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第四章 アルト
第二十六話 子供って可愛いかも
 まあ、簡単な設定も決まりアルトと暮らすことになったのだが、まあ、子供とは思ったより手がかかるということが初日のうちにわかった。
 例えば、
「た〜んけん、たんけ〜ん」
 朱音さんがご飯を作ってる間とてとて家の中を走るアルト。僕はなにもないように着いていく。そしたら、
「わふ!」
 どしんと廊下の壁にぶつかってアルトが倒れた。
「大丈夫?!」
 な、斜めに走ってたから壁にぶつかるかな? なんて思ってたけど、まさか本当にぶつかるとは……慌てて僕はアルトに駆け寄る。
「いたい〜」
 涙目で額を抑えるアルトを立たせてあげる。
 それからぽんぽんとお尻をはたいてあげる。
「アルト、もうちょっと気をつけようね。アルトが怪我したらママも朱音お姉ちゃんも心配だからね」
 うん、と素直に頷くアルト。泣きそうな顔がちょっとかわいい。
 だけど、その後も三回ほどアルトは壁にぶつかるのであった。だ、大丈夫かな? これからが不安になる……

 そんな風に家の中を走る回る以外にも、興味が惹かれた色んなものに触れたりする。例えば、花瓶に触って落としかけたり、テーブルの上にある小物を落としたり……さっきから落としてばっかだね。あと、
「ママこれなあに?」
 テレビの画面を触りながらアルトが聞いてくる。
「これはテレビだよ」
「てれび?」
 うんと僕が頷いてテレビの電源を入れると画面にちょうどアニメがやっていた。内容はかわいらしいモンスターと人間が仲間と冒険するアニメだ。
 アルトが驚く。
「うわ〜!」
「これは遠くの映像を映す機械でね」
 って聞いてないか。夢中でテレビを見るアルトを僕は微笑ましく見続けた。

 んで食事の時間。今日のメニューは朱音さん曰わく子供はみんな大好きハンバーグ。
 アルトのだけお子様ランチ風で、お皿に乗ったご飯の上に旗が刺さっている。
 あとハンバーグも食べやすいようにという朱音さんの配慮から最初から細かく切って置いてある。食器も僕らがお箸だけどアルトは食べやすいようフォークとスプーンだった。しかも、どこにあったか子供用。
「アルトちゃんおいしい?」
 朱音さんが質問するけどアルトは意味がわからないようで子首を傾げる。
「おねえちゃんはおいしい? って聞いたんだよ」
 すかさずアルトに通訳すると、アルトは元気よく頷く。
「うん! おねーちゃんのごはんすごくおいしいよ」
「おいしいそうです」
 すぐに僕は通訳する。
 うう、アグニ早く修正パッチ作ってくれ。いちいち通訳するの面倒だよ。
 アルトは口いっぱいにハンバーグを頬張る。その様子はとても微笑ましかったのだが……フォークを握って使うという見ててハラハラする手つきでハンバーグを口に運んでいる。
 落としたりしないかな? 服に着いてソースでシミがつかないかな?
 しかし、僕の心配をよそにそんな危なっかしい手つきでまたハンバーグを運ぼうとして、
「あっ」
 ついにハンバーグをぽとっとテーブルの上に落としてしまった。
 あちゃー、やっぱりやっちゃったか。アルトは悲しげに落ちてしまったハンバーグを見ている。僕はそのハンバーグを箸で取って、
「ほら、アルト、あーん」
 あーんをしてあげる。アルトは嬉しそうに口を開けてそのハンバーグを食べる。
 朱音さんはそんな僕らを優しげな微笑みを浮かべながら見つめていた。
 ただ、食事が終わった後、
「ねえ、ノエル、アルトちゃんは私のことなんて呼んでた?」
 なんて聞かれた。おねえちゃんって言ってましたよと言ったら、「そっか、おばさんじゃなかったんだよかった」なんて呟いていた。やっぱり気になるのかなあ?


 で、食事が終わった後、後片付けをしていたら朱音さんが、
「二人ともお風呂沸いてるから入っちゃって」
 え? お風呂? むむむ……
「朱音さんが一緒に入ってあげてくれませんか?」
 なんてつい頼んでしまった。
 だって、忘れられてるかもしれないが僕は元男。幼稚園児ぐらいの子とはいえ一緒に入るのはちょっと恥ずかしい。でも、
「私は言葉わかんないからね。それに、ほら」
そう言って朱音さんがアルトを指す。
「ママ、アルトといっしょに入るのいやなの?」
 と、悲しそうな目で僕を見てきた。うう、その目にはちょっと弱い。
「ううん、じゃあママと一緒に入ろっか」
「うん!」
 アルトはママとおふろ〜と嬉しそうに笑う。その笑顔を見たら僕は「ま、いっか」という気分になった。
 で、部屋に寝巻とバスタオルを取りに行き、朱音さんからアルトの寝巻を受け取ってから風呂場に。
 それから僕がアルトと湯船に浸かっている時だった、アルトは水面(湯面?)に浮かぶ僕の髪を弄る。
「ママのかみってやわらかくてすべすべ〜」
 楽しそうに僕の髪を弄るアルト。なんとなくその感じが心地いい。
「アルト、髪洗ってあげるから一度お風呂上がろっか」
 ざばっと湯船から出る。アルトも「はーい」とすぐについて来る。そして、プラスチックの椅子に座らせて、朱音さんに渡されたシャンプーハットを付けてあげる。それから髪の毛を洗いはじめた。
 アルトは目をつぶりながら嬉しそうに笑っている。うーん、さらさら綺麗な髪だな。それに僕の髪によく似ている気がする。やっぱり同じ機械天使だからかな?
 なんとなく楽しくなっていた僕なのでした。

 で、風呂から上がってリビングに戻ると朱音さんがはいっと牛乳の入ったコップを差し出してくれる。
「ありがとうございます」
「おねーちゃんありがとー」
 僕らはそれを受け取る。
 ふうと一息ついて足を肩幅まで開き、開いてる左手を腰に手を当てて右手にしっかり握ったコップを口にあて一気に煽る。これぞ、牛乳を飲む時の正式スタイルだ。これは譲れん。
「ノエル……男の子みたいでみっともないよ」
 僕元男ですよ!? まさか忘れられてる? それかなりショックですよ!!
 それからリビングでゆっくりしてたら、アルトがうとうとしだした。
「アルト、もう寝る?」
「うん〜」


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