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リズムゲームプラスパルクール 作者:桜崎あかり

エピソード1『比叡、エントリー』

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エピソード1-4

 4月10日午前11時20分、アンテナショップで情報を調べていたのは比叡ひえいアスカである。
「さまざまなARゲームが――?」
 タブレット端末でデータを検索していく内に、様々な情報に触れることとなった。
超有名アイドルの芸能事務所が意図的にご都合主義を起こし、視聴率を独占しようとした事は未だに大きく取り上げられている。
「世界的なスポーツ大会でリオではメダルを取れずに惨敗――日本開催も中止?」
 比叡は信じられないような記事を目撃した。それは今日の日付があったスポーツ紙のスキャン映像だった。
記事を読んでいくと、東京で開催予定だったスポーツ大会が正式に辞退すると言う事らしい。
「しかし、日付がおかしい事に加えて――ネット上では見かけないようなワードが多すぎる。フィクションが含まれているのか」
 これ自体がねつ造記事と言う可能性が高いので、油断はできない――と比叡は考えていた。
フィクションとノンフィクションの区別がつかずに暴走した結果、一部コンテンツが黒歴史化したという事例も存在するからである。
一部の人間の暴走、ソースを確かめずに偽情報を拡散すれば――それこそ一部の勢力が喜ぶだけ。
それこそ――形を変えた戦争とも揶揄されているのが、この時代におけるネット炎上だ。
「それに、一部のステマ行為が芸能事務所主導で行われていた事実も――」
 アカシックレコード等では記事の信ぴょう映画問われており、この手のコラ画像は多く出回っている。
その為――まとめサイトに掲載されたニュースに関しては、自分でソースの信ぴょう性を探る必要性も出ていたのだ。
「しかし、ネット上で大騒ぎしているような事がない以上、ソース不明の話と判断するべきか」
 比叡は一部の記事に関して、判断を保留する事にした。
今は重要な部分を決めなくてはいけないからである。手に取っているARガジェットが、本当に良い物かどうか――。


 午前11時30分、比叡がアンテナショップでガジェットの選定に苦労している頃、身長170センチ位のメイド服を着た女性が姿を見せた。
顔の方はARバイザーを装着している関係で確認は出来ないが、他のアーマー類は装着していない。体格的には若干の貧乳である。
周囲のギャラリーは彼女に注目すると思われたが、あまり興味はない様でもあった。それ以外にも――理由はあるかもしれないが、比叡は空気を読んで詳細を察しない事にした。
「このガジェットの修理をして欲しい」
 彼女がガジェット受付のスペースに置いたのは、腕に装着するタイプのARガジェットである。
こちらもタブレット端末のようにタッチパネルを採用しており、更には画面が割れにくい特徴もあった。
しかし、彼女のガジェットは周囲のカバーに亀裂が入っているようにも見える。亀裂と言っても保護フィルムが貼ってある関係で、大きくなっていないようだが。
普通、ARガジェットはかなりの衝撃に耐えられるはずなのだが――男性スタッフが、亀裂の入った液晶部分をお宝の鑑定をするかのように調べ始める。
「ゲーム中に損傷した物かどうかを調べますので、少々お待ちください」
 最終的に彼女の対応をしていた男性スタッフは、亀裂の入っているガジェットを別のケースに入れ、それを奥の方にある箱の中へと入れた。
どうやら、あの箱に関しては状態をスキャンできるような機械らしい。
あの箱に入れた理由は、目視では傷の詳細を確認する事が出来なかったから――と言う可能性もあるだろう。
「あのガジェットで亀裂が入るなんて――」
 スキャン中の待ち時間で、彼女は近くに置かれていたセンターモニターの映像を見ていた。
映像ではARパルクールの中継が放送されているようでもあった。
「あれ位のアクロバットもしていないのに――どういう事なのかな」
 中継のプレイヤーの動き、それはパルクールと言うよりはアクロバットも織り交ぜているのでフリーランニングに近いだろうか。
ARガジェットやARアーマーを使用しているからこそ、スーパープレイの類がやりやすくなっていると言う。
それでも動画を見ただけで即座に出来るようであれば――ネット上でもランカーが貴重なプレイヤーとは考えないだろう。
道具を揃えただけでアクロバットやスーパープレイが出来ないのは、どのゲームでも一緒と言えるのかもしれない。


 午前11時35分、比叡のガジェット選定は決まった。最終的には男性スタッフの助言等もあって、初心者向けのガジェットを選ぶ。
初心者向けと言っても、比叡が選んだのはパワードミュージック用の物である。
スタッフも、専用のガジェットが2種類しかない事は説明したが――。
「パワードミュージックは、まだ始まったばかりのARゲームですので――ガジェットの種類は限られています。それでもプレイするのであれば、こちらは止めませんが」
 明らかに『今は』プレイしない方がいいと言わんばかりの表情をしている。
ガジェットの不具合報告が出ている訳ではないのだが、さまざまな報告はあちこちで出ていた。それを踏まえても、様子を見るべきだとスタッフは考えているらしい。
「ただいま在庫の問い合わせを行いますので、その場でお待ちいただけますか?」
 そう言い残し、男性スタッフは奥の方へと行ってしまう。
パワードミュージックに限って言えば、既にこのアンテナショップだけでも30人の新規プレイヤーがエントリーしている。
比叡も目的は同じだが、今までとは全く違う様なリズムゲーム――そこに魅力を感じたのかもしれない。
他のプレイヤーも同じ理由なのかは不明だが、全員が全く違う理由でエントリーしたとは考えにくいだろう。
「人気取りや流行ジャンルに便乗するだけ勢力に――ARゲームが上手く扱えるとは考えにくいか」
 比叡は単純な目立ちたいだけ、悪目立ちするような勢力ではARゲームは宝の持ち腐れとも考えている。
だからこそ、ここ最近のARゲームを巡るネット上の噂には懐疑的になっていたのだ。チート関連を除いては。


 しばらくして、男性スタッフが姿を見せるのだが、持ってきたガジェットは希望していた物とは違う様なデザインの箱に入っていた。
箱と言ってもジュラルミンケース位の大きさやノートパソコンの入ったダンボール程ではない。
「初心者向けのガジェットは在庫を切らしているようで、入荷が一週間待ちとなるようです。今すぐプレイしたいと言う事であれば、こちらのガジェットもありますが?」
 高いガジェットを薦められているのではないか――と比叡は思うのだが、値段に関してはそれほど高額と言う訳ではない。
値札は付いていないが、バーコード部分を機械で読み取ると、レジに表示された値段は――。
「こちらのガジェットでしたら、3000円になりますが?」
 初心者向けよりも2000円はお買い得だ。上級者向けは、初心者向けでセットにしている装備が一部省略されている代わりに値段が抑えられている。
それでも安全装置各種は省略されておらず、これでもお買い得と言えるだろう。ARゲームのジャンルによっては10000円単位も存在するが――それはパワードスーツクラスの大型系列に限られていた。
比叡の財布の中身は決して少ない訳ではないが、最低限の必要経費は削るべきではないと考える。
「本来であれば、もう少し高い物ですが――状況が状況ですので、一種の在庫処分と言うか――」
 男性スタッフの方は、あれこれと言葉を並べるのだが――比叡の決心は揺るがない。
別のARゲームの方が棄権性も少ないだろう、と言う事を言いたいのかもしれないが、ネット炎上を誘発するような説明や態度で対応すれば――自分がクビになると考えていた。
ARゲームのアンテナショップでバイトをするというのは、そう言う事らしい。ネット上では時給2000円という一見すると一番もうかりそうなバイトにも見えるのだが――。
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