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WANTED!
作:灰月



Ep5:変わるもの、変わらないもの


「よし、真琴ちゃんの部屋に潜入しよう」


 慎吾の残念な脳みそが判断した結果、こうなりました。


「お前、本気かよ……」

「本気さ。とらあなに入らずんばこじを得ずってやつだよ」


 なぜ虎児が読めて虎穴が読めないんだよ……。

 俺は今、慎吾が住むアパートにいる。場所は学校から近く、慎吾はここで一人暮らしをしながら学校へと通う毎日を送っている。
 六畳ワンルームの部屋には、カップ麺の箱や割り箸、ファッション雑誌や週刊誌などのゴミがワンルームの部屋に所狭しと散乱している。
 そんな場所でも、暇な時間をここで潰してばかりの俺。ゴミだらけの部屋の居心地が良く感じてしまうのだから、我ながら困ってしまう。

 で、例の慎吾は、真琴のプロマイドのありかを聞いてからというものの、ありとあらゆる表情を浮かべながら、妄想を膨らませているようだ。


「やめとけ。いまならただの変態で済む」

「今ならただの変態って、もし僕が真琴ちゃんの家に侵入したらどうなるの?」


 俺はベッドに座っている慎吾の目を見ながら、真剣な表情で告げた。


「あの真琴だぞ? バレたらどうすると思う?」

「……」


 慎吾は無言のまま俺を見つめ返してくる。


「お前は屍になるな」

「やめとくよ」

「ああ、そうしとけ。そうやって妄想に浸っているだけで何もしない、ヘタレ人間でいるのが賢い」

「だからあんたは言葉を選ぶって事をしないんですかね!?」


 クラスの出し物はお化け屋敷に決まった。
 文化祭でお化け屋敷を出展する。という目標に向けて一致団結をする。汗水流し、お互いに意見をぶつけ合い、衝突し、仲直りして。これぞまさに青春だ。


「なあ、お前は文化祭出るのか?」


 俺はふと慎吾に聞いてみる。
 俺にそう聞かれた慎吾は、馬鹿馬鹿しいといった表情で俺を見てきた。


「あんな馬鹿馬鹿しい行事になんか出ないよ。その日は家で寝てる」

「そのまま永眠……と」

「不吉な事言わないでくれますか!!!」


 俺は読んでいた雑誌を小さいちゃぶ台の上に置いて、立ち上がった。


「そっか。んじゃ、そろそろ帰るわ」

「ああ。じゃあね」


 部屋のドアノブに手をかけた所で後ろに振り向く。


「慎吾……」

「ん、何?」



「明日こそ学校来いよ……」

「ほぼ毎日行ってますけど!!!」


 ガチャッ。

 俺は部屋から出、扉を閉めた。それと同時に春風が花の匂いを俺の鼻に運ぶ。
 アパートは特に、古いと言う訳では無いが、新しいと言う程でもない、いたって普通のアパートだ。

 慎吾は中等部からエスカレーター方式で高校に上がってきた。中等部は高等部の隣にあって、慎吾は中学生の時からあのアパートに住んでいるらしい。

 慎吾の中等部時代は、当時、公立高校に通っていた姉と、二人暮らしをしていた。二人は調度三年違いなので、姉が高校を卒業すると同時に慎吾も中等部を卒業した事になる。
 高校を卒業した姉は、この町の会社に就職した。そうして、いい機会だからと言い、慎吾の姉は今まで二人で生活していたアパートを出ていったそうだ。


「あの〜」


 そういえば俺、慎吾の姉を一度も見た事無い。
 慎吾からの話でしか知らないから、それ以上の事は何もわからない。


「あの〜」


 だが、あの慎吾の姉だ。
『はじめまして、わ……私が……慎吾の……姉…………エヘヘヘヘヘ……ジュルッ。私、土器を見るとよだれが止まらないんですよ……ハアハア……』
 みたいな。
 いずれにしろ、期待はできないな。そもそも人間じゃないかもしれないし。


「あの〜、よだれが垂れてますよ?」

「エヘヘヘヘ……俺、土器を見るとよだれが止まらないんですよね……ジュルルッ」

「そうなんですかっ? とても珍しい方ですねっ」


 ん、今俺に話かけてる、目の前で笑っているのは誰だ?


「ていうか、あなたは?」

「やっと私に気付いてくれましたっ」


 アーケード街を通る俺に話し掛けていたのは、二十代前半くらいの女性だった。
 長く茶色のかかった髪を後で一つに纏め、おおきい二重の目、白くてつやつやの肌、何物をも包み込んでくれそうな、美しい顔がそこにあった。
 にしても、どこかで見た事があるような無いような……。もちろん初対面だが……。


「あの、スボンのチャックが開いてますよ?」

「えっ?」


 俺はスボンのチャックが開いているかどうか確かめると同時に、ズボンのチャックを上げた。
 高校二年生にもなって、何やってんだか……。


「で、俺に何か用があったんじゃないんですか?」

「はい、チャックが開いているのに気付いていないようでしたので」


 その女性は、右手に買い物かごを持ちながら、にっこりと天使のような笑みを浮かべる。
 服装もエプロン姿だし。この女性は主婦、というやつだろうか。
 というか、用ってもしかしてそれだけか?


「では、私は買い物の途中ですのでっ」

「ああ……はい。わざわざありがとうございました……」

「困った時はお互い様ですよっ。では、さようなら」


 どうやら用は本当にそれだけらしく、そのままのニコニコ顔で去っていった。

 それにしても、今思うと、とても綺麗な人だった。
 エプロンを付けながらの買い物だったし、多分、配偶者はいるだろうけど……。
 まあ、近所に住んでいる事は確かだし、また会った時に聞いてみるか。


「ねえ楓、今誰と話してたの?」

「んぁ!? ああ……、真琴か……。部活終わったのか?」


 アーケード街で立ち尽くしていると、不意に後ろから話し掛けらる。振り向くと、そこには真琴と、彼女の友人二人。三人がそこに居た。


「えっと……。秋谷あきたにと、菅原すがわらだったか?」

「は、はい……。秋谷です……」
「菅原です……」


 名前は当たっていたのだが、二人はおどおどしながら、上目使いでこっちを見ながら答える。


「ねぇ、真琴……。すっごい恐いんだけど……ヒソヒソ」


 秋谷さんはとても正直で、尚且つ、声が大きな人だった。


「じゃあ私達はこっちだから、じゃあまた明日ね。……ほら、アッキー、行くよ?」

「う、うん。じゃあまた明日ね」

「じ、じゃあね、アッキー、すがちゃん……」


 菅原が秋谷の手を引き、そのままアーケード街の向こうへと行ってしまった。


「あんたが今まで積み重ねてきた結果よ」

「……ぐう」

「これが嫌なら授業をサボったり、途中で抜け出したり、遅刻したりするのを止めるべきね」

「……ぐう」


 とりあえず、ぐうの音は出しておくべきだと思った。


「まあいいわ。せっかく会ったんだから、何か食べてかない? 私、甘いもの食べたくなっちゃった」

「……俺のおごりか?」

「あったりまえじゃなーい」


 真琴はゲラゲラ笑いながら俺の肩をバシバシ叩いてきた。


「あのな、たまにはお前がおごってくれるとか無いのか!?」

「うん。もちろん無いわよ」


 くわぁぁぁ……。何てやつだ。
 どうして俺はこんな奴と知り合ってしまったんだ……。


「ほらほら、行くわよ」


 俺は真琴に手首を掴まれ、そのままアーケード街にある、ファミレスに無理矢理連れて行かされた。
 女の子に手を引かれる俺。主婦だったり、下校途中の学生だったり。その光景を見た人達は俺の事をクスクスと笑う。
 尻に敷かれている彼氏。とでも見られたのだろうか。

 まあ、それに近いものはあるが……。


「違うのは彼氏じゃ無いって事くらいか……」

「えっ? 何か言った?」

「……いや、何でもねーよ。それより早く食わないと溶けるぞ」

「……言われなくても分かってるわよ」


 言って真琴は、再びパフェ崩しに取り掛かる。
 俺は無駄金を使いたくなかったので、コーヒー一杯しか注文しなかったが、真琴は容赦無く、二千円オーバーの超ビッグパフェを注文するという暴挙に出た。


「何見てんのよ?」

「んな食ってると太−−」

「−−殴られたいの?」


 満面の笑み。


「すいませんでした……」


 それが逆に恐かった。


「で。さっき、違うのは彼氏だけか……。とか言ってなかった?」

「いや、そんな事は言っていない。聞き違いだろ」

「このバニラアイスの部分、一口あげるから」

「ああ、俺は確かに間違いなく、違うのは彼氏じゃ無いって事くらいか……、って言ったぞ。……って、俺の金で買ったパフェじゃねぇかぁぁぁーー!!!」

「あんたも馬鹿ねぇ」


 真琴は可哀相な物を見る目で、俺を見、口の端を少し吊り上げ、鼻で笑った。
 とても憎たらしい顔だった。


「で、何が、違うのは彼氏じゃ無いって事くらいか……、なの?」

「……何でもない」


 特に隠しておきたい事ではなかったが、あまり言いたくない事であるのは確かだった。
 言ったところで、ふーん。としか返ってこないような気もする。
 とにかく、これは口が裂けない限り言わないだろう。


「コーンフレーク付けてあげるから」

「さっき真琴に手を引かれた時、周りの人達に、尻に敷かれる彼氏。っていう感じで笑われたからさ。違うのは彼氏じゃ無い……って俺は馬鹿だぁぁぁーーー!!!」


 俺は椅子から降り、頭を抱えながら床をゴロゴロのたうちまわる。

 さすがに恥ずかしかったので、数秒ゴロゴロしてから、制服についたホコリを払い、再び真琴の正面の席に座った。


「あんたは……」


 真琴がボソッと言う。


「今、私とどういう関係だと思う?」


 今度は俺の目をしっかりと見据え、言ってきた。


「……幼なじみ……かな?」

「他には?」


 他には……ねぇ。


「気の合う友達、かな」

「……」


 何か気の触る事でも言ったのだろうか。真琴の顔は先程のそれとは違って、えらく真剣だった。


「私もそう思ってた……でもね……」






「男と女の友情なんて、成り立たないのよ」

「……?」

「だから私達は同性同士で友情を育むの」

「だったら俺達はどうなんだ?」

「言ったでしょ。男と女の友情なんてのは成り立たない。って」


 真琴が何を言いたいのか、よく理解できない。
 ただ、俺の心の中に何かがのしかかる感触を覚える。これが何なのかはよく分からないが、良い物では無い事は確かだった。


「絶交してくれとでも言いたいのか?」


 真琴はゆっくりと首を横に振った。
 バサッと揺れる髪から、とてもいい匂いがした。


「あんたは、どう思う? 男と女の友情って成り立つと思う?」

「ああ。俺は思ってるけどな……」

「そう……」


 真琴はスプーンを、アイスクリームの中に突っ込み、立たせた。
 そしてスプーンを持っていた手をそのまま髪の方に持って行った。


「あんたの好きな髪型は?」

「……ロングのストレート」

「じゃあ……」


 俺はそう言われてハッとする。
 そういえば、真琴はいつからなんだろう。どうしてなんだろう。
 最初は、嫌がらせか、とまで思ったりもした。


「……どうしてだ?」

「そんなの決まってるじゃない。あんたに嫌われる為よ」

「……本気か?」

「ええ。もちろん」


 よく分からないが、もう嫌われたくなくなった。という事なのだろうか。
 いや、そんな簡単に済むような事じゃ無い……か。


「じゃ、帰りましょっか」


 真琴はいつの間にかパフェを食べ終えていて、ファミレスの出入口に向かって歩いていた。

 その後ろ姿はとても綺麗で、俺はしばらく席に座ったまま見とれてしまっていた。


「男女の友情なんてのは成り立たないのよ……。か」


 あいつは……。


「ほら、行くわよ!」

「あ、ああ。分かったよ」


 俺は席を立ち、真琴のいるレジまで歩き出した。

 真琴のストレートヘアーは、とても似合っていた。


楓『おい、この二ヶ月間、何やってたんだ!』

 …………。

真琴『どうせ遊んでたんでしょ?』

 まあねっ。

楓 『そっか、なら仕方ないな』
慎吾『だな』

 この時期って、同窓会とかの集まりが多いんだよねぇ……。
 ここ最近は全く作者ログインさえもしてなかったし……。

真琴『まあ、遊ぶのはいいとして、あんたにはもう二つの連載作品があるのを忘れるんじゃないわよ』

 はい……。おっしゃる通り……。すいません……。

 今の所はこの連載を終わらせる事しか考えていないので、二つの作品は、今の所後回しです。
 カブけよカブけ。はリメイクしよっかな。とも考えてたり。

 まあ、なんにせよ。



 遅くなってしまい、申し訳ありませんでしたm(__)m











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