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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード1『比叡、エントリー』

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エピソード1-7

2017年1月1日付:加筆調整
 4月10日午後1時、アンテナショップ近くのコンビニで昼食を済ませた比叡ひえいアスカは、早速ARガジェットを試そうと周辺を見回す。
しかし、何処も満員状態でパワードミュージックをプレイ出来そうにない。まるで、夏と冬に行われる同人誌のイベントの様でもあった。
割り込みに関しては電子整理券を発行するシステムを採用しており、割り込みが出来ない仕様なのだが1時間待ちはザラである。
「本当に、登録者的な意味でも大盛況なのか?」
 比叡は若干の疑問を行列から感じ取るのだが、それでも空予約と言う事で大量のキャンセルが発生する訳でもない。
今回は仕方がないので、ガジェットを入手出来た事だけでも収穫があったという事で家へ帰る事にした。
「ARゲームはジャンルによって、その人気にばらつきが出ると言う。それに――」
 白い提督服を着ていたガーディアンは、ARゲームのモニターを見ながら何かの違和感を感じていた。
ARバイザーに表示されたのはチートプレイヤーの反応を示すメッセージであり――。
【草加市○○エリアでチートプレイヤーを発見しました。現地へ向かえるガーディアンは――】
 このメッセージが意味するのは、近くにチートプレイヤーが現れた事。
それに加えて、あの勢力が姿を見せたという事でもある。


 その比叡を発見したのは、別の超有名アイドルファンと思われる男性だった。
購入した物がパワードミュージックと言う事で、ピンポイント襲撃を考えているのだろうか?
しかし、そのアイドルファンは別の人物によって目を付けられていた。その人物とは――。
「貴様は――!?」
 男性は背後から姿を見せた訳ではなく、正面から唐突に姿を見せた人物に対し、何も抵抗が出来ないままに気絶する。
何をされたのか――彼も気づかない内の気絶だった為、比叡の方も驚くしかない。
実際に気絶させた人物が使った技術、それは光学迷彩と言っても差し支えのないような――非常に精度の高いステルス技術だった。
しかし、それで欺けるのはARバイザーと言うARゲーム専用のモニターシステムを着用している人物のみで――周囲の一般人からは姿が丸見えだったのである。
一般人が姿を見る事が出来ると言っても、周囲の人物が超有名アイドルファンに教えるはずがない。
それだけ超有名アイドルと言う単語に対し、一般市民は恐怖を抱いている可能性も高いのだが――それが真実かどうかは定かではなかった。
「ARゲームにエントリーもしていないプレイヤーを襲い、ガジェットをオークションサイトで転売、その資金で超有名アイドルのCDやグッズを購入し、アイドル投資を――」
 残念ながら、彼女の言う事は男性には聞こえていないだろう。手加減の必要があったとはいえ、軽いパンチ一発で即気絶である。
パンチの速度は比叡にも見える程のスローなもので、プロの格闘家であればガードも容易だろう。
しかし、そのパンチでさえも超有名アイドルファンには見えていなかった。まるで、少年漫画にあるような超高速のパンチとでも思ったのだろうか?
それが意味しているのは、彼が使用していたARガジェットが不正ガジェット――チートだった事になる。
ARゲームでは不正チートに関しては厳しく取り締まっており、使用が発覚するとライセンスはく奪などの処分を受けるのだが、それでもチートを使ってひと儲けをしようと言う人物は後を絶たない。
「お前達の様なネットイナゴは――ARゲームに不要な存在とも言える」
 彼女は通常であればARガジェット及びアーマーを装備しているのだが、今はメイド服姿であり、素顔もARバイザーで隠されていて判別は出来ない。
そして、この人物が天津風あまつかぜいのりだと気付いたのは――今回の一件を見ていたギャラリーも気づいていなかった。
実際の話――彼女のもう一つの姿でもあるリズムゲームヒロイン・アマツでならばかろうじて話題になりつつあるので、知っている人物もいるのかもしれないが。
「結局、リアルでもARゲームでもアイドルを取り巻く環境は同じと言う事か――」
 天津風は複雑な表情で、今回の事件を起こした犯人を駆けつけたガーディアンへと突き出した。
ガーディアンの方も天津風に対して身分証明を求めたのだが、彼女は身分証明を出す事を拒否する。
これが警察相手であれば、公務執行妨害だろうが――ガーディアンの場合は話が別。チートプレイヤーに対しては賞金がかけられているケースもあり、それを狩るハンターも実在していた。
「ARガジェットの認証を確認した。こちらを身分証明の代わりとして――」
 ガーディアンの男性はARアーマーを装着しているのだが、これもARバイザー経由でしか確認できない。
インナースーツ姿に関しては市民も確認出来るが――この辺りがARゲームの最大の特徴と言えるのかもしれないだろう。
彼が確認したのは天津風のARガジェット。所有しているナックル型のガジェットの認証コードを確認し、そこから天津風の名前を割り出したのだ。
それを確認すると、ガーディアンの表情も複雑だった。ガーディアンにとって、天津風は同業者ではないのだが、やっている事は似ている。
もしかすると、ガーディアンは天津風に対して同族嫌悪を抱いたのかもしれない。


 午後3時、比叡は別のゲーセンに姿を見せる。一度は帰宅したのだが、それはARガジェットを置いてきたのみであり、別の用事を思い出したとも言えるかもしれない。
「本当に――あれがリズムゲームなのか」
 比叡はゲーセンに置かれている様々なリズムゲームを確認しながら、ある事について考えていた。
それは、パワードミュージックである。過去にはARゲームと言う概念が一般化する前、様々な表現方法として色々な異次元の楽器が存在していた。
そうした楽器の亜種として、ARゲームのリズムゲームがあり、パワードミュージックがあるとすれば――それからヒントを得た可能性も高い。
「リズムゲームの概念が崩れ――いや、既に1メーカーが独占するようなシステムではなくなっている証拠か」
 過去にリズムゲームでは特許問題が存在していた。格闘ゲームでは紆余曲折の末、問題が長期化する事は回避され、格闘ゲームブームが生まれた。
その格闘ゲームも、システムやキャラ設定等を工夫する事で様々なゲームが誕生したが、ここ最近はマンネリ気味になりつつある。
しかし、イースポーツ化等の流れが格闘ゲームに新たな可能性を生み出したのは間違いない。
 その一方でリズムゲームはどうだろう。ノーツが上から降ってくるタイプの物はあるメーカーが特許を取得し、それから長い間は1メーカーの独断場とも言える状態が続いていた。
格闘ゲームの勢いが減った辺りでリズムゲームが注目されたが、特許問題が足かせになる。
しかし、特許に影響しない範囲でシステムを再構築した結果、様々なメーカーがリズムゲームをリリース出来るようになった。
「システムがマンネリ化しているのは、格闘ゲームではなく――」
 リズムゲームの方がマンネリをしているのではないか、と考えた比叡は特にゲームをプレイする事無くゲーセンを後にする。
全くプレイしないのもアレだったのか、近場にあったコースを走るような感覚のリズムゲームをプレイしようと思った。
「このシステムは――」
 2つのボタン型の特殊なレバー、縦型画面の筺体――この機種自体は最近リリースされた作品ではない。
しかし、比叡はこのゲームに何かを重ねていたのである。気が付くと、比叡はコイン投入口に100円玉を入れていた。


 午後3時5分、チュートリアルをプレイしていた比叡は感じていた何かが――似ていると思い始めている。
何に似ているかと言うと、パワードミュージックである。コース上に現れるターゲットをリズムに合わせてボタンを叩く――システムとしては似ているだろう。
ARガジェットでも、やる事は同じだ。別所で見た動画では、手持ちのARガジェットで出現したターゲットを斬り落としていた。
動画のプレイヤーは刀型のARガジェットを使用していたのも理由の一つだが――どうやってリズムを合わせるのだろうか?
「このボタンを、こう叩くのか――」
 画面を見ながらプレイしていく比叡の姿、それは自分が数年前にリズムゲームに出会った時の頃――それと重なっていた。
既に何作もプレイしていた関係で、大体のシステムはチュートリアルを一度見ればある程度の応用は出来てしまう。
格闘ゲームでも一部のコマンドが共通している事もあり、自分が使いこなせそうなコマンドをメインとしたキャラを使う事が多いのと同じ原理だろうか。
投げ技タイプ、対空タイプ、バランスタイプ――格闘ゲームでは、そう言ったタイプ分けも可能である。
しかし、リズムゲームではそう言うタイプでは分けられない。それは筺体が原因と言っても過言ではないだろう。
「リズムの合わせ方さえ分かれば――」
 チュートリアルが終了し、比叡が選択した楽曲はカラオケなどで有名なJ-POP、話題のアニソン、ネット上で10万再生以上を超えるようなソーシャルミュージック――そうしたカテゴリーではなかった。
彼女が選択したのは、難易度が5と中間に位置しているようなオリジナル楽曲だった。
オリジナル楽曲はメーカー独自色も出ている事もあり、この手のリズムゲームでは多くプレイされている。
それらの楽曲が滅多に他社メーカーのリズムゲームに収録されていないのも、その理由の一つだろう。
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