漆黒のシュガーレス(15/46)PDFで表示縦書き表示RDF


漆黒のシュガーレス
作:スグル



12 「Spider」


 夏海アルゼが、父親を失った日…。

「全部、燃えろ…」

 亡き父の写真を涙の溜まった両目で見つめ、実の兄、エヌアルの傍で、そう願ってしまった…。
 そして、すべてが始まった…。
 兄のエヌアルと、アルゼの復讐劇が…。
 アンチヒューマンズと、地獄同盟会の戦いが…。



 本日の午後九時のファミレス、『ジョルノ』に、ジャージ姿のアルゼと、バイトが終わったばかりで、疲れ気味で、セーターを着たゼファーナが居た。
 相変わらずの無表情で、冷めた口調のアルゼを苦手に思いながら、ゼファーナは彼女から渡された紙袋をチラッと見た。
 中には、今は、身につけていないシュガーレススーツとマスクが入っていた。先日の戦闘で、肘部分を破いてしまったので、彼女に修理を頼んでいたのが、本日、やっと戻ったのだ。
 正確には、彼女ではなく、アルゼの叔父、夏海幸雄が経営する工業会社、『ライフコーポレーション』の秘密にされている研究所が直した。

 アルゼの父親の弟の夏海幸雄は、彼ら、地獄同盟会を裏で支援している。
 夏海幸雄は、自らの会社に、アンチヒューマンズの造った兵器、ファンタジスタスーツに対する部を設け、密かに、ファンタジスタスーツの研究を進めていた。そして、アルゼを通して、地獄同盟会の資金面、生活面を支援。
 ファンタジスタスーツは、超小型コンピュータが内蔵されており、表に出せば、世界情勢が乱れてしまうかもしれないほどの最新鋭の技術や、プログラムが搭載されており、さらには、特殊な素材を用いられてるため、並の企業では扱えず、夏海幸雄は、自分の会社、ライフコーポレーションに特設の部所を作った。
 しかし、ゼファーナのシュガーレススーツにしろ、隼のポニー・ポニック、カタナのサムライ・ロジック、そして、アルゼの爆裂ロマンティストは、実は、アンチヒューマンズが造り上げた物で、超小型コンピュータに組み込まれているプログラムすら、解読出来ず。
 そのため、ライフコーポレーションでは、ファンタジスタスーツが破れた際のスーツの素材に合わせて、修理することしか出来ず、自社で、ファンタジスタスーツを造り上げるには、未開な部分が大きくあり、難易だ。仮に造れたとしても、コストの問題で、安価型以下の物しか造れなかった。
 それほどまでに、驚異の技術が搭載されているファンタジスタスーツ。
 恐ろしいのは、それを造り上げたアンチヒューマンズの巨大さと、得体の知れなさだ。


 袋から出さないよう、机の下で、ゼファーナは修理されたシュガーレススーツの肘部分を見た。
 完璧に違和感なく、破れた部分が修繕されていた。

「肘部分のコンピュータは?」

 と、ゼファーナは顔をアルゼに向けて聞いた。
 ファンタジスタスーツは、すべての布繊維にコンピュータが組まれている。
 ゼファーナは、破れた部分のコンピュータが破損したため、ライフコーポレーションが、肘部分のコンピュータを組み込めたのかを気にしていた。
 アルゼは、いつもの業務的な態度で…、

「シュガーレススーツは、原理が不明だが、破れた肘部分に同一の素材を縫い付けただけで、スーツ内のコンピュータが動いて、修繕した部分に…」

 と言ったが、ゼファーナが理解してなさそうな顔をしたので、表情をしかめた。

「つまりは、コンピュータが、スーツ内で増殖して、新しい肘部分に、その増殖させたコンピュータを移動させ、以前のように、肘部分の繊維にも、コンピュータが組み込まれた…。人間の血小板か、カサブタみたいなもんだ…(でも、違うか…)」

 と、改めて言い直した。
 とりあえずは、理解したような表情をゼファーナはしてみた。
 しかし、自分のシュガーレススーツが生き物のように、意志があって、修復したんだと言う部分を理解は出来ていた。
 さらに、紙袋を見ると、なにか、スーツの他に、ビニール袋で包まれているのに気付いたが…、

「一文字クラブのファンタジスタスーツの送り元が、解った…」

 アルゼのその言葉に、ゼファーナは思わず、びくっ!とした。

AHアンチヒューマンズとの繋がりのある下請けの商人がやってる裏の組織だ…」

 アルゼの話によると、今までのファンタジスタスーツの流失の根源は、その組織からだ。
 奴らが売ったファンタジスタスーツは、マフィアなどに出回り、マフィアは収入を得るため、裏の情報網などで、個人に売り捌いた。
 しかし、一文字クラブの場合は、直接、その下請けに接触して入手していた。
 つまり、手当たり次第に動いていた地獄同盟会が、下請けの存在を知ったことで、少しだけだが、敵であるが、謎の部分の多い、闇に隠れているアンチヒューマンズに近付けるのだ。
 アンチヒューマンズが、下請けに安価型を売っている理由は不明ではあるが…。

「その下請けの組織に迫れば…」

 ゼファーナは顔を引き締めて、アルゼの目を見た…。

「やっと、奴らを…」

 アルゼが、なにかを言おうとした瞬間。

「あれー、春日氏じゃないかー!?」

 と、いきなり、脇からゼファーナを呼ぶ声が…。
 なにかを、言おうとしたアルゼの唇が止まった。
 ゼファーナは、声の方に振り向くと…。 何故か、席の近くに、前回の一文字クラブの事件の件で知り合った藤岡剣友会のあの3人組の小室、中田、尾崎が学生服で立っていた。
 ゼファーナの顔が、急に砕けた。

「あっ、えーと、安室さんに、田中さん、柿崎さん!何故、ここに!」

 と、見事に全員の名前を間違えながら、ゼファーナは返答した。
 すると、長髪の男が笑いながら、

「違う、俺が、小室」

 と言い、隣の坊主頭が、

「そして、僕が、中田」

 と言い、角刈りの男が、

「俺が、尾崎だ」

 と言い、みんなして流れるような自己紹介を改めてした。
 ゼファーナは苦笑いをしながら、横目で隣に座る、他人と接するのが嫌いと言っていたアルゼを見た。予想通り、不機嫌な顔をしていた。
 ゼファーナは、あの無表情が、さらに、無表情になったような気がして仕方なかった。

「僕達は、さっき、稽古が終わったので、ここで食事をしに。そして、たまたま、春日氏を発見と…」

 と、中田が事の説明をした。
 そして、小室がアルゼに目を向けて…、

「あれ、その女の子、もしかして…」

 と、なにかを言おうとした瞬間、ゼファーナのすべての血の気が引き始めた。
 小室に、彼女とかと勘違いされたら、ただでさえ、怖くて、接しにくく、上司にしたくない人ナンバー1で、異性として見れないアルゼが、どんな態度を取るか解らなかったため、声にならない叫びを、心の中で、叫びながら、余計なこと言わないでくれー!!と、ゼファーナは願った。
 そして、小室は…、

「妹さん?」

 と、指を差していった。
 ゼファーナは、ズッコケた。肩透かしを、くらったからだ。
 しかし、アルゼの顔が固まった。
 地獄同盟会など、当然、言えないし、恋人とも言えるわけがない、ゼファーナは仕方なく…、

「そうです…。妹のアルゼです…」

 と、彼らに合わせるように、言った。
 気のせいか、アルゼの方から、変なピキン!って音が聞こえた。
 ちなみに、彼女は19歳の大学生なのに、今だに、中学生に、よく間違われる。しかも、この間、デリカシーのない秋羽隼から、『中学生体型』と言われたばかりだった。
 アルゼより、三歳も年下のゼファーナが、そう言うと…、

「へぇー、やっぱりー」
「いやー、可愛い妹さんだー」

 と、3人とも頷いた。
 冷や汗ダラダラのゼファーナの耳元に、アルゼは顔を近付けて…、

「あとで、貴様を…」

 と、ボソリと3人組に聞こえないように告げた。
 事情により、…から先は省略させてもらう…。
 ゼファーナの顔が真っ青に染まった。




「大勢と居るのは、嫌いだ…」

 と言いながら、アルゼは青い顔のゼファーナと、あの3人組が居る席を後にして、ファミレスを出た。
 会計は、ゼファーナに払わせた。
 そして、ファミレスを出てすぐの、車が走る国道添いの歩行者用の通路を歩かずに、暗い夜道の狭い小道を歩く。
 彼女は、自宅のマンションに帰宅しようとしているが、国道添いを歩けば近い。だが、彼女は、車の走行時の騒音や、排気ガスが嫌いだったから、車や、人の通らない小道を選んだ。

「どうして、この世の中は、僕の嫌いなものばかりなんだ…」

 暗い小道を歩きながら、彼女が呟く。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう