日から始まったのも混雑緩和に貢献しているらしい。


 午前10時、ショッピングモール自体は午前9時30分にはオープンしていたのだが、一部店舗は午前10時からだった。
アイオワが辿り着いたパワードミュージックのアンテナショップも、エントリー業務自体は午前9時50分から事前受付をしている。
しかし、実際にエントリー業務が始まるのは午前10時と言う事らしい。
ガジェットの購入なども午前10時と言う事で、アイオワが来た段階では透明なシャッターでスペースが閉じられた状態だった。
「いらっしゃいませ」
 アイオワが目の前にしている受付には男性スタッフが待機していた。
その後、アイオワはパワードミュージックの事前登録を行った事を報告する。
そして、アイオワは朝の内にエントリーしたアカウントデータをARガジェットごと提出した。
「アカウントの確認をいたしますので、しばらくお待ちください」
 なお、ARガジェットに関してはパワードミュージックようではなく、本来であれば返却する予定だったガジェットであったのだが、特に問題なくエントリーは出来たようだ。
「データの確認は出来ました。ARインナースーツ等は既に持っているようですので、特にこちらで用意――」
 男性スタッフの話を聞き、アイオワは何か疑問に思った。確か、パワードミュージックには楽器に該当するARウェポンがあったはずである。
「ARウェポンは――?」
 アイオワの唐突な一言を聞き、スタッフの方も目が点になる。
しばらくして、男性スタッフは席を離れ、裏の方にあるデータベースに接続して詳細を確認していた。
アイオワの方も事前に動画などをチェックし、ARウェポンが存在するのは確認済み。
それを踏まえた上での発言だったが、周囲は若干ざわついているように見える。
「確認が出来ました。あれはARガジェットですね。ARウェポンとはシステムが若干違います。同じような物ですが――」
 男性スタッフの説明を聞き、逆にアイオワの方が目が点になる。
どうやら、他のARゲームとパワードミュージックでは類似ジャンルの違いもあって、用意するガジェットが違う事も気づかなかった。
ARガジェットであれば全機種共通なのではないか――と考えていたアイオワには、別の意味でも衝撃的な事実を突きつけられたような気配だったのである。
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