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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード11『強豪が集いしゲームフィールド』

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エピソード11-9

2017年2月10日付:加筆調整
 6月6日、芸能事務所AとBはそろって記者会見を行い、埼玉県は活動対象外とする事を発表する。
この記者会見は民放番組でも中継されたが、あるテレビ局は中継を行っていない。それを神対応と言うのはネット上でも恒例行事だ。
『本日は、これからの活動について――』
 これに対して、アイドルファンは猛抗議を行うのは当然の流れであり、事務所の方もこうなる事は百も承知だった。
それでも活動を休止したのは、埼玉県内に存在するアイドル投資家や転売屋の存在が理由の一つという事だったのだが、ファンはそちらだと思っていない。
【埼玉県が除外されたのは、ARゲームが展開されているからだ】
【町おこしに超有名アイドルを起用していれば、こんな事にはならなかった】
【埼玉県は、ただちに謝罪を行い、ARゲームから撤退すると確約すべき】
【超有名アイドルは、ヤバイ。URLはこちら】
【芸能事務所は信用できない。詳細はこちらの政治団体へ――】
【時代は超有名アイドルを求めている――】
 その他にもつぶやきが存在したが、中にはゲームメーカーに対して爆破予告をするという過激なつぶやきもあった。
それ以外にもリンク先にブラクラの映像を用意し、恐怖させるような物もある為、迂闊にURLを確認出来ない状態にもある。
悪質なリンクを配置したり、特定人物が超有名アイドルを全滅させようとしているという趣旨の発言もあったのだが、実際に該当する人物が炎上に加担している証拠はない。
こうした遊び半分や悪ふざけのネット炎上が繰り返された結果が、あの超有名アイドル事件や超有名アイドル商法に利用されたのを未だに気付かないのか?
当然だが、そうしたつぶやきは悪目立ちをしようと言う人物による物であり、当然だが発信した本人は逮捕される。
逮捕された人物の中には未成年もいた為、つぶやきサイトを初めとしたSNSも成人になるまでは禁止にすべきと言う発言もワイドショーで流れるようになった。
「想定していたとはいえ、ここまで悪化するとは思わなかった。こっちはARゲームの自由を取り戻すはずだったのに」
 この状況に対して不満だったのは、日向ひゅうがイオナだった。
彼女は、この記者会見の前にもネット炎上を企んでいた勢力をARゲームでせん滅していたのである。
今回の件は、それが裏目に出た訳ではないのは彼女も分かっているのだが、何ともやりきれない気持ちになっていた。
もはやネット炎上の訓練と言うレベルを超越し、海外に報道されるような大事件扱いである。
海外での報道は色々と憶測も混ざったニュースになっており、下手をすれば虚構ニュースと言われても文句は言えないだろう。
「エンドレスになる展開――このまま誰も止められないのか?」
 彼女は思う。このままでは、アフィリエイトを稼ごうとしてネットを遊び半分で炎上させるような勢力に蹂躙される――と。
つぶやきサイトのアカウント所持をARゲームプレイヤーに対して禁止している理由、今ならば分かるような気がしていた。
現在は、このアカウント所持禁止に関しての制限は解除されているが――。


 6月7日、ネット上ではさまざまな意見がつぶやきサイトを初めとしたSNSで配信されている。
しかし、その意見は超有名アイドルは無罪とする意見が大半だったと言う。
無罪の意見が大半の理由は、芸能事務所側から裏金を受け取っている、政府の陰謀と言った物が拡散しているが――どれも嘘なのは間違いない。
結局はネット炎上を遊び半分で行う様な発言に責任を持たない人間が多い事で、また同じ事が繰り返される。
エンドレスは止められないのか――誰もが思った。ARゲーマーの中にも同じような考えを持つ人物がいる中、予想外の人物が立ち上がる。
「チートは絶対悪――ネット炎上も、そうしたチートを排除しようと言う勢力が生み出した――」
 谷塚駅のセンターモニター前、そこにはARメットを装着した状態のメイド服を着た女性がいた。
メイド服と言うよりは、これがARアーマーと言う気配もするかもしれないが――。
「光と闇が存在し、賛成派と反対派が存在するのも否定はしない。しかし、悪意のあるようなネット炎上は、見ていて不愉快だ」
 天津風あまつかぜいのり、彼女は賛成派と反対派が存在し、その意見を統合する事は不可能と結論を出していた。
しかし、ネット炎上の様な悪意のあるような争い、チートを手にして闇が光を圧倒的な力で蹂躙するような展開は望んでいない。
WEB小説で言うチート無双等に代表される世界は――彼女にとっては、この世界に必要ないとも考えている。
だからこそ、我が物顔でチートを絶対正義として振るい、正統派や努力家の様な勢力を排除するようなネットの流れを――彼女は何としても止めたいと思った。
「比叡アスカでも実現できなかった事――彼女がやろうとしても、出来なかった事を――今!」
 天津風は比叡ひえいアスカがガイドラインやルールの変更を提言し、それを実現させた事――。
その一方でネットで繰り返される炎上案件――それを止めるべきだと天津風は決意する。
そして、比叡が夢見て実現できなかったネット炎上のない、悪意のある発言によるネット炎上の連鎖を止める為――彼女は、ある勢力が集まると言われる場所へと電車で向かう事にした。
さすがに電車内でARメットは不可能の為、ARメットを外してアーマーを無効化し、改札口でARガジェットをタッチして駅のホームへと向かう。


 午前11時25分、天津風が到着した場所は竹ノ塚である。駅から出てきた彼女は、周囲を見回すが――特に監視されている気配はなかった。
埼玉県外で活動している転売屋に埼玉県内で活動していたアイドル投資家などからノウハウを手に入れ、密かに活動を開始しているという噂を入手している。
それを踏まえた上で超有名アイドルの人気にタダ乗り便乗しようとしている投資家――そうした勢力が取る行動は、ひとつしかない。
「悪意あるネット炎上――それを見逃せば、やがては――」
 繰り返しになるのだが、天津風は議論に関して反対する立場ではない。
しかし、悪意あるネット炎上に代表されるような物――それに対しては止めるべきだと考えていたのである。
「あれは――?」
 陸軍の軍服らしきものを着たガーディアンの一人が、天津風を遠目で見て発見していた。
彼は援軍要請をしようとしたが、周囲に別の勢力と思わしき人物も確認できたため、警戒するという意味で天津風に気付かれないように尾行を行う。


 10分後、天津風が到着した場所――それはARゲームとは無縁な公園である。近くにはARゲームのフィールドもあるが、公園内は対象外となっていた。
この公園ではつぶやきサイトでも何かの集会が定期的に行われていると目撃証言もあった場所であり、稀にワイドショーでも取り上げられている。
その際の取り上げ方としては超有名アイドルファンの聖地と言う意味合いだったが、改めて考えて見ると――。
「ライブチケットがペーパーレスになった時代になった今でも、転売屋は存在する――」
 アーマーを装着しない状態で公園内に入り、周囲を見回す天津風は視界に入ってくるダフ屋を気にしているようでもあった。
ネットオークションやチケット転売サイト等が主流の今だからこそなのか、ダフ屋が注目されているのは皮肉な話である。
ダフ屋に関する規制は存在し、それが見つかれば逮捕されるのは目に見えているのだが――摘発出来ないのには別の理由があった。
「そう言う事か――これではダフ屋とは警察も思わないだろうな」
 ダフ屋と思わしき人物は看板となる紐付きプレートを首にかけているのだが、そこに書かれていた値段は何と正規料金だったのである。
これが転売価格となると警察も摘発できるのだが、正規料金を提示されては手の出しようがない。
その代わりに別料金が発生するのか――と言われると、看板には明記されていなかった。
値段に関しても『正規価格で譲ります。チケットサイトの転売価格で買うよりもお得』という文字が目立つ。
「しかし、正規料金だろうと――正規ルート以外で売られているのは明らかに――」
 天津風が動こうとした矢先、金属片の様な物が散布されている光景を目撃する。
散布された数秒後、ダフ屋等と思わしき人物は一瞬にして姿を消す。どうやら、ARゲームのアバター技術を流用した物らしい。
一体何が起こったのか――と天津風が困惑するのだが、しばらくして本来の目的に気付き、ARバイザーとARガジェットを展開する。


 金属片の様な物の正体はチャフグレネードだった。投下した人物は、何とアイオワだったのである。
何故彼女がこの場にいたのかと言うと、この近くにあるARゲームのフィールドへ用事があったためだ。
その際、偶然にも天津風の姿を見た――と言う事らしい。
「やっぱり、この転売屋自体が以前の再現――」
 周囲の様子を見て何かのトラウマを呼び起こすような気配を感じたアイオワは、フィールドギリギリのエリアに不審者がいるのを発見する。
そして、その人物を問い詰めた結果――アイオワの懸念している事が現実化しようとしていたのである。
「以前と言われても、我々は大手広告会社に仕事として依頼された。これが正式に仕事だと言う依頼書もある」
 問い詰めようとしたアイオワに対し、不審者Aが見せたのはタブレット端末に表示された電子署名式の依頼書のコピーだった。
そこによると、テレビの報道番組用にアイドルチケットの転売現場を取材する為――と書かれているが、それならばテレビ局を経由して取材をするはず。
それを広告会社が依頼する事自体がおかしい。もしかすると、インチキのネット炎上を狙ったバラエティー番組用に撮影している可能性も否定できなかった。
「本当に転売屋の証拠を掴もうとしているのであれば――」
 アイオワが撮影ポイントから発射したのは、チャフグレネードである。
ARFPS等では電波妨害を起こすと言う事で多用されているアイテムだが、他のARゲームではゲーム妨害となる可能性もあり、使用禁止になっているジャンルも存在しているシロモノだ。
チートアイテムではないが、ジャンルによってはチートにもなりうるという点では、これも一種の公式チートと言えるかもしれないが――この辺りはプレイヤーでの認識も違っている。
「ARウェポンは文字通りの兵器と言う事か――」
 別のスタッフがチャフを散布されたのを見て、援護射撃を行おうとするのだが――その援護射撃も出来ない状態になっている。
どうやら、アイオワの散布したチャフはピンポイントで使用不可にするガジェットを指定しているようでもあった。


 チャフ散布から5分後、天津風の前に姿を見せたアイオワは、今回のトラップを仕掛けた張本人を彼女に告げる。
「ネタバレと言うラスボスを生み出した張本人は、芸能事務所かもしれないが――それに関係していたのは大手広告会社よ」
 アイオワの衝撃発言を聞いても天津風は眉一つ動かさない。
もはや、それ位で驚く必要が何処にあるのか――と言う気配さえある。
ある意味でも呆れかえるのでは――とアイオワは思っていたが、天津風は予想通りと言う様な表情だ。
これがビスマルク等だったら、リアクションも変化した可能性はあるだろう。
「それを聞いても驚かないという事は――既に知っていた、と」
「それは違う。何となく気づいていたけど、それを裏付ける証拠は持っていない」
 アイオワは天津風に知っていたのかを聞くと、意外な事に知らないという事だった。ただし、薄々は分かっていたようだが。
「超有名アイドル商法自体、投資詐欺とか在宅ワーク詐欺、スパムメールでの闇バイトと同じようなレベル――チケット転売なんて、もっての他よ」
 アイオワがいつもよりも膨れたような表情で話を続ける。
どうやら、今回の件は過去のトラウマを呼び起こすには十分なレベルだったらしい。
天津風は彼女の神経を逆なでするのも問題であると判断し、深く言及する事はしなかった。
逆に言えば、アイオワも天津風が本来はどのような目的で足立区にやって来たのか――それを聞く事はなかったと言う。
その辺りはお互いさま、と言うべきかもしれない。その後、誰かが駆けつける可能性もあってARガジェットの武装を解除しようとしたのだが――。
「本来であれば、ここに姿を見せた転売屋を実力行使で片づけるはずだったが――トラップだったとは」
「トラップと言うよりは、撮影ね。テレビ局へ売り込む為の――」
 最終的に、ここで行われていた撮影は中止となった為、翌日に放送されるはずだったバラエティー番組では局アナの謝罪から始まる異例の展開となる。
それだけでなく、今回の不祥事を起こした広告会社には別件を含めて警察が強制捜査を行う流れとなる。
番組そのものが打ち切りになったかどうかは不明だが、視聴率を取ろうとしてやらせを行った番組は――視聴率0%に近い状態となったのは言うまでもない。


 これによって、一連の事件は今度こそ幕を閉じる事になるのだが――これとは別に第3勢力が都内で動きだすという情報は、伝えられる事がなかった。
伝えられていないというよりは、情報自体は拡散されているがデマと勘違いされている可能性があった為である。
炎上案件として不用意に拡散しないと言う意味では、ある意味でも正解かもしれないが。
「これは、もしかして――」
 第3勢力のニュースに食いついたのは、ある実況者だった。
彼女の外見はビキニ水着にARバイザー、特殊なシューズと言う服装である。
この格好でも警察が来ないのは、草加市がARゲーム特区な為であり、ガイドラインが変更になった今でも有効だろう。
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