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093 転生者は異世界で何を見る? -冒険者ギルド-

総合評価四桁ありがとうございます!

「えっ? ……なにか問題でも?」


 びくびくしながら瑞樹が門衛に尋ねる。


「ん? あ、ああ……、問題ない、大丈夫だ。

 すまんな。珍しい種族を見たもんでな」


 もしかして仙化族ってやつか? 種族までわかるのか、あの板は。他に何が出るんだろうか……。

 門衛が他に驚いていないところを見ると、スキルマで表示されるものではなさそうだが。

 何にしろ、仙化族とやらはこの世界では珍しいようである。理由が気になるところだが、厄介なものでないことを祈るばかりだ。


「種族まで出てくるんですか?」


 びっくりされた本人である瑞樹が門衛に尋ねている。


「ああ、出てくるぞ。犯罪歴と種族の他に表示されるのは年齢と性別だな」


 聞きたかったことをしゃべってくれる門衛。手間が省けて助かります。

 しかし板に手を置いただけでそこまでわかるのか。一体何で判断してるのか。


「ほれ、これが仮身分証だ。これで街の中に入っていいぞ」


 門衛がカウンターの下からクレジットカード大の、金属なのかプラスチックなのかよくわからない材質のカードを三枚取り出して渡してきた。


「仮……、ですか?」


「おう、有効期限はないが、早めに正式な身分証を用意するこったな。入街税が払えない代わりの借用書みたいなもんだから、ほっとくと利子がえらいことになるぞ」


 門衛の兄ちゃん曰く、利子は十日で銅貨一枚だそうだ。瑞樹が「トイチかよ」と貨幣の価値を知らずに呟いたが、肯定の頷きが返ってきたので銅貨十枚で銀貨一枚なのだろう。

 身分証をもらえるところを尋ねると、手っ取り早いのは冒険者ギルドという回答が返ってきた。他にもギルドはあるが、冒険者ギルドが一番入る条件が緩いらしい。

 そこで日銭を稼いで仮身分証を返却するといいとアドバイスをもらった。


「じゃあ改めて。サイグリードの街へようこそ。

 しっかし、運がよかったな。同じ状況で怪我でもしてたら、借金奴隷で身売りするしかないところだぜ」


 冒険者ギルドの場所を聞いて見送られる間際に、笑顔で怖いことを言われた。つまりこの世界には奴隷がいるんですね。




 小屋を出て改めて街の中を見回してみる。

 街道から続く広い大通りを行きかう人の影は少ない。

 というのも街の南であるこちらの門は、だだっ広い草原と森があるおかげで、主に出入りするのは採集に出かける冒険者しかいないとのことだ。

 木造の二階建ての建物が続く大通りを中央に向かって歩いていくと、徐々に歩く人の数が増えてくる。それに伴い道の両脇に露店もちらほらと出始め、いい匂いも漂ってきた。

 と、そこにはどうやら人以外もいるようだ。様々な形の耳を頭の上から生やしたいわゆる獣人といった種族も見かける。中にはドワーフと思われる、背が低く横幅の広い髭もじゃの姿もあった。


「ファンタジーだね……」


 行きかう人を眺めながら瑞樹がつぶやいている。

 だがしかし、門衛が珍しいと言うだけあって、耳の先が尖っている姿は見当たらなかった。そういえばエルフっぽい長い耳も見当たらないな。


「とにかく言われた通り冒険者ギルドに行こうか。お金を稼がないと今晩は野宿になっちまう」


 門から歩くこと三十分ほど。中央広場手前に冒険者ギルドはあった。入口上部には、盾を背景に二本の剣が交差したエンブレムが看板のようにかかっている。

 開けっ放しの入口に躊躇いなく入って行くと、後ろからフィアとおっかなびっくりの瑞樹もついてくる。


「おお……?」


 荒くれ者の巣窟でも想像していたのだろうか。後ろから予想外を思わせる疑問形の瑞樹の声がした。

 うん、確かに思ったより人が少ない。正面にあるカウンターの向こう側には5人ほど職員らしき人物が並んでいるが、そのうち二つは空いているようだ。残りの三つも人はいるが、後ろに並ぶ人はいない。

 左側を見ると紙が貼られた掲示板がいくつか並んでおり、それを物色する人が数名。右側は打ち合わせなどに使われるのであろうか、十卓のテーブルとイスがあるが、半分も埋まっていない。

 数名の視線を浴びるがすぐに興味を失ったように元の会話に戻る者が多かったが、若干名はこちらに視線を向けたままの者もいるようだ。

 入り口で突っ立っているわけにもいかないので、空いているカウンターへと向かう。


「おう兄ちゃん、見ない顔だな。……隣に行かずにこっちに来るたぁ、オレに何の用だ?」


 片目に鋭い刃物でやられたかのような大きな傷がついた隻眼で筋肉質の獣人の男が、隣を指示しながらニヤリと笑う。

 その頭についている耳は猫だろうか。愛嬌のあるはずの動物の耳だが、オッサンの厳つい顔と傷ですべてが台無しだ。むしろ怖い。

 目を逸らすようにオッサンが示す隣を見ると、無表情のスラリとした黒髪ストレートの美人がカウンターにいた。

 どうでもいいが、美人じゃなくてこっちにきた理由を尋ねられたわけか?


「いや、単に入口から一番近かっただけだが」


 「じゃあ隣に行ってきます」とボケをかまそうかとも思ったが、常識も何も知らない場所でやらかすことでもないと思い素直に理由を口にする。

 実を言うと隣にいる美人の職員に気づいてなかっただけだが、近いからという理由も嘘ではない。


「んだよ、つまんねぇ奴だな。――まあいいさ、仕事の依頼にでも来たのかい?」


「いや、身分証が欲しくて来たんだ」


 オッサン職員の声に、俺たちは揃って仮身分証をカウンターへと差し出すと。


「ああ……、そういうことか。……苦労したんだなぁ」


 なぜか憐憫の眼差しを向けられた。

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