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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード1『比叡、エントリー』

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エピソード1-8

2017年1月2日付:加筆調整
 4月10日午後3時30分、ゲームセンターでリズムゲームをプレイしていた比叡ひえいアスカ、気が付くと2クレジットはプレイしていただろうか?
比叡の両手も汗でぬれていた。リズムゲームで汗をかくと言うのはおかしいと思われがちだが――機種によっては、体力を使う場合もあるので、油断はできない。
近くにおしぼりが置いてある訳でもないので、手持ちのバッグからタオルを取り出し、それで手の汗を拭きとる。
「やはり、あの感覚は――」
 あの動画で感じた物、それが先ほどのリズムゲームでも確認できた。
つまり、パワードミュージックはこのゲームをベースにしている可能性が高い――と比叡は確信する。
その後も比叡は様々なリズムゲームを様子見するが、資金的な部分もあってプレイはしなかった。
その状況を遠目で見ていたのはビスマルクだった。別のゲーセンでARゲームをプレイ後の為、白ベースのインナースーツを着ている。
「彼女は確か――あの時の」
 ビスマルクはゲーセンに入り、ARゲームをプレイ後に比叡の姿を見て、そこから様子を見ていた。
白のインナースーツだとぽっちゃりの体格が目立つのだが、それに関して指摘をするような客はいない。
下手にARゲーマーに因縁を付けてトラブルになるのを懸念している可能性が高いのだが、それよりも客が懸念しているのは別の理由だ。
「やはり、ここでもARゲーマーは異常に警戒がされているのか」
 ARゲーマーと関われば、ネット上で晒されると言うのは超有名アイドル商法が無双していた時代から言われている。
実際、ARゲーマーと一般人によるトラブルも報告されていたが、これらのトラブルは不正ガジェット等を使用したプレイヤーによる物が多く、逆に不正行為が晒されると言う逆効果を生んだ。
芸能事務所としては上位プレイヤーのスキャンダル等でコンテンツ流通を止めようとしていたのだが、こうした考えを持った芸能事務所は過去に何度か検挙されている。
マスコミを利用してステルスマーケティングや炎上マーケティングを芸能事務所側が展開しようとして――最終的に自滅したという話もネット上では聞かれていた。
古代ARゲームに関する記述も、芸能事務所側の陰謀説が大きく――埼玉県内では大手芸能事務所が町おこしを潰そうとしているという話もある程。
そうした様々な事件がガーディアン結成のきっかけとなり、今では大きく週刊誌で取り上げられるような事件は起きていないと言う。
それは埼玉県内だけであり、それ以外のエリアでは芸能事務所の話題が週刊誌でも取り上げられている。その辺りを取り上げれば、売り上げが伸びると考えているパターンだろうか。


 午後4時、つぶやきサイトで目撃されたあるつぶやき――それが、一連の事件の火種とも言えるような物に見えたと言う。
【あのARゲームはロケテスト中の作品なのか?】
【あれは欠陥品だ。下手をすれば、デスゲームを助長する】
【それよりも、超有名アイドルのタイアップ機種を作った方が儲かる】
 様々な書き込みが炎上を煽るような物ばかりだったが――それらの書き込みは瞬時にして削除され、アカウントも凍結された。
それもそのはず、この書き込みをしたのはアイドル投資家であり、いわゆるネットイナゴを呼び寄せようとしたサクラである。
一種のステマと言えるのかもしれないが、この投資家が単独で行った物か、芸能事務所と組んだ物かはこれから調査を行う事になるだろう。
「このやり方は過去にARゲームが炎上したやり口と同じ――結局、パワードミュージックもアカシックレコードと同じ筋書きをたどるのか――」
 コンビニ前で一連の書き込みを見て懸念を抱いていたのは、天津風あまつかぜいのりである。
書き込みを見ていた手段は、ARメットに搭載された標準インターネットブラウザだ。このブラウザを使えば、メットを被っていてもネットを閲覧できる。
それに加えて、ARメットには交通事故防止のシステムがある為、歩きスマホの様な危険行為でネットが炎上する心配もないだろう。
さすがにARゲームを見てマスコミがねつ造記事でも書こうと言う物であれば、芸能事務所に買収されたと反超有名アイドル勢力等に叩かれるのが目に見えているのかもしれない。
そういうレッテルが貼られている可能性が高かった――と言うよりか、超有名アイドルに対する風当たりが埼玉県では悪い理由が、それである。自業自得と言える可能性は高いのだが。
 メイド服姿でARメットで顔を隠している彼女を見て、指を差すような市民はいない。
子供でも下手にARゲーマーに対して小馬鹿にでもしようと言う物であれば――と言う可能性もあるのだが、そうしたガイドラインがあると言うのは聞いた事がない。
ARゲームを町おこしにしようという草加市の意向を組みとって――と言えるかどうかは、ネット上でも賛否両論である。
その人物がARメットで確認していたのは、一連のつぶやきをまとめたと思われる一種のまとめサイトだった。
「このアカウントも現在は凍結されている以上――」
 次の瞬間、天津風はARメットを脱ぐ。その素顔は黒髪のロングヘアーにメカクレ――という属性を持っていた。
片目だけ視力が悪いという訳ではなく、単純にメカクレはその方が自分にとっても都合がよいと事だろうか。
しかし、空気を少し吸った所でメットを再び被った為、その正体がつぶやきサイト等で拡散する事はなかった――らしい。
「どの世界でも、炎上マーケティングは行われ、それを行えば他社を出し抜けると本気で思っている上層部がいる――哀しい話だ」
 しんみりしているような表情も魅せる事無く、天津風は炎上マーケティングを行う芸能事務所を切り捨てる。
マスコミのやり方も賛否両論だが、天津風が許せないのはせっかくの技術を間違った使い方で広め、誤認識の末に風評被害を植えつけることだ。
特定のまとめサイト、アイドル投資家、超有名アイドル商法――コンテンツ流通を何とかしようとしても、こうした勢力を一掃しないといけない所まで追い詰められている。
「我々が行うのは核戦争の様な物ではない――コンテンツ業界を正常化する為の行動を起こす」
 天津風の活動も、実は超有名アイドルと言うリアルチートを対処しようと言う物なのである。
しかし、こうした動きを芸能事務所側は炎上マーケティングとまとめサイトを利用して拡散し、一種のガーディアン勢力が超有名アイドルの活動を邪魔している――と間違った認識を植えつけているのだ。
その結果として、超有名アイドルが炎上マーケティングとステマを組み合わせたチートとも言えるようなビジネスモデルを確立し、コンテンツ業界を混乱させている。
これが――アカシックレコードでも語られている超有名アイドル勢のチートビジネスなのだ。


 4月11日午前10時、ゲームセンターが開店する頃、ARゲームの方もメンテナンスを終えてアンテナショップがオープンし、ARゲームもプレイ可能となる。
基本的に商店街や道路等を使用するARゲームでは、周辺住民に迷惑にならないように午後8時以降のプレイは不可だ。
中には深夜時間帯でもARガジェット及びアーマーが展開可能な場所もあるが、それは非合法の賭けバトルの類ではなく、深夜でもプレイが認められている特別エリアと言ってもいい。
ARサバゲー等の深夜フィールドを売りとしているジャンルでは成人限定ではあるのだが――深夜0時以降のフィールド出入りも認められているようだ。
閉鎖している間は道路の舗装やARゲームで使用するレンタルガジェットのメンテナンス等を行う。こうした万全の準備があってこその、ARゲームの運営が神運営と言われている理由の一つかもしれない。
ただし、こうした事例はごく一部しか報道されていないので、縁の下の力持ちと言えるアンテナショップや運営の活動は知られていないのが現状だ。
知られていないからこそ、こうした活動を正しい認識で広めようと言う人物もいる。そうでもしないと、芸能事務所側がネット炎上させようとするのは――。
「特に大きな事件は報道されていないか」
 アンテナショップでマップの更新を行っていたのはビスマルクである。
彼女は別のARゲームをプレイする為にもマップを更新していた。
ARゲームにおけるマップはゲーム中に使用する物だけでなく、ARゲームの設置場所、ジャンル検索等にも利用できる。
そして、彼女が探そうとしていたのはパワードミュージックの設置場所だった。
しかし、マップを更新しても表示されている場所は3か所しかない。
「谷塚、草加、松原団地の駅周辺だけ――なのか?」
 10日にエントリー受付が始まったばかりなので、対応場所が少ないのも仕方がないのだが――これではリズムゲームの先行稼働にも似たような状態である。
結局、ビスマルクが最初にする事はパワードミュージックの専用ガジェットを取り扱っているショップ探しだったと言う。
日付的なラグで設置個所は他にもあるかもしれないが、公式サイトの更新を待つしか場所を発見する方法はないだろうか。
自分の足で探すという手段もあるが、ARゲームでは無数のジャンルがある関係で非常に難しい。
パワードミュージックの様な新規作品であれば、尚更だろう。


 午前10時10分、谷塚駅付近のARゲーム専用サテライト筺体を眺めているのは、私服センスが皆無な長門ながとクリスだった。
彼女はARリズムゲームをプレイする訳ではないが、サテライト筺体でプレイ動画を鑑賞している。
サテライト筺体はモニターとARゲームのカード発行及び再発行、プレイクレジットの支払い等の役割を持つ。
「成程――これがパワードミュージックか」
 長門が見ていたのはチュートリアル動画ではなく、ロケテストが行われていた時のプレイ動画である。
ロケテスト当時の物は、ほとんどが削除されているとばかり思われていたのだが、稼働当日の10日なって発掘されたらしい。
それを有志のプレイヤーがアップし、再生回数はうなぎ登りで上昇している。
「しかし、見た目は少年漫画のバトル物にも見えるが――フィールドが狭いのも原因か」
 長門の初見印象、それは一部のプレイヤーが思っていた事と同じだった。
やはり、その光景は少年漫画のバトル物に見えるらしい――比叡ひえいアスカと同じ事を思っていたのである。
「フィールドが狭いのは、プレイヤーが任意指定しているだけと言う話。ロケテスト当時は広いフィールドがレンタルできなかったという話らしい」
 長門の隣に姿を見せた女性、身長170センチの長身だが、長門と違う特徴もあった。
それは、彼女が提督服と呼ばれる某有名ゲームに出てきそうな服を着ていたからだ。
更には左目に黒色の眼帯、黒マントも装備と怪しい外見なのだが――これらも草加市内ではコスプレとして処理され、逮捕される要因にはならない。
「貴様――何者だ?」
 長門が怪しむのも当然であり、逆に怪しまない方がおかしいだろう。ただし、何かのコスプレと勘違いするようなギャラリーは除外する。
それは、彼女が提督服にアレルギーを持っている訳ではなく、違うARゲームジャンル出身と感じ取ったからだった。
実際、彼女の提督服の下には黒のインナースーツ、それに左腕には特殊なクリスタルの装飾が特徴のARアーマーが見えた。
眼帯の段階で、何処かの有名戦国武将を連想するだろうが――そう言った甲冑とは違う様な装備なので、長門が警戒するのも無理はない。
「こっちはお前を即座に斬ったりするようなことはしない。それに、このガジェットは――」
 彼女が左手に持っていた物、それはリズムゲームのコントローラを思わせるようなガジェットだったのである。
リズムゲームと言っても、太鼓ゲームの様な和風チックな物でもなければ、アンテナショップで見るような汎用タイプでもない。
それを見た長門は、即座にパワードミュージックのプレイヤーだと確信した。
先ほど、彼女が出ていた動画を見ていたので当然と言えば当然の反応だが――。それがなくても、一部のプレイヤーが反応していたので、それを見れば何となく気づくだろうか。
「私の名は、木曾アスナ――パワードミュージックの上位ランカーだ」
 木曾きそアスナ、彼女はそう名乗った。
長門が見ていた動画――そのプレイヤーネームも、偶然の一致かもしれないが、1プレイヤーが木曾だった。
「木曾――だと?」
 長門は改めてモニターを直視すると、画面に映っている人物と目の前の人物はアーマーの違いがあるのだが、同一人物と言う程に一致している。
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