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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード12『次のステージへ、ゴングを鳴らせ!』

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エピソード12-20

2017年2月25日付:加筆調整、サブタイトル修正
 午後4時30分、ランカー王決定戦は閉会式を終えていた。
解散した訳ではないのだが観客の一部はアンテナショップで他のレースを観戦していたりする。
それ以外には、レースの結果をつぶやきサイトで議論しているようなタイムラインも散見された。
それだけ、今回のレースには得る者があったという証拠かもしれない。
「まさかの展開だったな」
「順当と言う言葉で片付けられるような事はないだろう」
「結局、妨害しようとしていた連中は何者だったのか?」
「脅迫状が出ていたり、ネット上でそうした発言が拡散されていた訳ではない――結局、謎だったと」
「それこそご都合主義と言うやつじゃないのか?」
「ネット炎上等は、何の変哲もないような物でも炎上する可能性がある――ネット炎上のメカニズムが判明した今日でも、知らない所で炎上が発生する」
 ギャラリーからは色々な声が聞かれていた。しかし、それらの発言が原因でネットが炎上する可能性もあるとは――誰も気づかない。
数日後には、草加市が様々な観点からゴシップ系週刊誌の販売制限、超有名アイドルの宣伝活動制限などを含めた条例をまとめ上げ、ネット炎上に関しても規制を目途に動くと報告された。
そうした条例が出来るきっかけになったのは、言うまでもなくARガジェットを悪用した犯罪が増えた事に関しての対策なのは――ネット上でも分かっているのだが。
しかし、今回のネット炎上に関しては突発的な物とは限らないと言う説も浮上しており、謎が多いかもしれない。


 少し時間を巻き戻して――午後4時10分、既に4人のプレイヤーは完走を果たしている。
後はスコアの発表を待つのみなのだが――周囲が慌ただしい所を見ると、集計で手間取っている可能性も高い。
『現在、スコアの集計中です。結果発表まで、今しばらくお待ちください』
 アナウンスによると、既にスコア集計作業に移っているようだ。判定に関しては終わったという事なのか?
しかし、今回のプレイにチートが使われて、レースその物がしらけてしまう様な事はないようである。
高性能な不正ガジェットが使われていたとしたら、ここまでの接戦にはならないはずだろう。
仮に八百長の様な物が仕組まれていたとした場合――アナウンスが別物になるのは間違いない。
「一体、何が起きているのか――」
 リベッチオはARアーマーを解除し、インナースーツ姿でベンチに座っている。
結果の方は逆転優勝の可能性がない訳ではないが、自分でもミスの箇所を認めている為――逆転は厳しい。
不正やチートで相手が失格になれば――という考えは浮かばない。そんな事を望んだとしても、ネットが炎上するだけだ。
それこそメシウマとか――悪しきレッテルを貼られかねないのは目に見えている。
「この流れでは、勝つのはアイオワかビスマルクか――」
 別のエリアでは、ARアーマーのメンテを申請していたヴェールヌイの姿があった。
ただし、インナースーツにARメットと言う姿の為に正体は分からないという――相変わらずの仕様だが。


 谷塚駅付近のアンテナショップで観戦していた比叡ひえいアスカは、今回の結果だけでは今までを含めたすべてを変える事が出来ないと考えていた。
「ビスマルクかアイオワ、どちらが勝ったとしても――流れが変わるとも思えない」
 彼女はコーラのペットボトルを片手に、自分が落ちてからのレースも観戦している。
さすがにハンバーガーはテーブルに置かれていないが――食べ終わった後と言う訳でもないらしい。
ギャラリーの数は、ピーク時には30人ほどいたのだが、今は比叡を含めて10人程と少ないようだ。
そして、自分が参加していなくても今回のレースは――これからの動向を含めて目撃する必要性があった事もある。
「しかし、自分が意図しない内にやってしまった過ちを繰り返さない事は――出来るのかもしれない」
 自分が行ってしまったネット炎上、それを取り消す事は不可能である事も分かっている。
これからは同じ失敗を行わないようにすればいい。そして、それを原因にして大規模なテロが起きると言う事も考えられる。
「これからすべき事――か」
 コーラのペットボトルは既に空っぽだが、それを捨てる事無く、右手に持ったままでセンターモニター近くを離れる。
すると、丁度のタイミングでランカー王を得た人物の名前が発表されたのだ。


 遂に、その瞬間を迎える事になった。周囲には緊張感にも似たような空気が漂っているようである。
『発表します。第1回リズムゲームプラスパルクール、ランカー王決定戦の優勝者――』
 読み上げている人物は、大和朱音やまと・あかねである。彼女の手には、既に優勝者の名前が自身のタブレット端末を通じて送信されていた。
『ランカー王の称号は――ビスマルク――』
 大和が読み上げたと同時の大歓声で、一時的だが大和の声が聞こえなくなるというトラブルが起こる。
それ程の衝撃であるというのは、会場にいる人物であれば当然と言うべきか。
『驚くのも無理はないと思いますが、優勝したプレイヤーに聞こえない可能性もあるので、少し静かにしてもらいたいと思います』
 あまりの反響に大和の方も困惑しており、歓声を上げていた観客に対して静かにするように注意をする。
大和としても、ここまで反響があるとは思っていなかった。それ程の人物がランカー王の称号を得たのか――と。
『ランカー王の称号は、ビスマルクの手に!』
 最初の発表では歓声で聞こえなかったのだが、次の静まり返った後の発表ははっきり聞こえた。
それを聞いたビスマルクは言葉が出なかったのである。
周囲の声も聞こえなくなるような程に緊張していたという訳ではないのだが――。
彼女の手は震えている、目には涙――と言う様なテンプレの様子ではない。


 それから5分後、ビスマルクは大和の目の前に現れた。彼女からランカー王の称号を受け取る為である。
「おめでとうと言うべきか判断に迷うが、見事な活躍だったと思う――」
 大和は言葉を選びつつも、ビスマルクにランカー王の称号を渡す。
実際に渡す――と言ってもビスマルクのARガジェットにデータを送信するだけなのだが。
「データにウイルスは入っていない事を確認しているが――」
 大和はビスマルクの方を見るのだが――大和がビスマルクの前で手を振っても反応がない。
ARバイザーのメットをしたままなので、表情を確認出来ない――それが仇となった瞬間だろうか?
しかし、大和が心配していた次の瞬間には、ARバイザーを開き、ビスマルクが素顔を見せる。
「ちょっと、気持ちの整理が付いていなかったので――」
 ビスマルクの顔面を見ると、汗まみれ――と言うべきだろうか。汗に交じって涙も流れているような――そんなイメージさえも持たせるような表情だった。
息を切らしていると言うよりは、優勝が決まった事に関して緊張していたのかもしれない。
「無理は禁物だ。救急車を手配する事も――」
「そこまでは心配ないです。ARアーマーには、未知の機能もあるのでしょう」
 大和が救急車を呼ぼうとした際には、ビスマルクが断りを入れる。
それを踏まえれば、特に問題はないようだ。若干ふらついているような気配もするので、大和の方は本気で心配しているが。
ARガジェットには、運営にも未解明のブラックボックスがあるのはネット上でも議論されていたのだが――未だに全貌は明らかになっていない。
『私はランカー王の称号を得ましたが――次も取れるとは限りません』
 ビスマルクの発言を聞き、周囲がざわつき始める。まさかの連覇宣言ではなく――。
普通のプレイヤーであれば連覇宣言や連勝宣言は当たり前のようにアピールが行われているのを――周囲にいる観客は知っていた。
だからこそ、ビスマルクの発言を驚いていたのである。控え目に言っているわけでなく、表情からは本気にも聞こえるだろう。
『ランカー王の称号、それは特定の人間しか獲得できないような物ではありません。超有名アイドルの様な買収等の裏工作で獲得した物ではない――』
 この発言を聞き、一部の人間がネットを炎上させようとスマホの操作をするのだが――電波が県外の為に送信が出来ないでいた。
おそらくは草加市では一般的なスマホを使用不能にしている可能性がある。
ARゲーム専用のガジェットであれば通信可能と言う可能性も――否定できない状況だった。
『ARゲームにおけるチートは、ある意味でも犯罪行為と同義であるのを認識してください。チートを使用した事で環境が変化し、本来のプレイヤーが離れ――ゲームが終了するのも目に見えています』
 ビスマルクは過去の動画でも言及したチートの危険性を改めて訴えた。
ARゲームに限らなくても、さまざまなゲームやそれ以外のジャンルでもチートに類する違法行為は存在する。
1回のチート行為が自分自身の運命を歪めてしまい、その隙を超有名アイドルファンや炎上メディアに悪用される事が高い――そうとも言及した。
『理想のゲームバランス、それは人それぞれに感じる物であり、運営がコントロールする物ではないと思います。ですが――それをチートを使って崩すのは違うでしょう』
『これからのARゲームは賞金制大会やイースポーツ化、更には日本を離れた海外へ進出する事も視野に入っています』
『だからこそ、これからもARゲームを好きでいて欲しいのです! 正常なコンテンツ流通が行える環境であれば――ARゲームを続ける事は可能なのですから!』
 ビスマルクのコメントには、かなりの割合で印象深い物があった。ARゲームもひとつのコンテンツにすぎないのだ。
ARゲームだけが特別じゃない。それは超有名アイドル勢力等にも言えるのだろう。唯一無二のコンテンツはあるのだろうが――それを政治家が勝手に決めつけるような事は、あってはならないのだ。
それこそが――今回の超有名アイドル商法を巡るネット炎上を起こした原因なのだから。


 こうして、一連のリズムゲームプラスパルクールを巡る事件は、一応の決着を迎えた。
ガーディアンや他の勢力による事件の真相の調査は続くし、ARゲームも終了する訳ではない。まだ、ゲームは続くのである。
今回のARゲームを巡る事件は、様々な部分で課題を残す結果となり、今後のコンテンツ展開等にも生かされるだろう。
そうでなければ――彼らが動いていた意味がない。それぞれ個人で答えを見つけるべき部分もあるし、みんなで見つけていくべき問題もあるだろう。
【2020年のコンテンツイベントはどうなるのだろうか?】
【そこまでに対策を考え、再び炎上事件が起きないようにするのが――これからの課題だろう】
【結局、ネット炎上はメカニズムも一部解明したはずなのに、炎上は起こってしまう】
【歴史は繰り返される】
【真実は語られずにもみ消される可能性もあるが、それはどうなる?】
【芸能事務所や政治家が都合の悪い事案を――】
 ネット上では相変わらずのテンプレとも言えるやりとりが繰り返される。
何度目撃したのだろうか――と自問自答しそうなほどに。
「規制法案は保留したが、悲劇が繰り返されるのを阻止する為にも個人のモラル等が重要になるだろうな」
 コンビニでテンプレのタイムラインを見ていたのは、アイオワである。
結局、アガートラームが修理されて戻ってきたのだが――その機能が作動する事はなかった。
「アガートラームが起動しないという事は、チート勢力は壊滅したという――」
 アイオワがふとつぶやいた矢先、アガートラームの電源が入ったのである。
どうやら、電源スイッチを自分で押してしまったらしい。
「マップにチートプレイヤーの表示がされている。まさか――?」
 表示されたマップには、チートプレイヤーのいるであろう地点にマーカーが表示されていた。
しかも、その場所は草加駅近くだったのである。
「やはり、光がある所に闇があるように――純粋にゲームを楽しむ人間に対し、不正プレイを行う人間がいると言う事か」
 そして、アイオワはマーカーの表示されているエリアへと向かう。
不正プレイや違法コンテンツを排除していく運動は、これからも続くだろうか。
それは上からの圧力や権力を振りかざして行うべきではないし、法律等で保護主義的に走るものでもない。
この問題は、それぞれが考えなくてはいけない問題なのだ。


 それから数日後、ネット神と言われたヴィザールは今までのネット炎上で自分の名前を騙った事例に関するレポートを公開した。
【違法手段によるコンテンツ流通は、マフィアの収入源にされてしまう危険性を持っている。だからこそ著作権保護は重要である】
【だからと言って、超有名アイドルの様な特定勢力が特許を独占、特定テレビ局が過剰な著作権保護を宣言するのもおかしな話だ】
【テレビ番組の違法アップロードは違法であり、行った人物を年齢関係なく実名報道する――そうした噂がネット上で拡散し、炎上した事もあった】
【コンテンツは一次創作のみが存在してもよいという原理は――】
【ガイドライン違反は論外だが、一次創作の風評被害になると言う理由で二次創作を弾圧するのは間違いである】
 その他にも記述はあったが――彼の言う事が正しいかどうかは、今すぐ決めるような事ではないだろう。
コンテンツ流通、それは正しい方向で進めなくてはいけないのだから。
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