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 お詫び。春名編なんですが、作者がアイディアに詰まったのと、本編の展開を考えると必要性が薄いので、一端削除しました。
 いずれ再構成の上、外伝2部で掲載したいと考えています。読者の皆様には多大なご迷惑をお掛けしてしまいまして、申し訳ありません。
新たなる敵 上
 トリステイン王国とロマノフ公国の間に国交が結ばれ、人と物の行き来が可能になったことはハルケギニアの歴史上、非常に画期的な出来事であった。それまで未開の地である東方(厳密にはその一部)との連絡路を開いたこともそうであるが、ハルケギニアに比べて遥かに高い技術力を持つ地との交易が可能となったのだ。

 この時期、トリステインとロマノフ間で行われた交易の方式は物々交換、いわゆるバーター方式であった。これはハルケギニアで使用されていたエキューをはじめとする通貨と、ロマノフ側のエーブルとの交換比率がしっかりと定められていなかったからだ。

 そのため、トリステインがロマノフから物品を購入する際は、主に外洋諸島の島々で発掘される、金・銀といったレアメタル、そして石油・石炭といった鉱物資源を輸出し、その見返りとしてロマノフ側の商品を受け取るという形が主に採られた。

 ちなみに1ヶ月遅れで国交を結んだアルビオン王国との間の交易も同様の方式が採られた。この方式が終わるのは、2年後通信技術の発達によりトリスタニア、ニコラエフスク、ロンディニウムに為替取引所が設けられた時となる。

 こうして始まった貿易で、ロマノフ側から購入された物品は多岐にわたるが、多かったのが工業製品であった。その中でも、工業用機械の輸出はトリステインとアルビオンの工業化を促進させた。

 義勇軍の調査によればロマノフ公国の科学レベルは地球で言うところの日露戦争から第一次世界大戦にかけての間である。地球のロシアはその時代における工業力が低かったが、ロマノフ公国はそうではなく、ある程度の工業水準を備えていた。そのおかげで、トリステインやアルビオンへ輸出を行うだけの力が十分にあった。

 なお交易できる地域が限られ、なおかつロシアと似たような国情のロマノフ公国がどうしてこのように発展出来たかは不明であった。後の研究では、これに関して地球からの介入があったという説が発表されたが、今回は関係ないのでその話は省く。

 さて、そのロマノフ公国からの輸入品には、『東方義勇軍』とその同盟軍が発注した武器が多数含まれていた。生産委託されたT1型小銃や、T2型騎兵銃、75mm野砲、同高射砲といった火器、43式装甲車と言った車両、さらには駆逐艦まであった。

 ちなみに新たに採用されたT3型短機関銃は技術漏洩の可能性を考えてしばらくの間、委託生産はなされなかった。

 この内43式装甲車というのは、旧日本軍の97式軽装甲車を元に開発された装軌車両で、37mm砲、または20mm機銃を装備した2人乗りの戦闘車両だった。小型で外見は貧弱な印象であったが、まともな近代兵器を備えていなかったガリアやゲルマニアの兵士たちからは非常に恐れられた。また最大装甲も12mmと厚くはなかったが、それでも十分だった。

 同車両は交易開始1ヵ月後に、ロマノフ公国のコロメンスキー自動車会社で製造が開始され、ハルケギニア戦役までに60両が引き渡された。

 ロマノフ公国からの武器輸入は、それまで貧弱な工業力しか備えていないトリステインやアルビオンでの細々とした生産、さらには仮想敵国ゲルマニアでの委託生産にしか頼れなかった『東方義勇軍』の武器不足を一挙に解消することとなった。加えて義勇軍の同盟軍といえるヴァリエール公爵領で編成された常備軍の『ケンプ大隊』、義勇軍から戦技指導を受けていたトリステイン王室直属の銃士隊、同じくアルビオン王室直属の『ライオン旅団』の武器充足を急速に促すこととなった。

 もちろん、輸入されたのは何も兵器ばかりではない。民間用の車や家庭用の電球など民需製品も流れ込んだ。ただし、これらが本格的に輸入されるのはハルケギニア全体が落ち着き、さらに輸送力が大幅に増した時期を待たねばならなかったが。

 そんな中で、武器以外の物としては最優先で輸入された物があった。鉄道用レールやそこを走行する蒸気機関車や貨車、客車である。これはつい先日開通したばかりのトリスタニア〜ミライ間の鉄道の延長が王政府から正式に認められ、急ピッチで工事が進められたことに起因する。

 開通当初のレールはハルケギニアで製造されていたが、それだけではとても必要量に達することは出来なかった。ところが、ロマノフ公国ではすでに鉄道網は大分整備されており、レールや車両の大規模な製造も行われていた。しかも、ハルケギニア地域では30kgレールを造るのが限界であったのに対して、ロマノフなら40kgレールを製造することができた。

 レールの重みが増せばそれだけ強度と安定感が増し、旅客列車なら速度のアップと乗り心地のアップが可能となり、また貨物列車ならより重量のある物を運べるようになる。

 ちなみに余談であるが、枕木は木材が豊富なアルビオンからの輸入品である。

 さて、そんな感じで鉄道の路線延長が急速に進められることとなった。最初に行われたのは、ミライから西3km地点に出来た新しい歩兵・砲兵駐屯地への敷設だった。

 新しい基地の建設は、繰り返し行われた部隊の拡張により、ミライの基地が手狭になりつつあったから行われた。

 ただし、この鉄道の延長は初期の段階から計画されており、路盤自体は最初の鉄道開通時に既に出来上がっていたため、線路の敷設、信号設備の設置(もちろんタブレットと腕木信号機)、駅の建設などは1ヶ月という短時間で終わった。

 ちなみに、この鉄道建設には地球からスカウトされた技術者も従事し、建設用機材の一部も地球製のものが使用された。





 そんな感じでトリステインとアルビオンが発展し、義勇軍や同盟軍の戦力が急速に拡充していく中で、その喜びを一編に吹っ飛ばす事件が発生した。

 事の発端は、ガリア領内にいる『トウ機関』スパイからの通報であった。その内容は、ガリア国内にたくさんの飛行機が現れたという物だった。
 
 当初はまさかと思われたが、もし事実とすれば由々しい事態である。そこで、トリステイン方面軍司令官の平賀才助少将他義勇軍の幹部たちは、航空機による偵察を行ってみた。

 スパイが予め位置を報せてくれていたので、地文航法を使ってそこまで飛んでいくこと自体は簡単であった。

 ちなみに、偵察に使われたのは武装を外して主翼と胴体に下向きカメラを取り付けた「零戦改」で、防諜上の理由から機体の国籍マークを塗りつぶし、黒一色という如何にもスパイ機であった。ちなみにパイロットも身分を証明する物を一切身に着けていなかった。これは万が一撃ち落とされた場合に備えての処置であった。

 数日後偵察は無事成功し、早速偵察機が撮影してきた写真が現像された。もっとも、撮影に使われたのはデジタルカメラなので現像というより、データの取り込みであったが。

 それはともかくとして、偵察機が写した映像は中高度からだったので、不鮮明であった。そこで画像解析ソフトを使って修正、拡大した上で印刷した。

 印刷された写真は、早速行われた会議で才助や才人、その他の幹部陣が見る所となったが、見た途端彼らは顔を蒼くして驚きの声を上げた。

「そ、そんなバカな・・・」

「こんなのありかよ・・・」

 偵察機が撮って来た写真に写っていたのは、どう見ても飛行場と思しき基地と、そこに並ぶ100機以上の大小の飛行機の姿だった。

 
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